JAF公認eモータースポーツリーグ「UNIZONE」のEX Match、eスポーツ普及に力を入れる群馬県で開催

レポート eスポーツ

2024年3月8日

2023年12月に発表されたJAF公認のeモータースポーツリーグ「UNIZONE」が、第1回目となるエキシビションイベントを群馬県高崎市でオフラインにて開催。リアルおよびバーチャルのドライバーが参加し、UNIZONEをお披露目するとともにeモータースポーツの魅力や楽しさを発信した。

UNIZONE EX Macth Powered by SUPER FORMULA
開催日:2024年2月25日
開催地:ビエント高崎ビッグキューブ(群馬県高崎市)
主催:JeMO

 一般社団法人日本eモータースポーツ機構(Japan e-Motorsport Organization=略称:JeMO)が、JAF公認となったeモータースポーツリーグ・UNIZONEについて、メディア向けに発表会を行ったのが2023年12月16日。ここで告知された一般公開イベント「UNIZONE EX Macth Powered by SUPER FORMULA」が、2月25日に群馬県高崎市のビエント高崎ビッグキューブで開催された。

 この開催を直前に控え、2月9日には群馬県庁32階の放送スタジオtsulunosでライブ配信にてUNIZONE Talkが行われ、群馬県出身のフリーアナウンサーである松本亜希子氏の司会進行のもと、JeMO役員の出井宏明代表理事や北浦諭理事を始め、レーシングドライバーの小山美姫選手も特別ゲストとして出演し、UNIZONE EX Matchの詳細を明かした。

 エキシビションレースではリアル&バーチャルのドライバー12名が出場、野尻智紀選手や山下健太選手らの名前が発表され、2名1組の6チーム編成で2種類のレースを実施。また出場ドライバーと一般参加者との交流レースも行われる。そのほかドライバーのトークショーや、UNIZONE運営メンバーのトークショーがスケジューリングされていた。会場内にはeモータースポーツ体験が可能なグラスルーツコーナーが設置される。

 なお開催会場を群馬県としたのは、2020年に全国の自治体で唯一eスポーツの名称がついたeスポーツ・クリエイティブ推進課を設置し、eスポーツを活用した地方創生を推進していることから、特別後援を受けて実現したとのこと。そしてUNIZONE EX Match前々日の2月23日には、県内最大級のeスポーツの祭典であるグンマeスポーツアワードが開催されており、UNIZONEのイベント第一弾の船出に相応しい場所にもなった。

2月9日に行われたUNIZONE Talkは、群馬県庁内にある放送スタジオtsulunosよりYouTubeでライブ配信。
松本亜希子アナウンサーの司会進行で、特別ゲストの小山美姫選手、JeMOの出井宏明代表理事、JeMOの北浦諭理事がUNIZONEについてのトークを繰り広げた。
小山選手は「ヘルメット越しではない、eモータースポーツならではのドライバーが見せる表情にも注目してください」とUNIZONE EX Matchの見どころをPR。
配信終了後には報道関係者向けの質疑応答もあり、2月25日のUNIZONE EX Match開催に向けた意気込みが語られた。

 2月25日のUNIZONE EX Match開催当日はあいにくの雨模様。しかしリアルモータースポーツと異なり、eモータースポーツのイベントは屋内で開催されることもあって、天候は一切関係なし。開場前からビエント高崎ビッグキューブ入口に来場者が並んでいた。発足からまだ日が浅いながらも、初の一般公開イベントということで、来場者からはUNIZONEに対する期待度の高さがうかがえた。

 会場は大型モニターを設置したメインステージを中心とし、その正面に観客席が多数設置され、後方にはさまざまな食事が楽しめるキッチンカーも来ており、まるでフェスのような雰囲気。来場者なら誰もが気軽に体験できるグラスルーツコーナーも盛況で、上位入賞や最速タイムを記録すると賞品が進呈されるとあり、タイムアタックに勤しんでいる来場者の姿も見受けられた。

 フリーアナウンサーの辻よしなり氏とアシスタントの笠原美香氏の登場から始まったオープニングでは、エキシビションレースの実況・解説を務める山中智瑛氏とスオミアッキ氏の紹介が行われ、本日のプログラムが発表される。そして主催者を代表してJeMOの出井代表理事が「ようこそ、UNIZONE EX Match POWERD BY SUPER FORMULAにお越しいただきありがとうございます」と第一声。

 続けて「我々は昨年から活動を開始し、今日、こういった形でeモータースポーツを皆さんにお届けできることを本当にうれしく思っています。リアルとバーチャルを融合しながらさまざまな形でモビリティの楽しさをお伝えできればと活動をしております。その一端としてぜひeモータースポーツを楽しんでいただけたらと思います」とステージ上から挨拶。

