三連勝で初戴冠確定のCT5菅宣稀レビンはじめ菅生サートラ最終戦は続々王者確定!
2025年10月28日
全4戦で争われる2025年JAF菅生サーキットトライアル選手権も、今回の一戦が最終戦。気温14℃、あいにくの冷たい雨が急速な秋の訪れを感じさせるスポーツランドSUGOに、4クラス22名のドライバーたちとその愛車が集結した。
2025年JAF菅生サーキットトライアル選手権 第4戦
開催日:2025年10月12日
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県村田町)
主催:(株)菅生、SRSC
完全にウェットコンディションとなった午前中のスポーツ走行では、リスク回避のため出走を控えるドライバーも多かった。しかし、天候が回復した12時30分からのHEAT 1、やや気温が下がりドライコンディションとなった15時15分からのHEAT 2には全ドライバーが無事、コースイン。チャンピオンが確定済みのクラスもあれば、この一戦で確定するクラスもありとそれぞれだったが、ドライバーたちは王座争いだけではなく各々のベストタイム更新を目指し、目一杯の走りで今季SUGOでの最終トライアルに挑んだ。
CT1クラス
今季のCT1クラスは、日産GT-Rニスモを駆る芦名英樹選手に、佐々木和毅選手はじめGRヤリス勢が挑む構図で進んできた。開幕三連勝中の芦名選手にGRヤリス勢が一矢報いることができるとしたら、それは芦名選手の走行次第だったといえよう。もし、芦名選手が何らかの事情で両HEATともに出走できずノーポイントに終わることになれば、チャンピオン確定は逆転でランキング2番手の佐々木選手に渡る可能性もあったからだ。
だが、芦名選手に死角はなかった。雨中の走行となった午前のスポーツ走行でも芦名選手はイの一番にコースイン。ウェットでのGT-Rの動きや、各コーナーでのブレーキングをチェックしながら周回を重ね、最後はセッション出走8台中トップの1分42秒624をマークした。「2年前にウェットで走った時、ハデなスピンをしてから雨の日に走るのが怖かったんです」と、芦名選手は明かした。「今日はそのリベンジだったんですが、14周してウェットの走り方がだいぶ頭に入り、苦手意識も抜けましたね。最後はハンドルを切って遊んでました。『すべれー、すべれー!』って(笑)」と、ピットに戻ると語った。
雨中の走行への恐怖を克服できたことで勢いづいた芦名選手は、天候が回復した午後からのセッションでも絶好調の走りを披露。“ちょい濡れ”路面のHEAT 1は1分36秒831、路面がほぼ乾いたHEAT 2では、更に1分33秒176までタイムを伸ばし、4戦負けなしでチャンピオンを確定させた。
「1回目から2回目と路面もどんどん乾いていったので、その変化に走りをアジャストさせるのが難しかったです。でもウェットだった午前の走行でブレーキングをいろいろ確認できていたので、コンディションが変わった午後からの本番も余裕をもって攻めることができました」そう振り返る芦名選手に、走りの極意を訊ねたら『安全運転』の四文字が返ってきた。
「事故らないようにすることですね。ブレーキングでもっと奥に突っ込みたくなる時もありますが、絶対に無理はしない。今回は『雨は苦手』ではなく『雨だからこそ走る!』と自分の中のパラダイムシフトに挑んだ午前の走行があったからこそ、午後の走行がラクに安全になったと言えるワケです。気持ち的にも景気良くなりましたしね(笑)」と、4連覇を確定させた芦名選手は笑顔をほころばせながら語った。
CT5クラス
CT5クラスは湯崎伸選手の声がけで日産・ノート乗りが集結、初成立となった今季の最終戦を迎えた。王座争いは湯崎選手を筆頭に5選手が僅差で並ぶ混戦となっていたが、第2戦から参戦し、二連勝中のトヨタ・カローラレビンを駆る菅宣稀選手が、最終戦でもトップタイムを連発。シリーズ初参戦ながら三連勝でCT5初代チャンピオンを確定させた。
菅選手はサーキット走行会からサートラへ活動の場を移して一年目、とのこと。全面再舗装された路面の攻略に試行錯誤しながらも、心の師匠と仰ぐCT1王者の芦名選手に倣って『安全性』を確保しながらこの三戦で着実に成長し、ベストを更新し続けてきた。
「クルマがイコールコンディションじゃないので(レビンは165馬力、ノートはニスモSで140馬力)ちょっとなぁ…… と思う部分はあります」と、サートラ初挑戦での戴冠確定に少し気が引けている様子の菅選手。しかし、「サートラ出場の目標だった、記録が残る公式戦でチャンピオンを獲れたことは嬉しいです」と、素直な笑顔も見せていた。
一方、最終戦で逆転を許して初チャンピオン確定を逃した湯崎選手だが、「レビンは速いんでね。車格の違いは仕方ないです」と、意外にもあっさりとした表情を見せる。天候が回復に向かった午後の本番を前に、「雨なら1秒差に収まるけれど、ドライだとレビンとは3秒差くらいになりますよ」と予想していた。そのとおり、路面に水が残っていたHEAT 1では菅選手が1分49秒021、湯崎選手が1分50秒276とその差は1.255秒だった。走行ラインが完全に乾いたHEAT 2では、菅選手が1分42秒646で湯崎選手が1分45秒87と、両者の差は3秒以上に広がった。
「とはいえタイトルに手が届かなかったのは、そもそも前回マシントラブルで豪快にポイントを落としたことが原因なので(笑)。シリーズを通してコンスタントにポイントを稼いでいれば結果は違っていたかもしれません」と潔く認める湯崎選手の視線は、すでに次の目標に向かっている。
