JAF公認eモータースポーツ“UNIZONE”がついにリーグ開幕! 名古屋OJAが全レースを掌握
2025年3月12日

JAFが公認する国内唯一のeモータースポーツリーグ「UNIZONE」が、2月24日についに開幕した。記念すべき開幕戦は、愛知県名古屋市を拠点とする武藤壮汰選手と小出峻選手と齊藤祐太選手を擁した名古屋OJAが圧巻のパフォーマンスを披露し、行われた4レースの合計点で他チームを圧倒した。
UNIZONE e-Motorsport League Rd.1
開催日:2025年2月24日
開催地:ビエント高崎ビッグキューブ(群馬県高崎市)
主催:JeMO
UNIZONEはJAF公認のeモータースポーツとして2023年12月にリーグ発足の発表会が行われた。その発表の中ではお披露目となるエキシビションレースが実施され、翌2024年2月には群馬県高崎市、3月には東京ビッグサイトでオフラインマッチが催された。8月のFIAモータースポーツゲームスの日本代表選考レースを挟み、9月には3拠点をつないだオンラインマッチも開催され、各種イベントが行われるとともに“UNIZONE”ブランドの認知度向上に努めてきた。
そして2025年2月24日、偶然にも1年前にUNIZONEが一般公開されたビエント高崎で、満を持して公式リーグ開幕へと至る。ここまで紆余曲折があったことは想像に難く、長い準備期間を経て開幕戦へと漕ぎつけた一般社団法人日本eモータースポーツ機構(JeMO)の出井宏明代表理事は「さまざまな関係者の皆さまの支えでここまで来ることができました。日本全国から精鋭5チームが集まっていますので楽しんでいただけたらと思います」と感慨深く語っていた。
参戦チームについては2024年12月に発表があったとおり、静岡県を拠点とする「遠州ハママツモータース」、群馬県を拠点とする「群馬ダイヤモンドペガサス」、熊本県を拠点とする「Saishunkan Sol 熊本」、東京都を拠点とする「東京ヴェルディレーシング」、愛知県を拠点とする「名古屋OJA」と5つのスポーツチームで構成され、初戦はオフライン大会ということで全チームがビエント高崎に集結した。
なお2025年3月現在の情報では、全チームがひとつの会場に集まるオフライン大会はこの開幕戦のみだ。第2戦以降は神戸のeSPARKLe KOBEを運営拠点とし、チームは各々の拠点からZOOM接続で参戦するオンライン大会が採られることがアナウンスされている。チーム拠点については集客機能はもちろん備えており、会場限定のコンテンツなど、各チームの特色を打ち出したイベントが開催されるようだ。













遠州ハママツモータース


群馬ダイヤモンドペガサス


Saishunkan Sol 熊本


東京ヴェルディレーシング


名古屋OJA


レースフォーマット
UNIZONEの本リーグは「予選タイムアタック」「スプリントレース①」「スプリントレース②」「セミ耐久レース」という4つのフォーマットで行われ、獲得した「個人ポイントランキング」「チームポイントランキング」で順位が争われる。年間5戦で最も多くのポイントを獲得した「個人チャンピオン」に50万円、「チームチャンピオン」に400万円の賞金が設定されている。
予選タイムアタック
-
コース富士スピードウェイ
-
周回数アウトラップを経ての計測1周のみ
-
獲得ポイント1位:3pt、2位:2pt、3位:2pt、4位:1pt、5位:1pt、以下0pt
-
備考予選スーパーラップでの順位が以降全てのレースでのグリッド順
スプリントレース①
-
コース富士スピードウェイ
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車両スーパーフォーミュラSF23(トヨタorホンダ)
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周回数10周
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獲得ポイント1位:10pt、2位:8pt、3位:6pt、4位:5pt、5位:4pt、6位:3pt、7位:2pt、8位:1pt、以下:0pt
スプリントレース②
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コーススパ・フランコルシャン
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車両FIA-GT3マシン(チームの希望車種)
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周回数8周
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獲得ポイント1位:10pt、2位:8pt、3位:6pt、4位:5pt、5位:4pt、6位:3pt、7位:2pt、8位:1pt、以下:0pt
セミ耐久レース
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コーススパ・フランコルシャン
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車両FIA-GT3マシン(チームの希望車種)
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レース時間35分
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獲得ポイント1位:15pt、2位:12pt、3位:8pt、4位:5pt、5位:0pt
予選タイムアタック

