東北ジムカーナの開幕戦、BSC-2の王者対決は飯野哲平選手が逃げ切りWIN!

レポート ジムカーナ

2024年4月16日

2024シーズンの東北地区ジムカーナの春は、エビスサーキットの西コースで奥州ビクトリーサークルクラブ(奥州VICIC)の主催による、2024年JAF東北ジムカーナ選手権の第1戦で幕を開けた。奥州VICIC主催によるエビスでの開幕戦は2021シーズン以来ということで、モビリティリゾートもてぎの南コースでの2024年JAF全日本ジムカーナ選手権 第1・2戦を戦った全日本ドライバーや、関東地区からも多数参戦。北東北エリアのドライバーが多く欠場する中、それでも2024年JMRC東北ジムカーナシリーズも併せて41選手が開幕戦に集結した。

2024年JAF東北ジムカーナ選手権 第1戦
2024年JMRC東北ジムカーナシリーズ第1戦
2024年JMRC全国オールスター選抜 第1戦
DIREZZA CUP

開催日:2024年4月7日
開催地:エビスサーキット西コース(福島県二本松市)
主催:奥州VICIC

 今回の一戦のコース設定は「開幕戦ということなので、思いっきり端から端まで行かせたいという思いでつくりました。(ホンダ・)シビックでクロスが入っている車両だと、4速でしっかり踏めるようなコースになっていると思います。東北はどうしてもアベレージスピードが低いので、他地区に行くとハイスピードコースでかなわないことが多いと思うので、スピードがのるようにしました。JAFカップ以来の久しぶりのエビスですしね」という意図とのこと。

 さらに「今回の勝負どころは西コースのアップダウンに設定されたターンセクションも重要ですが、やっぱりストレート前のセクションをどう処理して速度をのせられるかだと思います。コテコテのジムカーナをやっていると、どうしても最後の3本パイロンのスラロームに目がいってしまうと思いますが、タイム差がつくのはそこではないと思っています」と攻略ポイントも語ってくれた。

 サーキット路面というハイグリップな環境も相まって、ハイスピードな戦いとなりそうだ。

2024年JAF東北ジムカーナ選手権の開幕となる第1戦の舞台、エビスサーキット西コースは数多くのコースが建つ関東地区でも味わえないドラスティックな勾配差と、3速踏みっきりのロングストレートが魅力となっている。
3速どころか4速まで入るとのことで、東北地区戦の2024シーズン開幕戦は最高速が100km/hを優に超えるハイスピードなレイアウトで競われた。
出走前の車検ではオフィシャルによって、ヘルメットなど装備品を中心にチェックが行われた(左)。今回の一戦は長いレイアウトとなったため、40分間の慣熟歩行は2周から3周歩くのがやっとだったようだ(右)。

2024年JMRC東北ジムカーナシリーズ第1戦
2クラス

 開幕戦の口火を切ったのはJMRC東北シリーズの2クラス。排気量1000㏄以下、前輪駆動のB車両で争われ、Sタイヤの使用が禁止されている。第1ヒートからトップタイムをマークしたのはDC2型ホンダ・インテグラをドライブする吉田友明選手。ひとり1分24秒台をマークし、2番手以下を2秒以上突き放してのトップタイムだ。4月上旬としては汗ばむほどの気温に上昇した開幕戦だったが、それでも勝負は第2ヒート。

 パイロン設定によっては通常のレコードラインとは異なる走行ラインを強いられるのもジムカーナ。エビス西のようにドリフトも多く開催されるコースでは、ダスティな1本目よりも2本目勝負となることが多く、今回の一戦も同様の現象が起こった。このクラスでも第2ヒートに入り各選手は軒並み、自己ベストタイムを更新していく。しかし、吉田選手の第1ヒートでのタイムを上回るドライバーは現れず、そのまま吉田選手が逃げ切った。本人は第2ヒートもきっちり、自身が記録したターゲットタイムを1秒以上押し上げての完勝だ。

「1本目はターンが上手くできたのが良かったんですが、2本目にかけてコースの渡りの部分をきちんと速度を落としたのが良かったですね。リアのブレーキが強めのセットアップなのでブレイクするのが早いんですが、タイヤの空気圧など他の部分で調整できたのも良かったです」と、吉田選手は勝因を語った。そして、「今日の自分の走りに点数をつけるなら、個人的には100点と言いたいところなんですが、次にもっといい走りができるように90点にしておきます」と、二連勝を期待しての自己採点をつけた。

