100万人以上来場のジャパンモビリティショー2023、モータースポーツエリアも大盛況!

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2023年11月9日

東京モーターショーの前身となる全日本自動車ショウが日比谷公園内で開催されたのが1954年。当時はまだ、一般庶民には自家用車は現実的なものではなかったが、次第に国内では自動車のためのインフラ整備、舗装道路の増加や高速道路網の拡張などが急速に進むとともに、各自動車メーカーから大衆車が相次いで発売されたことから、1960年代に入ると日本国内でもモーターリゼーションが一気に進展することとなった。こうした状況と1964年の第11回には海外メーカーも出展したことから、東京モーターショーへと改称されることとなった。それ以降、会場の変更、隔年開催などの時代に合わせた変化を繰り返しながら、ついに今年は「ジャパンモビリティショー2023」として、10月26日から11月5日の日程で東京ビッグサイトで開催された。

JAPAN MOBILITY SHOW 2023
開催日:2023年10月26日~11月5日
開催場所:東京ビッグサイト(東京都江東区)
主催:一般社団法人日本自動車工業会

 従来の自動車を中心としたショーから、モノや人が移動するために使用するための幅広い移動手段(=モビリティ)の製品や技術を紹介するエキジビションへの性格を強め、自動車だけではなく特定小型原動機付き自転車から空飛ぶクルマや四足歩行ロボットなど、多彩なモビリティが登場し来場者の注目を集めた。自動車関連のメーカーだけでなく新興企業や他業種からの参入も見られるなど、これまでにない会場の雰囲気に包まれていたブースも多かった。

 もちろん自動車メーカーからも従来のようなコンセプトモデルや既存車種のモデルチェンジを予期させるような実車さながらのクルマと同時に喫緊の課題であるSDGs、ゼロエミッションといった問題に取り組む姿勢を全面に押し出した展示も見られた。が、各メーカーともモータースポーツ関連の展示やスポーツカーなど、クルマ好きやモータースポーツファンも心躍るマシンもスポットを浴びていた。

2019年に同じ東京ビッグサイトで開催された東京モーターショーから「ジャパンモビリティショー」に名称を改めて開催された11日間で、1,112,000人もの来場者を集めた。平日、休日問わず連日、通常開場時間の10時を前に入場を待ちわびる人々の長蛇の列ができ、モビリティショーへの期待の高さが伺えた。
2023年4月に創立60周年を迎えたJAFは、過去と現在、未来のJAFを表現するPRブースを出展。歴代のロードサービス隊員の制服の展示や、子どもたちに好評を博した「お絵描きロードサービス~未来のレッカー車を描こう~」などを展示(左)。11月4~5日には、りんかい線国際展示場駅から東京ビッグサイトをつなぐシンボルプロムナード公園の一部で実施した「働くくるま大集合」にロードサービスカーとの記念撮影とシートベルトコンビンサー体験を出展した(右)。

 トヨタはGRブランドから4WDのバッテリーEV(BEV)のコンセプトモデル「FT-Se」が登場。エンジン搭載を気にしなくていいことから、ワイド&ローのフォルムが強調されている。GRブランドとしてお披露目されたことからもモータースポーツが意識されたモデルに違いないだろう。

 ホンダはホンダにしかできない空と地上のモビリティシステムを組み合わせた展示が目を引いたが、プレリュードの名前が復活した「プレリュード コンセプト」がワールドプレミアとなった。三部敏宏取締役 代表執行役社長が「ホンダ不変のスポーツマインドを体現するモデル」とカンファレンスで話し、開発中であることも明かしていることから数年以内にはプレリュードの復活が期待できそうだ。

 日産も「ニッサン・ハイパーフォース」をワールドプレミアでアンベール。テールランプのデザインからGT-Rを彷彿させ、高性能モーターと全固体電池で最大出力1000kWを発生させるという。また、バーチャルとリアルをシームレスで体験することで、ドライビングスキルの向上も目指せるという。

 マツダはスポーツカーコンセプトとして「MAZDA ICONIC SP」を世界初公開した。軽量・コンパクトなロータリーエンジンによる2ローターRotary-EVシステムをクルマの中央部に寄せて搭載することで、優れた運動性能を実現させようとしていている。ロータリースポーツの復権は近いかもしれない。

