四国ジムカーナ最多エントリーのPNクラスは徳永秀典選手が激戦を制して勝利

レポート ジムカーナ

2024年4月4日

今年も全7戦で争われる四国ジムカーナ選手権シリーズ。今年も愛媛県西条市の瀬戸内海サーキット、徳島県吉野川市の徳島カートランド、高知県大豊町のモーターランドたぢかわ、愛媛県久万高原町のハイランドパークみかわといった多彩なコースで争われる。開幕戦は全日本ジムカーナドライバーの天満清選手や田中康一選手らの参戦で大いに盛り上がった。

2024年JAF四国ジムカーナ選手権 第1戦
2024年JMRC全国オールスター選抜ジムカーナ 第1戦
DCRジムカーナ '2024

開催日:2024年3月24日
開催地:瀬戸内海サーキット(愛媛県西条市)
主催:D.C.R

 開幕戦の主催を務めたのはドライバーズクラブルーキーで、会場は四国屈指のカートコースのひとつ、瀬戸内海サーキットだ。基本、四国にあるジムカーナコースは山間地につくられていることが多く、全体的に傾斜が強い傾向にある。ここ瀬戸内海サーキットも例に漏れず、独特な傾斜と荒れた路面、そしてコーナーによってグリップが変わる癖のあるコースだ。

 瀬戸内海サーキットのすぐ近くに住む、今大会の試走を務めた全日本ジムカーナドライバーの一色健太郎選手は「ジムカーナの場合、同じコーナーを逆走するにも傾斜が逆になるので、進入速度やアプローチの仕方がガラリと変わるのが難しいポイントです」と解説。走り込みが必要なコースであることがうかがえる。

 大会当日は3月の暖かさが嘘のような底冷えのするコンディション。弱く降り続く雨に、吐く息は白くなり、サーキットはまるで冬に逆戻りしたかのような陽気だ。これだけ気温が乱高下するとタイヤ選択もさることながら、内圧のセットアップや、それに合わせた車両のセッティングを見直さなくてはならず、エントラントを大いに悩ませた。

 今大会の競技長であり、今大会のコースを製作したコース委員長の西森啓祐氏は「エントリーフィーが上がったこともあり、皆さんに少しでも長い距離を走ってもらおうと思って、走り応えのあるコースをつくりました。2分以下のコースにしたつもりなんですが、試走でも2分を超えてしまったのは想定外でした。しっかりハンドルを回してもらってガッツリ走ってもらいたいですね」

「多分、勝負どころはコースの“渡り”一択。四国のコースはどこもカント(傾斜)がついているので、上りと下りで走りを変えるのがポイントでしょう。毎年コースをつくっていることもあって、そろそろネタが尽きてきたので……とりあえず長いコースをつくっておけばOKだと思っています(笑)」とコメント。エントラントと近いファミリー感のある主催であるとうかがえる。

 さらに、今大会は天満清選手がPNクラスにマツダ・ロードスター(ND5)で参戦。加えて全日本ジムカーナドライバーの田中康一選手がホンダ・シビックからスズキ・スイフトへスイッチしての初大会と、話題に尽きなかった。この2名が地元四国でどのような走りをするかにも注目が集まった。

冬から春へと変わる雨が前日から降り続いていたが、午後には雨が上がるとの予報も……。
コースを作成したのは、元全日本ジムカーナドライバーである西森啓祐氏。今大会では競技長とコース委員長を兼任する。
試走を行った一色健太郎選手でも2分を超えるコースとなっている。その長さゆえ慣熟歩行を行うにも大変。
屋根つきピットを完備している瀬戸内海サーキット。とくに今回のような雨天時は重宝される。
パイロンは少なめに、瀬戸内海サーキットをフルで使用した走り応えあるレイアウトだ。

PNクラス

 二輪駆動のPN車両で競われるPNクラスは、パワーで勝るスバル・BRZと、軽量コンパクトさでテクニカルなコースで勝負をかけるマツダ・ロードスター(ND5)の勝負になっている。今年も注目はSETOKAZEの徳永秀典選手と、昨年、徳永選手に唯一土をつけた金森峰史選手の対決。さらにこの開幕戦ではTECの天満選手がロードスターで急遽参戦を果たし、異種格闘技戦に拍車がかかった。

 まず第1ヒート、トップタイムをマークしたのは昨年ランキング4位につけた西村修一選手だった。「ボトムスピードを落とさずに走るのがポイントでしたね。雨のβ11は初めてだったんですが、イケイケで行ったのが良かったですね」と西村選手。一方、天満選手はまさかのパイロンタッチ。さらに徳永選手はミスコース。ターンの速さで定評のある金森選手だが、このコースではターンセクションもなく西村選手に届かない。

