センドラ船戸アレックス翔太選手がうれしい勝利、筑波/富士シリーズのスーパーFJ初戦を制す
2024年4月1日

全国各地のサーキットで続々とレースカテゴリーが開幕を迎えているが、筑波サーキットでも3月17日に今季初戦となる「筑波チャレンジクラブマンレース」の第1戦が開催された。3月半ばの気候とは思えぬほどの好天に恵まれ、各ドライバーは久々の力走を見せてくれた。
2024年JAF筑波/富士スーパーFJ選手権 第1戦
2024年JAF筑波サーキットトライアル選手権シリーズ 第1戦
(筑波チャレンジクラブマンレース 第1戦内)
開催日:2024年3月17日
開催地:筑波サーキットコース2000(茨城県つくば市)
主催:VICIC
筑波/富士スーパーFJ選手権
全8戦で争われるスーパーFJ選手権の筑波/富士シリーズは、今年も筑波サーキットからのスタートとなった。第1戦のエントリーは14名ながら、昨年のランキングトップ10のうち、実に7名が卒業を果たしており、その顔ぶれはほぼ入れ替わったと言っていい。
予選
新たな覇権争いが注目される中、予選では計測2周目に1分斬りが果たされる。それどころか、次の周には58秒台に叩き込んできたセンドラ船戸アレックス翔太選手が、その後もコツコツとタイムを刻み続けて57秒979を記し、さらに57秒866にまで縮めてしまう。
ちなみに筑波のスーパーFJのレコードタイムは、現在ヨーロッパのGTレースやスーパーGTを戦う根本悠生選手が2013年に記した57秒571。しかし当時とはエンジン規定が異なり、今はデチューンの方向になっているゆえ、57秒866は更新にも匹敵するタイムと言っても過言ではない。
ポールポジション(PP)を獲得した驚速ドライバーは「長い名前ですが“アレックス”と呼んでください。今21歳で、父がスペイン人、母が日本人です。レースは2022年にスーパーFJで一度だけ。シミュレーションはやっていましたが、カートの経験はないです」と自己紹介するアレックス選手。
予選について振り返ってもらうと、「『おおっ、57秒台に入った!』と思っていたら、さらにコンマ1秒刻めました。ただ、最後の方で太陽が出てきたんですが、気温が高くならなかったらさらにコンマ1秒は詰められたと思います」と言うから、なお驚きである。
そのアレックス選手にコンマ3秒差で続いたのはルーキーの津田充輝選手で、「前半は良かったんですが、後半は自分の車両コントロールに苦しんだ部分があって、その中でも平均的にタイムは出せましたが、ベストまで行きませんでした」と悔しそう。
一方、昨年2勝を挙げてランキング4位だった角間光起選手は、「予選は自分自身、まとめきれなかった部分があるので、決勝はバトルで挽回できたらと思います。バトルには自信があります」と、わずか1000分の1秒差で津田選手に続く。4番手には昨年のランキング8位だった内藤大輝選手がつけ、フォーミュラ・ビートでデビューウィンを飾った酒井翔太選手が5番手となった。

決勝
決勝レースは18周での争い。スタート直後にPPのアレックス選手は「1速から2速に入れられなくて失速して……」と、津田選手ばかりか角間選手の先行も許してしまい、3番手にドロップ。すぐさま第1ヘアピンで角間選手を抜いたアレックス選手ではあったが、その間に津田選手はほぼ1秒の差をつけてスタンド前に戻ってくる。角間選手はアレックス選手に遅れることなく続いた。
後方のバトル次第で津田選手が逃げる展開が予想されたが、1コーナーでコースアウトした車両があり、回収のため5周にわたってセーフティカー(SC)が導入される。SCがフラッシュランプを消した後のバックストレートでのアクセルオンは、津田選手もアレックス選手もほぼ同時のタイミング。逆に角間選手はやや出遅れた感。
なおもトップ争いは続くが、9周目の第2ヘアピンでアレックス選手が津田選手の虚を突く形で並び、バックストレートを並走。そして最終コーナーでトップに返り咲く。その後、アレックス選手はじわりじわりと差を広げていく。
だがその差が1秒強に達したあたりからやや伸び悩んだのは「シフトミスしました。ディスプレイをイジろうとしてシフトするのを忘れてしまったんです」とのこと。ラスト2周はファステストラップを連発して挽回、最後は津田選手に対してほぼ2秒の差をつけて初優勝を飾った。
「スタートがうまくいっていれば満足できたんでしょうが、ちゃんと練習しないとダメですね。ペースを持っているという自信があったので、なんとかインを差せば抜けると思っていました。後半はプッシュしすぎてもあんまり良くないと思って。とくにトップに立ってからは自分自身を落ち着かせることを心がけて走っていました」とアレックス選手。
一方、ワンチャンスで捕らえられ、デビューウィンならずの津田選手は「もうちょっと色々レース経験を積んで、『こんな場合はこういう感じ』というのを深めていきたいと思います。スタートは良かったんですけどね……」と反省することしきり。
そして3位入賞の角間選手も「自分自身のドライビングにミスが目立ってしまい、そこが心残りです。トップ2台に追いつくだけの力はまだ足りなかったです。このチームだったら優勝を狙えるので、次戦は絶対に勝ちます」と、やはり反省の思いを欠かさなかった。4位は内藤選手で、5位はスタートで酒井選手をかわしていた伊藤駿選手がポジションを最後までキープして獲得した。





