雪の北海道ラリー地区戦第2戦は新千歳SSに勝利のカギ? 一方、高速SSで逆転劇も
2024年2月28日

1月28日に開幕した今年のJAF北海道ラリー選手権は、3週間のインターバルを経た2月18日に、第2戦「北海道ブリザードラリー」が開催された。
2024年JAF北海道ラリー選手権シリーズ 第2戦
2024年JMRC北海道TEINラリーシリーズ 第2戦
2024年XCRスプリントカップ北海道 第2戦
2024年北海道スノーチャレンジカップ 第3戦
北海道ブリザードラリー
開催日:2024年2月18日
開催地:北海道千歳市、安平町
主催:AG.MSC北海道
北海道の地区戦ラリーのスノーラウンドは2戦開催されるのが通例となっており、今年は開幕戦を担当したモータースポーツクラブ.エゾのEZO ENDLESS RALLYと、今回のAG.MSC北海道のブリザードラリーが、北海道ラリー界の冬の風物詩としてすっかり定着している。
ラリーの設定もここ数年はほぼ同じ形を採っており、新千歳モーターランド内の二つのコースに設定されたSSを走った後に、林道SSを2回走ってゴールというのが定番になっている。今回も午前中はSHIN CHITOSE A(バイクコース)0.90km、SHIN CHITOSE B(カートコース)0.80kmを、サービスを挟んでそれぞれ2回走った後に再びサービスイン。午後は約35kmのリエゾンを経て、林道SSであるASAHI 1.92kmを2回走ってゴールという設定が採られた。
林道SSについては、過去、ENDLESSとブリザードでは逆方向にする形が採られたこともあるが、今回は開幕戦と同一の方向での設定となっている。なおASAHIステージは、昨年夏に初開催されたRALLY EAST-EBURIでも使われた超高速のグラベルステージ。雪と氷が待ち受けた今回は、最速のラリーカーで70km/h弱のアベレージスピードを記録している。



JAF北海道ラリー選手権シリーズ/JMRC北海道TEINラリーシリーズ
RA-1クラス
参加13台と今回最多のエントリーを数えたRA-1クラス。SS1(SHIN CHITOSE A)は5番ゼッケンでスタートの近藤拓/保井隆宏組のスバル・インプレッサ(GRB)が、開幕戦優勝の関根正人選手の三菱・ランサーエボリューションVIを0.2秒差で抑えてベストタイムを奪い、快調なスタートを切る。近藤/保井組はSS2(SHIN CHITOSE B)、SS3(SHIN CHITOSE A)でも僅差ながらもトップタイムを連発。SS4こそ2番手タイムに終わるも、関根/宗方さおり組に3.5秒のマージンを築いて林道ステージに向かった。
SS5(ASAHI 1)では先頭ゼッケンゆえ、雪掻き役を強いられた関根/宗方組は7番手のタイムに終わり、3番手でゴールした近藤/保井組との差は6.0秒に広がる。しかしこのSSでは、スバル・インプレッサ(GDB)を駆る山田健一/竹下紀子組が、「関根さんがラインをつくってくれたこともあって、開幕戦よりも走りやすかった」と、後続を2.9秒もぶっちぎるスーパーベストをマーク。関根/宗方組を抜いて2番手に浮上し、近藤/保井組の3.6秒後方に迫った。
残すステージはASAHIの再走となるSS6のみ。ここで山田/竹下組は再びベストタイムを奪うが、近藤/保井組も2.7秒差で食らいついてセカンドベストを奪取。トータル0.9秒差で山田/竹下組の猛追を退けて逃げ切った。関根/宗方組が3位でフィニッシュし、連続表彰台を獲得した。
現在27歳の近藤選手は、これまでも一発の速さを垣間見せてきた北海道期待の若手の一人。今年は開幕戦から、日本を代表するコ・ドライバーである保井選手を招く必勝態勢で臨み、今回、念願の地区戦初優勝をゲットした。
「この優勝はホントに保井さんのおかげです。今日は、自分の中では完走できればいいいというペースでしたが、保井さんの言う通りにドライビングを修正していったら、タイムが出たという感じでした」と近藤選手。「最後のSS6も攻めるというよりは、SS5で余裕を持ち過ぎたところをちょっと詰める感じで走りました。それくらいのペースが良かったんだと思います」とラリーを振り返った。
その林道SSで本来のスピードを見せなからも、0.9秒という僅差に泣いた山田選手は、「SHIN CHITOSEは前回よりも路面が緩い感じになって難しかった。ドライバーとしては頑張ったつもりだったけど、攻め込みが足りなかったというか、ちょっと様子見しちゃいましたね」と前半の走りを悔やんでいた。



