晴天の中開催されるウェットジムカーナ! ウィメンズクラスには近畿からのエントリーを集め17名が参戦

レポート ジムカーナ JAFWIM

2023年12月12日

富士スピードウェイの駐車場を舞台に転戦するJMRC神奈川ジムカーナシリーズ。2023年は全5戦で争われてきたが、今回が最終戦となる。神奈川シリーズの代名詞といえば散水車によるウェット路面ジムカーナ。晴れていてもウェット路面でマシンコントロールを習得できるとあり、同シリーズには固定のファンがしっかりいるのだ。

2023JMRC神奈川ジムカーナシリーズ 第5戦
フレッシュマン&ビギナーズジムカーナin富士スピードウェイ

開催日:2023年11月26日
開催地:富士スピードウェイCGパーク(静岡県小山町)
主催:io

 散水によるウェット路面でのジムカーナは、当初駐車場にタイヤ痕を残さないための処置であったが、エントラントからはタイヤも減らず、散水車の走った通りに走ればミスコースしにくいメリットもあるということで人気を博している。

 特に多くのエントラントから聞かれた声は走行環境の見極めについてだった。ダートトライアルでは当たり前のようになっているが、イコールコンディションにこだわるエントラントが多いジムカーナにおいては意外な声も挙がる。

「1本目と2本目で散水量が変わったりするので、同じグリップ感で走れないのが面白いんですよね」と話す選手もいた。さらに、この最終戦では全国からウィメンズドライバーが遠征してやってくる神LBクラスを設け、ウィメンズドライバーたちの交流の場にもなっている。

 さらに今大会では会場を半分に分割し、入門者向け練習会を開催。まだ公認イベントに参戦していないドライバーに、すぐ近くで県シリーズを観戦してもらいたいという主催者の配慮から実現した。「参加しやすい県戦」を目標に開催しているだけあり、各所に創意と工夫が詰まっている。

 他にも同シリーズは特別クラスを設置。3名を超えるエントラントが集まればオリジナルクラスを設けることができるのだ。今大会では日産自動車に関係する有志が集まったニッサン・ニスモクラスには9台のエントラントが集まって開催に至った。

JMRC神奈川ジムカーナシリーズ名物の散水車。走行ラインをトレースしながら散水する。
県シリーズが開催されている横ではJAF公認イベントに参戦したことのないドライバーが練習していた。

 JMRC神奈川ジムカーナシリーズ最終戦は地区戦にも参戦する梅澤高志氏率いるファクトリーイオレーシングチーム(io)が主催。入門カテゴリーということを考慮し、午前中は練習会に充て、午後から競技を開始する独特なタイムスケジュールを採用している。基本コース図は午前の練習と同一のものになるが、パイロンの配置が若干変更される。この変更がまた曲者だとエントラントは話す。

 このコース制作を担当した梅澤氏は「このコースは全体的にバンクがあり、2つの大きな円があるんですが、ここで進入速度が速すぎるとドンドン外に出て行ってしまう設定です。午前中のそのイメージを持ったまま走ると、午後の大会に臨むとハマっちゃうんですよね」

「また、JMRC神奈川ジムカーナシリーズとして独自に設けている神クラスは、ミドルや地区戦で良い成績を残した人でも『楽しんで走れるクラスを設置して欲しい』という声があったので創設したクラスです。車両規定の変更などで上の大会を走れなくなってしまった人にもジムカーナを楽しむ場になっていると思います」と話す。そんな最終戦は県シリーズとしては異例の73名が参戦して開催された。

シンプルでありながら基本操作を必要とするセクションが散りばめられたコース。

神LBクラス

 17名が参戦した神LBクラス。「神」クラスはクローズド部門(競技ライセンス不要とタイヤ制限なし)のクラスだ。昨年、JAFカップウィナーでもある東方紀美恵選手の声掛けで一気に参加台数が集まったこのクラス。近畿地区からの参戦もあり、まさに全国屈指の女性ドライバーのための大会となりつつある。前日から前夜祭に参加するドライバーも多く、女性ドライバーたちの交流の場にもなっているが、本番ともなれば競技者としての闘争本能が燃え始める。

 近畿地区を代表するかつこ選手を筆頭に、昨年同大会2位に入った渡邉千尋選手、もちろん発起人の東方選手にも注目が集まった。

 1本目は散水されたばかりのウェット路面に苦しむ後輪駆動勢だったが、貫禄の走りでトップタイムをマークしたのはかつこ選手。「昨年の4位という結果を反省して、今回はオーバーオールを狙いにやってきました!」という言葉の通り、前輪駆動のスズキ・スイフトを駆る山口千尋選手を1秒以上引き離すトップタイムで折り返す。

