全日本ラリー選手権が開幕! 初開催のRally三河湾は勝田範彦/木村裕介組が快走

レポート ラリー

2024年3月6日

2024年全日本ラリー選手権の開幕戦となる「Rally三河湾2024」が、愛知県蒲郡市のラグナマリーナ/ラグーナビーチを拠点に開催。2023年大会で幕を閉じた新城ラリーに代わるラリーとして全日本ラリー選手権のカレンダーに加わったこのラリーは、蒲郡市、岡崎市、豊川市、幸田町を舞台にすべてのSSが刷新され、選手にとってはこれまで経験のないステージが舞台となった。

2024年JAF全日本ラリー選手権 第1戦「Rally三河湾2024 Supported by AICELLO」
開催日:2024年3月1~3日
開催地:愛知県蒲郡市、岡崎市、豊川市、幸田町
主催:MASC

 初日に8SS(36.76km)、2日目に6SS(43.98km)の計14SS(80.74km)が設定された、2024年の開幕戦となるRally三河湾は、愛知県内特有の道幅が狭くタイトなブラインドコーナーが延々と連続する林道ステージや、2車線道路を走行するハイスピードステージが特徴のラリーとなった。

 またサービスパークに隣接するトヨタグループ蒲郡研究所「KIZUNA」内のダートコース、蒲郡駅にほど近い観光スポットの竹島を望む埠頭に設置されたジムカーナ的なパイロンコース、スパ西浦モーターパークを周回して西浦シーサイドロードの海岸線を走るサーキット&一般道で構成されたハイスピードコースなど、変化に富んだ多彩なステージを設定。

三河湾の眺望が美しいラグーナ蒲郡地区を中心に展開された全日本ラリー選手権 第1戦。ラグーナビーチ駐車場をサービスパークとし、岡崎市、豊川市、幸田町までまたがり競技が行われた。
道幅の狭い山間部のワインディングからハイスピードステージにいたるまで、さまざまなコースを設定。バリエーションが豊かな反面、初めて走るコースに苦戦を強いられた選手も多かった。
竹島ふ頭と竹島ベイパークに設けられた、がまごおり竹島SSS。蒲郡駅からのアクセスが長けていることから、ラリーカーをひと目見ようと多くのギャラリーが周辺に詰めかけた。
SS11/14のKIZUNAでは勝田貴元選手やMORIZO選手がGR YARIS Rally1を駆ってデモランを披露、土煙を巻き上げる大迫力の走りで魅せた。またトークショーでも会場を沸かせた。
開会式では開催地となる4市町長を始めとする関係者たちが出席し、大会会長を務める蒲郡市の鈴木寿明市長や、オーガナイザーで組織委員会の勝田照夫委員長らが挨拶。
セレモニアルスタートは蒲郡駅前南口の特設会場で行われる。JAF四宮慶太郎副会長もスターターを務めて選手を送り出した。

2024年JAFモータースポーツ安全講習会

3月1日、蒲郡商工会議所コンベンションホールで選手を対象に実施された、JAF主催による2024年JAFモータースポーツ安全講習会。JAF四宮副会長、JAFモータースポーツ部の村田浩一部長、ラリー部会の高桑春雄部会長らが出席し、AG.MSC北海道が講習会の運営を務めた。
全日本ラリー選手権および国内ラリー競技会における、国内モータースポーツ全般の安全性向上を目的とした座学。参加した選手たちは真剣な眼差しで受講していた。
選手とは別の時間に同会場で開催された、競技役員やオフィシャル向けの安全講習会。座学と実技の二部制が採られ、緊急救出のためのレスキュー講習が行われた。

 今回はオープンクラスなどの選手権外クラスを含めて総勢90台がエントリーし、昨年のJN1クラスを制したヘイキ・コバライネン/北川紗衣組と勝田範彦/木村裕介組、JN2クラスを制した奴田原文雄/東駿吾組の3クルーが、トヨタ・GR Yaris Rally2で今シーズンの参戦を表明。

 なおコバライネン選手は母国のフィンランドで健康診断を受けた際にドクターストップがかかり、治療に専念することがチームSNSで発表された。その代役として元アジア・パシフィックラリー選手権チャンピオンの田口勝彦選手に、開幕戦のステアリングが託された。

 昨年、2WDのプジョー・208ラリー4で健闘した新井大輝/金岡基成組が、シュコダ・ファビアR5でエントリー。鎌田卓麻/松本優一組がJP4車両のスバル・WRX STIで約1年ぶりに復帰したほか、昨年はJN2クラスに出場していたカヤバGRヤリスが、JP4仕様となって社員ドライバーの石黒一暢選手を起用してJN1クラスに出場するなど、JN1クラスの勢力図が大きく変わる開幕戦となった。

