全日本ダートトライアル選手権は各クラスで若手&新星ドライバーが台頭

レポート ダートトライアル

2024年4月25日

京都コスモスパークで3月23~24日に開催された開幕戦から1か月のインターバルを経て、栃木県那須塩原市の丸和オートランド那須を舞台に、全日本ダートトライアル選手権 第2戦が4月20~21日の日程で開催された。

2024年JAF全日本ダートトライアル選手権 第2戦「DIRT-TRIAL in NASU」
開催日:2024年4月20~21日
開催地:丸和オートランド那須(栃木県那須塩原市)
主催:FSC、M.S.C.うめぐみ

 2020年の春に全面改修を終え、全面アスファルトコースの「つくるまサーキット那須」とコースの一部を共有する同コースは、スタートやゴール付近のアスファルト路面に加え、アスファルト路面の区間をまたぐように走行するコーナーがあり、攻略が難しいコースのひとつだ。

 今回の決勝コースは実質的なストレース区間は短いものの、高速コーナーが連続する外周区間と、選手たちからは「象の鼻」や「岬コーナー」の愛称で語られる、かつての丸和でも名物コーナーとして知られているテクニカル区間を合わせたコースレイアウトとなった。

 公開練習が行われた20日と決勝が行われた21日は、両日とも最高気温が20度を超える穏やかな天候となった。散水は各ヒート前に加え、NクラスとSA1クラスの間の計4回行われたが、終日好天だったこともあり、路面コンディションは散水直後を除きほぼドライ。クラスによっては、自車が巻き上げる埃で一時視界を失う選手もいた。

 路面は全日本開催に向けてしっかりと整備され、第1ヒートは多くの選手が「いつもよりフラットで走りやすかった」と好評だった。だが、先頭ゼッケンのPNE1クラスに出走する車両から超硬質路面用のタイヤを選択する選手が増えた第2ヒートは、とくに外周のストレート区間の根石が顔を出すバンピーな路面となり、各ドライバーを苦しめた。それでも、ほとんどのクラスが超硬質路面の第2ヒートが決勝タイムとなった。

全クラス合わせて約160名がエントリーした第2戦。当日は天候にも恵まれて絶好のダートラ日和となった。
ダートと舗装路が組み合わさったコースである丸和オートランド那須。ハイスピード寄りながらテクニカルさを含めたレイアウトが特徴だ。
令和6年能登半島地震で被災した門前モータースポーツ公園の復旧を願って募金活動が行われた。全日本ダートトライアル選手会はエントラントに呼びかけ、また日曜の抽選会ではMCを務めた“ももたろう”こと高橋英樹氏がギャラリーに向けて協力をお願いした。

PNE1クラス

「長い競技生活で転倒は初めて」と、開幕戦の第1コーナーでまさかの転倒リタイアに終わった葛西キャサリン伸彦選手がPNE1クラス第1ヒートのトップを奪うが、第2ヒートは丸和をホームコースとする小山健一選手が、葛西選手を逆転。開幕戦に続き2連勝を挙げた。

 2位は「急ピッチでクルマを修復してきたので、まずは完走できて良かった」と言う葛西選手が獲得する。3位には「外周区間でクルマが跳ねてしまい、ちょっとセッティングに失敗しました」という鈴木正人選手が入賞した。

PNE1クラス優勝は小山健一選手(ADLベリティーMSスイフト)。
「路面が結構バンピーだったけど、気合いを入れて走りました」とヒート後に振り返る小山選手。
2位は葛西キャサリン伸彦選手(YHGC ATSスイフトRSK)、3位は鈴木正人選手(スマッシュSRP33スイフト)。
PNE1クラス表彰の各選手。

PN1クラス

 PN1クラスは、今回が全日本デビュー戦という関東地区の清水涼矢選手が、ダートトライアル歴2年ながら前日の公開練習で奪った2番手タイムの勢いで、第1ヒートのトップタイムを奪う。第2ヒートに入っても、クラス前半ゼッケンを走る清水選手がベストタイムをさらに更新。後続の選手たちはなかなか清水選手のタイムを捕らえきれない。

