例年より早い開幕のスーパーフォーミュラ、初戦は野尻智紀選手が優勝を飾る

レポート レース

2024年3月15日

2024年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は、例年より1か月早い3月上旬の幕開けとなった。予選日に雪まじりの雨が降るほどの寒さとなった開幕戦は、2021、2022年と連覇を成し遂げた実力者、野尻智紀選手(TEAM MUGEN)が予選3位から圧巻のスタートダッシュで逆転勝利を飾った。

2024年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権第1戦
(2024 NGKスパークプラグ鈴鹿2&4レース内)

開催日:2024年3月8~10日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:GSS、SMSC、ホンダモビリティランド株式会社

 2月中旬に行われた公式テストからわずか2週間というインターバルでの開幕戦となった今シーズンのスーパーフォーミュラ。昨年のチャンピオンである宮田莉朋選手をはじめ、ランキング上位5名のうち3名が海外カテゴリーへの挑戦でシリーズを離れ、代わって昨年のFIA F2チャンピオンであるテオ・プルシェール選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)や岩佐歩夢選手(TEAM MUGEN)、全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権の2023年王者、木村偉織選手(San-Ei Gen with B-MAX)といった新たな顔ぶれが加わった。さらに、日本人女性ドライバーとして初、そして史上最年少で国内最高峰フォーミュラシリーズへの参戦がかなったJuju選手(TGM Grand Prix)。彼らルーキーが、ベテラン勢にどう立ち向かっていくのかに注目が集まった。

鈴鹿サーキットの入場開始直後の様子。スーパーフォーミュラをはじめ、さまざまなカテゴリーのレースが行われる場とあって、大勢の観客が訪れた。
鈴鹿サーキットレーシングコースのS字コーナーが、ネーミングライツにより今回の「2024 NGKスパークプラグ鈴鹿2&4レース」から「ASURA S字コーナー」と呼ばれることになった。
今シーズン、スーパーフォーミュラデビューしたのは4名。岩佐歩夢選手(TEAM MUGEN)は、2020年のフランスF4チャンピオン、2023年FIA F2で4位。テオ・プルシェール選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)は、2023年FIA F2チャンピオン。木村偉織選手(San-Ei Gen with B-MAX)は2021年FIA F4でシリーズ3位、2023年全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権 シリーズチャンピオン。Juju選手(TGM Grand Prix)は、2023年Zinox F2000 Formula Trophy チャンピオン。

予選

 予選日は朝から曇り空で、公式練習の前後には雨が雪に変わる場面もあった。気温も2桁に届かないほどで、極寒の中で練習走行が行われたが、ここでトップタイムをマークしたのは野尻選手。2月のテストで好調な様子を見せた佐藤蓮選手と山本尚貴選手のPONOS NAKAJIMA RACING勢がそれに続いた。野尻選手は2番手の佐藤選手と約0.2秒の差をつけていて、予選でもこのままポールポジションを獲得するだろうと思われたが、その予想を大きく裏切り、新たなポールシッターが誕生した。

 迎えた公式予選、昨年までと同じくノックアウト方式が採られ、まずはQ1のAグループで、昨年の最終戦で嬉しい初優勝を飾った太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が、その勢いを維持してトップタイムをマーク。2番手に山本選手が着け、ルーキーの岩佐選手が3番手に並んだ。プルシェール選手は8番手でQ2進出を逃し、「乗っている感触は良かったんだけど…」と戸惑いの表情を見せていた。

 続くQ1Bグループでは、野尻選手が2番手の牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)に0.4秒という大差をつけてトップタイムをマーク。ここまでは大方の予想通りの流れとなったが、Q2では野尻選手は3番手に。太田選手が野尻選手を100分の5秒破ってみせると、さらに100分の9秒速いタイムをたたき出したのが阪口晴南選手(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)だった。エンジニア体制が変わり、さらに今シーズンからはエースナンバーといえるゼッケン「38」を背負う阪口選手が、心機一転の初戦で見事に自身初のポールポジションを獲得することに。4番手に佐藤選手、5番手に山本選手、6番手には山下健太選手(KONDO RACING)が並んだ。

予選でのピットレーン。決勝ではピットイン-アウトのタイミングが勝敗を左右するひとつの要因となった。
スーパーフォーミュラ開幕戦のポールポジションを獲得した阪口晴南選手(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)。
決勝スタート前に行われたグリッドウォークも多くの観客で賑わった。

