四国ジムカーナ王者の土居清明選手がサーキットトライアルデビューウィンを果たす!

レポート サーキットトライアル

2024年2月21日

寒い今だからこそ! 冬場の一戦を誰よりも心待ちにしているのが、サーキットトライアルに挑むドライバーたちだ。ライバルとの戦いよりも己との戦いだからこそ、路面温度が低くて、冷たい空気をたっぷりとエンジンに注げる、この時期はタイムアタックには絶好の条件なのだ。2月17~18日に岡山国際サーキットで開催された2024 OKAYAMAチャレンジカップレース第1戦の中で、2024 OKAYAMAチャレンジカップサーキットトライアル JAF地方選手権 岡山国際サーキットトライアル選手権 Rd.1が行われたが、早朝にはあいにくの雨が。果たして望んでいたタイムは出せるのか?

2024 OKAYAMAチャレンジカップサーキットトライアル
JAF地方選手権 岡山国際サーキットトライアル選手権Rd.1
(2024 OKAYAMAチャレンジカップレース第1戦内)

開催日:2024年2月18日
開催地:岡山国際サーキット(岡山県美作市)
主催:(株)岡山国際サーキット、AC

走行1回目A組

 この一戦は参戦台数が30台に及んだため、岡山国際サーキットトライアルでは初めて、CT1とCT2、CT3クラスをA組、CT4とCT5クラスをB組として分けて競われることとなった。

 先に行われたA組の走行1回目は、スタート直後には雨が止み、若干ながら後半になって路面状態が向上していった。この開幕戦で総合トップタイムが競われたのは、“排気量制限なし、2WDのB車両”によって争われ、3台が参戦したCT2クラスだ。

 序盤はそれぞれ慎重な走りを心がけるも、徐々にタイムを上げていく中、終始トップをキープし続けていたのがポルシェ911GT3を駆る小嶋健太郎選手で、ラストアタックで1分47秒740をマーク。1分50秒563がベストタイムとなった、ポルシェ・ケイマンGT4を操る寺本道雄選手を3秒近く引き離した。

 CT1クラスは“排気量制限なし、駆動制限なしのB車両”によって争われ、2023シーズンはGRヤリスを駆る福冨航平選手の独演会、裏を返せば参戦してもJAF地方選手権としては不成立となっていたが、2024シーズンの第1戦は6台で競われた。駆動制限なしとは言っても、4WDが2台のGRヤリスだけなのは、昨今のCT2はパワフルな輸入車が上位を独占する傾向があり、勝負権はCT1の方にあり、とドライバーたちは判断したのだろう。

 1回目の長きをFL5型ホンダ・シビックタイプRを操る石田泰久選手がリードしていたものの、後半になってFK8型シビックタイプRをドライブする赤石憲俊選手が1分52秒254を絞り出して逆転。一方、福冨選手は4秒以上遅れて4番手に留まっていた。

 CT3クラスは“自然吸気、排気量制限なしの2WD、国産車メーカーのB車両”によって争われ、5台が参戦した。2023シーズンのチャンピオンでFD2型シビックタイプRを駆る木村芳次選手が伸び悩む中、同じくFD2型を操る酒井利恭選手が1分57秒719でトップに立った。

駆動制限が無いために2WD対4WDという構図にもなったCT1クラスは、2WD勢で2023シーズンのCT2クラス王者、赤石憲俊選手(シビックFK8 1010)が走行1回目のトップタイムをマークした。
1回目の全体トップタイムをマークしたのは、CT2クラスでもトップの小嶋健太郎選手(991.2GT3)。
FD2型シビックタイプRと新旧インテグラタイプR、ホンダ車が争ったCT3クラスは、FD2型シビックタイプRを駆る酒井利恭選手(RG-O ENKEIシビック)が1回目のトップに立った。

走行1回目B組

 短いインターバルではあったが、続いてB組が走る頃には、かなり路面も乾いて待望のコースレコードにも近づいていく。“排気量2400cc以下の2WD、国産車メーカーのB車両”によるCT4クラスは8台で争われ、計測2周目でトップに立ったのはGR86を駆る和泉邦昭選手で1分49秒092をマーク。これに田中周文選手が1分49秒534、そして高橋太一選手が1分49秒983で続き、GR86勢が上位を独占した。