 このまま清水選手が逃げ切るかと思われたが、シードゼッケン組の飯島千尋選手が「実は2週間前に行われた関東地区戦でも清水選手に負けてるんですよ。二度も負けてたまるかっていう気持ちで走ったことが良かったんでしょうね(笑)」と、清水選手のタイムを0.364秒逆転。

 飯島選手は2012年の第4戦門前以来、約12年ぶりとなる全日本優勝を果たした。「第2ヒートは車速の乗りが今ひとつでした……」という清水選手が2位入賞。3位には「第2ヒートはタイヤ選択と走らせ方に悩みました」という北原栄一選手が入賞した。

PN1クラス優勝は飯島千尋選手(Moty's☆DLスイフト神速)。
クラスを超えてさまざまな選手から祝福を受ける飯島選手。渇望した久々の優勝に会場内が沸いた。
2位は清水涼矢選手(ブルーポイントデミオ)、3位は北原栄一選手(YHテインFTセラメタNOTE)。
PN1クラスの表彰式。左から4位の上原秀明選手、2位の清水選手、1位の飯島選手、3位の北原選手、5位の南優希選手、6位の佐藤羽琉妃選手。

PN2クラス

 2023年チャンピオンの中島孝恭選手が前日の公開練習で好調ぶりを発揮したPN2クラス。その中島選手が第1ヒートで2番手以下を大きく引き離してトップに立った。しかし第2ヒートになると若手の増田拓己選手が約6秒もタイムを詰めて逆転。

「丸和は苦手意識が強く、昨日の公開練習が終わったとき(トップから約2秒差)にはメンタル的にやられていたんですが、最初から決勝第2ヒートに照準を合わせていたので、最後の最後に思い切って走ることができたと思います」という増田選手が、昨年の開幕戦京都ラウンド以来となる全日本2勝目を獲得した。

 2位は「前半のタイトターンで大きな石に乗ってしまい、大失敗しました。最後まで集中を切らさなかったのは良かったけど、悔しいですね」という佐藤卓也選手が獲得。佐藤選手と同じく象の鼻付近のヘアピンでオーバーランしてしまったことが最後まで響いた中島選手が3位となった。

PN2クラス優勝は増田拓己選手(オクヤマYHプロμFAスイフト)。
増田選手が大幅にタイムを縮めて逆転勝利。2位の佐藤卓也選手と喜びをわかちあった。
2位は佐藤選手(DLΩKYBオクヤマ・スイフト)、3位は中島孝恭選手(DLルブロスTEIN☆スイフト)。
PN2クラスの表彰式。左から4位の川島秀樹選手、2位の佐藤選手、1位の増田選手、3位の中島選手。

PN3クラス

 PN3クラスは、ATモデルのスバル・BRZを駆る佐藤秀昭選手が第2ヒートでトップに立ち、そのまま逃げ切るかと思われたが、クラス最終ゼッケンの2023年チャンピオン竹本幸広選手が最後の最後に逆転。開幕戦に続き、今季2勝目を挙げた。

 2位に佐藤選手、3位には計測器のトラブルや前走者のアクシデントにより両ヒートとも再出走となったパッション崎山選手が、「最後まで集中を切らさないように頑張ったんですけど、再出走は少し慎重になりすぎました」と、入賞を果たした。

PN3クラス優勝は竹本幸広選手(YH・KYB・スラパ・GR86)。
ディフェンディングチャンピオンが実力を発揮。竹本選手が開幕2連勝を挙げた。
2位は佐藤秀昭選手(DL・KIT・BRZ-AT)、3位はパッション崎山選手(DL☆ラブカ☆ライズGR86)。
PN3クラスの表彰式。左から4位の小関高幸選手、2位の佐藤選手、1位の竹本選手、3位の崎山選手、5位の徳山優斗選手、6位の浦上真選手。

