2024シーズンWRC開幕第1戦、勝田貴元選手は序盤で後退するも総合7位まで挽回!
2024年2月13日
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2024年FIA世界ラリー選手権(WRC)が早くも開幕し、1月25~28日、モナコおよびフランスを舞台に第1戦「ラリー・モンテカルロ」が開催された。この伝統のラリーにTOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの一期生として活躍してきた日本人ドライバー、勝田貴元選手はコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手とともにエントリーした。
2024年FIA世界ラリー選手権 第1戦
ラリー・モンテカルロ
開催日:2024年1月25~28日
開催地:モナコ・モンテカルロ周辺
「2015年からドライバー育成の枠で活動を行ってきましたが、2024年は育成枠を抜けて、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のドライバーとして参戦することになりました。体制としては大きく変わっていませんが、ワークスチームのドライバーとして戦うことが増えるので、僕のキャリアにとってもチームにとっても重要なシーズンだと思っています」と語るように勝田貴元選手はTGR-WRTのマニュファクチャラー登録ドライバーとして、GR YARIS Rally1 HYBRIDを駆って参戦。
ラリー・モンテカルロはターマックに加えて、スノー(雪道)やアイス(凍結路)が混じっていることから、特殊なターマックラリーとなり、「長いラリーなのでトップ5につけながら、表彰台に届くところにいたいと思っていました」と戦略を語った。
しかし、24日に行われたシェイクダウンでいきなりトラブルが発生。「車両のほうに問題がありまして、1本目から3本目まではちゃんとした状態で走れませんでした。1本目のタイムは悪くなかったし、トラブルがどのように影響していたのか分からないんですけど、セッティングを詰めていくという部分では、いい流れで入れませんでした」と語るように、勝田貴元選手はシェイクダウンで5番手タイムをマークしたものの、不安要素を抱えた状態でスタートを迎えた。
1月25日・デイ1 / 26日・デイ2 / 27日・デイ3
25日のデイ1で行われた2回のナイトステージについても「デフのバランスとかを探りながらの状態。乗っていてもしっくりこなかったので、タイムも伸びずに厳しいスタートでした」と語った勝田貴元選手。その言葉どおり、SS1を6番手タイム、SS2は5番手タイムで終え、デイ1終了時の総合順位はトップから46秒差の6番手となった。
このように苦しい立ち上がりを強いられた勝田貴元選手は翌26日のデイ2でも苦戦を強いられた。「今年のモンテカルロは暖かくて、雪や氷が少ない状況でした。全体的にドライが40%、ウエットが40%、霜が10%、ブラックアイスが10%といったイメージでしたが、金曜日の朝の1本目のステージがラリーを通して最もアイスの多いステージだったので、そこでいいペースで保てるように多少リスクを背負いながらプッシュしていました」とのことだった。
しかし、「分厚いアイスのあるコーナーがあるんですけど、石を撒いて滑り止めをしていたのでレッキ時にはグリップしていました。そのイメージでスピードを残して入ったところ、石の上にアイスがのっていてツルツルの状態で、フロントが抜けてしまいました」と語るように勝田貴元選手はSS3で、コースアウトによりスタック。幸いギャラリーのアシストでラリーに復帰したものの5分以上をロスしてしまい、総合19番手まで後退することになったのである。
まさに勝田貴元選手にとっては悔しいハプニングだったが、「かなり痛いタイムロスをしたので、そこからはリスクを負わずに、(TGR-WRTの)3台目としてポイントを獲得できるように完走ペースで走り切ることにしました」と切替えた。 その一方で「セッティングを変更するなかで、クルマのフィーリングが良くなってきました。そこではトップと遜色のないタイムを出せたので、パワーステージでいいパフォーマンスが発揮できるんじゃないかなぁ……と思っていました」と予想していた。
事実、勝田貴元選手はコンスタントな走りを披露し、デイ2は総合12番手まで巻き返す。さらに、27日のデイ3ではSS10、SS11で続けて3番手タイムをマークするなど、抜群のスピードを披露、総合7番手でデイ3を走破していた。
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1月28日・デイ4
