栄えあるJAFカップは、単走優勝の藤野秀之選手、追走優勝の松山北斗選手の手に!

レポート ドリフト

2023年11月22日

D1グランプリ2023年シリーズの最終ラウンドは、5年ぶり開催となるお台場特設会場。11月10~12日に第9戦と第10戦の連続開催で、最終戦の第10戦はD1グランプリ初のJAFカップがかけられて行われた。第8戦終了の時点でシリーズランキング5番手だった藤野秀之選手が第9戦で優勝してランキング2番手に浮上すると、第10戦では単走優勝して単走シリーズチャンピオンを確定。続く追走ベスト16に勝利した時点でシリーズチャンピオンも確定させ、トヨタ・GR86による初のタイトルホルダーとなった。

2023 D1グランプリシリーズ 第9戦 お台場大会
JAFカップオールジャパン・2023 D1グランプリシリーズ 第10戦 お台場大会
「2023 TOKYO DRIFT」

開催日:2023年11月10~12日
開催地:お台場特設会場(東京都江東区)
主催:株式会社サンプロス

 D1GP最終ラウンドの舞台となったのは、東京都江東区の青海地区NOP街区に設けられたお台場特設会場。滋賀県米原市の奥伊吹モーターパークに似たレイアウトが採られ、観客席がコースを囲むコロシアムのような会場に多くの観客が詰めかけた。

 今大会の進入速度はトップグループで110km/h程度。路面状況はあまり良いとは言えず、さらに第9戦の予選時までウェットコンディションということもあって攻略に苦戦する選手が多く、ポイントランキング的にも波乱含みのスタートとなった。

2018年の最終戦以来となるお台場特設会場。普段は青海臨時駐車場として利用されるスペースが、D1グランプリの会場へと様変わりした。
フラットなサーキットとは異なる凹凸のある路面コンディションに加え、第9戦では降雨の影響もあり、選手たちを苦しめた。

第9戦 単走&追走

 石川隼也選手と松川和也選手を擁する広島トヨタ team DROO-Pは、ダンロップタイヤ&2GRエンジンでここまでパワーとタイヤのグリップで苦労している感はあったが、コンパクトなお台場のレイアウトが有利に働いたのか、Aグループ出走の石川選手が99.16点を出すと、以降それを超える選手がいないまま単走を制した。

 その石川選手は、表彰式でも「単走の得点が出て、勝負権のあるラウンドだと感じ、自信を持って追走に臨めました」とコメントを残す。この後の追走でも3位獲得と、D1GP参戦で自身最上位を記録することとなる。

2018年のD1ライツでシリーズチャンピオンを獲得し、今年は名門チーム「ドルーピー」のドライバーとしてD1グランプリに参戦した石川隼也選手。単走優勝はこれが初だ。タイヤはディレッツァβ02の285/35-18を履く。
エンジンはD1GPで主流となっている2JZではなく、クラウンの2GRをツインターボ化して搭載。最高出力は900馬力と言われているが、高速ラウンドでは2JZ改3.4Lや3.6Lを相手に苦戦していたようだ。

 シリーズランキングトップの中村直樹選手(TEAM VALINO × N-style)は単走13位で追走に進出し、ベスト16でランキング2番手の蕎麦切広大選手(SHIBATIRE RACING)、ベスト8でランキング4番手の松山北斗選手(+LenoRacing watanabe)、準決勝で単走1位の石川選手を撃破して決勝に進出。シリーズチャンピオン獲得への道を自力で切り広げる。

 対する藤野秀之選手(TEAM TOYO TIRES DRIFT)は単走3位から、対戦相手のトラブルにより実力100%発揮することなく勝ち進む幸運さ。これまで中村選手との対戦は負け越していたが「今回はいつもより勝つんだというスイッチが強く入った」と、相手のミスを冷静に見極めての勝利となった。

 準決勝あたりで日没ナイターとなった会場に「もう年だからゾーンが見えなくて」と困惑していた藤野選手だったが、先行でゾーンはずし&後追いでコースアウトしたのは中村選手の方だった。

第6戦エビスで5年ぶりの優勝を果たした藤野秀之選手。今大会はランキング5番手からタイトルを狙う。
藤野選手はこの第9戦の追走優勝でシリーズランキング2番手に浮上。逆転チャンピオンに望みをつないだ。
前戦オートポリスでは練習走行中のエンジンブローにより予選に出走できずリタイア。今回はニューエンジン(仕様は同じ2JZ改3.4L)を搭載してきた。タイヤはトーヨープロクセスR888Rを装着。
第9戦の優勝は藤野選手、2位は中村直樹選手、3位は石川選手、4位は北岡裕輔選手、5位は松山北斗選手、6位は目桑宏次郎選手、7位は田中省己選手、8位は秋葉瑠世選手、9位は蕎麦切広大選手、10位は末永正雄選手。

TOKYO DRIFT レディース選手デモラン

単走と追走の間には、レディース選手を代表してD1GPの久保川澄花選手、下田紗弥加選手、D1ライツの玉城詩菜選手、粟野如月選手、そして今後の活躍に注目の深田一希選手、三品和希選手が、華麗なデモランで魅せた。