Nクラス

 若手の三浦陸選手が第1ヒートでSA2クラスのトップタイムを上回る1分38秒168のタイムをマークしたNクラス。第2ヒートは、コースを規制するために大型のタイヤを積み上げたバリア2か所にヒットし、傷だらけでフィニッシュしながらもベストタイムを更新。参戦2年目で待望の全日本初優勝を飾った。

 続く2位には「攻めた走りはできたけど、少し荒かったですね」という岸山信之選手が入賞した。3位は今シーズンからトヨタ・ヤリスGRMNで挑む山崎利博選手が獲得。

Nクラス優勝は三浦陸選手(YHレプソルFUACランサー)。
クラス唯一の1分37秒台をマークした三浦選手が文句なしの勝利を収め、うれしい全日本初優勝。
2位は岸山信之選手(BRIDE☆DL☆GRFヤリス)、3位は山崎利博選手(DLレプソルNTP☆TGヤリス)。
Nクラスの表彰式。左から4位の大橋邦彦選手、2位の岸山選手、1位の三浦選手、3位の山崎選手、5位の細木智矢選手、6位の矢本裕之選手。

SA1クラス

 SA1クラスは、開幕戦で絶好調宣言が出た河石潤選手が丸和でも好調をキープ。第1ヒートで2番手以降を大きく引き離してトップに立つと、第1ヒート4番手の花見誠選手が第2ヒートでベストタイムを更新してくるのを筆頭に、丸和をホームコースとする地元のベテラン、杉浦忠洋選手と古沢和夫選手の三菱・ミラージュコンビがベストタイムを塗り替えてくる。

 だが、河石選手が第2ヒートも2番手の古沢選手のタイムを1秒以上更新して逆転。「今年は大会前にしっかり走り込むことができています。努力の結果です」という河石選手が開幕2連勝を飾った。2位に古沢選手、3位は杉浦選手が全日本初表彰台をつかんだ。

SA1クラス優勝は河石潤選手(モンスタースポーツDLスイフト)。
前戦の京都コスモスパークに続き、丸和でも勝利して2連勝を獲得した河石選手。
2位は古沢和夫選手(YHテイン☆セラメタミラージュ)、3位は杉浦忠洋選手(BF-AベリティMSミラージュ)。
SA1クラスの表彰式。左から4位の花見誠選手、2位の古沢選手、1位の河石選手、3位の杉浦選手。

SA2クラス

 前日の公開練習でSA2クラスのトップタイムを奪った若手の岡本泰成選手が、決勝第1ヒートでもクラス唯一となる1分38秒台のタイムをたたき出してトップに躍り出る。そして第2ヒートは「岬のターンで失敗したけど、タイヤ選択に悩みながらも無事にゴールできたことがうれしい」という林軍市選手がベストタイムを0.227秒更新してくる。

 この林選手のタイムをターゲットに岡本選手が第2ヒートをスタートしたが、スタート直後のS字区間に埋まっている根石にフロントタイヤをヒットさせ、タイヤがホイールからリム落ちしてしまい痛恨のリタイア。ベストタイム更新は叶わなかった。

 その後、ベテランの荒井信介選手が林選手のタイムを0.154秒更新し、これで勝負あったかと思われたが、2023年チャンピオンの浜孝佳選手が荒井選手のタイムを約1秒更新。公開練習はクラス9番手と伸び悩んでいた浜選手が、第2ヒートで鮮やかな逆転優勝を果たした。

SA2クラス優勝は浜孝佳選手(XPL・ADVANランサー)。
「気持ちが守りに入ってしまい、ずっと闇の中にいましたが(笑)、最後の最後に吹っ切ることができ、自分らしい走りができたと思います」と浜選手。
2位は荒井信介選手(クスコADVANWMランサー)、3位は林軍市選手(YHクスコトラストF2ランサー)。
SA2クラスの表彰式。左から4位の岡本泰成選手、2位の荒井選手、1位の浜選手、3位の林選手、5位の星野悟選手、6位の黒木陽介選手。