28日のデイ4ではボーナスポイントがかかるパワーステージ、SS17での勝田貴元選手の活躍が注目を集めていたのだが、ここで特筆したいのが、チャンピオンを争うポイントシステムが変更されたことである。
2023シーズンまでは優勝したドライバー/コ・ドライバー(クルー)とチームに25ポイント、2位に18ポイント、3位は15ポイント…… と、最終順位に応じたポイントを付与し、合わせてパワーステージのリザルトに応じて最大5ポイントが加算されていた。2024シーズンはパワーステージでのボーナスポイントをそのままに、完走したクルーを対象に土曜日までのリザルトに対して最大18ポイントが付与されるほか、日曜日だけのリザルトにも最大で7ポイントが付与されるシステムに変更された。
新システムでは必ずしも優勝したクルーが最多ポイントを獲得できるわけではなく、優勝を逃しても戦い方によっては最多ポイントを得ることも可能である。
この変更により勝田貴元選手はデイ4の戦略について「いままで日曜日は、パワーステージだけに焦点を当てることが多く、タイヤを温存していたんですけど、2024年はパワーステージだけでなく、日曜日にもポイントがとれるので日曜日のポイントもしっかり獲得したいと思っていました」と語る。
しかし「かなりブラックアイスが出てきていたので、チームとディスカッションしてリスクを負わずに、ドライのセクションだけプッシュするようにしました。そのため、最初はペースを落として走りました」とのことで、勝田貴元選手はデイ4のオープンステージとなるSS15は9番手タイムに抑えた。
続くSS16では一転、5番手タイムをマークするとSS17でも素晴らしい走りを披露。「クルマは良かったんですけど、スペアタイヤも2本積んでいたのでトップタイムは見てなくて、数ポイントを取りたいという気持ちで走っていました」とのことだったが、3番手タイムをマーク。総合7位に入賞したほか、ボーナスポイントの3ポイントを重ねることに成功した。
こうしてデイ2で大きく出遅れながらも、ワークスドライバーとしてポイントを持ち帰った勝田貴元選手は自身の開幕戦について「クルマの合わせ込みという部分でスタートからコケていたけれど、それが修正できたことはポジティブだと思います。個人的には満足のいく結果ではないけれど、難しいラリーのなか、シーズンの始まりとしては悪くはなく、先につながる結果だと思います」と振り返った。
さらに「限界を超えたなかでコントロールしなければならないんですけど、その領域で走りながら結果を残していかないといけない。マージンはあるようでなくてリスクはつきまとうので、そのなかでどうタイムを出していくのかが、表彰台の中央へ上がるためのステップだと思います。経験を重ねながらデータを活かしてどう走っていくのかが重要なので、積み重ねていきたいと思います」と付け加える。
2024シーズンのターゲットについて「今年は重要なシーズンで初優勝が第一の目標ですし、表彰台も昨年以上に獲得していきたいと思います。得意とするスウェーデンやポルトガル、フィンランド、ジャパンでは最初から最後まで優勝争いをするために全力でプッシュしますが、それ以外のラリーは地に足をつけて、チームの状況を考えながら戦いたいと思います」と語っているだけに、2月15~18日に開催される第2戦のフルスノーラリー「ラリー・スウェーデン」でも勝田貴元選手の動向に注目したい。
なお、この開幕戦はHYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAMでi20 N Rally1 HYBRIDを駆るティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ組が総合優勝。TGR-WRT勢はセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組が総合2位、チームメイトのエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組が総合3位で表彰台の左右を占めた。そして、併催したRally2車両で競うWRC2にも参戦できる、GR YARIS Rally2がWRCデビュー。プリント・スポーツから参戦したサミ・パヤリ/エンニ・マルコネン組が総合12位で、参戦した4台中最上位を獲得した。
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フォト/TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Media House レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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