群馬県高崎市のJR高崎問屋町駅から徒歩5分に位置するビエント高崎。大型イベントホールのビッグキューブでUNIZONE EX Matchが開催された。
UNIZONEのロゴを中央に配したメインステージでエキシビションレースやトークショーが行われる。来場者はステージ正面の観客席から大型モニターに映し出される映像も楽しめた。
ハンバーガーや焼きそば、軽食といった有料の食事を提供するキッチンカーがあり、終日イベントを楽しみながらの飲食も可能だ。
観るだけではなく、自身もドライビングを体験できるグラスルーツコーナー。参加無料のタイムアタックチャレンジには一般の挑戦者の列ができていた。
MCは辻よしなり氏と笠原美香氏が務めた。実況と解説はeモータースポーツプレイヤーの山中智瑛氏、eモータースポーツアナリストのスオミアッキ氏。
主催者を代表しての挨拶はJeMOの出井宏明代表理事。「今日はリアルモータースポーツ、eモータースポーツともに蒼々たる方々にお集まりいただいております」とエキシビションレース前に期待感を高めた。

 オープニングが終わるとドライバー紹介に移り、荒川麟選手と山下健太選手の「TEAM RIN & KENTA」(WHITE)、石水優夢選手と小山美姫選手の「TEAM HIROMU & MIKI」(BLACK)、大草りき選手と小出峻選手の「TEAM RIKI & SHUN」(RED)、大湯都史樹選手と冨林勇佑選手の「TEAM TOSHIKI & YUSUKE」(BLUE)、木村偉織選手と佐々木唯人選手の「TEAM IORI & YUITO」(YELLOW)、野尻智紀選手と武藤壮汰選手の「TEAM TOMOKI & SOTA」(GREEN)の6チーム12名が登壇。

 ステージに用意された6台のレーシングSIMに分かれ、早速エキシビションレース1のマッチレースが行われた。レースフォーマットはトーナメント方式で行われる1対1のレースで、計7レースが実施される。このレースの順位が後に行われるエキシビションレース2のスプリントレースのグリッド順となるため、最初から緊迫した戦いが繰り広げられることが予想された。

 富士スピードウェイを舞台にスーパーフォーミュラのSF23を用いた2周のレースでは、TEAM TOMOKI & SOTAとTEAM RIN & KENTAが優勝決定戦にコマを進めた。野尻選手が好スタートを決めて逃げ、荒川選手がその背後から追従。ダンロップコーナーで荒川選手が一気に詰め寄るも、その先の第13コーナーでオーバーテイクの際に接触、野尻選手がスピン&コースアウトしてしまう。

 荒川選手のペナルティの可能性を残しつつ、すぐさまコースに復帰した野尻選手は、これ以上の差を広げさせない走りで粘る。荒川選手のチェッカー後、約10秒のギャップで野尻選手がフィニッシュする。両者ともヘッドフォンを外して緊張した面持ちで審議の結果を待っていた。そして実況の辻氏から「やはりペナルティ!」とアナウンスされると、TEAM TOMOKI & SOTAのマッチレース優勝が決まり、スプリントレースのポールを獲得。

 優勝が決まった瞬間、ガッツポーズで喜ぶ野尻選手と武藤選手。「今日、ちゃんと走れるか不安だったんですけど、武藤選手に教えてもらってiRacingがこんなに楽しいんだって思いました」と野尻選手。「筐体が隣の佐々木選手の練習走行を見て結構緊張していたんですけど、スタートがうまく決まって無事に走り切ることができました」と武藤選手。

リアルとバーチャルのトップドライバー12名が勢ぞろい。2名1組でチームとなってマッチレースとスプリントレースを争っていくこととなる。
実況席はステージから離れた場所に設けられ、スクリーンに映し出されたレース展開を分かりやすく解説してエキシビションレースを盛り上げた。
UNIZONE公式YouTubeからイベントの模様がすべてライブ配信されていた。
オンライン配信システムのV-CUBEでもライブ配信。視聴者はマルチアングルで楽しむことが可能に。
トーナメント方式のマッチレース。対戦チームの誰と戦うのか、先行後行といったペアの走行順も勝負のポイントとなった。
TEAM TOMOKI & SOTA(GREEN)の野尻智紀選手と、TEAM RIN & KENTA(WHITE)の荒川麟選手との決勝戦に。
マッチレースを制したTEAM TOMOKI & SOTAの野尻選手と武藤壮汰選手。勝利が決まった瞬間、ガッツポーズで喜びをあらわにした。

