マレーシアでSUPER GTのテストを開催、GT500各陣営が順調にメニューをこなす!

レポート レース

2024年2月15日

2024シーズンの開幕を4月に控えたSUPER GTのテストが、1月23〜27日にマレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで開催され、GT500クラスに参戦するトヨタ、日産、ホンダの車両8台が参加。走行がなかった25日を挟んだ4日間のテストは天候にも恵まれ、各陣営とも合計24時間を走り多くのデータを集め、夏用のタイヤ開発を進めるなど多くのメニューをこなした。

2024 SUPER GT テスト
開催日:2024年1月23~27日
開催地:セパン・インターナショナル・サーキット(マレーシア・セパン)

 セパン・インターナショナル・サーキット(セパン)でのテストは、今季ホンダがGT500に新たな車両、シビック タイプR-GTを投入、そしてGT500の空力部品の開発凍結も一部解除となり、さらにコロナ禍が落ち着いたということで2020シーズン以来の実施となった。

 トヨタは2023シーズンモデルの19号車WedsSport ADVAN GR Supraと37号車Deloitte TOM’S GR Supra、そして今季用パーツを組み込んだTCD(トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)開発車両の90号車という3台のGRスープラGT500を、日産は今季用パーツを組み込んだTEAM IMPULの12号車とKONDO RACINGの24号車、NMC(日産モータースポーツ&カスタマイズ)開発車両の230号車とZ NISMO GT500が3台、ホンダはModulo Nakajima Racingの64号車、STANLEY TEAM KUNIMITSUの100号車と2台のシビック、全8台のGT500車両がそろった。

 GRスープラについてTCDのTRD本部MS開発部の池谷悠車両開発室長は「90号車が’24年仕様の車両で、’23年仕様と比較しながらのテストです。去年のクルマは(思うように)曲がらないという性格があったので、コンセプトを見直しました。これについてはテストの前半で確認できましたし、クルマの状態をまとめていくことができました。テスト自体はメニューをしっかりこなしていると感じています」と語った。

 ZについてNMCの松村基宏チーム総監督は「NISMOの2台はタイヤブランドを(ブリヂストンに)変更しましたが、これまでブリヂストンを履いていたIMPULと協力し合いすごくよい連携が取れていると感じています。今回はエンジンのパワーを少し上げて負荷をかけてのテストを行っているので速いタイムが出ていますが、国内に帰ればそうはならないでしょう。今年の目標は当然(チャンピオン)“奪回”です」と意気込む。

 シビックについてHRC(ホンダ・レーシング)の佐伯昌浩ラージプロジェクトリーダーは「今回のテストは64号車と100号車のシェイクダウンが目的です。開発車両の99号車はこのテストに参加すると国内テストに遅れるので持ち込んでいません。シビックのGTデビュー年なのでもちろんタイトルを狙いたいと思っていますが、他の車両は熟成されているので厳しい戦いにはなるでしょう。でも頑張ります」と新型車両に期待をかけた。

2023シーズンの車両の性格をふまえてコンセプトを見直した、というGRスープラGT500(写真はTCD開発車両の90号車)。TCD(トヨタカスタマイジング&ディベロップメント) のTRD本部MS開発部の池谷悠車両開発室長によると、エンジンに関しても他車に対してネガティブだった部分を見直している、とのこと。「連覇ができるようにしたいです」と語ったように、王座防衛に向けて着々とテストを進めた。
NMC(日産モータースポーツ&カスタマイズ)の松村基宏チーム総監督によると、「ホイールセンターから下の空力、そしてZ NISMOでノーズが変わったのでスケーリングを変更しました」と、2024シーズンに向けて日産Z NISMO GT500(写真はTEAM IMPULの12号車)はレギュレーションの変更と市販車両のプロモーションを活かした改良を加えた。2022シーズン以来のチャンピオン奪還を、虎視眈々と狙う。
「NSXとはボディが違うことでセットアップが変わるので、いろいろなことを試しています」と、HRC(ホンダ・レーシング)の佐伯昌浩ラージプロジェクトリーダーが語った、新型車両のホンダ・シビック タイプR-GT(写真はSTANLEY TEAM KUNIMITSUの100号車)。2ドアクーペだったNSX-GTから4ドアセダンに変わったが、一昨季のZのようにSUPER GTのGT500クラスでは新型車両もチャンピオン獲得の可能性が高く、デビュー早々王座争いに加わることが期待される。

