JAFカップサートラ初開催の地での筑波サートラ第3戦は灼熱のタイムアタック!
2025年8月13日

2025年JAF筑波サーキットトライアル選手権シリーズ第3戦は、2025年JAFカップオールジャパンサーキットトライアル開催の余韻がまだまだ冷めやらぬ筑波サーキットのコース2000が舞台となった。7クラス42台のエントリーを集めてCT1クラスには3台の日産GT-Rが参戦し、GR86やZC33S型スズキ・スイフトスポーツなどがしのぎを削るCT4クラスは今回の一戦最多の11選手による激戦! 夏空の下、灼熱の筑波サーキットでアツいタイムアタック合戦が繰り広げられた。
2025年JAF 筑波サーキットトライアル選手権シリーズ第3戦
(2025筑波チャレンジクラブマンレース第3戦 内)
開催日:2024年7月26日
開催地:筑波サーキット コース2000(茨城県下妻市)
主催:VICIC
スポーツランドSUGO、岡山国際サーキット、そしてここ筑波で開催されているJAFサーキットトライアル地方選手権。その中でも筑波サートラは首都圏での開催ということもあり、特に多くのドライバーが集まる人気のシリーズだ。
全長約2㎞というコース全長もあり、通常A組とB組の二組に分けてタイムアタックを行う。更に第3戦はCT1とのタイム差の調整などもあり、参戦数最多のCT4がB組に振り分けられ、24選手によって競った。B組は全車が一斉にコースインした場合、前走車との距離は単純計算で約80m。サーキットをいかに上手く攻めるかだけではなく、クリアラップを掴むドライバーの嗅覚と読みの鋭さも求められる一戦となった。

今季は全4戦で争われている筑波サートラは、今回の一戦からシリーズ後半戦へと突入する。開幕二連勝を飾り、チャンピオン確定に手をかけるドライバーもいる中、毎戦僅かな差で勝敗が決することもあるのが、サートラの魅力の一つだ。
特に気温が高くなる近年は、路面温度が上がってしまう第2ヒートよりも吸気温度も低く、タイヤの温度も安定しやすい第1ヒートでベストタイムを記録する可能性が高い。よりクリーンなアタックを推奨するために、ドライバーズブリーフィングでは競技役員から「アタック中はヘッドライトを点灯し、他車に自分の意思を示すようにしてください」と指示も出た。「互いに譲り合って、タイムを削りあうのもサーキットトライアル参加者のマナーです。だからとても走りやすいんですよ」と、エントラントの声も聞かれた。
今季から筑波シリーズにVITA筑波シリーズが加わったことにより開催シリーズが増加。そのために東京都のJAF公認クラブ、ビクトリーサークルクラブ(VICIC)主催の2025筑波チャレンジクラブマンレース第3戦は週末の二日間で行われ、今回の一戦は土曜日、7月26日に開催された。



CT1クラス
排気量と駆動方式の制限がなく、B車両で競うCT1の中心となるのは、GT-R勢。彼らを追いかけるのは、軽量さと独自のAWDシステムが特徴のスバル・インプレッサ勢だ。ここ数年チャンピオンから遠ざかっているものの、長年このシリーズを牽引してきたインプレッサ勢のシブサワエイイチ選手と、3台のGT-Rによる優勝争いとなった。
現在、王座争いををリードしているのは青いラインが鮮やかな、白いGT-Rを駆る平川裕司選手。そして今回の一戦には、GT-RでJAFカップを制した2024シーズンのCT1王者、溝口敦子選手がスポット参戦。更に前戦より参戦の木下一博選手もGT-R勢の一角を担う。この日は最も暑くなるであろう正午過ぎに第2ヒートが予定されていることもあり、朝イチで走る第1ヒートでベストを出しておくことの重要性が高いことが予想された。
その重要な第1ヒートは毎戦恒例、公式通知で指定された出走順に並んでコースインとなった。今季はレギュラー参戦していない溝口選手は4番目にコースイン。インラップから戻ってきた各車はヘッドライトを点灯してコントロールラインを切っていく。
まずアタックに入ったのはシブサワ選手。午前9時の時点で気温33℃というコンディションにも関わらず、1分1秒645の好タイムをマークする。しかし、後続の平川選手がすぐに1分0秒8を記録。前日に交換することになってしまったブレーキパッドの当たりがつかず苦しんでいたが、一気に流れをもっていく。
しかし、サーキットレッスンなどにも通い、まだまだ進化するママさんチャンピオンの溝口選手が約0.386秒突き放すタイムを叩き出す。1コーナーからGT-Rの特性をよく理解したラインをトレースし、極端と思えるほどクリッピングポイントを奥に定めて猛然と車両を加速。大トルクを誇るGT-Rの持ち味を、120%活かし切ったアタックを披露した。一方、平川選手は第2ヒートの最後までクリアを獲る隙間を探すが、見つけられずに終わってしまう。結局CT1は全車第1ヒートのタイムがベストとなった。
勝利を手にした溝口選手は、「クリア獲るのが大変でした。アタックのタイミングが悪かったのもあったので、最初のアタックラップ以外はクリアを獲れませんでした。(ラインどりを)1コーナー進入からV字ターンに大胆に変えたんです。3週間前に(筑波で開催した)GR DRIVING EXPERIENCEに参加させてもらって教えてもらったことを実践したり、まだまだ成長できています。子どものイベントや試合が被っていなかったので、この大会だけスポットで参戦できたのですが、最終戦はまだ未定です」とのことだ。
また、シブサワ選手はGT-R勢の間に割って入り3位を獲得し、2020シーズンからCT1三連覇した意地を見せた。



