勝田貴元選手、WRC第4戦クロアチアで“スーパーサンデー”初制覇の活躍!!
2024年4月26日
2024シーズンのFIA世界ラリー選手権(WRC)は再びヨーロッパ大陸へ戻り、4月18~21日にクロアチアの首都、ザグレブ周辺を舞台に第4戦「クロアチア・ラリー」を開催。このフルターマックラリーにTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のマニュファクチャラー登録ドライバーとしてWRCにフル参戦中の日本人ドライバー、勝田貴元選手もコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手とGR YARIS Rally1 HYBRIDを駆って参戦した。
2024年FIA世界ラリー選手権 第4戦
クロアチア・ラリー
開催日:2024年4月18~21日
開催地:クロアチア・ザグレブ周辺
4月18日・シェイクダウン / 19日・デイ1 / 20日・デイ2
クロアチア・ラリーは高速とテクニカル、相反するセクションを併せ持ち、路面の舗装状態が刻々と変化するターマックラリー。“インカット走行”によりイン側の路肩部分の泥や砂利が掻き出されるコーナーが多いことから出走順の影響を受けやすく、加えてこの時期のクロアチアは雨も多いことからグリップ変化の予想が難しいラリーとして知られている。
過去3シーズン連続で総合6位獲得を続けている勝田貴元選手は「クロアチアは難易度の高いターマックラリーで荒れることも予想していたので、ミスがないようにプッシュすべきところはプッシュする、というアプローチで戦っていました」と語っていたが、予想外のハプニングでラリーウィークを迎えることとなった。
事前のテストで好感触を掴んでいた勝田貴元選手だが、18日に行われたシェイクダウンでトラブルが発生。「第3戦のサファリ・ラリーを終えて、メンテナンスした状態だったんですけど、ステアリング関連のトラブルが発生して、思うように走ることができませんでした」とのことだった。その結果、18日のシェイクダウンを7番手で終えたほか、翌19日のデイ1でも苦戦を強いられることとなった。
「ステアリングのトラブルは直っていたんですけど、思うようにペースを上げることができませんでした。インカットで路面が汚れていくことから、出走順的にも上位3台についていくことは厳しいと思っていたので、そこを追うよりもベストを尽くして食らいついていきたかったんですけど、予想以上に苦戦してタイムも伸ばせずに離されてしまいました」と語るように勝田貴元選手は終始6番手タイムか7番手タイムに低迷。この日のラストステージ、SS8で4番手タイムをマークしたが、トップから約1分37秒差の総合6番手でデイ1を終えることになったのである。
このように厳しい立ち上がりを強いられていた勝田貴元選手だが、続く20日のデイ2でも苦戦は続いた。「天気予報で午前中から雨が降る確率が高かったので、チーム全体的にウェットのセッティングでドライを走って、雨が降ってきたら対応する、といったようにセッティングを変更したんですけどね。結果的には雨は降らなかったので、思うように走れず、詰め切ることができませんでした」と、苦戦の展開を振り返った。
それでも「クルマのフィーリングが良くなってきて、ペース的にも上がってきたので、日曜日にドライセットアップで走れば、いいペースで行けるんじゃないか、という手応えはありました」と、勝田貴元選手はウェットセッティングながらSS10、SS13、SS14で4番手タイムをマークし、デイ2は総合6番手に順位を上げた。
4月21日・デイ3
そして、デイ2で手応えを掴んだ勝田貴元選手は21日のデイ3で抜群のパフォーマンスを披露。「今年からポイントシステムが変わって、日曜日のポイントが大きく振り分けられているので、自分としてもチームとしてもしっかりポイントを取れるように最初からプッシュしていきました」とのことで、この日のオープニングステージとなるSS17でベストタイムを叩き出した。続くSS18で2番手タイムをマークすると、SS19では今回のラリー2度目のベストタイムを獲得したのだ。
「コンディションの変化もあって、パワーステージは思い通りにプッシュできませんでした」と、ボーナスポイントがかかる最終のSS20は4番手タイムに終わったが、それでも勝田貴元選手は「苦戦した状態で始まったクロアチアでしたが、なんとか復調して日曜日全体のトップでフィニッシュできたし、チームに貢献できたので良かったと思います」と語る活躍を見せて、総合5位でフィニッシュ。さらに“スーパーサンデー”を制して合計15ポイントを獲得した。
こうして序盤で苦戦をしながらも終盤で素晴らしいパフォーマンスを披露した勝田貴元選手だが、序盤の不振について「出走順的にタイムが遅れることが予想されていたし、荒れた展開になることも予想されていたので、序盤はミスをしないことを心がけていたんですけど“安牌”にいきすぎました」と、振り返った。さらに「他の選手は最初から攻めていたし、セバスチャン・オジエ選手も“こんなに危ない目にあったラリーは今までに一度もなかった”というほど攻めていた中、自分は詰め切れていませんでした。あとはコンディションに対する対応とかリスク配分がうまくいかなくて遅れていった部分もありました」と分析している。
その一方で、終盤での復調について勝田貴元選手によれば「このままではまずいと思って金曜日の最後のステージでプッシュしたところ、区間タイムはオジエ選手と同じペースで走れました。後半セクションでタイムを落としたけれど、“これくらいのペースで行かないとダメだな”というのが見えたので、そこを改善していきました」とのことだったそうだ。そして、勝田貴元選手はグラベルクルーとのコミュニケーションについても改善すべき要素を見つけたようで、「1ループ目は出走前にコースをチェックするので、路面がクリーンな状態の中、インカットする場所や(その場所が)土なのか、芝なのかを予想して情報をくれるんですけど、予想よりも泥が出てなかったりすることもあったので、インフォメーションをどのように入れるのか。また、泥が出ている2ループ目も轍のライン、“ラッツ”を通れば高いスピードでコーナーを抜けられることから、ラッツと表現しがちですが、たまに轍がなくなっていることもある。そこの表現が、いまは安牌になっているので、そこもグラベルクルーとディスカッションしました」と、語ってくれた。
このように久しぶりのターマックラリーで多くの経験を吸収した勝田貴元選手は次戦について「4台目の出走ということもあって、チームのポイントを気にしなくて走れるので、自分のポテンシャルを最初から出せるようにしたいと思います。チームとしてはエルフィン・エバンス選手に続いてオジエ選手、カッレ・ロベンペラ選手も参戦するなど万全の体制となるので、そのなかで自分がどの位置で戦えるのかが楽しみです」と期待を語った。
さらに「これまで表彰台を争いながらも、4位に終わったことが続いていたので、いい結果で終われるようにポディウムを目指して頑張りたいと思います」とのことだけに、5月9~12日に開催される第5戦「ラリー・ポルトガル」では勝田貴元選手の更なる躍進を楽しみにしたいところだ。
なお、今回のクロアチア・ラリーではTGR-WRTのオジエ/ヴァンサン・ランデ組が今季初優勝を獲得し、チームメイトのエバンス/スコット・マーティン組が2位でTGR-WRTは1-2フィニッシュを達成。HYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAMでi20 N Rally1 HYBRIDを駆るティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ組が3位で表彰台に上がった。
TGR-WRTはマニュファクチャラーランキングのトップを守り、エバンス/マーティン組はドライバー/コ・ドライバーランキングでトップのヌービル/ヴィーデガ組と6ポイント差の2番手につけている。
フォト/TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Media House レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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