 勝負の第2ヒートはBRZをドライブする田北一賀選手から動き出す。もちろん、第2ヒートで多くの選手がタイムアップする中、第1ヒートトップの西村選手がタイムを更新し、ターゲットタイムを塗り替える。続く天満選手はパイロンタッチを喫し、生タイムでは西村選手のタイムを上回るも下位に沈んでいく。金森選手もタイムを上げてはくるものの、西村選手には届かず2番手。

 最終ゼッケンの徳永選手の走りは、第1ヒートでミスコースしたとは思えない鮮やかなパイロンワークだった。勝負どころとなる渡りの区間も見事に抜け切る。中間タイムで西村選手をコンマ数秒上回り、見事トップタイム更新。見事な逆転劇を披露して見せた。

 走行後、徳永選手は「コーナーを回った瞬間に頭が真っ白になってしまって、僕の悪い癖が出てしまいました。ホームコースの瀬戸内海サーキットで、最後に正回りもあったのでなんとか救われました。相当走りこんでいる結果だと思います。2本目の途中でも一瞬『ハッ!』と思ったときがあったんですが、ちゃんと走り切れて良かったです」と自分の走りを振り返った。

PNクラス優勝は徳永秀典選手(DL・MTV・植田自動車BRZ)。
2位は西村修一選手(スペDLテック嫁ロードスター犬)、3位は金森峰史選手(MOTIVEロードスターXP)。
PNクラスの表彰式。左から1位の徳永選手、2位の西村選手、3位の金森選手、4位の田北一賀選手、5位の鎗内良壮選手、6位の天満清選手。

ATクラス

 AE86の改造車で名を馳せた鎌田孝選手がトヨタ・プリウスでエントリーしたATクラス、今シーズンで参戦3年目となる。鎌田選手は徳島工業短期大学自動車部の顧問という立場から活動再開を決めたという。そして一騎打ちの相手は三菱・ランサーワゴンを駆る安東正憲選手だ。

 第1ヒートは雨が降りしきる中、ライン取りの丁寧さで鎌田選手がトップを奪う。小雨になってダンプコンディションとなった第2ヒート、安東選手がまさかのミスコース。これに伴い、鎌田選手が開幕戦勝利を手にすることとなったが、第2ヒートも手を抜かず7秒近くベストタイムを更新し、文句なしの勝利をつかんだ。

「誰も使わないプリウスですが……、ステアリングに集中してライン取りに気をつければ楽しく走れます。新型をオーダーしているんですが、秋にならないと届かないらしいので、新型が納車された際には乗り換える予定です」とATクラスで新風が巻き起こりそうな予感だ。

ATクラス優勝は鎌田孝選手(徳島工業短期大学ボミープリウス)。
ATクラスの表彰式。左から1位の鎌田選手、2位の安東正憲選手。

R1クラス

 B車両規定でつくられた軽自動車で争われるR1クラス。ディフェンディングチャンピオンの乃一智久選手に、北陸からの刺客・蓬茨夕美選手が挑む構図となった。しかし、圧倒的に地元有利なこのコースレイアウトで第1ヒートから頭ひとつ抜け出したのは、ブルーのホンダ・ビートを操る乃一選手だ。

 第2ヒートはATクラス同様、路面が急激に回復。蓬茨選手が気を吐き1秒差まで詰め寄るが、乃一選手の持つターゲットタイムを更新できず。この結果、乃一選手は第2ヒートがウィニングランとなったが、しっかり4秒のタイムアップを果たし、チャンピオンの強さを見せつけた。

 乃一選手は「昨年の最終戦から全く走れていなく、練習もなにもできずにぶっつけ本番だったので、どうなるんだろうなと不安でいっぱいでした。しかも雨ですし。それでも地元の瀬戸内海サーキットでしたので、なんとか勝てました」と安堵の様子。

「1本目は雨が酷くてアンダーがとても強くて困りました。でも2本目は小雨になってくれたので、グリップ感も上がって良かったです。リアタイヤにパイロンがくるイメージで走れましたね。今年も最終戦まで追いかけるつもりで、エントリー台数が少ないこのクラスが成立する限りは出たいです。また、中国地区にも遠征に出かけたいと思います」とコメント。