トヨタがGRブランドで出展したコンセプトモデル「FT-Se」は、カーボンニュートラル時代におけるスポーツカーの選択肢の一つとして提案する、高性能スポーツバッテリーEVモデルだそうだ。メリハリがあるグラマラスなデザインが特徴的(左)。ホンダが出展した「プレリュード コンセプト」は、既に北米でアキュラブランドの一台として販売されている「インテグラ」に続き、懐かしい車名を採用。搭載するパワーユニットは明らかにされなかったが、BEVやハイブリッドなどの電動車になるようだ。三部敏宏取締役 代表執行役社長によると「Hondaだからこそできる“操る喜び”を皆さまにお届けすべく、現在、鋭意開発を進めています」とのことで、モータースポーツベース車両としても発売が期待される一台だ(右)。
日産が出展した「ニッサン・ハイパーフォース」は全個体電池と高出力モーターから成るパワートレインを搭載した4WDの次世代高性能スーパーカー。空力設計は、スーパーGTなどでも活躍している、NISMOレーシングチームと共同設計したそうだ(左)。マツダの「MAZDA ICONIC SP」に搭載されている2ローターRotary-EVシステムは、MX-30に搭載されているRotary-EVのシングルローターから2ローターに増やすことで高出力化。新たなVIOLA REDのカラーリングも鮮やかで、開閉式のヘッドライトも特長的なクルマだ(右)。

 スバルはクルマがBEVになっても、ドライバーの意のままに動かし、いつでもどこへでも自由に走って行ける愉しさをコンセプトに「SUBARU SPORT MOBILITY Concept 」を発表。そのステージ上には航空宇宙と自動車のエンジニアが協力し合い、飛行実証を進めている「SUBARU AIR MOBILITY Concept」も同時発表された。三菱は新型トライトンがベースの「トライトン ラリーカー アジアクロスカントリーラリー2023」に実際にサポートカーとして参戦した「デリカD:5アジアクロスカントリーラリー2023 サポートカー」を展示し、クロスカントリーラリーでの存在感をアピール。また4輪の動きを統合制御する「S-AWC」を搭載している「D:X コンセプト」も発表している。

 スズキはEV世界戦略車の第一弾となる「eVX」を日本初公開したほか、スペーシアとスイフトのコンセプトモデルを展示。モータースポーツ愛好家には気になるスイフトスポーツに言及はなかったものの、これまでもスイフトスポーツはスイフトのモデルチェンジから遅れてリリースされていることから、こちらも期待される。

 ダイハツは初代コペンを彷彿とさせるスタイルの「VISION COPEN」をアンベール。電動開閉式ルーフ「アクティブトップ」を継承しながら、FRレイアウトとカーボンニュートラル燃料の活用を見据えた内燃機関の組み合わせにより、走る楽しさを極めた新たな小型オープンスポーツを提案した。

スバルは「SUBARU SPORT MOBILITY Concept 」と、創業から航空機を製造し続けているDNAを感じさせる「SUBARU AIR MOBILITY Concept」、空と陸を駆ける2つのコンセプトモデルを初公開(左)。三菱は8月13~19日に開催されたアジアクロスカントリーラリー2023に参戦し、3位を獲得したチャヤポン・ヨーター/ピーラポン・ソムバットウォン組、2023年JAF全日本ダートトライアル選手権Dクラス王者を確定したばかりの田口勝彦/保井隆宏組ら3台がタイからラオスへと駆け抜けた、新型トライトンベースのクロスカントリーラリーカーを展示した(右)。
スズキでは、ラリーとジムカーナ、ダートトライアルを中心にモータースポーツで大活躍しているスイフトの次期型を示唆する「スイフト コンセプト」が登場。スポーティなルックスの現行型から、角が取れたマイルドなデザインの印象を受ける。スポーツの登場も待たれる一台だ(左)。「VISION COPEN」は軽自動車のイメージがあるダイハツ、そしてコペンのイメージを覆す、排気量1300ccの直列4気筒エンジンを搭載。初代コペンの輸出仕様車と同じ排気量と気筒数のエンジンを積むが、初代のFFに対してVISION COPENはFRであることも大きな特徴。こちらも市販化への期待がふくらむ(右)。