SC1クラス

 SC1クラスは、今シーズンからこのクラスで戦う鶴岡義広選手が第2ヒートでトップに立ったが、2023年チャンピオンの山崎迅人選手が鶴岡選手のタイムを0.042秒更新。開幕戦はマシントラブルのため優勝を逃した山崎選手が、「今日が僕の開幕です(笑)」と、今季初優勝を飾った。

 2位は「優勝を逃したのは悔しいですが、ほとんどPN車両に近い今のクルマの仕様から考えると、精一杯戦えたと思います。これからクルマも仕上げていきます」という鶴岡選手が獲得し、開幕戦を制した山下貴史選手が3位に入賞した。

SC1クラス優勝は山崎迅人選手(YHマックスゲンシンミラージュ)。
昨年チャンピオンの山崎選手が意地を見せて逆転勝利。今シーズン1勝目を獲得した。
2位は鶴岡義広選手(S・DL・クスコ・WMスイフト)、3位は山下貴史選手(YHセラメタμnagiFTO)。
SC1クラスの表彰式。左から4位の深田賢一選手、2位の鶴岡選手、1位の山崎選手、3位の山下選手。

SC2クラス

 杉尾泰之選手が第1ヒートのトップタイムを奪ったSC2クラスは、開幕戦を制した目黒亮選手が第2ヒートでベストタイムを塗り替えてくる。その後、第1ヒートで自車が巻き上げる埃で視界を失い、土手にヒットしてしまい大幅にタイムロスした坂田一也選手が、第2ヒートでクラス唯一となる1分35秒台に突入。2023年チャンピオンの上村智也選手は、2位の目黒選手に0.144秒届かず3位。坂田選手が今季初優勝を飾った。

SC2クラス優勝は坂田一也選手(DLグローバルランサー)。
坂田選手は「細かいミスはあったけど、最後まで攻め切れたと思います」とコメント。
2位は目黒亮選手(CUSCO DL GRヤリス)、3位は上村智也選手(ナナハitzzYHランサー)。
SC2クラスの表彰式。左から4位の亀田幸弘選手、2位の目黒選手、1位の坂田選手、3位の上村選手、5位の杉尾泰之選手。

Dクラス

 第1ヒートは丸和をホームコースとする谷田川敏幸選手がトップタイムを奪ったDクラス。第2ヒートは、第1ヒートよりもバンピーな路面になりながらも、路面の砂利が捌けて超硬質路面となり、まずは國政九磨選手がベストタイムを更新してトップに躍り出る。その後、「クルマが跳ねてしまい、結構大変でした。それでもタイヤが路面を食っていたので、ひたすら全開で走りました」という鎌田卓麻選手が、ベストタイムを更新。

 シードゼッケン組に入り、第1ヒートトップの谷田川選手が「手応えはそんなに悪くなかったけど、それがタイムに結びつかなかった」とクラス3位にポジションダウン。炭山裕矢選手は「公開練習からクルマの調子が悪く、最後まで原因がつかめなかった」とクラス5位でフィニッシュ。2023年チャンピオンの田口勝彦選手は、「細かいミスはあったけど、そんなに悪い走りではなかった。今回は卓麻が速かったってことだね」と、0.216秒届かず2位。鎌田選手が、2年ぶりとなる全日本優勝を飾った。

Dクラス優勝は鎌田卓麻選手(itzzオクヤマDL栗原BRZ)。
2年ぶりの優勝をつかんだ鎌田選手。力強いガッツポーズで喜びを爆発させた。
2位は田口勝彦選手(HKSランサーエボリューション)、3位は谷田川敏幸選手(トラストADVANクスコBRZ)。
Dクラスの表彰式。左から4位の國政九磨選手、2位の田口選手、1位の鎌田選手、3位の谷田川選手、5位の炭山裕矢選手。

フォト/CINQ、大野洋介、JAFスポーツ編集部 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

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