 エキシビションレース1の熱も冷めやらぬ中、ステージでは出場ドライバーによるトークセッション1が行われ、リアルドライバーは野尻選手と小山選手、バーチャルドライバーは武藤選手と冨林選手が登場。まずはマッチレースの振り返りから始まり、今回のエキシビションで使用されたiRacingの難しさについて語られる。各選手ともに事前に入念な準備をして当日を迎えたことも明かされた。

 また使用されたコックピット筐体の長谷川工業“ドラポジ”についても触れ、ハンドルやペダルの角度が調整でき、拡張性があると武藤選手は好印象の様子。冨林選手は普段のリアルレースでシート位置など細かく調整していることを挙げて、eモータースポーツでもリアルのセッティングがフィードバックできてやりやすかったと感想を述べていた。

野尻選手、小山選手、武藤選手、冨林選手によるトークセッション。直前まで行っていたマッチレースの話題が繰り広げられた。
実車に近づけたドライビングフィールのドラポジは、細かいポジション調整も可能な筐体で、参戦ドライバーに好評だった。

 トップドライバーと、事前公募によって集められた一般参加ドライバーによる交流レースが催された。これはスポーツ庁が推進する令和5年度スポーツオープンイノベーション推進事業にて選定されたJAFとテレビ東京との連帯による企画だ。山下選手、木村選手、小出選手、大湯選手がトップドライバー代表として参加。そしてアルコ&ピースの平子祐希氏と、テレビ東京の池谷実悠アナウンサーがスペシャルゲストとして登場。

 一般参加3名、スペシャルゲスト1名、トップドライバー2名の計6名で行われるレース。その1レース目は鈴鹿サーキットを4周。好スタートを切った一般参加の岡田衛選手が、山下選手と大湯選手のトップドライバーを相手に一歩も引けを取らない好走を見せ、トップを奪って逃げ切り勝利。2レース目はメンバーを入れ替え、モビリティリゾートもてぎを4周。小出選手がレースを牽引、一般参加の兒島弘訓選手とのバトルを制してトップチェッカー。

滅多にないリアルドライバーと競い合う貴重な機会とあって、一般参加の交流レースには多数の応募があった。そこにスペシャルゲストも加わり、白熱したバトルに。
アルコ&ピースの平子祐希氏とテレビ東京アナウンサーの池谷実悠氏は、事前にグラスルーツコーナーでレクチャーを受けながら練習して臨んだ。
1レース目は一般参加の岡田衛選手がリアルドライバーを抑えて優勝。
2レース目はリアルドライバーの面目を保って小出選手が優勝。
一般参加で2レース目に出場したショウ選手は、2022年JAF全日本カート選手権 FS-125部門チャンピオンの百瀬翔選手だった。「実は465Garageさんのeスポーツチームにジュニアドライバーとして所属しておりまして、今回UNIZONEの交流レースでは一般参加枠の募集があるのを聞いて応募しました。選ばれると思っていなかったのでほとんど練習していませんでした。慣れ親しんでいる筐体とは感覚の違いがあって戸惑いましたね」と苦笑い。「eモータースポーツはリアルのための練習になりますし、新たな発見にもつながるので楽しいです」と魅力を語った。

 最後のレースとなるエキシビションレース2。レースフォーマットは各チームのドライバー6名による5周のスプリントレースで、鈴鹿、もてぎでそれぞれレースを実施。1レース目の順位が2レース目のグリッド順となり、2レース目を制したチームが優勝となる。TEAM TOMOKI & SOTA、TEAM RIN & KENTA、TEAM IORI & YUITO、TEAM RIKI & SHUN、TEAM HIROMU & MIKI、TEAM TOSHIKI & YUSUKEのグリッド順でスタート。

 ポールポジションのTEAM TOMOKI & SOTAの野尻選手がスタートで出遅れる波乱の幕開けとなった1レース目。ホールショットはTEAM RIN & KENTAの山下選手が奪う。だが先頭を快走していた山下選手がスプーンでまさかのスピン&クラッシュ。5番手スタートのTEAM HIROMU & MIKIの石水選手が安定の走りでトップに立ち、後続のTEAM IORI & YUITOの佐々木選手を引き離してトップチェッカー。

 2レース目、TEAM HIROMU & MIKIの小山選手がスタートに失敗、4番手のTEAM TOMOKI & SOTAの武藤選手が一気にトップを奪取する。2周目にTEAM IORI & YUITOの木村選手がOTSを使って第5コーナーで仕掛け、S字で武藤選手の前に出ることに成功。この2台によるつかず離れずの攻防が続いたが、最終ラップの武藤選手のミスで木村選手が差を広げ、逃げ切り優勝を遂げた。

