JN1クラスの新井大輝/松尾俊亮組が大荒れのラリー丹後を制す
2024年5月16日
全日本ラリー選手権 第4戦「YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg」が、5月10〜12日の日程で京都府京丹後市を拠点に開催された。シリーズの折り返しとなる第4戦だが、SS総距離が短縮されての実施となった。
2024年JAF全日本ラリー選手権 第4戦
「YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg」
開催日:2024年5月10〜12日
開催地:京都府京丹後市周辺
主催:SYMPHONY、OECU-AC
全日本ラリー選手権は、4月12〜14日に佐賀県唐津市を拠点に開催された第2戦から、4月26〜28日に愛媛県久万高原町を拠点とした第3戦を経て、今回の第4戦までそれぞれ2週間という短いインターバルでの開催となった。今シーズンは全8戦が組まれているが、3月上旬の三河湾からスタートした選手権は、この第4戦で早くも折り返し地点を迎える。
その第4戦だが、当初はSS総距離が100kmを超える12SS(SS総距離113.66km)のアイテナリーが組まれていた。だが、主催者発表の公式通知によると、リエゾン区間において住民から競技車両の通過に関して同意が得られなかったことから、新たに8SS(SS総距離61.88km)として組まれることとなった。
さらにレグ1のSS3(Tsunotsuki Reverse 1)で、山林火災が発生。火災を発見した眞貝知志/安藤裕一組(トヨタ・GRヤリスDAT)が車両を止めて初期消火作業を行い、以降、後続の鎌田卓麻/松本優一組(スバル・WRX STI)、柳澤宏至/竹下紀子組(トヨタ・GRヤリスJP4)、今井聡/高橋芙悠組(シトロエン・CS3 R5)も初期消火作業に加わり、その後消防により鎮火したが、現場検証が行われるためレグ2に予定されていたSS6(Tsunotsuki 2)とSS7(Tsunotsuki Reverse 2)がキャンセルとなった。
そのため、SS総距離が40.34kmに短縮され選手権としての成立が危ぶまれた。というのも、日本ラリー選手権規定の第2章 全日本選手権の第6条 競技形式および走行距離では、選手権の成立にあたり「スペシャルステージの総走行距離は50km以上設定されていること」と規定されているからだ。だが、今回は同規定の「やむを得ない理由により競技が短縮された場合において、それまでに終了したスペシャルステージの総距離が30㎞を超えており、かつ競技会審査委員会が適当と認めた場合、当該競技会は選手権として成立したものとする」(この場合の得点係数は0.8)との競技会審査委員会による裁定で、選手権として成立する運びとなった。全日本ラリー選手権で得点係数が0.8になるのは、豪雨により路面コンディションが極端に悪化したためSSの一部がキャンセルになった2009年の第4戦福島以来となる。
11日のレグ1は最高気温が28度付近まで上昇する好天に恵まれドライコンディションとなったが、12日のレグ2は昼前後から雨の予報。どの時点で雨が降り出すのか、スプリント勝負となった今年のラリー丹後は、タイヤ選択に悩むクルーが続出した。
JN1クラス
SS1(Oouchi Reverse 1)で奴田原文雄/東駿吾組(トヨタ・GRヤリスラリー2)がベストタイムを叩き出したJN1クラスでは、新井大輝/松尾俊亮組(シュコダ・ファビアR5)が0.5秒差の2番手、さらに1秒離れて勝田範彦/木村裕介組(トヨタ・GRヤリスラリー2)が3番手につける。
続くロングステージのSS2(Tsunotsuki 1)とその逆走となるSS3でベストタイムを奪った新井大輝/松尾組が首位に浮上。奴田原/東組も、SS4(Oouchi Reverse 2)でこの日2回目となるベストタイムを奪い、アンダーステアに悩まされながらも追い上げを図る勝田/木村組をレグ1で3.3秒差に突き放す。
4.84kmの2本のSSが設定されたレグ2は、新井大輝/松尾組が両SSでベストタイムを連取。第2戦以来となる今季2勝目を獲得した。
「最終SSのスタートから2kmくらいで雨が降ってきました。いろいろなことがあったラリーだったので、いつもの勝利よりもうれしさがありますが、第3戦でのトラブルもあり、自分たちは残りの出場するラウンドすべてでフルポイントを獲るしか選手権タイトルを狙うことができません。係数が0.8になったことがどう影響してくるか、少し心配です」と新井大輝選手。
2位争いは、最初のSSからウェットタイヤで挑んだ奴田原/東組を、ドライタイヤで挑んだ勝田/木村組が、最終SSで0.4秒逆転。2位に勝田/木村組、3位に奴田原/東組となった。