すべてのレースでのグリッドが決まる重要な予選タイムアタックは、スーパーフォーミュラSF23で富士スピードウェイを走る、たった1周のスーパーラップ方式で争われることに。実車のスーパーフォーミュラでも行われない形式で、SF23はタイヤのウォームアップがアウトラップ1周のみでは温まりきらず、選手は最大グリップを発揮していない状態でのタイムアタックが強いられた。
第1走者の田中健太選手(遠州ハママツモータース)を皮切りに、予選タイムアタックがスタート。2走目の瀬田凛選手(遠州ハママツモータース)が1分21秒190というタイムで暫定トップに立つが、7走目の本命・武藤壮汰選手(名古屋OJA)がそのタイムを約コンマ7秒上回る1分20秒431を記録する。同じく名古屋OJA所属の小出峻選手も1分20秒965で続き、名古屋OJAの1-2で終わるかと思われたが、最終出走の黒沢和真選手(Saishunkan Sol 熊本)が1分20秒905を記録し2番時計を記録。最年少プレイヤーが名古屋OJAの牙城に迫った予選タイムアタックとなった。


予選タイムアタック結果
順位 | ゼッケン | ドライバー | チーム | タイム | ポイント |
---|---|---|---|---|---|
1 | 758 | 武藤壮汰選手 | 名古屋OJA | 1:20.431 | 3pt |
2 | 445 | 黒沢和真選手 | Saishunkan Sol 熊本 | 1:20.905 | 2pt |
3 | 759 | 小出峻選手 | 名古屋OJA | 1:20.965 | 2pt |
4 | 82 | 瀬田凛選手 | 遠州ハママツモータース | 1:21.190 | 1pt |
5 | 10 | 兒島弘訓選手 | 東京ヴェルディレーシング | 1:21.288 | 1pt |
6 | 11 | 木村偉織選手 | 東京ヴェルディレーシング | 1:21.355 | 0pt |
7 | 444 | 荒川麟選手 | Saishunkan Sol 熊本 | 1:21.411 | 0pt |
8 | 802 | 田中健太選手 | 遠州ハママツモータース | 1:21.804 | 0pt |
9 | 83 | 小山美姫選手 | 群馬ダイヤモンドペガサス | 1:23.155 | 0pt |
10 | 063 | 小此木裕貴選手 | 群馬ダイヤモンドペガサス | - | 0pt |
- ゼッケン063はアウトラップ最終コーナーのトラックリミット違反のためタイム抹消
スプリントレース①

スーパーフォーミュラSF23を用いて、富士スピードウェイでの10周のレースで争われるスプリントレース①。スタンディング方式で行われたスタートでは、7番手スタートだった荒川麟選手(Saishunkan Sol 熊本)が姿勢を乱してウォールに激突、早々にマシンにダメージを負ってしまう。
続くコカ・コーラコーナーでは、兒島弘訓選手(東京ヴェルディレーシング)が単独でスピンを喫するなど、UNIZONEライセンスを持つトッププレイヤーでもSF23と現地会場のシミュレーターの組み合わせに苦戦していることがうかがえる幕開けとなった。
レースはポールスタートの武藤選手(名古屋OJA)が、オープニングラップからほかを寄せつけないスピードを見せてポール・トゥ・ウィンを達成。黒沢選手(Saishunkan Sol 熊本)と小出選手(名古屋OJA)が激しくポジションを争った2番手争いは黒沢選手に軍配が上がり、2位を獲得することとなった。



スプリントレース①結果
順位 | ゼッケン | ドライバー | チーム | トータルタイム | ペナルティタイム | ポイント |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 758 | 武藤壮汰選手 | 名古屋OJA | 13:29.110 | 0:00.000 | 10pt |
2 | 445 | 黒沢和真選手 | Saishunkan Sol 熊本 | 13:33.536 | 0:00.000 | 8pt |
3 | 759 | 小出峻選手 | 名古屋OJA | 13:33.877 | 0:00.000 | 6pt |
4 | 82 | 瀬田凛選手 | 遠州ハママツモータース | 13:35.378 | 0:00.000 | 5pt |
5 | 063 | 小此木裕貴選手 | 群馬ダイヤモンドペガサス | 13:38.410 | 0:00.000 | 4pt |
6 | 11 | 木村偉織選手 | 東京ヴェルディレーシング | 13:41.773 | 0:00.000 | 3pt |
7 | 802 | 田中健太選手 | 遠州ハママツモータース | 13:42.688 | 0:00.000 | 2pt |
8 | 10 | 兒島弘訓選手 | 東京ヴェルディレーシング | 13:57.948 | 0:00.000 | 1pt |
9 | 83 | 小山美姫選手 | 群馬ダイヤモンドペガサス | 13:58.063 | 0:00.000 | 0pt |
10 | 444 | 荒川麟選手 | Saishunkan Sol 熊本 | - | 0:00.000 | 0pt |
スプリントレース②