 2本目になると、主催者の気まぐれな散水はターンセクションのみに行われ、外周は完全ドライコンディション。ターンセクションもこの季節には珍しく上昇した気温でどんどんと乾くダンプコンディションに。そんな路面変化にも柔軟に対応したのはやはりかつこ選手。自身の1本目を2秒以上更新する見事な走り。オーバーオールにはわずかに届かず全体2番手のタイムをマークし、神LBを制してみせた。

「昨年、負けているので結構反省しまして、ベストの体制で臨みました。タイヤ的にもダンロップのβ11だったんで自分に合っていると思います。元々FF人間だったので、やっとFRに慣れてきた感じですね。来年は近畿地区の地区戦で心機一転、women'sクラスに参戦しようと思います」とかつこ選手。来年もその活躍に期待がかかる。

神LBクラス優勝はかつこ選手(輸出酢入手手段♪かつ!こ86)。
2位は山口千尋選手(お買い物走り嫁スイフト)、3位は東方紀美恵選手(リジットαミシュランBRZ)。
神LBクラスの表彰式。左から2位の山口選手、1位のかつこ選手、3位の東方選手、4位の木下由美選手、5位の吉澤美枝選手。
神LBクラスに参戦した女性ドライバーの皆さん。

PN1クラス

 ヤリスカップにも参戦するドライバーが集まるこのクラス。1本目からトップタイムを記録したのは香坂学博選手。「元々フラフラしやすい車両なので、それをコントロールしながら走るのが面白いですね。昨日も富士でヤリスカップに出場していたので、無事にこの大会に出れて良かったです。来年もレースをやりながらジムカーナも楽しみたいと思います」と香坂選手。5戦全勝でシリーズチャンピオンも手にした。

PN1クラス1位は香坂学博選手(足柄上Yaris)。

PN2クラス

 ここまで4戦中3勝を挙げている畑茂選手がすでにチャンピオンを確定しているPN2クラス。今回の畑選手はグリップの低い路面でのサイドターンを諦め、着実にグリップでターンを回ったのが奏功したか。「1本目は路面の濡れで踏めませんでした。2本目は乾いてくれたんで、ちゃんと踏めたのが勝因ですね。ターンにまだ課題があるので、外周で稼いだ感じです」と畑選手。来年は中部地区の東海シリーズで頑張りたいと語ってくれた。

PN2クラス1位は畑茂選手(ユニコーン♨ロードスター)。

PN3クラス

 トヨタ・86やスバル・BRZが中心となるPN3クラスだが、ウェット路面では前輪駆動勢が俄然有利。シリーズを牽引するのは日産・ノートニスモを駆る田尾光規選手。しかし、その田尾選手がマシントラブルで戦線離脱。1本目にトップに立ったのは、一人58秒台をマークしたトヨタ・86(ZN6)をドライブする浅野敬太選手だった。

 しかし、散水の加減で勝負は完全に2本目勝負。その中でしっかりとタイムを刻んできたのは、1本目パイロンタッチで沈んでしまった加藤貴弘選手で、2本目で逆転優勝。ホンダ・フィット(GK5)での初優勝を遂げた。「2本目はとても緊張したんですが優勝できて良かったです。今年からPN3クラスに変更、この1勝だけを目標にあがいてきました。この優勝はio代表の梅澤さんに捧げたいと思います(笑)」と加藤選手。

PN3クラス優勝は加藤貴弘選手(大磯油工房 iO YH FIT)。
PN3クラスの表彰式。左から2位の田尾光規選手、1位の加藤選手。

PN4クラス

PN4クラス1位は金子徹選手(YHプロμスバル江田西店WRX)。

PN5クラス

 ファクトリーイオ対決となったこのクラス。優勝したのは栗林宏之選手。「今年、本当に1勝を目標にやってきたんですが、向選手という手ごわい相手が出てきて……。必死に練習してきて良かったです」と喜びをあらわにした。

PN5クラス優勝は栗林宏之選手(iONUTECシバシビック)。
PN5クラスの表彰式。左から2位の向創選手、1位の栗林選手。

PN6クラス

PN6クラス1位は吉田雄一選手(ドラシャブレイクガラムスイフト)。

PN7クラス

 3台のトヨタ・GRヤリスが参戦したPN7クラス。優勝したのは見事逆転優勝を決めた若林千昭選手。「今年はドライブシャフトを2本も粉砕してしまい、なおかつ先日もトラブルに巻き込まれて散々な1年でしたが、なんとか今年も走り切ることができました。これもioの梅澤さんのおかげだと思っています」とコメントを残した。

PN7クラス1位は若林千昭選手(From1iOμBPSヤリス)。

ニッサン・ニスモクラス

 日産車がずらりと揃うこのクラス。日産に勤務する社員サークルを中心に結成されたクローズドクラスだ。そんな中、しっかりとタイムを残したのは日産・シルビアをドライブする坂田敏男選手。「ニッサン・ニスモクラスなのでマツダ・ロードスターに負けなくて良かったです。そして日産・スカイラインGT-Rに勝てたのがすごくうれしいです。数年ぶりのジムカーナで、今年2回目の参戦です。最初、参加したときはメタメタだったので、ちょっと心配したんですがきちんと走れました」と坂田選手。