1月23~26日

 初日(23日)は午前のテスト終了時の12時で気温32℃、路面温度43℃と日本の真夏のようなコンディションで、一日の終了間際にスコールに見舞われ予定より10分早く終了となった。この日は12号車Zがトップタイムをマーク。午後のセッションでは230号車Zが駆動系トラブルのために長いピットインを強いられた。

 2日目(24日)は午前のセッションで230号車Zがトップタイムをマークするも、12号車Zに駆動系トラブルが発生した。午後のセッションは100号車シビックがトラブルのために1時間近くをピットで過ごした。終了30分前にスコールが降り、16時10分に赤旗中断。一旦小止みになった時点で数台がウェットタイヤに履き替えてコースインしたが、再び雨脚が強くなりアウトラップでピットインし、この日は終了となった。

 一日のインターバルを置いた3日目(26日)は序盤の2日間にスコールで失った走行枠30分を追加。午前と午後のセッションの前にそれぞれ15分を追加するかたちで行われ、午前のセッションでは100号車シビックが3日目までの最高速度をマークした。この日の午後からロングランテストを始めるチームも出始めたが、多くのチームはセッティングやタイヤの確認に勤しんだ。

南半球の国のマレーシアに建ち、かつてはSUPER GTの一戦や、FIAフォーミュラ1世界選手権のマレーシアGPの舞台にもなったセパン・インターナショナル・サーキットで行われた今回のテスト(左)。現地の気候はこの時期の日本とは真逆で連日高い気温となり、レーシングスーツを脱いだドライバーたちは半袖やショートパンツなど、1月の日本とは異なる涼しげな服装をまとっていた(右)。

1月27日

 最終日(27日)の朝は26℃とやや涼しい気温で始まった。この日の90号車GRスープラは3日間履いたブリヂストンタイヤに代え、ヨコハマタイヤを装着して走行。午前のセッションで37号車GRスープラが今回のテストでのトップタイムをマーク。また19号車GRスープラには小高一斗選手が乗り込み、初めてのGT500車両のドライブとセパンの走行を体験。このセッションでは12号車Zが前日100号車シビックがマークした最高速度を塗り替えた。

 午後は100号車シビック以外の全車両がロングランテストを実施。アクシデントや大きなトラブルもなく、4日で合計24時間のメニューをほぼ全てこなし、内容が濃いテストとなったようだ。

 この日は37号車GRスープラをドライブした、ディフェンディングチャンピオンの坪井翔選手は「朝の涼しい時間を狙ってトップを獲りました。テストとは言えトップは良いです。’23年型と’24年型はキャラの違う部分があるので、比較してフィードバックしながら確実にレベルアップできるよう、順調にメニューをこなせました。手応えや足りない部分も選別できましたし、これからの国内テストで煮詰めていきたいと思います」と今回のテストを振り返った。

 2024 SUPER GTは4月12~14日、岡山国際サーキットでの「OKAYAMA GT 300KM RACE」で開幕する。チャンピオンを目指して開幕ダッシュを決めるべく、GT500・GT300クラスともに各チームは日本国内でのテストでチームの熟成と、車両の開発を進める。

昨季のGT500チャンピオンのひとり、坪井翔選手は今回のテストでは90号車GRスープラと37号車Deloitte TOM’S GR Supraのステアリングを握った。今季はTGR TEAM au TOM’Sの36号車で参戦とチームは変わらないものの、新たに山下健太選手と組んで二連覇に挑む。「今年のパートナー(山下選手)は同い年で気心も知れた仲なので、何の心配もしていません。(山下選手は)これまで他のチームにいたので、36号車のやり方に慣れて仕事ができれば、僕も連覇ができると思います。GT500は4年目になりますが毎年パートナーが変わるので、そろそろコンビも落ち着いて1番というナンバーをつけたいですね」と笑顔で語った。

フォト/皆越和也 レポート/皆越和也、JAFスポーツ編集部

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