RA-2クラス
RA-2クラスは、ここ数年スノーラリーでは常勝を誇っている谷岡一幸/岸田勇人組のスバル・ヴィヴィオが大本命。しかし今回は、開幕戦で谷岡/岸田組の全SS制覇を最終SSで阻止した石田侑生/菅原恭介組の三菱・ミラージュが、SS1で谷岡/岸田組を1.8秒上回るベストタイムで上がって順調なスタートを切る。だがSS2からは谷岡/岸田組が4WDの強みを生かして3連続ベストをマーク。林道SSを前に石田/菅原組に10.4秒のリードをつくることに成功した。
開幕戦でFFながら林道SSでは谷岡/岸田組に拮抗するタイムを出した石田/菅原組は、この日もSS5で谷岡/岸田組に0.8秒差で食らいつく走りを見せる。しかし前半で背負ったビハインドはいかんともしがたく、谷岡/岸田組が最終的に15.2秒にリードを広げてゴール。「SHIN CHITOSEで稼いだマージンで逃げ切るいつもの勝ちパターンに持ち込めました」とラリーを振り返った谷岡選手は、「ASAHIは昨年の夏も走りましたが、自分は荒れた路面の方が好きなので(笑)、今日の方が楽しく走れました」とSNOW ASAHIの印象を語った。



RA-3クラス
RA-3クラスは、昨年関東から参戦してチャンピオンを獲得した藤田幸弘選手が今季はスノーラウンドをパス。“鬼の居ぬ間”の戦いとなった開幕戦を制した三木晴夫/河村幸子組のマツダ・デミオが今回も好調で、SS1から4連続ベストをマークするが、井土正高/大日方唯子組のトヨタ・ヴィッツも各SSで僅差で食らいつき、三木/河村組に3.8秒差でラリーを折り返して林道SSでの逆転を狙った。
その最初のSS5では、井土/大日方組が0.8秒差で三木/河村組を下してこの日最初のベストをマークし、その差を3.0秒に詰めるが、最終のSS6では三木/河村組が2.4秒競り勝って首位をキープしたままゴール。「SS6は路面もザクザクになって難しかったけど、井土さんはハマるとすごいタイムを出すので、最後まで一生懸命走りました。4WDが走った後の路面をどこまで読み切って攻めるかというところでは、今日は結構頑張れたと思います」と三木選手。開幕2連勝に会心の笑顔を見せていた。


JMRC北海道TEINラリーシリーズ
ジュニアRA-2クラス
JAF北海道ラリー選手権と併催されたJMRC北海道TEINラリーシリーズのジュニア部門では、ジュニアRA-2クラスが最終SSまでもつれる大接戦となった。前半の4本のSSではSHIN CHITOSE Bステージで頭一つ抜け出したタイムをマークした小野寺浩史/小野寺由起子組のスズキ・スイフトが、山崎隼/菊地祥吾組の三菱・ミラージュに8.9秒のリードをつくって折り返すが、小野寺浩史/小野寺由起子組はSS5で大きくタイムロス。山崎/菊地組が一気に逆転して、小野寺浩史/小野寺由起子組に1.3秒差をつけトップに立った。
注目のSS6はフルアタックを見せた小野寺浩史/小野寺由起子組が山崎/菊地組を0.8秒差で下してこの日5度目のベストで上がるが、トータルでは0.5秒届かず、開幕2連勝は果たせなかった。「SHIN CHITOSEは踏み過ぎてアンダーを出しまくってダメでした」という山崎浩史選手はダートトライアルが本業の学生ドライバー。スノーの林道SSは初体験だったが、「高速のステージだったので、スナガワのダートラで積み上げてきた成果を出し切れました」と笑顔を見せた。4月からは就職で関東に行くので「学生最後の大会で勝ててよかった。社会人になっても色々挑戦してみたいです」と新天地での活躍を誓っていた。



ジュニアRA-1クラス、ジュニアRA-3クラス
いずれも1台のみの出走となった他のジュニア2クラスでは、ジュニアRA-1クラスは北倉裕介/萱原直子組の三菱・ランサーエボリューションVが、ジュニアRA-3クラスは伊勢谷渉/三木敦組のトヨタ・ヴィッツが完走を果たし、ともに開幕2連勝を飾った。なおJAF北海道ラリー選手権と併催のJMRC北海道TEINラリーシリーズは、約3か月半の間隔を置いて6月1~2日にシリーズが再開。10月12~13日に行われる最終戦まで計6戦のシリーズが組まれている。