ニッサン・ニスモクラス優勝は坂田敏男選手(日産シルビア)。
ニッサン・ニスモクラスの表彰式。左から2位の今西敦選手、1位の坂田選手、3位の廣田健選手。

NTF2クラス

 軽量&クイックな特性を活かして見事オーバーオールタイムを勝ちとったのはホンダ・シティ(GA2)を駆る宮下敬選手。NTF2クラスでの参戦だ。しかも、この大会がラストラン。3年間JMRC神奈川ジムカーナシリーズに参戦し続けたマシンで有終の美を飾った。「散水してあって滑りやすい路面で、トラクションのかかりにくいシティが上手くマッチした感じですね。ロードスター(NC)を購入したんで来年はそれで出ようと思っています」と宮下選手。

 一方、2本目でスピンを喫してしまいながらも3位に滑り込み、シリーズチャンピオンに輝いた小西正太選手は「スピンで終わってしまいました。少し恥ずかしいですね。でも、今シーズンは足回りを見直して外周も良くなりました。大学の先輩の山口晃一選手に手取り足取り教えてもらっています。来年はチャンピオンシリーズにステップアップしたいと思います。ミラージュ(CJ4A)でまだまだやり続けたいですね」とまとめた。

NTF2クラス優勝は宮下敬選手(やさしさくらぶシティ)。
NTF2クラスの表彰式。左から2位の坂本恒治選手、1位の宮下選手。

NTR1クラス

NTR1クラス1位は照屋彰二選手(イタグレマメちゃんロードスター)。

NTR2クラス

 最終戦までチャンピオン争いがもつれ込んだNTR2クラス。ここまですべての大会で優勝者が異なる激戦区だ。そんな最終戦を見事に制したのは、前戦を制した山口貴史選手。シリーズを牽引してきた持田浩明選手が2位に滑り込みシリーズチャンピオンを死守した。「1本目、全員が0.1秒以内という激戦だったんですが、2本目でしっかりと勝ち切れたのはioの梅澤さんのおかげだと思っています」と山口選手。来年は車両とクラスを変えて参戦予定とのことだ。

NTR2クラス1位は山口貴史選手(車検込み40万アルテッツァ)。

ビギナークラス

 明治大学自動車部から3名の若手ドライバーが参戦してきたビギナークラス。そんな明治大学自動車部の3名が上位を独占する結果となった。優勝を決めた戸田耕太郎選手は「部として参加させてもらいありがとうございました。ウェット路面での走行はとても貴重な体験となりました。学生大会でもしっかりと良い成績が残せるように頑張っていきたいと思います」とコメントを残した。

ビギナークラス優勝は菅谷洋雄選手(明治ワコーズATSインテグラ)。
ビギナークラスの表彰式。左から2位の鶴谷嶺二選手、1位の菅谷選手、3位戸田耕太朗選手、4位和泉佑亮選手、5位金安秀樹選手、7位櫻井良子選手。6位の瀧澤洸選手は欠席。

神CL2クラス

 気筒容積制限のない2輪駆動のB車両で争われる神CL2クラス。優勝を決めたのは、2本目でしっかりとタイムを刻んできた岩井稔拓選手。「今年、神奈川シリーズはシーズン途中からの参戦となりましたが、来年はNTR1へ参戦したいと思います」とまとめた。

神CL2クラス1位は岩井稔拓選手(滅茶ジムロードスター匠犬)。

神EXP2クラス

 上位競技会で過去入賞経験のあるドライバーが2輪駆動のB車両で参戦できる神EXP2クラス。1本目、ペナルティに泣いた山本稔選手が2本目のタイムをしっかり削り取り優勝を決めた。「1本目でやらかしたので、2本目は緊張したんですが、失うものは何もないなと思いきり走れたのが良かったですね」と山本選手。

神EXP2クラス優勝は山本稔選手(YH龍S2000芋G)。

神EXP4クラス

神EXP4クラス1位は山口栄一選手(南街エムエムヤリス)。

 大会を終え、主催のioの梅澤氏は「僕らが最初に神奈川シリーズを主催し始めたころは、参加台数が20台前後でした。けれど参加しやすい競技会の主催に努めてきたら、この台数までエントラントが増えてくれました。現在はフォースさんと主催をしているんですが、これからはどこのチームが主催をしてもJMRC神奈川ジムカーナ部会が全部申し込みを受けつけてエントリー方法を一本化したいと思っています」

「隣で開催していた入門者向け練習会もそうなんですが、きっかけがあればまだまだジムカーナを走りたいとか、見たいと思ってくれる人が意外と多いんだと思います。これからもジムカーナを好きな皆でジムカーナを満喫できるような大会を続けていけたらいいですね」と今大会を振り返った。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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