フォーミュラリージョナルは鈴鹿の三連戦で開幕。奥住慈英選手がポイントリーダーに

レポート レース

2024年3月18日

2024年のフォーミュラリージョナル選手権(FRJ)の第1~3戦が、鈴鹿サーキットで3月8〜10日に開催された。開幕戦のエントリーは13名となり、そのうち5名が外国人ドライバー。コロナ禍が沈静化し、また円安であることも関係しているのだろう。どうあれ、シリーズのグローバル化は大いに歓迎すべき要素であるのは間違いない。そんな中にあっても、予選ではポールポジションを第1戦は廣田築選手が、第3戦は奥住慈英選手が獲得し、決勝では目が離せない展開となった。

2024年JAFフォーミュラリージョナル地方選手権 第1戦・第2戦・第3戦
(2024 NGKスパークプラグ 鈴鹿2&4レース内)

開催日:2024年3月8~10日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:GSS、SMSC、ホンダモビリティランド株式会社

 FRJは全6大会・14戦で争われるのは昨年同様だが、うち2大会が全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)との併催となるのが最大のトピックス。今大会と第4大会・もてぎがその対象となる。従来はFIA世界耐久選手権のサポートレース以外は、ローカルレースの一戦として開催されることが大半を占めていたため、昨今のSFの注目度からすれば、FRJにも一層の盛り上がりが期待できそうだ。

 2月21日に公式テストを行ったが、そのときはあいにくの雨模様。金曜日に45分、2回行われた専有走行で初めてドライコンディションを経験したというドライバーも少なからず存在した上に、温度が低すぎたことがタイムに影響したようだ。全体的にタイムが伸び悩む中、セッション1のトップはマスタークラスのアキタ選手だった。フォーミュラカーレースでは無名の存在だが、普段は鈴鹿クラブマンレースで行われるv.Granzを戦うドライバーで、2月末に行われた開幕戦では4位入賞を果たしている。

 セッション2ではようやくトップタイムが2分を切るようになり、最速タイムとなったのは全日本F3選手権Nクラスの経験を持つ廣田選手。「前回が鈴鹿の最終戦で、スポットで出たんですけど、クルマの理解が深まってきたのと、フォーミュラはブランクがあったので(2016年以来)、感覚が戻ってきたことの2点で、気持ちよく走れました。ちょっと置いていたところがありますから、もう少し行けそうですが、クルマのフィーリングはいい感じです」と力強く語っていた。

予選

 土曜日の早朝に予選は行われたが、青空に恵まれてコンディションはまずまず。路面温度が10度を切っていた金曜日に対し、気温は10度、路面温度は15度まで上がっていた。決勝のグリッドは従来どおり。Q1のベストタイムが第1戦、セカンドベストタイムが第3戦、そしてQ2のベストタイムで第2戦のグリッドが決定する。

 それぞれ入念にタイヤのウォームアップを行い、Q1でトップが2分を切ったのは4周目。奥住選手に続いたのは廣田選手だ。いずれも1周クールダウンを行った後、ふたりの間に割って入ったのはアキタ選手。しかし、再びのアタックで廣田選手がトップに躍り出て、奥住選手が2番手に。さらに昨年の最終戦ウィナー、ミハエル・サウター選手とセバスチャン・マンソン選手、中村賢明選手が続き、アキタ選手はその後のタイムアップが果たせず6番手に。だが、マスタークラスのトップは守り抜いた。

「昨日から若干仕様変更して、チェックしながら走っていたんですけど、方向的には良くて。まとめきれなかったですけど、レース1のポールポジション(PP)を獲れて良かったです」と廣田選手。しかし、「トラフィックにずっと引っかかっていたので、実質クリアラップは1回だけ」だったという廣田選手は、セカンドベストタイムでは5番手に。奥住選手が第3戦のPPを獲得し、2番手はサウター選手で、3番手は初参戦のマンソン選手。これにアキタ選手が続いた。

 奥住選手は「今日、ニュータイヤが初めてだったんです(笑)。練習で使っていなかった割にはうまくできたのかなと。ロングは僕がいちばんやっていると思うので、決勝に関してはポジティブに行けると思います」と語った。

第1戦のPPは廣田築選手(Bionic Jack Racing)が獲得した。
第3戦のPPを獲得した奥住慈英選手(SUTEKINA RACING TEAM)。

 続いて行われたQ2は若干温度が上がってコンディションがより向上し、3周目からトップは2分を切ってきた。ラップリーダーとなったサウター選手は2周連続でタイムアップを果たし、誰をも寄せつけず。一方、奥住選手は途中でピットに入って内圧を調整、仕切り直して再度アタックをかけるも、その直後に赤旗が出る不運。そのため、廣田選手に続く3番手となった。

