最終戦決戦のSUPER GT、GT500の宮田莉朋選手が最年少で国内二冠!

レポート レース

2023年11月13日

2023 AUTOBACS SUPER GTの最終戦となるRound8は、11月3〜5日にモビリティリゾートもてぎにおいて“MOTEGI GT300km Race Grand FINAL”として開催。サクセスウェイト搭載はなく、各車両が本来持つ性能でのガチンコバトルが演じられることになったが、GT500クラスは終盤にトップに浮上したランキングトップの36号車 au TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋組)が、2023シーズン3勝目を挙げてチャンピオンを確定した。GT300クラスもランキングトップの52号車埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰組)が7位フィニッシュで念願の初チャンピオンを確定させた。

2023 AUTOBACS SUPER GT Round8
MOTEGI GT300km Race GRAND FINAL

開催日:2023年11月3~5日
開催地:モビリティリゾートもてぎ(栃木県茂木町)
主催:ホンダモビリティランド(株)、M.O.S.C.

 北関東の里山の木々は紅葉や黄葉で秋色に染まっていたが、この週末は11月とは思えない暖かさで、朝の最低気温は10℃から下らず、昼間も20℃を超える陽気となった。王座争いはGT500/300両クラス共このRound8で決定する。GT500はランキングトップの36号車スープラが2位以上でチャンピオンを確定。王座争いに残ったランキング2番手の3号車 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠組)、同3番手の16号車ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹組)は、優勝して36号車スープラの結果を待ちたいところだった。

 特にホンダ勢はこの一戦がNSX-GTの最後となる(2024シーズンはCIVIC TYPE R-GTに変更予定)こともあり、有終の美を飾りたいところ。またGT300クラスは2号車muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響組)がポールポジションを逃した時点で52号車スープラGTのチャンピオンが確定するという状況だった。

 3日の公式練習でトップタイムを奪ったのは3号車Zで、36号車スープラは3番手、16号車NSX-GTは6番手でタイム差も接近し、予選結果が楽しみとなった。GT300クラスでは2号車86がトップタイムをマーク。52号車スープラGTも3番手につけた。

予戦

 薄日が差す天候で気温23℃、路面温度29℃というコンディションの4日14時20分に始まった予選。GT500でPPを獲得したのは、Q1もトップ通過した3号車Zの千代選手で、これがGT500初のPP獲得だった。2番手は17号車 Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治組)で、36号車スープラは3番手につけた。しかし16号車NSX-GTはQ1で9番手にとどまり、Q2へ進出できず予選でのさらなる上位進出のチャンスを失った。

 GT300では2号車86がQ1、Q2共にトップタイムをマークし、堤選手が2戦連続のPP獲得でこの日の52号車スープラGTのチャンピオン確定を阻止。2番手は88号車JLOCランボルギーニGT3(小暮卓史/元嶋佑弥組)、3番手は65号車LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗組)で、52号車スープラGTは7番手ながら、10位以内でフィニッシュして1ポイントでも加算すれば、チャンピオン確定という状態となった。

GT500クラスのポールポジション(PP)を獲得したのは、3号車Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠組)。足元を支えるミシュランのGT500ラストレースに花を添えるべく、まずは好位置をつかみ取った。
チャンピオンの可能性を残すにはPP奪取が至上命題、という背水の陣で予選に臨んだ2号車muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響組)はプレッシャーに打ち勝ちQ1もQ2も制し、見事PPを獲得した。

GT500クラス決勝

 決勝を迎えた5日も朝から暖かく、早くから約3万人のファンがもてぎに詰めかけた。航空自衛隊松島基地に所属する、F-2戦闘機のウェルカムフライトでスタンドのボルテージが上がった後、20分間のウォームアップがスタート。そして各車がコースインしてグリッドが整った。

 薄日は差すものの黒い雲も見え気温23℃、路面温度26℃というコンディションの13時06分、300km(63周)の決勝がスタート。まずは予選5番手の23号車MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)が、タイヤの発熱の鈍い予選4番手の24号車リアライズコーポレーションADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平組)を2コーナーでかわして4番手に上げた。

 24号車Zはなかなかペースが上がらず後続もこれをかわせない状態となり、トップの4台が先行。特に3号車Zの千代選手は4周目までに2番手の17号車NSX-GTに3秒以上のリードを築き、独走状態に持ち込んだ。すると6周目ごろからメインストレートで雨が降り出し一時はまとまった雨となったが、13周目あたりにはそれも止みレースは落ち着きを取り戻した。

 一方、2位以上でチャンピオンが確定する36号車スープラの坪井選手は、23周目のV字コーナーで17号車NSX-GTをかわし2番手に順位を上げることに成功した。レースは1/3が経過して25周目にトップの3号車Zがピットイン。翌周には3号車Zに追従して36号車スープラ、17号車NSX-GTもピットイン。その次の周には23号車Zもピットインすると、17号車NSX-GTよりも前でコースに戻った。

 レースも半分が過ぎた41周で全車がピットインを済ませると、トップは3号車Zの高星選手で、13秒後方に36号車スープラの宮田選手、さらに11秒空けて23号車Zの松田選手が続き、それを1.6秒差で17号車NSX-GTの塚越選手が追っていた。終盤53周目の4コーナーで17号車NSX-GTが23号車Zをかわしで3番手を奪取。すると直後にまた雨が降り出した。

