178台集結の“西フェス”ジムカーナ、最激戦区のPN2は岡直樹スイフトが大金星!
2023年11月21日
2023シーズンの JMRC西日本ジムカーナフェスティバルが11月11~12日、愛知県岡崎市のキョウセイドライバーランドで開催された。「西フェス」の愛称で親しまれているこの一戦は、その名の通り近畿、中国、四国、九州の西日本4地区のドライバーたちが参加する競技会として1997シーズンに初開催され、2001シーズンから中部地区も加わり、以降は5地区のドライバーたちがしのぎを削る一大イベントとなっている。開催地区は毎シーズン持ち回りとなっており、中部での開催となった今季は、JAF中部ジムカーナ選手権の一戦やジムカーナ練習会などを数多く運営しているチームエムアイ(M-I)が主催した。
2023年JMRC西日本ジムカーナフェスティバルin中部
開催日:2023年11月11~12日
開催地:キョウセイドライバーランド(愛知県岡崎市)
主催:M-I
M-Iの前島孝光代表は「全日本選手権やJAFカップ以外で、他地区の選手が数多く集まる機会ってなかなかないと思います。なので、若い選手もどんどん参加して全日本の様な雰囲気を感じてもらいたいですね」。続けて、「開催するにあたって地域ぐるみで盛り上げ、次世代にも続けてもらいたいとの想いから岡崎市長を表敬訪問し、岡崎市公認イベントとして開催することができました」と開催に向けての想いを語った前島氏。その甲斐あって、エントリーは全クラス合わせて178台と大盛況。開会式は冒頭、大会名誉会長の中根康浩岡崎市長が祝辞を述べ、華々しくとり行われた。
舞台となったキョウセイは、享成自動車学校が運営する施設で、コースの雰囲気はまさに自動車教習所そのもの。広大な敷地を有し、安全運転研修や車両走行テストなどにも活用されており、過去にはJAF全日本ジムカーナ選手権で数々の名勝負が繰り広げられたコース。近年、全日本は行われていないが、中部地区戦やJMRC中部ジムカーナ東海シリーズの舞台になる他、キョウセイジムカーナシリーズや練習会も頻繁に行われており、中部のドライバーには馴染み深いコースだ。
PN2クラス
この一戦で最多、36台もの大量エントリーとなったPN2クラス。その1本目、1分20秒213のトップタイムをマークしたのは、中部地区戦のPN2クラスでランキング3番手の島倉正利選手。2番手には東海シリーズのRPN3クラスで4番手の八田晴道選手が1分20秒570で続き、3番手以下の上位陣は1分21秒台がひしめき合う僅差で折り返す。
そして勝負の2本目。1本目はパイロンペナルティで下位に沈んでいた、東海シリーズのRPN1クラスで2番手のKeita選手が島倉選手のタイムを0.049秒上回ると、さらに八田選手はKeita選手を0.121秒更新し、トップ争いは1分20秒台前半のせめぎ合いとなる。その均衡を破ったのが、クラスも折り返しに差し掛かった中盤ゼッケン、マツダ・ロードスター中心のこのクラスで少数派のZC32S型スズキ・スイフトスポーツを駆る、東海シリーズRPN1のチャンピオンを確定させている岡直樹選手だった。
岡選手は1本目でパイロンペナルティを喫していたが、叩き出したタイムは驚異の1分18秒792。ここで一気にハードルが上がったPN2。後半ゼッケンの動向に注目だが、1分18秒台はおろか1分20秒を切るドライバーも現れずに進行。かろうじて1本目トップの島倉選手が1分19秒台に突入するもパイロンペナルティで万事休す。この結果、岡選手が圧倒的なタイムで激戦のPN2を制した。
「第1ヒートはサイドの効きが甘かったり、パイロンペナルティでタイムが残せなかったのですが、第2ヒートは別の競技会の第1ヒートという気持ちで、しっかり切り替える事ができたのが良かったと思います」と勝因を語った岡選手。23歳の若手ドライバーが少数派のスイフトで大金星を上げた。
PN3クラス
排気量1600ccを超える二輪駆動のPN車両で争われるPN3クラス。第1ヒートでトップタイムをマークしたのはZC33S型スイフトを操る田村直選手。参戦した20台中半数近い8台がスイフトだが、田村選手を筆頭にトップ6は4台のスイフトが占めてライバルたちを圧倒した。