 第2戦をPPからスタートすることとなったサウター選手は、「Q1では水温が100度を超えたので、一回ピットに入らなくてはならなくて、それで1周しかプッシュラップが取れなかった。Q2もベストラップはオーバーテイクしながら出したので、少しロスがありました。ちょっと不満もありますが、PPが獲れて良かったです」と語っていた。

 そしてマスタークラスは3レースともアキタ選手がトップ。「Q1はポジション取りがうまくいかなかったので、ベストなコンディションのときにベストタイムを出せなかったんですけど、Q2はわりといいポジションで行けました。ただ、トップと比べると差はまだあるので、もう少し詰めていきたいところですね。他の人たちが久々のレースなのに対し、僕は暮れから今年の初めにかけてレースをやっているので、そのマージンはあると思います」と語るとおり、第2戦と第3戦は総合でも4番手からのスタートとなる。

第2戦のPPを獲得したミハエル・サウター選手(BIRTH RACING PROJECT)。
マスタークラスでは3レースともアキタ選手(ABBEY RACING)がトップでのスタートとなった。

第1戦

 土曜日のうちに決勝は第1戦、第2戦を行い、それぞれ12周での戦いとなる。その第1戦を前にして最終コーナーの向こうから不穏な雲が近づいてくる。それが全車グリッドに並んだころから小雪を舞わせた。路面が濡れるまでには至らなかったものの、路面温度は急下降。5分ほどスタートディレイとされた後、セーフティカー(SC)スタートでの開始が発表される。

 SCの先導は実に3周に及んだが、その間にアキタ選手が200Rで、サウター選手が2コーナーで、そしてSCがコースを離れようとした周の130RでPPの廣田選手がスピンアウト! サウター選手は無念のリタイアとなり、廣田選手は7番手、アキタ選手は最後尾からのレース開始となってしまう。その廣田選手のスピンを間一髪のところで回避した奥住選手がトップに浮上し、これに予選5番手だった中村賢明選手が2番手で続く。3番手はジェシー・レイシー選手、そして4番手は昨年のTCRジャパン二冠王の猪爪杏奈選手だったが、ヘアピンでスピン。他にもS字でコースアウトした車両もあったため、再度SCが導入される。

 SCの先導は3周で終わり、8周目からバトル再開。2回目のリスタートでは奥住選手に中村選手がぴたりとつけてコントロールラインを通過するも、1周戻ってきた間におよそ1秒半の差が。このリードを危なげなく守り抜いて奥住選手が優勝。そして、その後方で激走を見せていたのが廣田選手だ。最初のリスタート直後に4番手に浮上し、2回目のリスタート後にはレイシー選手をパス。そのまま中村選手との差もじわりじわりと詰めていき、ファイナルラップで2番手に浮上。しかし、SCラン中のスピンがペナルティの対象となり、30秒加算のペナルティで5位に降格となってしまった。「ターボラグにやられてしまいました。このスピードなら大丈夫だと思ってアクセルを踏んだら、回っちゃって」と悔やむ廣田選手。

 一方、勝ちはしたものの、「めっちゃ危なかったです(笑)。SCが抜けて行った直後の130R立ち上がりでちょうど雨が降ってきて、もうみんな『危ない、危ない』みたいになって。僕もコース上にとどまることができなくて、外に逃げて。いや〜、危なかったけど、勝てて良かったです。SC中もタイヤを温めて、限界行けて勝てて良かったです」と奥住選手は苦しいレース展開だったことを素直に認めていた。2位は「喜べはしないですね。レースペースも良くなかったし、でも飛び出さないように、とりあえずゴールまで。もっといいレースができるよう、あと2レース頑張りますと」と語る中村選手で、3位は初参戦のレイシー選手が獲得。

第1戦で中盤のリードを守り優勝した奥住選手。
第1戦2位の中村賢明選手(TOM'S FORMULA)と、3位のジェシー・レイシー選手(BIRTH RACING PROJECT【BRP】)。
第1戦の表彰台には左から2位の中村選手、優勝した奥住選手、3位のレイシー選手が登壇した。

 第1戦のマスタークラスは、追い上げてきたアキタ選手を寄せつけずモトキ選手が優勝。総合でも4位を獲得した。しかし「勝てましたが、セットもできていなかったからストレートも遅かったし。もうちょっと踏めるようにしたいですね」と、むしろ反省することしきりといった様子だった。

第1戦のマスタークラスを制したモトキ選手(Rn-sports)。

第2戦

 土曜日最後のレースとなった第2戦は、天候もすっかり回復して過不足ないコンディションでの争いとなった。ここで好スタートを切ったのがPPのサウター選手だったのに対し、2番手の廣田選手は完全に出遅れてしまう。奥住選手がひとつ順位を上げて2番手に浮上する。そして、その直後にS字でクラッシュした車両があったことで、SCが導入されることに。