続いて行われたスプリントレース②ではコースや使用車種ともに変更され、スパ・フランコルシャンを舞台に各チームが選択したFIA-GT3車両で争われた。また、一部チームは参戦選手の交代もあり、群馬ダイヤモンドペガサスが小此木裕貴選手から浅賀颯太選手へ、東京ヴェルディレーシングが兒島選手から佐々木光選手へドライバーを変更している。
全車が一斉にグリッドに並んだ映像に切り替わるも、マシンのグラフィックデザインが可能なカーリバリー機能に不具合があったようで、チームのカラーリングが揃わないハプニングが発生してしまう。実況の笹川氏がフォローを入れつつ、そのままスプリントレース②の戦いの火蓋は切られた。
このレースではトップを走る武藤選手(名古屋OJA)が2番手に浮上した小出選手(名古屋OJA)にスリップストリームを与えることでアシスト。武藤選手はコーナーではダウンフォース抜け防止のため、小出選手とのギャップをつくり、ストレートで差を縮めて再び小出選手のアシストを行うという離れ業を披露する。
名古屋OJAのチームプレイに、黒沢選手(Saishunkan Sol 熊本)と浅賀選手(群馬ダイヤモンドペガサス)が挑むも、割って入るまでには至らず。結果、スプリントレース②は名古屋OJAがチームプレイを存分に発揮して1-2フィニッシュを達成した。



スプリントレース②結果
順位 | ゼッケン | ドライバー | チーム | トータルタイム | ペナルティタイム | ポイント |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 758 | 武藤壮汰選手 | 名古屋OJA | 18:21.134 | 0:00.000 | 10pt |
2 | 759 | 小出峻選手 | 名古屋OJA | 18:21.944 | 0:00.000 | 8pt |
3 | 445 | 黒沢和真選手 | Saishunkan Sol 熊本 | 18:22.187 | 0:00.000 | 6pt |
4 | 063 | 浅賀颯太選手 | 群馬ダイヤモンドペガサス | 18:22.758 | 0:00.000 | 5pt |
5 | 82 | 瀬田凛選手 | 遠州ハママツモータース | 18:27.182 | 0:00.000 | 4pt |
6 | 11 | 木村偉織選手 | 東京ヴェルディレーシング | 18:27.644 | 0:00.000 | 3pt |
7 | 10 | 佐々木光選手 | 東京ヴェルディレーシング | 18:32.681 | 0:03.000 | 2pt |
8 | 802 | 田中健太選手 | 遠州ハママツモータース | 18:33.930 | 0:00.000 | 1pt |
9 | 444 | 荒川麟選手 | Saishunkan Sol 熊本 | 18:36.989 | 0:00.000 | 0pt |
10 | 83 | 小山美姫選手 | 群馬ダイヤモンドペガサス | 18:46.183 | 0:00.000 | 0pt |
予選タイムアタックとスプリントレースが終了したところで、ステージではレース中の緊張感から雰囲気が一変して和やかな空気の中でトークセッションが行われた。遠州ハママツモータースの田中選手、群馬ダイヤモンドペガサスの小此木選手、Saishunkan Sol 熊本の荒川選手、東京ヴェルディレーシングの兒島選手、名古屋OJAの武藤選手が登壇し、チームの紹介や魅力などを語った。

セミ耐久レース

UNIZONE開幕戦もいよいよ最終レース。セミ耐久レースは各チームから2名が出場ができ、35分間のレースの途中にはピットインを挟んでドライバー交代を行わなければならない規定も設けられている。なお、セミ耐久レースで獲得できるポイントはチームランキングのみとなり、個人ポイントには反映されないため、チームワークが勝利のカギとなる。
今大会唯一のローリングスタートで幕を開けたセミ耐久レースは、3番手スタートの東京ヴェルディレーシング(佐々木選手)が好スタートを切り、1コーナーで2番手に上がるとトップの名古屋OJAに急接近する。しかし、直後のラディオンコーナーで姿勢を乱した東京ヴェルディレーシング(佐々木選手)はタイヤバリアに衝突。車両に大きなダメージを負って何とかピットに戻って修復を試みるも、15分を超える修理時間が課せられて実質の戦線離脱となってしまった。
東京ヴェルディのクラッシュにより、一時2番手に上がったのは群馬ダイヤモンドペガサス(浅賀選手)だったが、同じくラディオンコーナーでSaishunkan Sol 熊本(黒沢選手)を押し出してしまい、ポジションを戻すためスローダウン。これに乗じて2番手には遠州ハママツモータース(田中選手)が浮上した。
だがその遠州ハママツモータースにも悲劇が襲いかかった。3周目のブランシモンコーナーで姿勢を乱し、ハイスピードでグラベルに突っ込んでしまう。遠州ハママツモータースの車両は耐えられず、激しく横転してクラッシュ。こちらも復帰と修復に多くの時間を費やし、戦線を離脱する。
名古屋OJAは武藤選手が順調な滑り出しでトップを奪い、小出選手に代わった後も安定したペースで後続を引き離していき、35分間のセミ耐久レースを制覇。これで名古屋OJAがスプリントレース①と②、セミ耐久レースとすべてのレースを制したこととなり、完全勝利でUNIZONE開幕戦を終えた。