第2ヒートになっても田村選手のタイムは更新されず、田村選手自身もパイロンタッチを喫してしまい、第1ヒートのタイムで後続を待つ。膠着状態のなか競技は進行していくが、ラスト4台、GR86の磯村良二選手が中間計測では田村選手を約0.2秒上回るタイムで通過、しかしゴールタイムは0.17秒及ばず2番手どまり。そしてラストゼッケン、第1ヒートは2番手につけていたGR86を駆る中部PN3クラスチャンピオン確定の鈴木勇一郎選手は痛恨のタイムダウンに終わり、第1ヒートのタイムを守り切った田村選手が優勝となった。
「今シーズンは競技を休んでいて、西フェスに出るために中部地区戦の最終戦だけ出ました。第1ヒートは確実にタイムを残す走りに徹して、それなりの走りができたので、第2ヒートは思い切って攻めようと思ったら裏目に出てしまいました(笑)」と語った田村選手は、2022シーズンの中部PN2チャンピオン。ブランクを感じさせない走りでこのクラスを制した。
PN4クラス
ロードスターRFとZN6/ZC6型トヨタ86/スバルBRZの後輪駆動対決となったPN4クラス。第1ヒートで1分23秒327のトップタイムをマークしたのは、2023年JAF中国ジムカーナ選手権PN3クラスのチャンピオン確定済の内田敦選手だが、その内田選手から7番手の選手までのタイム差が僅か0.5秒という接戦で折り返す。
第2ヒートになると、同じ中国の田伏雅樹選手が内田選手のタイムを0.05秒更新してトップが入れ替わると、その後は中部の鈴木省三選手が田伏選手を約0.3秒更新、さらに近畿の胸元貴大選手が鈴木選手を0.061秒更新と、目まぐるしくトップタイムが更新されていく。そして迎えたラストゼッケン内田選手。この時点で順位は4番手まで落ちていたが、内田選手は中間計測をクラスで唯一50秒を切るタイムで通過。そのアドバンテージを活かし、ゴールタイムは胸元選手を0.361秒上回り、逆転で優勝を決めた。
「キョウセイは初走行です。中国地区にはない広くて楽しいコースですね、ただ、自分にとっては苦手要素が多く、何とか合わせて勝つことができました。」と笑顔で語った内田選手。初コースで西フェス初優勝を飾った。
PN5クラス
PN1~PN4に該当しないPN車両という規定により4WDで争われ、GRヤリスが大勢を占めたPN5クラス。第1ヒートをトップで折り返したのはクラス唯一、三菱・ランサーエボリューションXで参戦した、2023年JAF近畿ジムカーナ選手権PN5クラスチャンピオンを確定させている西川佳廣選手。しかし生タイムではパイロンタッチでペナルティを喫しているものの、中部PN5クラスチャンピオン確定済の高木健司選手が約0.3秒上回っており、第2ヒートに注目となった。
その第2ヒートになると、第1ヒートで2番手につけていた中部PN5で2番手の杉本季優選手が1秒近くタイムアップを果たすも、西川選手には0.149秒届かず順位変わらず。そして更なるタイムアップを狙いたい西川選手だったが約0.02秒のタイムダウンに終わり、第1ヒートのタイムでラストゼッケン高木選手の走りを見守る。第1ヒートのタイムを出すことが出来れば逆転となる高木選手の中間計測地点までは、自身の第1ヒートとほぼ同タイムで通過。しかし後半区間が伸び悩み3番手タイムでフィニッシュ、西川選手が逃げ切って優勝となった。
ATクラス
ミッションがオートマチックやデュアルクラッチ、CVTの車両が競ったATクラスは、ポルシェ・ケイマンを駆る段上泰之選手が、そのパワーを遺憾なく発揮し、第1ヒートからトップタイムをマーク。第2ヒートでも自己タイムを約1.7秒更新し圧勝となった。2位にはフォルクスワーゲン・ゴルフGTIを操る樋口智哉選手、そして3位には第1ヒート4番手から逆転で妖怪J清本選手のホンダ・フィットが入賞した。
B1クラス
1500cc以下のB車両及び軽自動車のB車両で争われたB1クラスは、トップから上位4台が0.1秒以内という超接戦となった。第2ヒート開始早々、クラスファーストゼッケンでダイハツ・カプチーノを駆る、2023年JAF九州ジムカーナ選手権B1クラスのチャンピオン確定済の池武俊選手が1分24秒020をマークして、トヨタ・ヴィッツを操る近畿B1クラス3番手の玉木航選手が第1ヒートで刻んだトップタイムを更新、勝負は完全に仕切り直しとなった。