筑波サーキットトライアル選手権
今年も全5戦で争われる筑波サーキットトライアル(CT)選手権には、実に49台がエントリー。また、昨年は成立しなかったCT3クラスにも3台のエントリーがあり、7クラスによって覇が競われた。もちろん排気量の大小によって従来どおり2組に分けられたとはいえ、それでも常時20台以上がコース上にいる格好だ。
「クリアラップが取りにくくなった」、「クラスごとの速度差が大きく、ちょっと走りにくかった」という声があった一方で、筑波CTの主とも言える存在の森田一穂選手は「初めての方もけっこういて、僕らもそういう人のペースがよく分からないのと、明らかにいつもよりタイム差が大きいので、走り難かったのは確かにありましたね。でも、良かったです。CTが始まったころの台数を思えば、人気が出てきて良かったです。ありがたい」と素直な心境を語ってくれた。
CT1クラス
今大会は第1ヒートより第2ヒートの方が明らかに温度は上がっていたため、全クラス事実上の一本勝負となった。CT1クラスは日産・R35GT-Rの中澤貴秀選手が昨年に猛威を振るっていたが、今回の開幕戦は不参加。代わって主役の座を射止めたのは同じR35GT-Rの溝口敦子選手で、総合2位も獲得する。
「“ママのおでかけGT-R”っていう車名なんですけど、最初のころは3歳と7歳の子供たちを乗せて実際に買い物に行ったり出かけていたりしたんです。今は子供たちが中学生と高校生になりまして、いつの間にか乗せなくなったので、サーキットを走るようになりました(笑)」
「筑波サーキットは初めてですけど、富士スピードウェイでは10年前から走っていてチャンピオンの経験もあります。富士はR35のホームコースみたいな走りやすいところなんですけど、筑波は狭いのでR35のような重たくて大きいクルマには難しいコースだと感じました。今はまだ迷いながら走っているので、続け甲斐がありますね」
「初戦はとりあえず参戦することが叶いましたが、地道に頑張って残り4戦出たいです(苦笑)。家族がいいって言ってくれなかったら参戦できないので、まずは説得するのが第一関門ですね」と、溝口選手は素直な胸の内を語ってくれた。なお2位は澁澤栄一選手が獲得するも、またもR35GT-Rが目の上のたんこぶになってしまった。



CT2クラス
森田選手はCT2クラスのみならず、総合優勝を絶えず争う存在でもあるが、開幕戦で敗れる波乱が。総合優勝を飾ったのは、昨年のCT2クラスでランキング2位の松代耕二選手だった。昨年は2勝を挙げているが、いずれもウェットコンディションとあって「ドライで初めて勝てました。何を変えたわけでもなく、最終戦以来ノーメンテナンス(笑)。タイヤもそのままです。ちょっと台数が多くて走りにくくて、私も本当に最初の1周だけでした」と語るとおり、第1ヒートの計測2周目に出したタイムで逃げ切り成功。1分0秒918を新たなレコードタイムとした。



CT3クラス
ようやく成立となったCT3クラスで優勝を飾ったのは、昨年CT2クラスでランキング3位だった秋本拓自選手。本来のクラスで幸先のいいスタートを切っていた。「今年はちゃんとクラスが成立したので頑張ります。第2ヒートは路面も上がっていたので、最初から諦めていました(苦笑)。シーズン通して、ちゃんと走れれば」というのは素直な印象だろう。

CT4クラス
そしてCT4クラスを制したのは、「今まで草レースをやっていて、JAF戦に出るのは初めてなんです」と語る宮崎邦紘選手。「シリーズ通して出るか分からないんですけど、第2戦以降も出る予定で、せっかくだからシリーズチャンピオンを獲りたいと考えています。今年はこのクルマで(富士チャンピオンレースの)86BRZチャレンジカップも出る予定で、そちらはフル参戦の予定です」というから、今後が楽しみな存在である。



CT5クラス
昨年は4戦に出場してそのすべてで優勝と、CT5クラスでチャンピオンを獲得した石井均選手が、今年も快調な滑り出しを見せた。第2ヒートこそ鯉渕慶比古選手にトップを明け渡したものの、第1ヒートのタイムで逃げ切りを果たした。「今年はファイナルギヤを変えてノーマルに戻したので、それがラップタイムには有効的でした。第2ヒートはコントロールタワー脇の表示で、負けているのがすぐ分かったので頑張ったんですけど、追いつきませんでした。VTECの方が出てきたので、このまま負けないようにしたいと思います」と石井選手。レコードタイムも更新した。



CT6クラス
CT6クラスでは、昨年のランキング2位、安本悠人選手が終始トップを譲らず。まず1勝目を挙げた。「ちょっと暑かったかなと思いましたが、自己ベストを更新することができましたし、CT6のレコードも出せたので、そこは大変良かったと思います。ただ、このクルマのパッケージとしては、もっと早いタイムが出せると思うので、そこはもうちょっと次戦から詰めていけたら」と安本選手。



CT7クラス
昨年は全勝で日向孝之選手がチャンピオンとなったCT7クラスだが、「そのままの仕様で、新たな挑戦ですね」とCT6クラスに移行。まさに“鬼のいぬ間”の1勝目を挙げたのは、昨年はランキング3位だったT.Sakamoto選手だ。「とくに第2ヒートは暖かくなり過ぎましたね。第1ヒートで昨年の最終戦と同じぐらい出したかったんですが、体感としては出ていたものの、ロガーにエラー出ちゃって。自分の印象としては悪くなかったし、筑波のCTは皆さんマナー良くて走りやすいので、気持ち良く走らせていただいているおかげで勝てました」とSakamoto選手。



フォト/高橋学 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部