勝田貴元選手がWRC初の3カ国が共催するラリーとなった第12戦で総合5位の健闘!
2023年11月10日
2023シーズンのFIA世界ラリー選手権(WRC)第12戦「セントラル・ヨーロピアン・ラリー」が10月26~29日、ドイツとチェコ、オーストリアを舞台に開催。WRC史上初の3カ国にまたがるステージで争われる、画期的なターマックラリーにTOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの一期生である日本人ドライバー、勝田貴元選手はコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手とともにTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)4台目のGR YARIS Rally1 HYBRIDで参戦した。
2023年FIA世界ラリー選手権 第12戦
セントラル・ヨーロピアン・ラリー
開催日:2023年10月26~29日
開催地:ドイツ・パッサウ周辺
10月26日・デイ1 / 27日・デイ2
4月に開催された第4戦「クロアチア・ラリー」以来のターマックラリーとなったこのラリーは、ドイツ南東部のパッサウにサービスパークを設置し、26日にチェコの首都、プラハでセレモニアルスタートを実施。その後のデイ1はSS1およびSS2がWRC初開催となるチェコで開催され、翌27日のデイ2もチェコが舞台となった。
28日のデイ3は1973年以来のWRC開催となるオーストリアおよび、2019年以来のWRC開催となるドイツを舞台に争われ、29日のデイ4もオーストリアとドイツにSSを設定。4日間で3カ国を巡るラリーは合計18カ所、310kmのSSが設定されたほか、リエゾンを含めた総走行距離が1690kmとなるなど、スケールの大きなラリーとなった。
このラリーについて「国によってSSのキャラクターが異なっていましたし、コンディションも違ったので難しい一戦でした」と語った勝田貴元選手。さらに「チェコのSSは狭くて苔が多く、泥が出ていたので金曜日が鍵となると思っていました。とはいえ、ターマックでは出走順が後方になると不利になるので、自分のペースを考えないといけないんですけど、雨も朝方にかけて強く降って水溜りも多かったので、出走順が後ろになるほどタイムが落ちていきました」と語るように勝田貴元選手は苦しい立ち上がりを強いられた。
デイ1のSS1で7番手タイム、SS2で8番手タイムに留まっていた勝田貴元選手は、デイ2でもベストリザルトが6番手とペースアップを果たせなかった。それでも我慢の走りを続けて総合5番手でデイ2を終えた。
勝田貴元選手によれば、「総合5番手は悪くはない結果だったんですけど、トップとの差は開いていたので上位にいる選手に何かないと上位進出は厳しい状況でした。それでも、金曜日(27日)にタイム差が開くことは想定していたので、土曜日(28日)からどれだけタイムをアップさせていけるかがポイントになると思っていました」とのことで、その言葉どおり、オーストリアおよびドイツを舞台とした28日のデイ3で素晴らしいパフォーマンスを見せた。
10月28日・デイ3 / 29日・デイ4
「土曜日は雨が上がってきたし、SSも狭いセクションが少なかったので走りやすかったんですけど、午前中はセッティングを含めて乗れていない状況だったので、そこでかなりタイムロスをしていました」と語るように、SS9で8番手タイム、SS10で9番手タイム…… といったように、勝田貴元選手はデイ3のファーストループで伸び悩んでいた。
そこで、「セッティングを大きく変更しました。午前中はフロントのグリップが得られなかったので、グリップを稼ぐために柔らかいダンパーに変更。インカットで滑りやすいセクションでフィーリングが良くなりました。その分、ドライの路面ではロール量が多くなったのでドライビングの部分、荷重をかけ過ぎないように対応することで、ある程度のペースに戻すことができました」と勝田貴元選手が決断すると好転。事実、セカンドループで復調を果たし、SS12で5番手タイムをマークするとSS13で4番手タイムをマークした。
さらに「最後のSSはナイトステージでインカットも多いことから、(第1戦)モンテカルロのような難しいコンディションだったんですけど、3番手タイムを出すことができました。トップタイムを出したカッレ(ロバンペラ選手)と2番手タイムのティエリー(ヌービル選手)はウエットタイヤを多く持って行っていたんですけど、それ以外のクロスタイヤ(ウエットタイヤとスリックタイヤを数本ずつ装着すること。)で走ったドライバーのなかでは一番速いタイムで走れたので自信にもなりましたし、難しいコンディションでのタイムを求めていく際の経験になりました」と語るように、デイ3最終SSとなるSS14で3番手タイムをマーク。HYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM(ヒョンデ)でi20 N Rally1 HYBRIDを駆るテーム・スニネン/ミッコ・マルックラ組との激しいポジション争いを制して、デイ3は総合5番手を守り抜いた。
こうして天候が回復したデイ3の午後のループで抜群のパフォーマンスを見せた勝田貴元選手は29日のデイ4でも好タイムを連発。「日曜日(29日)には雨も降らずに完全ドライでしたが、インカットで土が出て湿ったりしていた部分があるなか、5番手争いをしていたこともあってソフトタイヤをメインに選択していました。朝の1本目は様子を見すぎていたんですけど、その後は2番手タイムから4番手タイムを出すことができました」と語るように、勝田貴元選手はデイ4最初のSS15こそ6番手タイムにとどまったが、SS16で3番手タイム、SS17で2番手タイム、SS18で4番手タイムをマーク。スニネン/マルックラ組とのポジション争いを制して総合5位入賞を果たした。
「5位に入賞できたので最低限の仕事はできたと思いますし、デイ4のドライコンディションでは、これくらいのリスクマネジメントで走れば、これくらいのタイムが出せるという部分で収穫もありました」と語る勝田貴元選手だが、その一方で「ウエットではどのセットアップで行くべきだったのか… という部分で課題が残りました」と付け加える。
とはいえ、「キャラクターは違いますが、いいフィーリングで終われたので、(次戦の)ラリージャパンにはいいかたちで入っていけると思います」と勝田貴元選手は手応えを語った。さらに「チャンピオンシップは決まっているので、結果を求めてプッシュしていきたい。最初から全開でプッシュしていきたいと思いますが、昨年は土曜日にペースダウンしていたので、しっかりと準備をしていきたい」とラリージャパンに向けて意気込んだ。
そして「昨年は3位で表彰台に上がっているので、今年は表彰台はもちろん、優勝争いに絡んでいきたい。長いラリーなので、常にトップ5のタイムを出していけばチャンスはあると思うのでいいかたちで終わらせたい」と語っているだけに11月16~19日に愛知県と岐阜県で開催される第13戦「フォーラムエイト・ラリージャパン」ではホームイベントで凱旋に挑む勝田貴元選手の走りに注目したい。
なお、このラリーはヒョンデのティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーテガ組が今季2勝目を獲得。一方、TGR-WRTのロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組対エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組によるドライバー部門とコ・ドライバー部門の王座争いは、SS11でのコースアウトにより総合31位に沈んだエバンス/マーティン組に対して、ロベンペラ/ハルットゥネン組が総合2位に入賞。「今年は昨年以上にタフでチャレンジでした。競争は厳しかったですが、自分たちは本当にいい仕事をしたと思います」と語るロバンペラ/ハルットゥネン組がラリージャパンを待たずして2季連続のチャンピオンに輝いた。
フォト/TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Media House レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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