岐阜県恵那市を舞台に女性ラリーストが覇を競う「WOMEN'S RALLY in 恵那」開催!
2023年11月9日

女性ラリーストの祭典として知られるWOMEN'S RALLYが、今年も10月28~29日に岐阜県恵那市を拠点として開催された。
Women in Motorsport L1
WOMEN'S RALLY in 恵那 2023
開催日:2023年10月28~29日
開催地:岐阜県恵那市周辺
主催:MASC、LUCKSPORT、Love drive
7回目を迎えた今年のWOMEN'S RALLYはいくつかの変更点があり、まずこれまで11月下旬から12月上旬に設定されていた開催日が約1か月も前倒しされて10月下旬の開催となった。ホストタウンの恵那市は今年もラリージャパンのSSが設定されるが、ラリージャパンを終えた後の開催となった昨年とは違って、今年のWOMEN'S RALLYはWRCを3週間後に控えての開催となる。
またクラス分けも変更となり、1,500cc以下のAT車両が対象だったL1-3クラスがL1-2クラスへと統合され、女性がドライバーを務めるクラスは、2クラスで優勝が争われることになった。さらに恵那市がSDGs未来都市に選定されたことなどの動きを受けて、新たにSDG5クラスとSDG7クラスが設定された。
SDG5クラスは、ドライバーはジェンダーフリー(男性/女性/LGBT)とし、コ・ドライバーはドライバーと異なるジェンダーであること(ただしLGBTのドライバーにおいては、コ・ドライバーのジェンダーは問わない)を条件とするクラスで、SDG7クラスはハイブリッド等のAE車両およびカーボンニュートラル燃料の車両を対象としたクラス。今回は残念ながらSDG7クラスはエントリーがなく不成立だったが、SDG5クラスには2台のエントリーがあった。
SSは昨年初めて設定された「姫栗」(2.53km)と、名物ステージの「望郷の森」(3.79km)、そしてスーパーSSとしてこちらもお馴染みの「笠置山モーターパーク」(1.03km)の3本が設定され、この3つのステージをふたつのセクションで各1回ずつ走行する計6SS、14.70kmで勝敗が競われた。




L1-1クラス
L1-1クラスは、トヨタ・86でこの大会3連覇中の石川紗織選手が、日本を代表するコ・ドライバーの1人である保井隆宏選手を迎えて盤石の体制で今年も参戦してきた。昨年は全SSを制覇する速さでライバルを圧倒した石川選手だったが、今回のSS1姫栗を制したのは、昨年は4位でこのラリーを終えたHARU/福島成郎組のスバル・BRZだった。
2秒差で石川組を下したHARU組は、続くSS2望郷の森でも再び石川組に3.1秒差のベストタイムでゴール。さらにこのラリーで過去、何度か石川選手とバトルを展開した中島紀子/山田訓義組の三菱・ランサーもHARU組に0.6秒差のセカンドベストをマークする。続くSS3笠置山は石川組がこの日初のベストをマークするが、HARU組が2.7秒のリードでセクション1を折り返し、中島組も石川組に0.1秒遅れの3番手につけ、三つ巴のバトルはセクション2にもつれ込んだ。
注目のSS4姫栗はHARU組が石川組に0.6秒、中島組には1.4秒のリードで3度目のベストタイムをマーク。HARU組はSS5望郷の森でも石川組を1.6秒差で下して、その差を4.9秒まで広げる一方、中島組はここで4.4秒の遅れを取り、8.4秒までビハインドが広がって苦しい展開となる。
残すは1.03kmの笠置山のみとあって、HARU組の優勝はほぼ確定かと思われたが、このステージは通常の林道とは違い、大半が笠置山モーターパークにパイロンを置いたジムカーナセクションとあって、過去何度かドラマを生んできたコースでもある。そして今年も最後の最後で大波乱を生むステージとなった。
このSSでHARU組は「ミスコースしかけて、コーナー2つ分くらい余計に走ってしまった」と、石川組にまさかの8.7秒遅れでゴール。土壇場で逆転を許し、2位に甘んじることとなってしまう。一方、中島組はこのSS、石川組に1.7秒差の2番手でゴールするも、HARU組には1.4秒届かず、昨年と同じ3位でフィニッシュした。
薄氷の勝利で4連覇達成の石川選手は、「この時期に開催されるラリーには初めて履くタイヤで臨んだんですが、温度域が合わなかったようで苦戦してしまいました。タイムも昨年から落ちているので、反省すべき点も多いラリーでした」と1か月前倒しでの開催が微妙にタイムに影響した様子。
「保井選手から、劣勢に立ったときにどう走ればいいのかアドバイスをもらえたことで、最後まで自分にできることをしっかりこなせたことが、この結果につながったと思います」と名コ・ドライバーに感謝していた。
一方、HARU選手と中島選手は、この1年は全国屈指のレベルを誇るJMRC群馬ラリーシリーズを追った。「群馬戦で鍛えられたことで、林道の走りはかなりレベルアップできた実感はあったので、今日はそれを証明できましたが、最後でメンタルの甘さが出てしまいました」とHARU選手。
群馬シリーズを追いながら、それまでのラリータイヤの走りから、スポーツラジアルを活かす走りに変えたという中島選手は、「このラリーでもコーナーでのスピードは確実に上がったと思いますが、セクション2はちょっと気合いが入りすぎたかもしれませんね」とコメント。ともに大金星を逃した悔しさを滲ませながら、来年の大会でのリベンジを誓っていた。
群馬シリーズと言えば、新井敏弘選手や柳澤宏至選手といった“群馬スペシャリスト(群スペ)”と呼ばれる名ドライバーたちを生んだことで知られるが、“群スペ女子”の速さを目の当たりにした石川選手も、「来年は群馬戦も選択肢のひとつに入れたいと思います」と語るなど、関心を寄せた。WOMEN'S RALLYへのステップアップステージとしても、来季は注目を集めるかもしれない。



L1-2クラス
L1-2クラスは昨年、3年ぶりの優勝を飾って今回は優勝候補筆頭にあげられていた毛受(めんじょう)広子/中村祐太組のトヨタ・ヤリスが、SS1から後続を大きく引き離してその後もリードを拡大。SS3では湯澤美幸/原澤潤平組ヤリスにベストを譲ったものの、残る5本のSSすべてでベストタイムをマーク。
毛受組は総合でもL1-1クラスのトップ3台に続く4位を獲得して快勝した。2位にはヤリスCVT車で健闘した洪銘蔚/坂井智幸組が入賞。湯澤組は洪組を凌ぐタイムでフィニッシュしたが、SS3でのジャンプスタートによるペナルティが響いてリザルトでは3位に後退した。
関東の名門ラリーショップとして知られるコンペチームのワークスカーをレンタルして参戦した毛受選手は、「レース仕様がベースの自分のヤリスとの違いを面白く感じながら走りましたが、やはりしっかりつくられている本物のラリーカーは自分のクルマよりも動きが良くて楽しめました」とひと言。
今回は超硬質路面用のラリータイヤを装着したが、「久しぶりのラリータイヤでしたが、楽しく走れました」と、スポーツラジアルで走った昨年とほぼ遜色のないタイムで走り切っている。



SDG5クラス
SDG5クラスは、杉本直美選手と組んで出場した大西史朗選手がドライブするスイフトが優勝。「このラリーは初めて走りましたが、どのSSも最後まで気が抜けない難しいステージでした」と振り返った大西組は、1分早着でペナルティを加算されたものの、ゴールタイムでは総合ベストの速さでラリーを締めくくり、元全日本ドライバーの貫録を見せた。



フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部
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