2024年JMRC東北ジムカーナシリーズ第1戦の2クラスは、4選手による争いを吉田友明選手(プライズインテグラ)が圧倒的な速さで2ヒートとも制圧した。
2クラスの表彰台には左から2位の冨松元選手(ヤダもん星人の通園スイフト)、優勝した吉田選手、3位の宮本和彦(ニャンコ大好きCR-X)が登壇した。

2024年JAF東北ジムカーナ選手権 第1戦
PN3クラス

 排気量1500cc以上で2WDのPN車両が競うPN3クラスは、関東勢が大挙して押し寄せたことでこの一戦最多、15選手が争った。全日本のPN3クラスにも参戦する、石井和則選手による“おかずの友”の呼びかけで集まったドアイバーが中心で、全日本で勝利を挙げている奥井優介選手も参戦した。

 東北勢対関東勢の構図になったこのクラスでまずトップタイムをマークしたのは、関東勢の大坪伸貴選手。次にスタートした東北勢の熊谷駿選手が約0.5秒差に迫り、第1ヒートが始まった。しかし、序盤に記録した二人のタイムを更新できるドライバーは現れず、関東勢の奥井選手がスタートした。2023シーズンの全日本を戦ったGR86を加速させ、誰よりもストレートで速度をのせる持ち前のイケイケの走りでトップタイムを奪取、奥井選手が頭ひとつ抜け出した。

 そして運命の第2ヒートでは、大坪選手がベストタイムを約0.5秒上げるも奥井選手には届かず、熊谷選手もタイムアップを果たすも、大坪選手に0.142秒差にとどまる。各ドライバー軒並みベストタイムを更新はするものの、トップ3を脅かすタイムを記録することができない。

 トップを守ったまま走り出した奥井選手は、Sタイヤを装着するBSC-2クラスでも3番手に入る、1分18秒603をマーク。自身が記録したターゲットタイムを1.5秒近く上げる見事なドライビングテクニックを披露した。

「1本目、全体的に置きにいってしまいました。なんか気が抜けてしまっていたのを2本目はちゃんと修正しました。自分らしくない走りをしてしまったことは後悔していますね」と、奥井選手は勝利を決めた第1ヒートの走りは失敗だったことを明かした。

 そして、「今年は全日本選手権にGRヤリスで参戦するのを中心に、関東の地区戦をスポットで参戦しようと思っています。さるくら(モータースポーツランド)と浅間台(スポーツランド)を中心に、JAFカップを目指すのもいいかなぁっと(笑)」と今季の予定も語った。

 一方、2位に甘んじた大坪選手は「今年は地区戦3回出て3回2位なんですよね… 。やっぱり若さが足りなかったですね。2本目も結構悪くない走りだったんですが、いくつかパイロンが寄ってくるんで避けたところはあるんですが、ちょっと奥井選手のタイムは見えませんでした」と、悔しさをあらわにした。

4WDのGRヤリスを駆って、2024年JAF全日本ジムカーナ選手権のPN4クラスに参戦している奥井優介選手(DL☆コサリ☆おかずの友686)が後輪駆動のGR86を操ってJAF東北ジムカーナのPN3クラスに参戦し、2位以下に1.7秒差をつけて圧勝。駆動方式の違いを問わない速さを見せつけた。
「“おかずの友(石井和則選手の友人)”として参戦したんです」と、言う大坪伸貴選手(おかずの友1BRZ)がPN3の2位を獲得。「とりあえず関東はチャンピオンを狙っていきたいと思います」と、奥井選手たちとしのぎを削っている2024年JAF関東ジムカーナ選手権PN3クラスでの戦いに意気込んだ(左)。2023シーズンはBSC-2クラスでランキング4位を獲得した熊谷駿選手(クイック・DL・GR86)は東北勢最上位の3位を獲得。クラス転向初戦で表彰台に上がった(右)。
上位6選手が表彰されたPN6クラス。左から4位の松川文昭選手(おかずの友4FWGGR86DL)、2位の大坪選手、優勝した奥井選手、3位の熊谷選手、5位の勅使河原誠選手(おかずの友5・マンパイGR86)、6位の池沢広行選手(BGつながるITDXL85DL)。この一戦の盛況を生んだ“おかずの友”発起人の石井和則選手(261エリアμゼクラ124DL)は惜しくも7位だった。