「多分、明日にはウィリアムズから僕も声がかかると思います(笑)」と木村選手はガッツポーズを見せ、「佐々木選手が2番手スタートでつなげてくれたおかげです」とチームワークの勝利だったとコメント。「木村選手はめちゃくちゃカッコ良かったです。ずっとドリフトみたいな感じで走っていて神がかっていました。最高ですね!」と興奮気味に語る佐々木選手。

2レースで争われたスプリントレース。1レース目ではポールポジションのTEAM TOMOKI & SOTA(GREEN)の野尻選手がまさかのスタートミスで5番手までドロップする。
TEAM IORI & YUITO(YELLOW)の木村選手が華麗なオーバーテイクを見せた2レース目。TEAM TOMOKI & SOTAの武藤選手も粘ったが、木村選手がトップチェッカー。
筐体には1台ずつカメラが設置されており、レースの行方とともにドライバーの表情もモニターに映し出される。
マッチレースを制したTEAM IORI & YUITOの木村選手と佐々木選手。

 レース終了後のステージ上では、UNIZONE運営メンバーを交えたトークセッション2が行われ、株式会社日本レースプロモーションの上野禎久代表取締役、JeMOの出井代表理事、JeMO糸井丈之理事、JeMO北浦理事が登壇。ここまでのオフラインイベントの感想や、リアルとバーチャルの融合およびeモータースポーツの可能性、今後のUNIZONEの展開について語られた。

 また今回の開催地となった群馬では、UNIZONEのリーグが始まる来年度に向けてチームとして参入する動きがあると、糸井理事より明かされた。併せて裾野づくりにも取り組み、その試金石としてゴールデンウィーク明けから群馬大会を開催していくとのこと。そのために応募制で県下の団体、学校、企業、福祉施設等にシミュレーターを無償貸与し、さまざまなeモータースポーツの可能性を探っていく構想も語られた。

トークショでは日本レースプロモーションの上野禎久代表取締役、JeMOの出井代表理事、JeMO糸井丈之理事、JeMO北浦理事より、UNIZONEに対する取り組みや展開が語られた。
eスポーツ事業で群馬の活性化にも取り組む糸井理事からは各種構想が発表される。その熱量に今後の期待値が高まった。

 約6時間におよぶイベントもいよいよエンディングを迎え、最後は出場選手全員がステージに集合。ひとりひとりUNIZONE EX Matchについて総評が語られた。皆そろって「楽しかった」という感想が述べられ、その様子はオフライン/オンラインで参加した方にもしっかり伝わったことと思われる。そしてマッチレース勝者のTEAM TOMOKI & SOTA、スプリントレース勝者のTEAM IORI & YUITOの表彰式となり、それぞれのチームに賞金10万円と上州牛5000円×2名分が贈られた。

「来年から新しいリーグをしっかりと立ち上げて、トップ・オブ・トップの戦いを皆さまにお見せしていきたいと思います。同時にeモータースポーツを通じて皆さまがつながり合う、グラスルーツの活動も行っていきます。ぜひご期待ください」と出井代表理事の締めの挨拶。次回イベントは東京ビッグサイトで3月30~31日に開催されるE-Tokyo Festival2024。出展するUNIZONEブースに期待したい。

賞金と副賞のボードを掲げて喜ぶ、スプリントレース優勝の木村/佐々木組と、マッチレース優勝の野尻/武藤組。
賞典のプレゼンターを務めた、群馬県産業経済部eスポーツ・クリエイティブ推進課の高橋陽一課長は「UNIZONEはとても将来性の高い大会だと思いました」とまとめた。
銀テープの紙吹雪が舞ってUNIZONE EX Matchはフィナーレ。eスポーツイベントならではの派手な演出で幕を閉じた。
「海外の大会への視察にも行ったことがあり、以前からeモータースポーツには注目しておりました」とは、UNIZONE EX Matchの会場に訪れていたJAF eスポーツ部会の部会長に就任したばかりの上村昭一部会長のコメントだ。「ヨーロッパの本格的な大会と比べるとUNIZONEはまだ発展途上という印象ですが、今回は会場の演出を含めて格式高いイベントだったと思います」と率直な感想を述べた。「国内ではまだeスポーツの社会的認知度が低く、eスポーツの中でもモータースポーツはさらにパイが小さいので、まずは若い人に興味を持ってもらい、楽しさを伝えていく、そしてたくさんの方に知っていただくことが重要だと感じました」と語る。

フォト/長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

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