R1クラス優勝は乃一智久選手(SPDビートBSコニひまわりM)。
R1クラスの表彰式。左から1位の乃一選手、2位の蓬茨夕美選手、3位の日浦裕士選手。

R2クラス

 JMRC四国独自のタイヤ規制がかかるRクラスの中でも、1500㏄を超える前輪駆動車で争われるR2クラスは、ディフェンディングチャンピオンでホンダ・CR-Xの土居清明選手と、昨年ランキング2位のホンダ・シビックを駆るジュウガワ貴行選手のB16A対決に注目が集まった。第1ヒートで先手を取ったのはジュウガワ選手で、クラス最終ゼッケンの土居選手はまさかのミスコース……。

 第2ヒートでのタイムアップに期待がかかる中、この2名の間に割って入ったのは、昨年ランキング3位のスズキ・スイフトで参戦する西村誠選手だった。いきなり6.5秒のタイムアップを果たし、ターゲットタイムを更新した。

 会場に緊張感が走る中、続くジュウガワ選手は所々でアンダーは出すものの気迫の走り。しかし、西村選手のタイムにはコンマ3秒届かない。「A052でむちゃくちゃ頑張って走りました。アンダーが少し出ましたが、グリップは良かったです。でもゴールしてみたら……届きませんでした」と悔しそうなジュウガワ選手。

 そして土居選手も第1ヒートのミスコースが響いたのか、5番手タイムに留まってしまう。「タイヤが昨年のままでグリップが全然足りませんでした。タイヤが良かったらいけたかもしれませんが……」と無念のコメント。この結果、西村選手が生涯初の優勝を手にした。

 全ての選手から手厚い歓迎を受ける西村選手。「本当に初優勝です!ここまで31、32、33と乗り継いできてやっとここで勝てました。今日はタイヤのおかげですね。昨年は横浜タイヤだったんですが、今年履き替えたダンロップのβ11がとにかくグリップしてくれたことが勝因だと思います」

「このシーズンオフにRSKさんにオーバーホールを頼んだのも良かったですね。ウェットの空気圧をRSKの小清水さんからアドバイスしてもらったのも勝てた理由のひとつです。コース的には渡りの区間をどれだけスムーズに走るかに注意しました。今シーズンも全戦参戦予定で、ひとつでも上のランキングで終えられるように頑張ります」と喜びをあらわにした。

R2クラス優勝は西村誠選手(へっぽこスイフト)。
2位はジュウガワ貴行選手(YHクスコMOTIVEシビック)、3位は有岡大輔選手(FL2&4ITOスイフトS+)。
R2クラスの表彰式。左から1位の西村選手、2位のジュウガワ選手、3位の有岡選手、4位の道下貴広選手。

R3クラス

 ディフェンディングチャンピオンの仙波秀剛選手と、ランキング2位の山崎聡一選手が不参加となったR3クラスの開幕戦。昨年はこの両選手で7戦中6勝を挙げていることを考えると、2名が不在の開幕戦でなんとしてでも勝利を勝ち取りたいところだ。そんな中、第1ヒートをトップで折り返したのは北上宰選手だった。多くの選手が20秒台に留まる中、ひとり19秒台に突入する圧倒的な走りを見せつける。

 だが、そんな北上選手はプレッシャーからか第2ヒートでまさかのミスコース。「中盤くらいで折り返してくるところで迷ってしまいました。NSXに勝てたかどうかはわかりませんが、タイムは更新していたと思うので悔しいですね」と北上選手。とは言え、それでもトップタイムはしっかり守っている。

 クラス最終ゼッケンの高芝大輔選手が北上選手のタイムを抜けなければ、北上選手の優勝となるのだが……。高芝選手は中間タイムで4秒のアドバンテージを獲得すると、その勢いのままゴールしてひとり16秒台をマーク、圧倒的なスピードで勝利を手にした。

 高芝選手は「1本目はタイヤが食わなくて、ギヤ比が合わないところも多かったです。雨量が変わった2本目でマシンのトルクに頼る走りに変えたのが良かったのかもしれません。1速か2速かで迷ったところは全部2速でいったのが正解でした」

「コーナリングのボトムスピードをキャリーしたまま、外周の速度をしっかり稼げたのも良かったですね。上位2名がいないところではしっかり勝たなくちゃいけないと思って頑張りました。彼らがいるときにもちゃんと勝てるよう、今シーズンも頑張ります」と振り返りと抱負を語った。

R3クラス優勝は高芝大輔選手(BS・CP55・NSX)。
2位は北上宰選手(カントリーガレージ・DL・86)、3位は武田弘己選手(気がつけば4児のパパS2000)。
R3クラスの表彰式。左から1位の高芝選手、2位の北上選手、3位の武田選手、4位の土居明生選手。