SATW-2クラス

 UTQGのTREAD WEARが280以上のタイヤを使用する2WDのSA車両で争われるSATW-2クラス。昨季、阿部崇治選手と王座争いを演じた関勝哉選手は欠場。豊本将希選手と清水直人選手がいかに阿部選手を捕まえるかに注目が集まった。第1ヒートではやはり、ディフェンディングチャンピオン阿部選手が頭ひとつ抜け出たタイムを記録。2位の清水選手に約0.6秒差でトップタイムを記録する。

 第2ヒートに入り、ほとんどのドライバーがタイムアップを果たすも、やはり阿部選手のタイムを抜く者は現れない。清水選手も豊本選手もベストタイムを上げてはくるものの、トップタイムを更新することはできなかった。「1本目はタイヤが低温でグリップしないと思い、探り探り走ったのもあり、前半は良かったんですが、後半は抑えすぎてしまっただけですね。2本目は逆に前半を抑え気味にしていって、後半上げていくようにしたのが良かったのかもしれません」と、阿部選手は2本の走りを分析した。

 一方、2位に入った清水選手は「ずっと乗っていたSW型(トヨタ)MR2からGR86に乗り換えて、まだまだ慣れていませんね。昨日の練習会では阿部ちゃんに1.3秒離されたのが、コンマ3秒差まで詰めることができたので、今シーズンは少しは面白い戦いができるのかと思っています」と、第2戦以降に期待を寄せた。

SATW-2クラスは、阿部崇治選手(GメカS2000GT)が王者の貫禄を見せて優勝。「リアタイヤはシバタイヤの新パターンで走ったんですが、低温域のグリップも凄く良くなっていますね。今シーズンも去年に引き続きチャンピオンを獲れるように頑張ります」と、新タイヤとともに目指す二連覇への好スタートを切った。
同じ後輪駆動でも、リアミッドシップエンジンのトヨタMR2からフロントエンジンのGR86に乗り換えて間がない、というSATW-2の清水直人選手(Gメカ☆S-Base☆GR86)だが、阿部選手に続く1分22秒台に入れて2位を獲得した(左)。後輪駆動の車両が競う中、前輪駆動のZC33S型スズキ・スイフトスポーツを駆る九州大学自動車部OBの豊本将希選手(SKIP!FORTECスイフト)が3位と、孤軍奮闘した(右)。
SATW-2は左から、2位の清水選手と優勝した阿部選手、3位の豊本選手のトップ3が表彰を受けた。

SATW-4クラス

 SATW-2と同じタイヤ規制で、4WDのSA車両で競うSATW-4クラス。ひとり1分19秒台を記録した佐柄英人選手の独壇場となり、「久しぶりのエビスでアンダーを出してしまったんですが、それなりに走れたと思っています。大きなミスも少なかったので満足しています」と、2位以下に2秒以上の差をつけて優勝を決めた。

 さらに「ターンが坂になっているので難しいんですが、小さく走ることを意識してランサーの良さを引き出すようにしました。今年は全戦参戦したいと思います」とのことで、今季も満点チャンピオンが濃厚な予感だ。

SATW-4クラスでただひとり、第1ヒートから1分19秒台に入れた佐柄英人選手(DLレイズマルイCLランサー)が、第2ヒートでは約0.2秒のタイムアップで2位以下を寄せつけない圧勝で、王者の貫禄を見せた。
SATW-4で表彰を受けたトップ3選手。左から2位の渡辺弘選手(ランサー)、優勝した佐柄選手、3位の小野敦史選手(Sマジック黒ヤリス)。

BSC-2クラス

 排気量制限なし、2WDのB・SA・SAX・SC車両で競うBSC-2クラスは、昨季と2022シーズンのチャンピオンが顔を揃えた。さらに、2015シーズンの全日本SA1クラス王者の工藤典史選手に加えて、2023年JAF関東ジムカーナ選手権のPN1クラスを制した橋本恵太選手も参戦し、チャンピオン対決となった。

 一昨季、学生でありながらこのクラスを制し、「CUSCO & WinmaX & DUNLOP・Bライセンス競技若手育成支援プログラム」の支援を受ける飯野哲平選手、転勤で今季は南東北エリアでの開催への参戦が中心となるディフェンディングチャンピオン、宍戸政宏選手との争いだ。

