ウェットコンディションの全日本ダートトライアル開幕戦 最激戦のSA2クラスでは、藤本隆選手が全日本初勝利!
2024年3月29日

3月23~24日に京都府郊外の京都コスモスパークで全日本ダートトライアル選手権 第1戦「FORTEC CUP in KYOTO」が開催され、2024年度の全日本ダートトライアル選手権が開幕した。
2024年JAF全日本ダートトライアル選手権 第1戦「FORTEC CUP in KYOTO」
開催日:3月23~24日
開催地:京都コスモスパーク(京都府京都市)
主催:TEAM FLEET
昨年の11月に、コスモスパーク管理組合から土地所有者の意向により、2024年末をもってダートトライアルコースとしての事業を終了することが発表された京都コスモスパーク。2007年から全日本ダートトライアル選手権が開催されている同コースは、今大会をもって18年の歴史に幕を閉じることとなる。ラストランとなった全日本のリザルトには、全クラス合わせておよそ150名のドライバーが名を連ねた。
決勝コースは、スタート直後にテクニカルなコーナーはあるものの、京都コスモスパークの高速区間を目一杯使ったハイスピードコースがレイアウトされた。特に最も外側の区間を駆け抜ける外周区間は、クラスやドライバーによっては4速全開で駆け抜けるというスリリングな設定だ。
公開練習が行われた前日の23日から降り続けた雨は、決勝が行われる24日には小康状態となったものの、路面はたっぷりと水を含んだマッディなウェットコンディション。走行が進むにつれて路面を覆う泥が掃けて固い路面が顔を出すものの、時折振り出す雨でふたたび路面が泥化するという難しいコンディションとなったが、それでも第2ヒートは各クラスでベストタイム更新ラッシュが続き、最後まで誰が勝つか分からない息をのむ展開が続いた。



SA2クラス
これまでJAFカップでは5勝、全日本選手権では97勝を挙げている北村和浩選手が、三菱・ランサーエボリューションXからトヨタ・GRヤリスに乗り換え、選手権100勝を目指すこととなったSA2クラス。
最多20台が出場したこのクラスの第1ヒートでは、地元の近畿地区で昨年のチャンピオンを獲得したベテランの藤本隆選手(三菱・ランサーエボリューションVIII)が、クラス唯一の1分25秒台をマークしてトップに立つ。第2ヒートは、その藤本選手が「コスモスパークは地元なので、ウェット路面の経験値が高かったこともあって第1ヒートはトップになれたと思います。第2ヒートはもっとタイムを詰めることができる区間があったので思いっ切りいったら、攻めすぎてしまったのかタイヤがリム落ちしてしまって……」と、リタイアに終わってしまう。
全日本レギュラー陣にとっては藤本選手を逆転するチャンスが訪れたが、いずれも1分26秒台にとどまる。第1ヒート2番手の黒木陽介選手(トヨタ・GRヤリス)が第2ヒートで1分25秒台に突入するが、藤本選手が残した第1ヒートのタイムには0.564秒届かず。北村選手も1分26秒台、昨年のSA2クラスを制した浜孝佳選手(三菱・ランサーエボリューションIX)も1分27秒台のタイムに終わり、第1ヒートのタイムで逃げ切った藤本選手が全日本選手権初優勝を飾った。




Dクラス
Dクラスは、鎌田卓麻選手(スバル・BRZ)が1分24秒613のタイムで第1ヒートのトップを奪い、第2ヒートもベストタイムを1分23秒060に更新し、2022年第5戦切谷内以来の優勝に手をかける。だが、2019~2022年チャンピオンの炭山裕矢選手(三菱・ミラージュ)が、鎌田選手のタイムを0.222秒更新する1分22秒838をマーク。
これで勝負あったかと思われたが、「第1ヒートでクルマに違和感があったので、デファレンシャルからサスペンションまですべて替え、できる限りのことをやりました」という田口勝彦選手(三菱・ランサーエボリューションX)が、炭山選手のタイムをさらに0.245秒上回ってゴール。逆転に次ぐ逆転劇を演じたディフェンディングチャンピオンの田口選手が開幕戦を制した。




Nクラス
SA1クラスで3年連続チャンピオンを獲得した細木智矢選手が、今年から三菱・ランサーエボリューションXで参戦してきたNクラス。滑りやすいウェット路面の中、第1ヒートはトヨタ・GRヤリスで豪快な走りを見せる三枝光博選手がトップタイムをマーク。
第2ヒートでは三枝選手のタイムがなかなか更新されず、その三枝選手自身も第2ヒートはベストをわずか0.015秒更新するという展開だった。そんな中で、第1ヒートで三枝選手から1.21秒遅れながらも2番手につけていた細木選手が、三枝選手のタイムを0.848秒更新。このタイムを塗り替える選手は現れず、細木選手が4WDターボ車での初戦を優勝で飾った。2位に三枝選手、3位には「自分的にはコスモスは苦手なコース。第2ヒートを攻めすぎて内容が悪かったわりには、開幕戦としてはまずまずの結果を残せたと思います」という岸山信之選手(トヨタ・GRヤリス)が入った。