CT2クラス
排気量制限なし、2WDのB車両で競うCT2クラスは、昨季に続きポルシェ718ケイマンGT4を駆る二人が王座争いを繰り広げる。筑波サートラにJAF地方選手権がかかって以来、王座を守り続ける“レジェンド”の一人、森田正穂選手とJAFカップのCT2初代ウィナー、松代耕二選手の一騎討ちは毎戦注目を集める。
今季は開幕第1戦、第2戦とケイマン歴が長い松代選手が制して二連勝! 森田選手は開幕戦でコースアウトを喫するなど、らしくない走りを見せることもあった。森田選手にとってはここでなんとか踏みとどまらないと、チャンピオンが遠のく大事な一戦となった。
そんな二人は対照的な入り方をする。1周目からヘッドライトを点灯して猛然とアタックをしかける森田選手は、いきなりクラストップの1分2秒09でリーディングボードに名を連ねる。森田選手は更にアタックを続けて1分1秒374までタイムを上げて見せた。これはCT1でも3番手に相当する好タイムだ。
一方、ランキングトップの松代選手はゆっくりとスタート。まずは周囲の動向を伺いながら、アタックするスペースを探す。しかし、この作戦がまさかの悪手となってしまう。コース上には16台の車両が駆け回り、等間隔で単純に割れば前後約130mしか一台あたりのスペースはない。前も後ろも詰まった状態の中で、松代選手はアタックを試みる。
5周目に森田選手と0.049秒差まで詰め寄ることができたが、森田選手は更に突き放しにかかる。スペースを読み切る力の差が勝負に直結したこの戦い。最後の最後で再びスペースを見つけた森田選手が、ファイナルラップに1分1秒275までトップタイムを押し上げて第1ヒートのチェッカーフラッグを受けた。第2ヒートは外気温が38℃まで上昇したこともあり、もちろん各選手軒並みタイムダウンに終わった。
これでなんとか王座争いに踏みとどまった森田選手は、「台数はいつもよりもちょっと少な目だったので、スペースを見つけるように走りました。最初のアタックはちょっと失敗してしまったんですが(笑)、この間の大会からずっと(マツダ・)ロードスターばっかり乗っていたので、感覚を戻すのにちょっと時間がかかってしまいましたね。去年も松代さんと3勝2敗で五分だったので、僕らに差はないと思っています。ただ、午前のアタックも1コーナーで曲げ切ることができず、アクセルオンが遅れてしまいました」と、自身の今日の走りを振り返った。
一方、敗れた松代選手は「クリアを探していたら、巡り合わせが悪くてスペースを見つけられませんでした。ただ、0.15秒差なのでちょっとデカい差ですよね。午後、曇ってくれたらタイム上がると期待したんですが、やっぱりダメでした」と、自分の戦略を悔いていた。