2番目に登場した、2023年JMRC近畿ジムカーナミドルシリーズBR1クラス2番手の大高直郁選手が駆るカプチーノはトップに0.03秒差まで迫る2番手タイム。更に玉木選手も好タイムでゴールするが0.036秒遅れでトップ奪還ならず。
ここまでギリギリのところでトップを保持していた池選手。しかし、勝負を決めたのは第1ヒートはパイロンペナルティで沈んでいた、ラストゼッケンで近畿B1の2番手、よこ山弘之選手だった。池選手とのダブルエントリーで走行間隔を空けてのスタートとなったが、中間計測地点をトップで通過。そしてゴールタイムは池選手のタイムを0.045秒更新し、逆転優勝を飾った。
「鈴鹿や名阪は得意なのですが、キョウセイのような幅が広すぎるコースや、パイロンセクションは苦手なので、とにかく前半セクションでタイムを稼ぐ事と、タイヤの縦のトラクションを活かす事だけ意識して走りました」と勝因を語った、よこ山選手が僅差のバトルを制した。
B2クラス
前輪駆動のB車両が対象のB2クラスは、東海シリーズ上位陣の争いとなった。第1ヒートでトップタイムをマークしたのは、東海シリーズRA-1クラスのチャンピオンを確定済の岡田和規選手。2番手には東海シリーズCRA-1クラスでチャンピオンを確定させて、この一戦の開会式で選手宣誓の大役を担った森下弘之選手が約1秒差でつけた。
第2ヒートになると、東海シリーズRA-1で2番手の土岐武也選手が1分19秒904でトップタイムを更新。続く岡田選手はタイムダウンを喫してしまい、トップに返り咲く事ができずにフィニッシュとなるが、次の森下選手は外周で大きく姿勢を乱すも、気迫の走りで土岐選手を0.162秒上回るタイムを叩き出す。後半ゼッケンに入っても森下選手のタイムは更新されず、第2ヒートでの逆転で森下選手が優勝となった。
B3クラス
後輪駆動のB車両で争われたB3クラス。第1ヒートは2023年JAF四国ジムカーナ選手権R3クラスチャンピオン確定の仙波秀剛選手がトップで折り返す。第2ヒートになると、クラスで2番目にスタートした東海シリーズRA2クラス6番手の坂本竜男選手が第1ヒートの自己タイムを約1.6秒更新し、トップタイムを塗り替える。続いてスタートを切った東海シリーズRA2で5番手の石川智祥選手も、自己タイムを2秒以上更新し、坂本選手を約1.1秒上回りトップに立つ。
完全な仕切り直しとなったこのクラスは、この後も大幅なタイムアップ合戦が繰り広げられるかと思われた矢先、懸念していた雨が降り出してしまう。幸い大雨にはならず、中間計測では石川選手を上回る選手も多々見受けられたが、後半区間で伸び悩み、トップが更新されない。
しかしこの状況を打ち破ったのがラストゼッケンの仙波選手。中間計測で石川選手を約1秒上回るとそのアドバンテージを活かして石川選手を0.183秒抑えてトップ更新。厳しい状況ながら、最後に見事な逆転勝利をおさめた。
B4クラス
4WDのB車両で争われるB4クラスは、PN5とは逆にランエボが多数派のなか、GRヤリスで孤軍奮闘の九州地区戦B2クラス4番手の堂本直史選手が、第1ヒートでクラス唯一の1分20秒を切る、1分19秒995のトップタイムをマークする。
このクラスも第2ヒートは雨模様となったが、それでも路面はタイムアップ可能な状況で、各選手続々と自己タイムを更新する。しかし1分20秒を切る選手は現れず、堂本選手に至ってはタイムダウンを喫してしまい、ラストゼッケン、近畿BR4クラス2番手の日野良一選手のタイムを待つ。
その日野選手は、自己タイムを約4秒更新する走りを魅せるが1分20秒の壁は高く、約0.2秒及ばず2位どまり。堂本選手が第1ヒートのタイムを守り切り優勝となった。
BSC1クラス
1600cc以下で2WDのB・SC・SAX車両が競ったBSC1クラスは、第1ヒートから1分19秒台の攻防戦が繰り広げられた。その第1ヒートをトップで折り返したのが、中部SA1クラス6番手の酒井昭選手でタイムは1分19秒442。
第2ヒートになると、第1ヒートで3番手に着けていた東海シリーズSA1クラスチャンピオンを確定させている早坂怜選手が、酒井選手を約0.2秒上回るタイムを出すも2つのパイロンペナルティで幻に。そして酒井選手はタイムダウンで自己タイムを更新する事が出来ず、後続のタイムを待つ事になった。