「お陰様でクラスも成立し、ノート軍団全員がシリーズ全戦を走り切りました。次は来年のJAFカップにノート軍団全員が行く。今回の活動はそこまでがセットです」と、湯崎選手を中心にノート軍団は2026シーズンのJAFカップオールジャパンサーキットトライアル挑戦を心待ちにしている。
CT6クラス
サートラ黎明期からスズキ・カプチーノを武器に、SUGOのCT6クラスも含めて幾度もチャンピオンに輝いている“レジェンド”の一人、吉崎久善選手。SUGOサートラ皆勤賞の吉崎選手は今季ここまで負け知らずの三連勝で、最終戦も敵なしの楽勝かと思われた。
ところが、トヨタ・ヤリスを駆るランキング2番手の熊本壮一郎選手が路面に水が残るHEAT 1で、吉崎選手を1.438秒上回る1分57秒564をマークしてトップで折り返す。今季最後のアタックを前に、小さな一矢を報いる格好となった。
「確か初年度にウェットでの走行があったかな」と、一瞬遠い目をする吉崎選手。雨対応のタイヤを履いてHEAT 1に臨んだが、「それでもFRで雨はなかなかコワい(笑)」と警戒を怠らない。かたや、初勝利の可能性を広げたかに見える熊本選手も「HEAT 2も雨が残ればチャンスありだけど、降らなければ厳しいですね」と冷静だった。
熊本選手も長くサートラに親しんでいるドライバーの一人だが、サートラの魅力について「肩の力を入れずに楽しめること」と指摘する。熊本選手もヤリスに手を入れたい箇所はまだまだあるそうだが、「今、自分ができる範囲のクルマで、自己ベストの更新を目標にしてます」と楽しんでいる。
熊本選手によると、今季の吉崎カプチーノは明らかに調子が良くなっているとのことだ。その理由を吉崎選手に直撃すると、経年劣化していた箇所をようやく発見して修復したところ、「パワーに漏れがなくなった」のだそうだ。カプチーノの修復が完了したのは、第3戦前とのこと。最終戦も漏れなくパワー全開となった吉崎選手の相棒は、ドライとなったHEAT 2で熊本選手を0.326秒上回る1分47秒666で逆転。4連勝で満点チャンピオンも確定させた。
「昨季の王者(堀知海選手)が出てなかったですしね。とにかく今季は参加台数が増えて良かった」と、吉崎選手はCT6の発展も喜んだ。次なる目標は、「SUGOの皆勤更新ですね。サートラで長く走ることは、僕にとって人生の耐久レースみたいなもの。続けることが目標です。その前にJAFカップですね!」と意気軒昂。吉崎選手にもう一歩のところまで迫った熊本選手とともに、今後もCT6を盛り上げてくれることであろう。
CT4クラス
松橋豊悦選手は3月に筑波サーキット コース2000で開催されたJAFカップのCT4クラス初代王者。そしてSUGOでは、前戦の優勝でCT4三連覇を確定している。今季はJAFカップと三つのJAFサーキットトライアル地方選手権のCT4全制覇に挑戦している松橋選手だが、チャンピオン確定済みの今回の一戦での目標を尋ねたところ、「全4戦の優勝と事故なくSUGOシリーズを終了する」という明快な答えが返ってきた。
天候が刻々変化したこの日も、松橋選手と相棒のスズキ・スイフトスポーツの走りは路面状態に関係なく、狙ったポイントで過不足なく止まり、キレよく曲がり、気持ちよく加速する力強さを見せた。
「今回フロントのリップスポイラーを変えたのですが、これがものすごく良いんです。シーズン途中のアップデートは下手すればクルマのバランスを崩すこともあるんです。でも今回はそうならず、結果的にプラスに出ました」と、ウェットのHEAT 1、ドライのHEAT 2とも、松橋選手はニューパーツを装着して初めての走行とは思えない、安定した走りでトップタイムをどんどん更新。
2番手の門馬勇人選手以下も周回ごとにベストを更新する好走を見せたが、松橋選手のタイムには届かない。路面が乾き気温も下がったHEAT 2の最後、松橋選手は他の車両にひっかかりながらも、ベストにしてCT4の新コースレコードとなる1分35秒175をマーク。パーフェクトな勝利でSUGOでの三度目の戴冠確定に華を添えた。
「手元のロガーでは1分34秒台も見えていたので、そこに届かなかったことがちょっと悔しいところではあります。でも自分が持っているコースレコードを更新でき、パーフェクトなチャンピオンとなってSUGO戦を終えることができたので、もう充分かな」と、松橋選手は振り返った。
CT4完全制覇の第一関門をSUGOでクリアした松橋選手は約二週間後に控えた筑波、そして11月最終週の岡山国際サーキットでも、一切の妥協を許さないパーフェクトな王者を目指す。誰も成しえていない前人未踏の記録に挑む胸の内を、松橋選手は表彰式の場で吐露した。
「来年は家族との時間をもっとつくりたい、と考えてます。今季を最後まで乗り切れるか、このシリーズを諦めようかと考えた時もありました。でも、優勝トロフィーとJAFのメダルを楽しみにしている息子に見せたくて、『チャンピオンを獲らないという選択肢はない!』と頑張りました。来季の活動については未定で、SUGOにも戻って来れればなぁと思いますが……。その時はよろしくお願いします」と、話を締めくくった松橋選手に、ひときわ大きな拍手が送られた。
フォト/森山良雄[Yoshio MORIYAMA] レポート/段純恵[Sumie DAN]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
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