R4クラス

 三菱・ランサー、スバル・インプレッサ、トヨタ・GRヤリスと、多彩なAWD勢が鎬を削るR4クラス。昨年、山下和実選手と一騎打ちを演じた佐藤忍選手は、今大会でJMRC派遣の審査委員長を務めているため不在となっている。ディフェンディングチャンピオンの山下選手にクラス全員で挑む構図だ。その山下選手が第1ヒートから快調にタイムをつくり上げ、2番手の西原貴志選手にコンマ1秒差をつけ、トップタイムをマークして折り返す。

 当然、このクラスでも第2ヒート勝負の様相は変わらなかった。まずは西原選手がターゲットタイムを2秒近く更新。第1ヒートはパイロンペナルティで泣いたインプレッサの瀧本恭之選手がトップタイムを塗り替え、「瀬戸内海サーキットのウェットを走るのが初めてだったんですが、そこそこ走れました。丁寧に走りすぎたところもありましたが、そこそこのタイムだったと思います」とコメント。

 だが、その更新合戦に終止符を打ったのはクラス最終ゼッケンの山下選手で、ひとり10秒台をマークして見事開幕戦を勝利で飾った。走行後、「71RSだったんで低温ウェットは厳しかったんですが、なんとか勝てました。昨日、コソ練して適正な空気圧を探せたのが良かったのかも」と勝因を語る。

「1本目の瀧本選手のタイムが圧倒的だったのでこれは勝てんな……と思ったんですが、2本目で勝てて本当に良かったです。やっぱりショートカットがキーポイントでした。僕のエボⅥは軽い方なんで、それも幸いしたのかもしれません。次戦からACDを入れようと思っていて、しばらく不調になると思いますが、今シーズンも頑張ります」と笑顔でコメントを残した。

R4クラス優勝は山下和実選手(SMCランサーエボ6)。
2位は瀧本恭之選手(YHモーティブインプレッサ)、3位は西原貴志選手(R☆にしはランサー)。
R4クラスの表彰式。左から1位の山下選手、2位の瀧本選手、3位の西原選手、4位の村上秀雄選手、5位の三好範学選手。

BSC1クラス

 全日本ジムカーナドライバーの田中康一選手がスズキ・スイフトに乗り換え、初参戦を果たしたのがBSC1クラス。出走前、田中選手にマシンをスイッチした経緯を聞くと「2023年、全日本にシビックで出ていたら勝負にならなかったんです。これから長く続けようと思ったらここで乗り換える必要があると考え、決意しました。シビックの部品がもう欠品していること、スイフトに伸びしろを感じていたこともあって選んだんです」とコメント。

 そんな田中選手とディフェンディングチャンピオンの窪田竜三選手との、同じRSKメンテナンスの全日本ドライバー同士の対決に注目が集まった。しかし、初手から圧倒的な速さを見せたのは田中選手で、現役ランカーらしい貫禄の走り。AWD勢を抑え込むオーバーオールタイムを記録する。

 第2ヒートになってもこの勢いは衰えない。窪田選手もAWD勢を上回るタイムを記録し、必死に食らいつこうとするが届かない。この結果、田中選手は見事スイフトでのデビューウィンを達成。しかもオーバーオールタイムもさらっていった。

 田中選手は「EKと比べるとエンジンの使い方が全然違うのが特徴ですかね? スイフトはトルクがあるので低回転から使っていけるのがポイントです。とくにEKで1速と2速で悩むところは、スイフトなら2速で行けるのが良いですね。今日の走りは95点! 事前の練習にきたときよりもずっと乗れていたし、タイヤのグリップ感もあったのが良かったです」と感想を述べた。

BSC1優勝は田中康一選手(YH☆ワコーズ☆RSKスイフト)。
BSC1クラスの表彰式。左から1位の田中選手、2位の窪田竜三選手、3位の竹下俊博選手、4位の右城義文選手。

CLクラス

 2台の参加となったクローズドクラスは、ホンダ・S660の山口寿選手が優勝を決めた。「ドキドキでした。クローズドクラスは昨年から4回走らせてもらいました。全戦参加したいですが、走れるところだけ走れればと思います」と今シーズンの参戦計画を語った。

CLクラス1位は山口寿選手(SPEC-D S660)。
CLクラスの表彰式。左から1位の山口選手、2位の菊池結祈音選手。

 今大会の主催を務めたD.C.Rの山本貢代表は「こんな寒い中、第1戦で多くの皆さんに参加してもらえてうれしかったです。オフィシャルもこの天候の中、1日頑張ってくれて感謝ですね」と大会をまとめた。

ドライバーズクラブルーキーを中心とした、今回オフィシャルをしてくれた皆さん。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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