第10戦 単走&追走

 予選は曇りから雨になり、出走グループごとにウェット係数が変わる混戦模様。得点は前日と比べて大きく落ちた。その中で最初のAグループで出生した中村選手がまさかの予選落ち。これでシリーズ争いの行方は藤野選手、松山選手、田中省己選手(SHIBATIRE RACING SEIMI STYLE D)の順位次第となった。

 蕎麦切選手も予想外の予選不通過でチャンピオン争いから脱落する。次第に乾いてくる難しい路面状況下で、最後のグループで出走した藤野選手が98.46をマークするとこれが最高得点となり単走優勝。蕎麦切選手を抜いてシリーズでの単走チャンプを確定させた。

1本目は全体的に得点が伸び悩んだ選手が多かった中、振りの速度を意識したという藤野選手が2本目で98.46点を叩き出し、単走優勝を決めた。
現在のD1GPではタイヤウォーマーの使用も珍しくない。ただ、出走までの待機時間が読めないため(クラッシュやトラブル発生による待機)、レースのようにベストな温度でスタートできる可能性は低い。

 すっかりドライ路面となった決勝、前日優勝の藤野選手がベスト16で勝利して早々にシリーズチャンピオンを確定させ、そのまま安定したドリフトで決勝まで勝ち上がっていく。このまますべてのメダルを獲得すると思われた。

 一方で、GRスープラの松山選手が他を寄せつけない速さを見せて決勝に進出。スタートダッシュの速さ、審査席前以降のセクター4の速さは圧倒的で、さすがの藤野選手も詰めきれなかった。結果、先行時のDOSS得点の高さで、松山選手が2022年第5戦の初優勝から1年ぶりの2勝目を挙げ、シリーズランキング2位に浮上。

 トップチームが「GRスープラの加速力に勝てる気がしない。縦に進むトラクション性能は驚異」と口を揃えて言うマシンの完成度は、2024年も台風の目となるに違いない。

シリーズランキングも2022年の7位から大きな飛躍を遂げた松山選手が第10戦の追走で優勝。
D1GPを戦うにあたり、もっとも進入スピードにこだわっており、「勝つことは重要だけど、誰よりも速いドリフトに挑戦して勝ちたい」とお台場ラウンドでズバ抜けたスピードをマークしていた。
特徴的なリアの垂直ウイングは、振り出したリアを止める効果を狙って装着。実際にその効果を感じているそうだ。ちなみに松山選手はほかの選手のように走行ごとのエア圧変化をあまり気にしない。ウォームアップでチェックしたら2本走行をノーチェックで走り切るタイプだ。
第10戦の優勝は松山選手、2位は藤野選手、3位は松井有紀夫選手、4位は秋葉選手、5位は川畑真人選手、6位は北岡選手、7位はDaychapon Toyingcharoen選手、8位は末永正雄選手、9位は村上満選手、10位は田中選手。

 なおこの最終戦は「JAFカップオールジャパン・D1グランプリシリーズ第10戦」と銘打つとおり、JAFカップのタイトルが付与される。単走および追走の優勝者にJAFカップが贈呈され、単走は藤野選手に、追走は松山選手にカップが授与された。

FIAドリフティングコミッションの村田浩一プレジデントよりJAFカップが贈呈された、第10戦で単走優勝の藤野選手。
第10戦で追走優勝の松山選手も、FIAドリフティングコミッションの村田プレジデントよりJAFカップを受け取りサムズアップ。
オートテスト・ドリフト振興活性化作業部会の座長であり、今大会では審査委員長を務めた小西俊嗣氏が、シリーズチャンピオンの藤野選手に賞金ボードを手渡した。

 藤野選手はトヨタ・GR86を投入して2年、2017年に日産・180SXでシリーズチャンピオンを獲得して以来2度目のシリーズチャンピオンを確定させた。今季は第6戦エビスで5年ぶりに優勝するも、第8戦オートポリスではエンジントラブルによりリタイア。

 一時はシリーズチャンピオン争いで3番手から5番手に転落したが、お台場ラウンドはチャンピオン獲得経験の多いスポッターを特別に召喚して万全の体制で臨んだ。単走、追走とそれぞれ勝利の末、ポイント争いでもトップ奪還となった。

藤野選手は最初のトヨタ・GR86チャンピオンという、歴史に残る記録も手に入れたことになる。

注目ドライバー・ダチャポン・トーイングチャロン選手

通称「ポン」ことダチャポン・トーイングチャロン選手(TEAM VERTEX × NEXZTER × D2D)は予選14位から決勝7位でシリーズランキング17位。タイの有名ドリフトドライバーで、これまでD1GPにもっとも多く参戦した外国人ドライバーだ。D1タイシリーズの運営にも携わっている。ドリフト競技はタイでも盛んで今回はトーイングチャロン選手のほかにもタイから3名のエントリーがあった。

フォト/藤原伸一郎(SKILLD)、大野洋介、JAFスポーツ編集部 レポート/川崎隆介(SKILLD)、JAFスポーツ編集部

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