セミ耐久レース結果
順位 | ゼッケン | ドライバー | チーム | トータルタイム | 周回数 | ペナルティタイム | ポイント |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 758 | 武藤壮汰選手 | 名古屋OJA | 35:07.599 | 15 | 0:00.000 | 15pt |
小出峻選手 | |||||||
2 | 444 | 黒沢和真選手 | Saishunkan Sol 熊本 | 35:29.964 | 15 | 0:00.000 | 12pt |
大滝拓也選手 | |||||||
3 | 83 | 浅賀颯太選手 | 群馬ダイヤモンドペガサス | 35:39.910 | 15 | 0:00.000 | 8pt |
小山美姫選手 | |||||||
4 | 802 | 田中健太選手 | 遠州ハママツモータース | -4Laps | 11 | 0:00.000 | 5pt |
瀬田凛選手 | |||||||
5 | 10 | 佐々木光選手 | 東京ヴェルディレーシング | -6Laps | 9 | 0:30.000 | 0pt |
木村偉織選手 |
- ゼッケン10は規定時間外のピットインによるドライバー交代で30秒加算
- ゼッケン10はLap1にマシンダメージの修復のため長時間のピット静止が発生
- ゼッケン802はLap3にマシンダメージの修復のため長時間のピット静止が発生
すべてのレースが終了し、レース結果の集計の間、リーグ主催者であるJeMOの紹介が改めて行われた。出井代表理事を始め、片桐正大チーム統括部門担当理事、北浦諭競技部門担当理事、オフィシャルパートナー代表のJRP上野禎久社長が登壇し、開幕戦を迎えた心境や競技の注目ポイント、そしてUNIZONEを通じて実現して欲しいことなどが語られた。

名古屋OJAの完勝という形で幕を閉じたUNIZONE本リーグ開幕戦。第2戦は4月29日にオンライン形式で開催が予定されている。オンライン形式と言っても、選手が自宅から参戦するわけではなく、5チームそれぞれの地元拠点でイベントを開催しながらUNIZONEに参戦する形となる。観客を会場に入れてのレース参戦のため、eモータースポーツに興味のある近隣地域の方はぜひ、地元地域のUNIZONEチームを応援してはいかがだろうか。

2025 SEASON Standings(チーム順位)
順位 | チーム | Rd.1 | Rd.2 | Rd.3 | Rd.4 | Rd.5 | トータル |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 名古屋OJA | 54 | 54pt | ||||
2 | Saishunkan Sol 熊本 | 28 | 28pt | ||||
3 | 遠州ハママツモータース | 18 | 18pt | ||||
4 | 群馬ダイヤモンドペガサス | 17 | 17pt | ||||
5 | 東京ヴェルディレーシング | 10 | 10pt |
2025 SEASON Standings(個人順位)
順位 | ドライバー | Rd.1 | Rd.2 | Rd.3 | Rd.4 | Rd.5 | トータル |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 武藤壮汰選手 | 23 | 23pt | ||||
2 | 小出峻選手 | 16 | 16pt | ||||
2 | 黒沢和真選手 | 16 | 16pt | ||||
4 | 瀬田凛選手 | 10 | 10pt | ||||
5 | 木村偉織選手 | 6 | 6pt | ||||
6 | 浅賀颯太選手 | 5 | 5pt | ||||
7 | 小此木裕貴選手 | 4 | 4pt | ||||
8 | 田中健太選手 | 3 | 3pt | ||||
9 | 佐々木光選手 | 2 | 2pt | ||||
9 | 兒島弘訓選手 | 2 | 2pt | ||||
11 | 小山美姫選手 | 0 | 0pt | ||||
11 | 荒川麟選手 | 0 | 0pt |
フォト/長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/岡田衛、JAFスポーツ編集部