2023年JN1クラスチャンピオンのヘイキ・コバライネン/北川紗衣組は、シュコダ・ファビアR5からGR Yaris Rally2にマシンを変更。初戦は療養中のコバライネン選手に代わり田口勝彦選手がドライバーを務めた。
GR Yaris Rally2で参戦した、勝田範彦/木村裕介組と奴田原文雄/東駿吾組。3台のGR Yaris Rally2が三河湾ラリーに臨んだ。

JN2クラス

 今シーズンは若手ドライバーを対象とした、トヨタ・GRヤリスのワンメイク「TOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup(TGR MCC)」が組み込まれたJN2クラス。そのTGR MCCに8台がエントリーし、通常のJN2クラス車両6台と合わせて計14台がエントリー。GRヤリス以外の車両は三枝聖弥/船木一祥組が駆るスバル・WRX STIの1台のみとなり、クラス全体がほぼGRヤリスのワンメイク状態となった。

 TGR MCCに参戦する車両は独自の規定があり、タイヤがストリートスポーツ系のラジアルタイヤ、ショックアブソーバーが50万円以下の市販品といったように、走行性能に対する改造範囲が規制されていた。そのため、選手権は改造範囲が広い通常クラスで優勝争いになるかと思われた。

 だが、いざラリーが始まると、フィンランドでのラリー修行を終えた大竹直生/藤田めぐみ組と、昨年のJN2クラスで1勝を挙げている山田啓介/藤井俊樹組、そして昨年の最終戦でJN3クラス3位に入賞した貝原聖也/西﨑佳代子組の、TGR MCCにエントリーしている3台がJN2クラスの主導権を握る。

 初日のSS7を終えて2番手の貝原/西﨑組を13.1秒引き離した大竹/藤田組が、初日最終ステージとなるSS8の約4km地点でコースアウトしてリタイア。このステージで5番手タイムとなった貝原/西﨑組は、クラス2番手まで浮上してきた三枝/船木組を0.5秒差に抑え、1日目を終える。

 2日目は10kmを超える狭いタイトコーナーが続く林道SSが4本あるため、初日のSS8で浮上してきたターマックラリー用に開発されたタイヤを装着する三枝/船木組が有利かと思われたが、オープニングとなるSS9では山田/藤井組が三枝/船木組に11.3秒差をつけてトップに躍り出た。

 さらにSS10では、初日トップの貝原/西﨑組が三枝/船木組を捕えて2番手に浮上してくる。最終SS前のSS13は貝原/西﨑組が20秒近くあった山田/藤井組との差を一気にひっくり返し、0.7秒差でトップに立つことに成功する。

 目まぐるしく順位が変わる中、0.7秒差で迎えたわずか500mの最終SSでは、貝原/西﨑組がタイヤとホイールを破損してペースダウン。逆転に次ぐ逆転劇で、山田/藤井組がTGR MCCのトップでフィニッシュするとともに、JN2クラスでも堂々の優勝を果たした。最終SSのアクシデントに泣いた貝原/西﨑組が2位に入賞し、MCC勢がJN2クラス1-2フィニッシュを達成。MCC勢以外では、SS13で三枝/船木組を捕えた石川昌平/大倉瞳組が3位に入賞した。

JN2クラス優勝は山田啓介/藤井俊樹組(FIT-EASY Racing ZEAL GRYARIS)。
2位は貝原聖也/西﨑佳代子組(ADVICS×多賀×K-OneGRヤリス)、3位は石川昌平/大倉瞳組(ARTAオートバックスGRヤリス)。
JN2クラスのセレモニアルフィニッシュ。1位の山田/藤井組。

TOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup

25歳以下(一部条件つきで29歳以下)の若手ドライバー育成を目的とした、GRヤリスのワンメイクで争われるTOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup(MCC)。大竹直生選手、山田啓介選手、貝原聖也選手、KANTA選手、中溝悠太選手、稲葉摩人選手(車両の関係で参戦見送り)、星涼樹選手、最上佳樹選手の8名がエントリーした。
TGR MCC1位は山田/藤井組、2位は貝原/西﨑組、3位はKANTA/保井隆宏組。

JN1クラス

 JN1クラスでSS1を制した勝田/木村組は、その後もトップの座を譲ることなく快走。2日目もトップの座を死守し、開幕戦優勝を果たした。2位は14SS中6SSでベストタイムをマークした新井大輝/金岡組が入賞。3位には、SS2を終えて5番手まで順位を下げていた福永修/齊田美早子組がその後追い上げを図り、表彰台の一角を獲得。