JN2クラス
JN2クラスで第2戦から2連勝を挙げている三枝聖弥/船木一祥組(スバル・WRX STI)が、2番手の小泉敏志/村山朋香組(トヨタ・GRヤリス)に7.0秒差を付ける首位でレグ1を折り返す。だが、レグ2に入ると小泉/村山組が猛追。最初のSSで7.0秒差を3.0秒差に詰め、最終SSでも三枝/船木組とのタイム差を詰めてくるものの、0.7秒届かず。三枝/船木組が逃げ切り、第2戦からの連勝を3に伸ばした。
また、3位にはレグ1を4番手で折り返した塙将司/西村正義組(トヨタ・GRヤリス)も、レグ2最初のSSでセカンドベスト、最終SSでは自身初となるベストタイムを奪い、TOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cupの山田啓介/藤井俊樹組(トヨタ・GRヤリス)をかわして3位に浮上するとともに、2位の小泉/村山組に0.8秒差まで迫った。
TOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup
JN3クラス
レグ1をJN3クラスの首位で折り返した長﨑雅志/大矢啓太組(トヨタ・GR86)が、レグ2最初のSSでもベストタイムをマーク。最終SSはマージンを活かした走りでフィニッシュし、「本音はもう少し走りたかったですが、主催者の苦労もあったでしょうし、受け入れるべきでしょうね。自分自身のことで言うと、決して調子が良かったわけではないので、(SSの)距離に助けられたような気もします」と今季2勝目を獲得した。
2位は、「クルマの調子が悪いのか、自分の調子が悪いのか、次のモントレーまでに解決しなければなりませんね」という山本悠太/立久井和子組(トヨタ・GR86)が獲得。3位には最終SSでベストタイムを刻んだ曽根崇仁/竹原静香組(トヨタ・GR86)が入賞した。
JN4クラス
スズキ・スイフトスポーツのワンメイク状態となっているJN4クラスは、レグ1を首位で折り返した高橋悟志/箕作裕子組がレグ2最初のSSでクラッシュするという波乱の展開となった。レグ1を終えて、2番手の西川真太郎/本橋貴司組、3番手の鮫島大湖/船木佐知子組、4番手の前田宜重/岡田誠組、5番手の黒原康仁/石田一輝組、6番手の内藤学武/大高徹也組までが6.0秒の中にひしめき合うという大混戦。
レグ2に設定された2本のSSを終えて、西川/本橋組が首位でフィニッシュ。2位には初日6番手から追い上げた内藤/大高組が入賞。一時は2番手のポジションにつけた前田/岡田組が3位に入賞した。
JN5クラス
「今回はコースの特性にクルマが合っている」というJN5クラスの大倉聡/豊田耕司組(トヨタ・GRヤリスRS)が、レグ1で道幅が広くなったり狭くなったりするステージをワイドに攻め、後続とのタイム差を広げる。
ライバル勢がドライタイヤで逆転を狙う雨のレグ2は、「リスクを避けるためにウェットタイヤを選択しました」という盤石のラリー展開で、第3戦に続き2連勝を挙げた。2位には、新チームの体制で挑んだ吉原將大/伊豆野健太組(トヨタ・ヤリス)が入賞。3位には、ラリー直前に食あたりになってしまい、体調不良ながらも善戦した松倉拓郎/山田真記子組(トヨタ・ヤリス)がそれぞれ入賞した。
JN6クラス
JN6クラスは、2番手の清水和夫/山本磨美組(トヨタ・ヤリスCVT)に4.8秒差をつけてレグ1を折り返したのが天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・アクアGRスポーツ)。リタイア車両続出となったレグ2最初のSSで「リタイア車を避けたり、リタイアした選手がOKサインを出すタイミングで通過する時に、それを確認するために減速したりと、少しマージンを取りすぎてしまいました」と、このSSでベストタイムをマークして首位に躍り出た清水/山本組から11.6秒遅れでSSをフィニッシュ。
6.8秒ビハインドで迎えた最終SSは、天野/井上組がベストタイムを奪うものの、トータルでは清水/山本組に4.4秒届かず。清水選手にとっては、1983年のDCCSウインターラリー以来41年ぶりとなる全日本優勝を遂げた。一方、2023年の開幕戦にトヨタ・アクアGRスポーツを投入以来、無敗だった天野/井上組は2位となり連勝記録は11でストップ。3位には、開幕戦以来の出場となった海老原孝敬/蔭山恵組(ホンダ・フィット)が入賞した。
フォト/CINQ、中島正義、山口貴利 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部
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