そのチャンスを逃さなかったのが次ゼッケン、中部SA1で5番手の小木曽弘之選手。中間計測では第1ヒートの酒井選手から約0.2秒の遅れをとるが、後半区間で巻き返し、ゴールタイムでは0.267秒上回る1分19秒175を叩き出す。そして最終ゼッケン近畿SB1クラスチャンピオン確定済の大原秀樹選手は、中間計測では小木曽選手を凌ぐタイムを出すものの、この時点で既にパイロンペナルティを受けており逆転は絶望的。ゴールタイムも1分20秒台に終わり、小木曽選手が第2ヒートの逆転でこのクラスを制した。
BSC2クラス
1600ccを超える前輪駆動のB・SC・SAX車両で争われたBSC2クラスは、主力車種のDC2型ホンダ・インテグラを駆る大石博之選手が第1ヒートでトップタイムをマーク。2番手には同じDC2型インテグラの最上佳樹選手。そして3番手にはZC33S型スイフトの牧田祐輔選手と、いずれも中部の選手が1分17秒台で上位を占めた。
第2ヒートでは牧田選手がタイムダウン、大石選手は中間計測でもトップタイムを更新し、ゴールタイムは1分16秒台の好タイムを刻むもパイロンペナルティ。ふたりは第1ヒートのタイムで後続の結果待ちとなった。
その隙を突きたかった最上選手だが、中間計測で既に大石選手から約1秒遅れ、ゴールタイムは1分17秒台に入れたものの、やはりタイムダウンで2番手は変わらず。そして、このクラスでは数少ない近畿勢として一矢報いたかった、ラストゼッケンの近畿BR2クラスのチャンピオン確定済の張靖遠選手はDC2型インテグラで1分20秒台と振るわず。大石選手が第1ヒートのタイムで逃げ切った。
BSC3クラス
1600ccを超える後輪駆動のB・SC・SAX車両が集ったBSC3クラスは第1ヒート、中部SA3クラス3番手でホンダS2000を駆る冨田好輝選手がクラス唯一の1分18秒台を刻みトップで折り返す。
第2ヒートになると、クラスファーストゼッケンで第1ヒートでは2番手につけていた、沖縄から参戦の比嘉誠選手が、冨田選手には及ばなかったものの1分18秒台をマークするも順位はそのまま。その後は1分18秒台を刻む選手は現れず、冨田選手もタイムダウンを喫して第1ヒートのタイムで後続を待つ事になった。
その冨田選手の中間タイムを大きく上回ったのが、ラストゼッケン小澤忠司選手。約1秒のアドバンテージを持って後半区間へと突入したが、ゴールタイムは、1分18秒台には入れたものの、0.362秒届かず2位どまりで、冨田選手が優勝となった。
BSC4クラス
4WDのB・SC・SAX車両で争われたBSC4クラスは中部勢のベテラン、岡部隆市選手が第1ヒートからトップタイムを奪うと、第2ヒートではこの一戦全体でも2位のタイムとなる1分16秒697まで更新して圧勝。
「今年は全日本では車両トラブルや、タイヤの選択ミスで成績を残せませんでしたが、最後の西フェスで勝てて良かったです。今回は路面とタイヤのパフォーマンスがマッチして、タイム的にも納得のいく走りができました」と今季を振り返ってくれた。
Dクラス
Dクラスは、佐藤宗嗣選手が第1ヒートから安定した走りで1分15秒台のトップタイムをマーク。第2ヒートはタイムダウンに終わるも、D車両の面目躍如を果たすこの一戦の全体トップタイムで優勝。
佐藤選手が「若手にタイヤウォーマーをやってもらったので、自分はゼンカイで攻める事ができました」と感謝を語った、Wエントリーで佐藤選手を優勝に導いた20代の岸正隆選手は4位入賞。2位は五十嵐豊光選手、3位には四国から参戦の西村修一選手が入った。
Lクラス
今回は女性ドライバーを対象に、参戦したクラスのトップタイムと自身のベストタイムの差で順位を決める、Lクラスが設定された。優勝はPN4でトップとの差が1.154秒だった、かつこ選手。2位は第2ヒートのパイロンペナルティが悔やまれたが、同じくPN4の佐伯希選手で、1.258秒差。そしてB2で5位入賞を果たした鈴木利英子選手が、2.621秒差で3位となった。
フォト/友田宏之 レポート/友田宏之、JAFスポーツ編集部
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