決勝

 一夜明けた決勝日の鈴鹿サーキットは、前日に比べ雲も少なく、気持ちの良い青空が広がった。相変わらず空気は冷たいものの、決勝レースが始まるまでには路面温度も20℃を超え、日差しの中で31周の決勝レースがスタートした。

 ポールシッターの阪口選手、フロントローの太田選手はそろって出遅れてしまい、見事なスタートダッシュを決めた野尻選手と佐藤選手がトップと2番手につけてオープニングラップを終える。2周目に入ったところで、小高一斗選手(KONDO RACING)と国本雄資選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)がASURAコーナーで接触し、2台がコースサイドでストップ。これにより、レースは早々にセーフティカー(SC)が入ることになった。

 リスタートが切られたのは6周目。すると、6番手走行の牧野選手と7番手までポジションを落としていた太田選手のチームメイト対決が白熱。お互いにオーバーテイクシステム(OTS)を使いながら一歩も引かないバトルが展開された。この対決は、シケインで一度は先行を許した牧野選手が1コーナーで太田選手を抜き返しいったんは幕を引く。太田選手はその後、OTSが使えないタイミングを狙われて背後の福住仁嶺選手(Kids com Team KCMG)にもかわされてしまった。

 10周が終了しタイヤ交換が可能になると、真っ先にピットに飛び込んでいったのは山本選手と牧野選手。これに反応して、11周終了のところで山下選手、福住選手、太田選手がピットインする。路面温度が低く、アウトラップに時間がかかった山本選手らの前で、3人はピットアウトに成功。すでに1周を走ってタイヤが温まった山本選手はみるみるうちに3人に接近し、福住選手をデグナーカーブで、太田選手をヘアピンカーブでとらえたが、山下選手までは届かず。山下選手はコース上でかわせなかった山本選手をオーバーカット作戦で逆転した。

 これで、タイヤを交換した組の中でトップに立った山下選手は、暫定トップを走る野尻選手との差を削りにかかる。野尻選手もターゲットを山下選手に絞ると、十分にギャップが開いているうちにと13周を終えたところでピットイン。チームも素早い作業で、野尻選手にホームストレート1本分のマージンを与えることに成功した。当然、すでにタイヤが温まっている山下選手は猛烈な勢いで迫ってくるものの、野尻選手には届かず。アウトラップを終えてタイヤに熱も入った野尻選手は、ここから再び山下選手との差を広げていった。

 最後までタイヤ交換のタイミングを引き延ばしていた岩佐選手がピットに向かったのは26周目を終えたところ。これで見た目上でもトップに返り咲いた野尻選手は、そのまま後続とのギャップもコントロールしながらフィニッシュ。3度目のシリーズチャンピオンに向けて幸先の良いスタートを切った。2位の山下選手は昨年の第2戦富士大会以来、約1年ぶりの表彰台獲得。3位の山本選手は、昨年のシーズンを怪我で離脱してから復帰戦となるレースで、涙の表彰台となった。ルーキー勢では岩佐選手が最上位で9位入賞。木村選手は12位完走、プルシェール選手はマシントラブルで18位完走となった。Juju選手は予選19位からスタートし、ライバル勢とそん色ないラップライムを刻んで周回。スーパーフォーミュラデビューレースを無事17位完走で終えた。

決勝では、前列2台が出遅れて混戦模様でのスタートとなった。
周回前半のピットイン後、アウトラップで時間がかかった一方、猛追し順位を上げた山本尚貴選手(PONOS NAKAJIMA RACING)。
後続を振り切り前を走る野尻智紀選手(TEAM MUGEN)を追う山下健太選手(KONDO RACING)。
周回中盤、一旦差が縮まったかに見えた山下選手と野尻選手だったが、野尻選手が再びその差を広げた。
開幕戦優勝ということもあり、喜びを爆発させる野尻選手。
スーパーフォーミュラ開幕戦の表彰台。左から2位の山下選手、1位の野尻選手、3位の山本選手。
会場では実車を使用したレスキュー訓練がオフィシャルたちにより実施された。

 フォト/遠藤樹弥、吉見幸夫 レポート/浅見理美、JAFスポーツ編集部

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