 59周目のS字コーナー2個目で、雨に足元をすくわれたトップの3号車Zがまさかのコースオフ! これで難なく36号車スープラがトップに浮上し、その座を守ったままフィニッシュ。チャンピオン確定を優勝という、最高のかたちで決めた。坪井選手は2年ぶり2回目のGT500チャンピオン確定で、宮田選手はSUPER GT初のチャンピオン確定、先日確定させたJAF全日本スーパーフォーミュラ選手権のチャンピオンとともに、最年少での国内トップカテゴリーの二冠確定となった。

 2位は23号車Z、3位は17号車NSX-GTで、3号車Zはコースに復帰したものの13位という結果に終わり、2年連続のランキング2位となった。また、3号車Zと23号車Zが履くミシュランタイヤは、この一戦をもってGT500から撤退となった。

メーカーの威信も賭けた三つ巴の王座争いとなったGT500の中で唯一の今季2勝を挙げて、チャンピオンに最も近いランキングトップでこの一戦を迎えた36号車 au TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋組)。2度の降雨にも翻弄されずに手堅い走りを披露して、2021シーズン以来のチャンピオンを確定させた。
23号車MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)は僚友の3号車のアクシデントもあり2位に上がると、ミシュランタイヤを表彰台まで運び、面目を保った(左)。フロントロウ獲得と、予選から好調ぶりを見せていたGT500の17号車 Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治組)だったが、順位をひとつ落として3位でフィニッシュ(右)。
GT500の表彰台には、左から2位に入った3号車Zのクインタレッリ選手と松田選手、優勝でチャンピオンを確定させた36号車スープラの宮田選手と坪井選手、3位を獲得した17号車NSX-GTの塚越選手と松下選手が登壇した。

GT300クラス決勝

 GT300はポールシッターの2号車86を駆る平良選手が逃げようとするも、2番手スタートの88号車ウラカンを操る元嶋選手が序盤の雨で急接近。しばしテール・トゥ・ノーズのバトルを展開したが、15周目の3コーナーで元嶋選手が平良選手をかわしてトップに立つと、その差を広げていった。

 レースが1/3を経過した21周目に、3位の65号車AMG GT3が早めのピットイン、タイヤ無交換でコースに戻った。25周目にはトップの88号車ウラカン、2号車86、そして3番手へ順位を上げていた18号車UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻組)がピットイン。このピットワークの結果、実質的なトップは88号車ウラカンで変わりはなかったが、実質的な2番手は65号車AMG GT3、同3位は2号車86で、その後ろには22周目にピットインを済ませた52号車スープラGTがつけることになった。

 31周目に暫定トップに立ったのは24番手スタートの56号車リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/名取鉄平組)で、レースの2/3近くを走った38周でピットイン。少ない燃料補給で作業を短時間で終わらせ、4番手でコースに戻った。

 49周目あたりで再び雨がコースを濡らし始め、雨量が増して来た。54周目に優勝を狙った2号車86の堤選手がピットインし、タイヤをウェットタイヤに交換。7番手でコースに戻って追い上げを見せようとしたが、雨は上がってしまいギャンブル失敗となった。

 レースは88号車ウラカンが逃げ切って優勝。富士スピードウェイでの第4戦で投入した、EVOモデルでの初優勝となった。第1戦以来の2位表彰台を獲得したのは65号車AMG GT。3位はこれが今季3回目の獲得となった、6号車DOBOT Audi R8 LMS(片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン組)だった。

 10位以内に入り1ポイント以上を獲得すれば戴冠だった52号車スープラGTは、7位フィニッシュでうれしい初のチャンピオンが確定。2017シーズンにディーラーチームとしてSUPER GTに参戦を始めて7季目にして頂点にたどり着いた。9位フィニッシュの2号車86はランキング2位、驚異の18台抜きを見せて6位を獲得した56号車GT-R GT3がランキング3位を確定させた。

フロントロウ獲得と、GT300の予選で光る速さを見せていた88号車JLOCランボルギーニGT3(小暮卓史/元嶋佑弥組)。決勝でもその速さは衰えることなく、コース上でトップを奪取するとそのままフィニッシュ。今季初優勝で有終の美を飾り、シーズンを締めくくった。
GT300の3番グリッドからスタートした65号車LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗組)は早めに1回目のピットインを済ますなど、積極的な作戦も功を奏したか、今季最上位タイの2位を獲得した(右)。予選は13番手と中団に沈んだ6号車DOBOT Audi R8 LMS(片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン組)だが、今季の決勝ではここまで2戦で3位に入るペースの良さを見せて順位を上げ、三度の3位獲得となった(右)。
ランキングトップに立ち、1ポイントでも獲得すればチャンピオンが確定する中、最終戦のRound8迎えた52号車埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰/野中誠太組)。PP獲得でのチャンピオン確定はならなかったものの、手堅い走りで予選順位を守り7位に入り、初の栄冠を確定させた。
GT300の表彰台には左から、2位獲得の蒲生選手と藤原選手、今季初優勝を挙げた元嶋選手と小暮選手、3位に入ったメリ選手と片山選手が上がった。
この一戦は今季限りでの引退表明していた立川祐路選手(38号車ZENT CERUMO GR Supra、左写真右)もラストレースを迎えて予選12番手、決勝は11位でフィニッシュ。最後の相棒を務めた石浦宏明選手から、花束が贈られた。

フォト/石原康、遠藤樹弥 レポート/皆越和也、JAFスポーツ編集部

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