 “排気量1600cc以下の2WD、国産車メーカーのB車両”で争われるCT5クラスには、8台が参戦。その中で一際目立ったのが、GA2型ホンダ・シティをドライブする土居清明選手だった。周回を重ねるごとタイムを詰めていき、ラストアタックで記した1分50秒825は、レコードを更新したばかりか、ほぼ5秒も縮めることに。マツダ・デミオを操って2番手につけた山村純一選手を実に8秒近く引き離した。

GR86勢がトップ4を占めたCT4クラスの1回目は、2023シーズンの第2戦で勝利を挙げた和泉邦昭選手(DELTA GR86)がトップタイムを記録した。
コンパクトカーが多いCT5クラスの中で異彩の速さを見せたのが、GA2型ホンダ・シティを駆る土居清明選手(SPEC-DオメガBSシティ)。1回目で唯一のコースレコード更新を果たし、クラストップはもちろんB組の中でもGR86勢に食い込む4番手タイムをマークした。

走行2回目A組

 走行2回目になると路面もしっかり乾いて、やや温度が上がってはいたものの、ここからが本格的な勝負となる。1回目でCT2トップの小嶋選手が、計測1周目から1分40秒577を記録して、いきなりレコードを更新。次の周には1分40秒257にまで達してしまう! 寺本選手も1分43秒551にまで詰めたが、それでも差は3秒近く開いた。

「コンディションは圧倒的にヒート2の方が良かったですね。40秒を切るのを目標としていましたが、ヒート1でタイヤを無駄に使ったのと、途中からガス欠症状が出てしまったので」と、圧勝となっても、小嶋選手は納得がいかない様子だった。

 CT1では福冨選手がやはり来た! 計測1周目から1分47秒331をマークし、待望のトップを奪取。その後はクールダウンをしっかり行い、最後にワンアタックかけるも、これはタイム更新には至らず。それでもトップは譲らなかった。

「ヒート1は濡れていましたからね(笑)。今はもう完全なドライでした。今回、二枠になって台数が少なくなったので、クリアが取りやすくて走りやすかったです。やっぱり、以前みたいに20台以上だと空いているところがなかったので。台数的にこんな集まることなかったので、やりがいは増しましたね。特にこのクラスはずっと僕ひとりだったので!」と、福冨選手は大喜びしていた。

 2位はZ34型日産・フェアレディZを駆る中嶋努選手で、3位は石田選手。1回目トップの赤石選手は逆にベストタイム更新はならず、5位となった。

 CT3は「ヒート1ではクルマのトラブルもあって。ブレーキのジャダーがあったんです。しかも湿っていたから危ないと思って(苦笑)」と語る木村選手が、計測1周目から自身の持つレコードにあと一歩と迫り、2周目に更新。3周目には1分47秒837を記してレコードの上書きを果たした。2位は酒井選手で、1分48秒558まで短縮したが、木村選手の好走には及ばず。3位はDC5型ホンダ・インテグラタイプRを操る橋爪清史選手が獲得した。

CT1の走行2回目は、1回目で4番手となりを潜めていた福冨航平選手(狂猿レーシングGRヤリス)が、2位以下に1秒近い差をつけて本領発揮し、逆転優勝を果たした。
CT1の2位を獲得した中嶋努選手(DLアクアNUTECレイズWinmaxZ)の1回目は5番手と低迷。2回目では、1回目のベストタイムを13秒以上更新することに成功した(左)。1回目で2番手につけた石田泰久選手(Cosmic_175@シビックタイプR)は2回目でベストを更新するも3位となったが、数多く参戦した新旧シビックタイプR勢で最速タイムをマークした(右)。
CT1はトップ3選手が表彰を受けた。左から優勝した福冨選手、2位の中嶋選手、3位の石田選手。左端は表彰式でプレゼンターアシスタントを務めた岡山国際サーキット・サーキットクイーンの坂本七海さん。
3台のエントリーだったCT2で表彰を受けたのは、優勝した小嶋選手。路面コンディションがさらに向上した2回目では、大排気量でハイパワーのポルシェ911GT3を駆る小嶋選手にとっては独壇場。この一戦の全体トップタイムをマークしてレコード更新も果たした。
1回目はCT3の4番手に沈んだ木村芳次選手(RG-OレイズIDI木村染匠FD2)だったが、「気温もちょうど良くて、走りやすかったです」とのことだった2回目で復活。レコードも更新して逆転優勝と、ディフェンディングチャンピオンの意地を見せた。
2回目に王者・木村選手が目覚めたことで勝利へのハードルが10秒以上上がったCT3。1回目トップの酒井選手も10秒以上タイムアップを果たすが、木村選手には及ばず2位となった(左)。1回目は最終周の7周目でベストを絞り出した橋爪清史選手(RH-BULLインテグラ)は、2回目も8周したうち7周目でベストを更新して3位に入った(右)。この一戦は終盤の周回でベストをマークしたドライバーが半数近くを占めた。
CT3は左から優勝した木村選手と2位の酒井選手が表彰を受けた。