 その他にもモータースポーツエリアとして、モータースポーツ車両の屋内展示を展開。FIAフォーミュラ1世界選手権(F1)、FIA世界ラリー選手権(WRC)、FIA世界耐久選手権(WEC)のホンモノのマシンが身近で見られただけでなく、ホンダがスーパーGTの2024シーズン参戦に向けて開発中と語る「CIVIC TYPE R-GT CONCEPT」や、2024年3月30日に東京大会の開催が迫るFIAフォーミュラE世界選手権に参戦する日産の「Nissan Formula E Gen2 car, Season 8(2021/22年)」など、注目のマシンも見ることができた。

 さらに2023年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 第8戦と第9戦のパブリックビューイングや屋外デモランゾーンでは多くの車両によるデモランや同乗走行も開催されるなど、モビリティショーに衣替えはされたが、クルマ好きが楽しめる「ショー」には変わりはなかったと言えるだろう。

モビリティショーに変わって初の試みとなったモータースポーツエリアには、写真手前のスーパーGT参戦車両をはじめ、二輪・四輪問わず数多くのモータースポーツ車両が展示されて、多くの来場者の注目を集めた。また、連日長蛇の列をつくったレーシングシュミレーター体験やステージと屋外デモランゾーンで開催された数々のイベントなど、来場者がモータースポーツに気軽に接することができ、好評を博した。
10月28日のステージには、2023シーズンもインディカー・シリーズで奮闘した佐藤琢磨選手が登場し、ラジオパーソナリティで、レーシングドライバーでもあるピストン西沢氏とのトークショーを開催。鈴鹿サーキットでのF1との出会いや自転車競技からモータースポーツへの転身にはじまり、校長を務めるHonda Racing School Suzukaでの後進育成についてまで、自身の経験や情熱などをリラックスしたムードのなか、屈託なく語ってくれた。
佐藤選手のトークショーの後にはデモランゾーンで「TOKYO ZEV ACTION E-Tokyo Park」の一環として、MCにモータースポーツアナウンサーのサッシャ氏、東京都の潮田勉副知事と日産の星野朝子取締役副社長をゲストn迎えてZEV(Zero Emission Vehicle)によるデモランを披露。日産LEAF NISMO RC_02(左)をスーパーGTのGT500クラスでNiterra MOTUL Zを駆る千代勝正選手が、モータースポーツエリアでの展示と同じNissan Formula E Gen2 car, Season 8(右)を千代選手のチームメイトで、日産フォーミュラEチームでリザーブドライバーを務めた経験を持つ高星明誠選手がドライブ。2024年3月30日に開催されるフォーミュラE東京大会をPRした。
フォーミュラE車両などによる迫力ある走行への興奮が冷めやらぬなか、ステージでは「e-Motorsports 真剣勝負 メーカー対抗戦」を開催し、スズキ、スバル、ダイハツ、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱の8メーカーが参戦。3名1チームで、最低1名はメーカーの職員がプレイヤーを務める、というレギュレーションの中、JAF全日本ラリー選手権などへの参戦経験や、eスポーツプレイヤーである職員で結成された「DAIHATSU D-SPORT Racing Team(佐々木唯人選手、菅原達也選手、殿村裕一選手)」が熱戦を制し、頂点に輝いた。
29日のステージでは、日本全国から集った22大学の体育会系自動車部と、ゲストとして米国、ロサンゼルスから招かれたスタンフォード大学の学生たちが競う「Gran Turismo College League 2023(GTCL)」を開催。4回目を迎えてついに有観客での開催となった今回は、初回から連覇を続けている中央大学(尾形莉欧選手、内田直樹選手、水口来夢選手)をどの大学が止めるかに注目が集まった。しかし、包囲網が敷かれる中でも中央大学は好成績で予選を突破すると、決勝では独走態勢を築いて4連覇を達成。決勝の舞台となったサルト・サーキットで力を発揮できる車両選びなど、他校より万全の体制を整える力の差が見えた結果となった。