SC1クラス
SC1クラスは、第1ヒートで深田賢一選手(ホンダ・シビック)と山下貴史選手(三菱・FTO)、山崎迅人選手(三菱・ミラージュ)の3台が0.091秒の中で並ぶという僅差の勝負となった。第2ヒートで「路面はウェットですが、第1ヒートからドライタイヤでいけると信じて走りました」という山下選手が、クラス唯一の1分32秒台に突入し、第1ヒートトップの深田選手のタイムを逆転してトップに浮上。深田選手はわずかにタイムダウン、山崎選手はサスペンショントラブルでリタイアに終わり、山下選手が2021年の第2戦恋の浦以来となる全日本優勝を飾った。




SC2クラス
第1ヒートは1分26秒台に2台、1分27秒台に6台という超接近戦の勝負となったSC2クラスは、第1ヒートをベテランの吉村修選手(三菱・ランサーエボリューションX)が奪った。しかし、第2ヒートは「エンジンが新しくなり、クルマもコントロールしやすくなりました」という目黒亮選手(トヨタ・GRヤリス)が、第1ヒート8番手から大きくジャンプアップし、トップに浮上。第1ヒート4番手の坂田一也選手(三菱・ランサーエボリューションX)も目黒選手の第2ヒートと同じく1分24秒台に飛び込むものの0.529秒届かず。第2ヒートの逆転劇で、2022年全日本選手権チャンピオンの目黒選手が1年超ぶりの勝利を手にした。




PNE1クラス
クラスを2連覇した則信ノワールしげお選手がSC1クラスへと移り、新たに2018年SA1クラスチャンピオンの小山健一選手が、ATミッションのスズキ・スイフトスポーツでPNE1クラスへ移ってきた。小山選手はホンダ・シビックタイプRでこれまで全日本選手権では13勝を挙げている。
第1ヒートは、2023年シリーズランキング2位の葛西キャサリン伸彦選手(スズキ・スイフトスポーツ)が第1ヒートの1コーナーで転倒するというアクシデントがある中、小山選手がベストタイムをマーク。第2ヒートもベストタイムを約3秒縮める走りを見せ、PNE1クラス初戦でクラス優勝を飾った。その小山選手に0.808秒差まで迫った鈴木正人選手(スズキ・スイフトスポーツ)が2位。鈴木選手とダブルエントリーの山部恭裕選手が3位だった。




PN1クラス
PN1クラスは、昨年のシリーズチャンピオンを獲得した徳山優斗選手がPN3クラスへ移り、同2位の工藤清美選手がAT仕様のホンダ・フィットに乗り換え参戦。ここでは太田智喜選手(マツダ・デミオ)が両ヒートを制する走りで完勝。2位には若手の奈良勇希選手(スズキ・スイフトスポーツ)。「2位のタイムは想定していましたけど、トップの太田選手のタイムは想定外でした」という渥美孝太郎選手(ホンダ・フィット)が、昨年の第6戦切谷内以来となる3位表彰台を獲得した。




PN2クラス
PN2クラスはスズキ・スイフトスポーツのワンメイク状態。第1ヒートで昨年のチャンピオンを獲得した中島孝恭選手が2番手以下を大きく引き離してトップに立つが、ベストタイム更新ラッシュとなった第2ヒートは、九州の濱口雅昭選手が逆転。昨年、1年ぶりに全日本復帰を果たした最終戦タカタに続く優勝を飾った。京都コスモスパーク初挑戦となる、北海道の張間健太選手が2位。「第2ヒートの路面にアジャストし切れなかった。大事に行きすぎたかな」という中島選手が3位だった。




PN3クラス
第1ヒートでパッション崎山選手(トヨタ・GR86)がクラス唯一となる1分34秒台のタイムでトップに立ったPN3クラス。しかし、第2ヒートはその1分34秒台の攻防戦となり、昨年のPN1クラスチャンピオンの徳山優斗選手(トヨタ・GR86)がトップに立つ。シードゼッケンに入っても徳山選手のタイムがなかなか更新されない状況が続いた。
しかし、昨年のこのクラスを制した竹本幸広選手(トヨタ・GR86)が「第1ヒートは走り方の組み立てがうまく噛み合いませんでした。第2ヒートは、前半で何か所か失敗したんですが、タイヤと路面に集中して走りました」と、徳山選手のタイムを逆転。竹本選手が開幕戦を制した。2位に徳山選手。「ウェット路面は得意なので、もう少しタイムは伸ばせたと思います」というベテランの寺田伸選手(トヨタ・GR86)が、第1ヒート7番手から大きく順位を上げ3位に入った。




SA1クラス
SA1クラスは、今回が全日本選手権参戦2戦目となる25歳の北野壱歩選手(スズキ・スイフトスポーツ)が第1ヒートを制し、第2ヒートもベストタイムを更新して首位の座を堅守する。この北野選手に、同じ中国地区からエントリーの川本圭祐選手(ホンダ・インテグラ)が食い下がるが、0.111秒届かず。
このまま北野選手が逃げ切るかと思われたが、「第2ヒートは出走直前に雨が降ってきましたが、第1ヒートの悪かったところの修正に集中しました」というクラス最終走者の河石潤選手(スズキ・スイフトスポーツ)が北野選手のタイムを0.602秒逆転。最後まで冷静だったベテランの河石選手が、若手の躍進の前に立ちはだかった。





フォト/CINQ、大野洋介、山口貴利 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部