CT3クラス
CT3クラスは排気量の制限はないが、自然吸気エンジンを搭載する国内メーカー製で2WDのB車両が対象となる。2023シーズンまでは二季連続で不成立だったが2024シーズン王者、秋本拓自選手の呼びかけの下、日産・フェアレディZ仲間が集結! 今季は毎戦激しいトップタイム更新合戦が繰り広げられている。
第1ヒートをまずリードしたのはZ勢の一角、関根徹雄選手。3周目に1分3秒404を記録する。しかし、1コーナーではまだまだタイムを詰められそうな気配で、ホンダS2000を駆る芳田悟選手や秋本選手が追いかける。4周目にZ勢の伊澤竜選手が1分3秒183でターゲットタイムを更新。更に伊澤選手は7周目で一気に1分2秒91まで押し上げ、2番手以下を引き離す走りを見せた。
追いかける関根選手もクーリングしながらのアタックとなるが、トップタイムには及ばない。8周目に秋本選手がベストを更新して3番手に飛び込むも、1分4秒412に留まった。クールスーツを持ち込んで、熱中症対策もバッチリ決めた伊澤選手が二連勝を飾った。
伊澤選手は走行後、「もう暑すぎて、今日は……。とりあえず1本目は計測1周目から狙って行ったんですが、前との距離も詰まってしまって走り辛かったですね。ピットに入ってもう一度コースに出ていたと思うんですが、もうタイヤが終わってました(笑)」と一本目勝負を振り返った。
勝因については「とにかく今日は暑い!! とりあえず良かったところは、クールスーツで集中力を高めたことですね! 脳みそは少し冷静になりました。今日はクルマが壊れるか人間が壊れるかだと思ったので、クールスーツは大切です。次も優勝してチャンピオン獲ります‼」と話す伊澤選手。ランキング2番手につける秋本選手が3位に終わってしまったため、最終戦に向けで王座争いは伊澤選手が俄然有利となった。


CT4クラス
2400cc以下で国内メーカーが製造した2WDのB車両が競うCT4は11選手が出走し、第2戦までのA組からB組に移った。前戦まではパワーで勝るCT1~3の車両を気にしながら走っていたが、一気に前へ飛び出すことができるようになった。
このクラスはJAFカップウィナーで、SUGOと岡山国際のCT4でもランキングトップに立つ、松橋豊悦選手を中心に王座争いを展開している。松橋選手は3サーキットとも負けなしの開幕二連勝を飾る圧倒的な速さを見せ、今季の各シリーズのCT4は“松橋イヤー”となっているのだ。
松橋選手がいつタイムアタックに入るかに注目が集まったが、早々に訪れた。2周目で2番手以下に約1秒の差をつける、1分4秒759を記録する。3周に渡るクーリングラップで頭をリセットした松橋選手は、再度アタックを敢行。セクター1で約0.3秒を削り取り、セクター2では約0.1秒落としてしまうが、松橋選手の自分との闘いは最終コーナーで決まった。路面温度が高く、タイヤのグリップが怪しくなる中、最終コーナーでは進入から脱出まできれいに孤を描く。四輪脱輪を恐れず踏み切った松橋選手は1分4秒171を叩き出し、2番手以下を更に突き放すことに成功する。
第2ヒートは路面温度が60℃を超えたこともあり、多くのドライバーが一回アタックを終えるとピットに戻り、アタックを止めてしまうほどの悪条件。第1ヒートでの圧倒的なタイムで松橋選手が開幕からの連勝を3に伸ばした。「今日は暑いの一言です。ただ、タイヤは一発目からイケるのは良かったです。タイム的にもレコードの1秒落ちなので悪くないかな、と思いますね」と、松橋選手は走りを振り返った。
続けて「今回からB組に振り分けられてしまったので、計測2周でしっかりタイムを残さないとダメですね。とりあえずバックストレートが伸びないのと、最終コーナーでタイヤがタレているのが良く分かります」と、組分けが変わった影響も語った。次のJAFカップに向けての意欲も見せた松橋選手の2026シーズンは、GRヤリスを駆ってCT1に挑戦の予定。新たなライバルたちと競ってどのような走りを見せるのか、期待が膨らむ。