28日と29日のステージでは、両日に鈴鹿サーキットで開催された2023年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権の第8戦と、第22回JAF鈴鹿グランプリもかかった第9戦のパブリックビューイングを実施。立見する来場者も出るほどの中、宮田莉朋選手(VANTELIN TEAM TOM’S)が初の戴冠を確定した瞬間は、拍手が沸き起こった。その宮田選手の37号車のSF23の展示が始まった11月1日には、B-Max Racing Teamの松下信治選手と本山哲監督が来場し、トークショーを挟んで2回のデモランを披露した。デモランでは松下選手が、フォーミュラカーではなかなか見ることができないバックを披露したり、豪快にタイヤスモークをあげるドーナツターンを見せて、来場者を魅了。トークショーの最後には、松下選手が実戦で使用したサイン入りグローブを賭けたジャンケン大会も実施。見事グローブをゲットした来場者は満面の笑みを浮かべた。
デモランゾーンでは連日、国内トップカテゴリーで活躍するドライバーによる、ナンバー付ワンメイク車両や、Formulaタンデムによる同乗走行を開催。同乗を果たした幸運な来場者たちは、非日常の体験を満喫している様子だった。
全日本ジムカーナ選手会(AJGA)が2~4日のデモランソーンで、デモランと同乗走行を開催。デモランでは競技中はタイムロスになるために見せられない、豪快なパイロンターンを続々と披露。同乗走行では同乗者にモータースポーツならではの走りを体感してもらうだけではなく、インタビューや記念撮影、プレゼントの進呈など積極的に同乗者や来場者とふれあい、ジムカーナとモータースポーツの魅力を伝える姿が印象的だった。
ホンダ・レーシング(HRC)は3日のステージでeスポーツイベント「Honda Racing eMS 2023 SPECIAL EVENT」を開催。参加者たちがシビックタイプRで鈴鹿サーキット1周のタイムを競う、という共通フォーマットで3回行われ、それぞれの回でトップタイムをマークした選手が表彰された。
4日の通常開場直後のステージでは「SUSTAINABLE MOTORSPORTSトークショー」と題して、スーパー耐久シリーズのST-Qクラスに参戦しているドライバーとメーカーの関係者たちが集合。水素エンジンやカーボンニュートラルフューエルへの対応など、各社が取り組んでいる車両での施策や、サスティナブルな未来への展望などを語った。観客席で聴いていた、トヨタの代表取締役会長でもありモビリティショーを主催した一般社団法人日本自動車工業会の会長、そしてモリゾウ選手でもある豊田章男氏も登壇し、大いに盛り上がった。
最終日5日は、17~18日に開催を控えたFIA世界ラリー選手権(WRC)第16戦「フォーラムエイト・ラリージャパン」のPRイベントを開催。WRC唯一の日本人ドライバーである勝田貴元選手(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team)、そして、M-SPORT FORD WORLD RALLY TEAMからラリージャパンに初挑戦するエイドリアン・フルモー選手、そしてJAF全日本ラリー選手権で活躍する新井敏弘選手(SUBARU TEAM ARAI)と勝田貴元選手の父でGRヤリス ラリー2の開発ドライバーでもある、勝田範彦選手(TOYOTA GAZOO Racing WRJ)、ラリージャパン2023実行委員会の会長を務める豊田市の太田稔彦市長、そして豊田氏が登壇してトークショーを実施。デモランゾーンに移ると、新井選手がスバルWRX STIを、勝田範彦選手がGRヤリスを、そして勝田貴元選手はGR YARIS Rally1 HYBRIDを駆って豪快なデモランを披露。集まった多数の来場者を魅了するとともに、ラリージャパンの開催をアピールした。
10月31日のステージで「SUPER GT最終戦直前トークイベント」と題してGT500クラスのチャンピオン候補の3号車 Nittera MOTUL Z 、16号車 ARTA MUGEN NSX-GT 、36号車 au TOM’S GR Supraのドライバーや監督を招き、最終Round 8の展望を語ったスーパーGT。5日のステージではモビリティリゾートもてぎで開催されたRound 8のパブリックビューイングを実施。来場者たちはau Supraを駆る宮田莉朋選手が史上最年少で、スーパーフォーミュラとスーパーGTの二冠を確定させた瞬間を見届けた。

フォト/山中知之、日産自動車、JAFスポーツ編集部 レポート/山中知之、JAFスポーツ編集部

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