JN1クラス優勝は勝田範彦/木村裕介組(GR YARIS RALLY2)。
2位は新井大輝/金岡基成組(Ahead Skoda Fabia Rally2)、3位は福永修/齋田美早子組(アサヒ☆カナックOSAMU555ファビア)。
JN1クラスのセレモニアルフィニッシュ。左から2位の新井大輝/金岡組、1位の勝田/木村組、3位の福永/齊田組。

JN3クラス

 JN3クラスは昨年のチャンピオン山本悠太/立久井和子組が、初日のセクション1で3連続ベストタイムを奪う快走を見せて主導権を握る。その後、SS5は長﨑雅志/大矢啓太組、SS6は山口清司/澤田耕一組、SS7は曽根崇仁/竹原静香組、SS8は上原淳/漆戸あゆみ組がベストタイムを奪う。

 だが山本/立久井組のトップは揺るがなかった。ラリー最終日となる2日目は、山本/立久井組がすべてのステージを制し、2位の長﨑/大矢組に40.4秒の大差をつけて開幕戦を制した。3位は初日3番手の座を守った山口/澤田組が入賞した。

JN3クラス優勝は山本悠太/立久井和子組(SammyK-oneルブロスYHGR86)。
2位は長﨑雅志/大矢啓太組(NTP NAVUL 86)、3位は山口清司/澤田耕一組(エナペタルADVAN久與GR86)。
JN3クラスのセレモニアルフィニッシュ。1位の山本/立久井組。

JN4クラス

 JN4クラスは昨年のチャンピオン内藤学武/大高徹也組がSS3までトップを快走するものの、SSでエンジン下部が路面にヒットし、マシントラブルのためリタイア。4年ぶりの全日本ラリー出場となった高橋悟志/箕作裕子組がトップに浮上してくる。2日目に入っても高橋/箕作組は後続との差を広げ、全日本復帰戦を優勝で飾った。2位に西川真太郎/本橋貴司組、3位に須藤浩志/新井正和組がそれぞれ入賞した。

JN4クラス優勝は高橋悟志/箕作裕子組(ミツバWMDLマジカル冷機スイフト)。
2位は西川真太郎/本橋貴司組(スマッシュDLモンスターitzzスイフト)、3位は須藤浩志/新井正和組(スマッシュBRIGコマツYHスイフト)。
JN4クラスのセレモニアルフィニッシュ。1位の高橋/箕作組。

JN5クラス

 初日は、昨年のチャンピオン松倉拓郎/山田真記子組と若手の河本拓哉/有川大輔組との一騎打ちとなったJN5クラスは、2日目に松倉/山田組が一気にスパートし、初日の3.8秒差を53.2秒差にまで拡大し、今季初優勝とともに松倉選手自身にとっては全日本ラリーのターマックラウンドで初優勝を飾った。2位に河本/有川組、3位には狭い林道と上り区間に苦戦した大倉聡/豊田耕司組が入賞した。

JN5クラス優勝は松倉拓郎/山田真記子組(DL☆Gセキネン鹿ソニックラブカヤリス)。
2位は河本拓哉/有川大輔組(DL CUSCO WM TWR OTS TAKATAデミオ)、3位は大倉聡/豊田耕司組(AISIN GR Yaris CVT)。
JN5クラスのセレモニアルフィニッシュ。1位の松倉/山田組。

JN6クラス

 JN6クラスは昨年のチャンピオン天野智之/井上裕紀子組が、初日すべてのSSを制し、十分なマージンを築き上げる。ところが、2日目朝のサービスで前日傷めたオイルクーラーの修復が間に合わず、TCに12分遅着。2分のペナルティを受け、トップの座を清水和夫/山本磨美組に明け渡してしまう。

 だが、冷静にSSを攻めた天野/井上組は、SS12でトップの座を奪い返すことに成功。結果的には2日目もすべてのSSを制し、開幕戦優勝を果たした。2位に清水/山本組、3位に鷲尾俊一/菅野総一郎組が入賞し、ベテランドライバー勢が健闘をみせた。

JN6クラス優勝は天野智之/井上裕紀子組(TRT・DL・アクアGR SPORT)。
2位は清水和夫/山本磨美組(SYE YARIS HEV)、3位は鷲尾俊一/菅野総一郎組(アストラルDLブリットitzz・CRZ)。
JN6クラスのセレモニアルフィニッシュ。1位の天野/井上組。

フォト/CINQ、遠藤樹弥、大野洋介、小竹充、中島正義、山口貴利、JAFスポーツ編集部 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