 第1ヒートでまず初手をとったのはFD3S型マツダRX-7をドライブする飯野哲平選手。ひとり1分18秒台を記録し、ターゲットタイムをマークする。一方、タイヤのセットアップに苦しんだ、DC2型インテグラを駆る宍戸選手は3番手に留まってしまう。その間に割って入ったのは、練習走行ではイン側のタイヤを大きく浮かせてしまい、転倒するかと思われる走りも見せた“走るアナウンサー”工藤選手。ZC33S型スズキ・スイフトスポーツのアクセルを踏み切って、2番手タイムをマーク。橋本選手は4番手につけた。

 勝負の第2ヒートは、飯野選手のタイムダウンから動き出す。その走りを見ていたのか、気合が入った走りを見せた工藤選手は1分18秒537の好タイムをマーク。しかし、0.522秒飯野選手には届かず2番手。最終ゼッケンの宍戸選手もリアタイヤをハードに変更し、タイムを上げはするものの、1分20秒代の壁は破れず3位に、橋本選手はタイムダウンで4位に終わった。

「なんとか、とりあえず開幕戦からいい成績が収められたのが良かったですね。2本目は1本目にタイムが出せていたので、攻めようと思ってしまったがために攻めすぎてしまいタイムダウンしてしまいました。17秒台は見えていたと思うので残念ですね」と、飯野選手は優勝したものの第2ヒートの走りは反省しきり。そして、「今日のコースは島回りのところでボトムスピードを落とさずしっかり攻められるかが勝負だと思うんですよね。130㎞/hからのブレーキングでしたから」と、コース攻略のカギも解説してくれた。

 一方、2位の工藤選手は「今日はメンタル的にあまり調子が良くなったんですが、全日本チャンピオンを獲ったときのBGMを走る前に聞いて、コンセントレーションを上げることができたのも良かったですね」と、好走の秘訣を明かしてくれた。第2ヒートでのタイムアップについては、「リアの空気圧を思いっきり下げて、リアを少しマイルドに流れるようにしたのが良かったですね。まさかセブンと同秒台に持っていけるとは思わなかったんですが、走り的には良かったですね」と、タイヤの空気圧がポイントだったようだ。

 また3位の宍戸選手は「練習不足ですね。工藤さんが凄く頑張ってるんで、なんとか一矢報いたかったんですが、ターンでタイムを稼いでも上手くいきませんでしたね。1回くらいは割って入れるように頑張ります」と、今回の一戦の反省とともに今季の展望を語ってくれた。

BSC-2クラスは2022シーズンにこのクラスを制し、全日本B・SC2クラスに挑んでいる飯野哲平選手(DLクスコWMコサリRX-7)が第1ヒートのタイムで逃げ切った。「今年は全日本をメインにしつつ、慣れている東北でセットアップの正解を出すように東北中心で参戦したいと思います。山形が実家なのでちょうど中間地点なのでそこを拠点にどこにでも行けますしね」とのことだ。
「この西コースができたときから走ってるコースなのもあって、ゲンの良いコースなんです」と語った工藤典史選手(YHwmxITOspmスイフト)が、走りでもマイクでも競技会を盛り上げられる、面目躍如の走りでBSC-2の2位を獲得。(左)。宍戸政宏選手(BSササキSPMインテグラAz)は2ヒートとも3番手のタイムを並べ、王座防衛への挑戦は3位でのスタートとなった(右)。
BSC-2は上位5選手が表彰を受けた。左から4位の橋本恵太選手(DLコサXPロードスターG)、2位の工藤選手、優勝した飯野選手、3位の宍戸選手、5位の千葉一希選手(プロμコサリックロードスター)。

 東北ジムカーナの開幕戦を終え、欧州VICICの畑山忠彦代表は「関東から多くのエントラントの皆さんが集まってくれてとても嬉しかったです。エビスでやる醍醐味、とでも言いますでしょうか…。まだ4月の頭なので北(北東北)の人たちにはちょっと早いのもあると思います」と語った。

 そして、「コース的にもエビスの西らしいコースを用意できたと思いますし、非常に走り応えがあったと思います。オフィシャルも練習走行から頑張ってくれていい大会になったと思います」と、本大会をまとめてくれた。

まだみちのくには寒さも残る中開幕した東北地区戦の第1戦を、晴れ空の下で主催した欧州ビクトリーサークルクラブ(奥州VICIC)のみなさん。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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