XCRスプリントカップ北海道
3年目を迎えたXCRスプリントカップ北海道も、今回のブリザードラリーでシリーズ2戦目を迎えた。第3戦からはグラベルラウンドに入り、ARKラリー・カムイ、RALLY HOKKAIDOと2戦続けて全日本ラリー選手権との併催となり、残る2戦は再びJAF北海道ラリー選手権と併催され、同選手権の最終戦となる10月第2週の、とかち2024でシリーズを閉じることになっている。
XC-2クラス
ENDLESS RALLYに併催された開幕戦では、完走が1台のみという波乱のオープニングとなったXC-2クラス。優勝候補の惣田政樹/猿川仁組のトヨタ・ランドクルーザーがレッキ中にマシントラブルが発生したため、スタートは叶わずという波乱の展開となる。
その中、SHIN CHITOSEステージで速さを見せたのは橘礼太/渡邊雄矢組のトヨタ・ハイラックス。開幕戦優勝の浅井明幸/笠井開生組の三菱・エクリプスクロスPHEVに14.7秒のリードを築いて独走態勢に持ち込んだと思われたが、好事魔多し。SS5で浅井/笠井組にベストタイムを譲り、6.3秒遅れでゴールした橘/渡邊組は、最終のSS6でも、前走から約8秒ものタイムアップを決めた浅井/笠井組に対して9秒差のクラス2番手でゴール。この結果、僅か0.6秒差ながら土壇場で逆転を決めた浅井/笠井組が優勝し、スノーラウンド2連勝を飾った。
これまでモータースポーツ競技歴は一切なかったにも関わらず、チームから今年のドライバー役を託された浅井選手は「序盤の2戦で最高の結果を残せて良かったです」と、まずはホッとした表情。「開幕戦よりも、レッキの時と本番の路面が違い過ぎて大変なラリーでした。SHIN CHITOSEも小回りのコーナーでのクルマの動きが良くなくて苦労したので、終わってみると開幕戦の方が調子が良かった気がします(笑)。今回はちょっと余裕を持ちすぎたかもしれませんね」と最後は反省しきりだった。



XC-3クラス
開幕戦は残念ながら不成立となったXC-3クラスは、昨年のチャンピオン塙郁夫/佐竹尚子組のトヨタ・ライズが今季初参戦。出走は1台のみだったが、総合のタイムでは0.2秒差で浅井/笠井組を凌いで、XCRスプリントカップのオーバーオールウィンを果たした。なおこのXC-3クラスについては、CUSCO RACINGが昨年に引き続き、札幌のK.Z.F SERVICEとのコラボ・チームからスズキ・ジムニーでの参戦を表明しており、グラベルシーズンの到来とともに熱いバトルが期待できそうだ。
また、CUSCO RACINGはXC-2クラスについても、2年連続チャンピオンの番場彬選手が梅本まどか選手とのコンビでの参戦を予定しており、このクラスについても最終戦まで激しいタイトルレースが展開されると見られている。

北海道スノーチャレンジカップ
地区戦に先駆けて1月21日に開幕した北海道スノーチャレンジカップは、ラリー入門者・初級者を対象としたシリーズ。最終戦となる今回の第3戦には今季最多となる23台がエントリーした。同カップは、AWD/2WDの2クラスに分かれ、SHIN CHITOSEの4本のSSによって勝敗が争われた。
AWDクラス
AWDクラスはスバル・インプレッサ(GDB)を駆る坂本翔/竹花豪起組がSS1、SS2を連取するが、開幕2連勝中の上堀太史/千葉湧太組のスバル・ヴィヴィオがSS3で坂本/竹花組を2.4秒差で下すベストタイムをマークして逆転。上堀/千葉組は、最終SSのSHIN CHITOSE B でも前走から10秒近くもタイムを詰める快走を見せて優勝を決め、無敵の3連勝でシリーズを締め括った。



2WDクラス
一方、2WDクラスでは、SS1でトップに立った髙橋龍生/古崎翔太組のスズキ・スイフトがそのまま最終SSまで首位をキープして今季初優勝。AWDクラスの上堀/千葉組同様、開幕3連勝を狙った櫻庭遥希/山谷知香組のトヨタ・スターレット(EP82)は、SHIN CHITOSE Bステージでのタイムロスが響き、今回は3位に留まった。ダイハツ・エッセを駆った島田勝正/北原寛典組がトップから1.7秒差の2位に入賞した。



フォト/田代康、AG.MSC北海道 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部