走行2回目B組

 2回目のCT4では、高橋選手が計測1周目から和泉選手を抑えてトップに立ち、計測2周目には従来のレコードを約0.4秒上回る、1分47秒805にまで到達! だが、勢い余って次の周の1コーナーでコースアウト。赤旗が出された。

 幸い車両ともにダメージが及ばなかった高橋選手は、「いくだけいっちゃったので、もう限界超えちゃいました! 正直その前の周も限界ギリギリというか、“世の中のベストを全部つなげた”という感じでした。想像どおりの走りができました。(レコードは)狙っていたので最高ですね! 最高のクルマ作ってもらって、最高の結果にできたので、シリーズもこのまま突っ切ります」とレコード更新の走りを振り返った。

 残り8分強で計測は再開されるも、もちろん誰も高橋選手のタイムを上回れず。1分48秒359を記録した田中選手がポジションキープの2位を獲得、1回目トップの和泉選手はベスト更新ならず3位と、悔しい2本目となった。

 CT5では言わずもがな、土居選手の独壇場。最終的には1分50秒007にまで到達した。2位となった、ZC32S型スズキ・スイフトスポーツを駆る久保侑大選手も従来のレコードは更新したものの、1分55秒624と5秒以上の差がついた。3位で日産・ノートニスモSをドライブする、ディフェンディングチャンピオンの山下猛選手を下したものの、久保選手の心境は複雑だったはずだ。

 圧倒的な速さを見せてCT5を制した土居選手は、「サーキットトライアルは初めてなんですよ、普段はEF8(ホンダCR-X)でジムカーナをやっていて、どんなもんかと思って。軽さは効いていますね、昨日測ったら燃料10ℓぐらいで720kg。この次は出られないけど、後半の2戦は出るつもりです」とのこと。ライバルたちにとってはとんでもないドライバーと車両が登場した。

CT4は昨季の最終第4戦で4位に入った高橋太一選手(RG-O☆BRIDE・IDI・GR86)が2回目で、レコード更新後の1コーナーを曲がり切れないほど限界を攻めた走りを見せて、1回目の3番手から逆転で優勝を果たした。
昨季のCT4ランキング2位の田中周文選手(RG-O・IDI・エルコヨーテ・GR86)は1回目最終周の5周目で2番手タイムをマークすると、2回目でも最後の7周目でベストを更新したが、高橋選手には及ばず2位と、順位を上げられなかった(左)。1回目でトップに立った和泉選手だったが、更なるタイムアップを期した2回目ではベストを更新できず足踏みし、3位に後退してしまった(右)。
CT4は左から、優勝した高橋選手、2位の田中選手、3位の和泉選手、4位の吉岡正人選手(ブライトブルーGR86)が表彰を受けた。
驚異的なレコードをマークしてCT5を制した土居選手は、2023年JAF四国ジムカーナ選手権R2クラスのチャンピオン。幾度もジムカーナの四国地区戦を制しているベテランが挑戦した新たなカテゴリーでも、その速さと経験を見せつけた。左は表彰式のプレゼンターを務めた岡山国際サーキットの杉浦隆浩支配人。
昨季の第3戦で優勝し、CT5ランキング3位だった久保侑大選手(EDタイヤ館TAKUMIみどりスイフト)は1回目を3番手で終えると2回目はレコードを更新。しかし、土居選手の速さには及ばず2位を獲得(左)。ディフェンディングチャンピオンの山下猛選手(NPC東京ノートニスモ)の1回目は2分を切れずに5番手と低迷したが、2回目で6秒以上更新して3位まで挽回した(右)。
CT5は左から、優勝した土居選手、2位の久保選手、3位の山下選手、4位の橋本克也選手(ノートニスモS)が表彰を受けた。

フォト/吉見幸夫 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