CT5クラス
1600cc以下で国内メーカーが製造した2WDのB車両が対象のCT5クラスには、個性派揃いの車両が名を連ねる。AE111型トヨタ・レビンやEK4型ホンダ・シビック、NA型ロードスターにCJ4A型三菱・ミラージュなど、かつてを懐かしむベテランドライバーたちにはお馴染みの車両ばかりだ。
そんなCT5をリードしているのは、ZC31S型スイフトを駆る山田修宇選手。開幕二連勝を果たし、ディフェンディングチャンピオンでシビックを操る鯉渕慶比古選手を抑えている。鯉渕選手は二戦連続で2位、連覇を考慮するなら今回の一戦では是が非でも勝利が欲しい状況だ。
第1ヒートでまずトップタイムをマークしたのは、ランキング3番手につけるNA型ロードスターを操る斉木雅昭選手で、日産・ノートニスモタイプSを駆る山下猛選手が続いた。ノートマイスターの湯崎伸選手のこの週末は、レース参戦のために欠場。もう1台のノート勢、福島達也選手が4周目にトップタイムを更新した。
しかし、すぐに鯉渕選手が約0.3秒更新してトップを奪い取る。だが、続く5周目で山田選手がアタック。1分8秒台に飛び込んで、ターゲットタイムを更に塗り替えると、終盤の10周目でも1分8秒498までタイムを上げることに成功。2番手につけた鯉渕選手に約0.5秒の差をつけて第1ヒートを終えた。
一方、このままでは終われない鯉渕選手は第2ヒートでなんとか逆転のチャンスを伺うが、気温も路面温度も急上昇した中ではベストの走りはなかなかできない。ただ、暑いが故に多くのドライバーが早々にピットへ去っていく。そんな中で空いた、一瞬のスペースを鯉渕選手は見逃さなかった!この気象条件ではどうにもならないと思われた中、ベストを更新して1分8秒台に飛び込んだ。しかし、トップには0.216秒届かず順位は2番手のまま。悔しくも山田選手の三連勝を許してしまった。
鯉渕選手は、「ちょっとはみだし過ぎました。最終(コーナー)の立ち上がりでリアが滑るので、四脱(四輪脱輪)になりそうでした。どんどん外に外にいってしまう感じで……」と、苦しい一戦だったようだ。
勝利した山田選手も「今日は路面がヌルヌルしている感じがしていて、いつもよりブレーキポイントが異なってしまい探り探りで、アタックも1周だけになってしまいました。リアの追従が悪くなる感じで、特にダンロップ(コーナー)と最終の出口あたりでスリップ角のつき始めでヌルっとしました」と、路面の感想を語った。王座争いは山田選手が俄然有利となったが、最終戦の一勝に賭ける二人の争いはアツくなりそうだ。



CT6クラス
1500cc以下で国内メーカー製のB車両が対象のCT6クラスは、ND型ロードスターを駆る安本悠人選手が開幕二連勝を飾りリード。2番手にはスズキ・カプチーノをドライブする大ベテランの吉崎久善選手がつけ、彼らをND型ロードスター勢の日向孝之選手が追いかける展開だ。
第1ヒートで早々に勝負を決めにきたのは安本選手。車両とタイヤの条件さえ整えば早くタイムを出すのが有利なこと、そして進めば進むほどCT4勢はじめ速い車両が背後から来るのを気にしなくてはならないことからも、3周目からタイムを出しにいった。そんな安本選手がマークしたタイムは1分8秒884! これはB組24選手の中でも6番手の好タイム。前走車との距離が80mほどしかとれないB組、まさに一発勝負で早々にタイムを叩き出す安本選手の実力は本物だ。
しかし、そんな易々と逃さまいと、吉崎選手がすぐにB組7番手に飛び込むタイムを記録するが、安本選手には届かない。残る時間は安本選手を追いかけることになり、日向選手もアタックするが、上位2選手には届かず。間を開けて吉崎選手が再びアタックし、ベストを約0.3秒押し上げるが、やはり安本選手には届かなかった。
そして、本当なら勝負を賭けたい第2ヒートは、ピットで熊本壮一郎選手の手持ちの温度計が40℃を超える中、コースイン。当然ながら上位陣は誰一人、ベストを更新することができずに終了することになった。
開幕三連勝を果たした安本選手は、「とりあえず暑かったです……。ラップタイムも後ろの方で安定してしまったのが悔しいですね。前回と比べると、かなりタイムを落としてしまっていますし……」と、暑さの影響を嘆いた。
続けて「ブレーキももう少し詰められると思っているんですが、全体的にちょっとずつ遅れていってタイムが伸びない感じですね。1ヘア2ヘア(第1ヘアピンと第2ヘアピン)でしっかり詰めることができれば良かったですね。とりあえず車内は40℃超えてたので、無事に帰れて良かったです」と、安本選手は厳しかった一戦を振り返った。



今回の一戦を主催したVICICの今宮眞代表は、「暑い中おつかれさまでした。待ち時間も長く、暑さとの闘いだったと思います。今年はJAFカップも開催でき、来年に向けてもっと盛りあげていただきたいと思います」と、暑い中アツい戦いを繰り広げたドライバーたちに言葉をかけた。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部