 車両回収はわずか1周程度で済み、すぐにレースは再開。トップのサウター選手に少しも遅れず奥住選手が続くも、3番手の廣田選手は130Rで若干のオーバーラン。1周戻ってくると、サウター選手のリードはおよそ2秒にも広がっていた。そのまま逃げ続けるサウター選手に対し、奥住選手は3番手にとどめた廣田選手への応戦一方に。8周目のシケインでぴたりと背後に着けた廣田選手は、続く9周目の1コーナーで2番手に返り咲く。

 ところが、廣田選手は11周目のシケインでバックマーカーに行く手を阻まれてしまう。そればかりか接触でフロントウイングを傷め、続いての1コーナーで奥住選手に抜き返されてしまう。「早い減速で避けられませんでした」と悔やむ廣田選手。

 そんな後続の出来事を知ってか知らずか、難なく逃げ切ったサウター選手は「スタートがしっかり決まって、その後のペースは僕がいちばん速かったので、自信を持ってずっと走れました。大きく離せて優勝できたので、とてもうれしいです」と語っていた。

「明日(第3戦)はPPなので、いい方のタイヤを残しておいたのですが、それにしては2位を獲れたのはラッキーでした」と語る奥住選手が2位で、3位は廣田選手だった。

第2戦で優勝したサウター選手とドライビングコーチを務める荒聖治氏。
第2戦2位の奥住選手と3位の廣田選手。
第2戦の表彰台に上がったのは、左から2位の奥住選手、優勝のサウター選手、3位の廣田選手。

 第2戦では、総合4位のアキタ選手がマスタークラスではぶっちぎりの優勝となった。「第1戦では気ばかり先に行って、ちょっと乱暴にタイヤを温めていたら回ってしまいました。第2戦は慎重に行こうと思い、スタートがあまりうまくいきませんでした。が、そこで抜かれなかったので、後は逃げ切れました。ただ、後半ペース上がってきたんですが、最初からペース上げられるようにならないといけないなと」と、アキタ選手は喜びの中にも今後の課題を滲ませた。

第2戦のマスタークラス優勝のアキタ選手。

第3戦

 日曜日に行われた第3戦も12周での争い。3レースすべて入れ替わったPPにつけたのは奥住選手で、2連勝を狙うサウター選手がその脇に並んだ。土曜日までの厳しい寒さは、わずかに緩み始めていた。

 注目のスタートを誰より完璧に決めていたのが奥住選手。サウター選手がやや遅れ、マンソン選手が2番手に。そして、7番手から一気にジャンプアップを遂げた中村選手が4番手に上がっていた。そして、オープニングラップのシケインでは、アキタ選手がレイシー選手と接触。大きく順位を落としてしまう。

 1周目を終えた時点で、奥住選手とサウター選手の間隔は早くも1秒6に。これが次の周には、ほぼ3秒半に広がるも、3周目からはサウター選手もファステストラップの連発で応酬する。そんな中、4周目のS字で一台がクラッシュ。SCが導入されて、先導は3周にも及ぶ。これで貯金を奪われた奥住選手は、リスタート直後の1コーナーでサウター選手にインを刺されるも、しっかりガードを固めて逆転を許さず。だが、なおもサウター選手のチャージは続き、11周目のシケインで鋭く奥住選手をパス。これには理由もあり、「なんかギヤダウンできなくなって」と奥住選手。

 トップに立ったサウター選手は「奥住選手のブレーキングが早くなっていたから、オーバーテイクできるだろうと。我ながらよくできました(笑)。僕の方がペースは良かったので、その後はプッシュして逃げることができました。この2連勝は大きいけれど、第1戦を落としていますから(苦笑)。でも、これから毎回ベストなレースをしていきたいです。次のSUGOは初めて走るけど、そこでも速ければ面白いですね!」と語っていた。

 一方、2位ながらランキングトップを保った奥住選手は「仕方ないですね。でも、それまではいい組み立てができていたので、それは次につなげられるでしょう。実は次回以降どうなるか分からないですけど、参戦の機会があったら残り全部勝って、ポイントリーダーを守り続けたいと思います」と力強く語っていた。3位はマンソン選手で、初めて表彰台に上がることに。

第2戦に続き第3戦も優勝し、喜びを爆発させるサウター選手。
第2戦2位の奥住選手と3位のセバスチャン・マンソン選手(BIRTH RACING PROJECT【BRP】)。
第3戦の表彰台に上がったのは、左から2位の奥住選手、優勝のサウター選手、3位のマンソン選手。

 そして第3戦のマスタークラスは、総合5位でモトキ選手が2勝目をマーク。「予選から毎回セットは変えて、だんだん良くなっていった感じです。変えたセットに走りを合わせ切れてはいないんですけど、近づいているのが分かったのは良い傾向ですね。全戦出られないんですけど、この週末の2勝は、きっと大きいでしょうね」と語っていた。一方、アキタ選手は序盤の接触の影響でピットインを繰り返し、完走を果たすに留まった。

第3戦のマスタークラスも制したモトキ選手。

フォト/遠藤樹弥、吉見幸夫 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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