初優勝ラッシュの新東京大会、FP-3部門は高島恒太選手と寺島知毅選手が勝利

レポート カート

2024年5月28日

全日本カート選手権のFS-125部門とFP-3部門の2024年シリーズが5月18~19日、千葉県市原市の新東京サーキットで開幕を迎えた。スポット参戦の地元勢を含め多彩な顔ぶれが集まったFP-3部門では、高島恒太選手が第1戦で独走を演じて初優勝。第2戦では寺島知毅選手がゴール間際まで続く熱闘を制して、こちらも初優勝を飾った。

2024年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 第1戦・第2戦
2024年JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門 第1戦・第2戦 (ラウンドシリーズ2)

開催日:2024年5月18~19日
開催地:新東京サーキット(千葉県市原市)
主催:NTC

 2024年の全日本カート選手権は、最高峰クラスのOK部門がジュニア選手権ラウンドシリーズ1との同時開催で全5大会(全10戦)、FS-125部門/FP-3部門がジュニア選手権ラウンドシリーズ2との同時開催で全3大会(全6戦)のチャンピオンシップが繰り広げられる。なおジュニア選手権はともにジュニア部門とジュニアカデット部門の2クラスだ。

 今回の大会はFS-125部門とFP-3部門の開幕戦。首都圏からもアクセスに長け、多くのカートユーザーが集まることで知られる千葉県市原市の新東京サーキットが舞台だ。コースの全長は1,076m。オーバーテイクポイントが多くあり、とくに最終コーナー手前の左ヘアピン(通称モナコヘアピン)では激しいつばぜり合いが頻繁に起きるので、レースはゴールの瞬間まで結果の分からないスリリングな展開になりがちだ。

全日本カート選手権FP-3部門 第1戦/第2戦

 今回のFP-3部門はホットなレースになった。ここに参加したのは最年少13歳、最年長68歳の22名。未来のプロドライバーを目指す新鋭から地元の腕自慢まで、多彩な顔ぶれが集まっている。当日のサーキットの上空は曇り空。時折わずかな雨粒が落ちてくるのだが、コースコンディションに影響を及ぼすほどの降りになることはなかった。

 午前に行われた第1戦で、予選をトップで終えたのは17歳の高島選手。大集団の混戦を抜け出して先頭でゴールを奪い、20周の決勝のポールについた。2番グリッドは16歳の寺島選手。タイムトライアルでトップタイムを叩き出した17歳の吉井亮仁選手と、ジュニア選手権を卒業して全日本の初戦を迎えた15歳の片岡陽選手が3番・4番グリッドに並んだ。

 決勝が始まると、高島選手は先頭をキープしたままスタートすることに成功。そして序盤で後続を引き離し、折り返し点では約1秒のリードを築いた。その後方では4台がひとかたまりになって接戦を繰り広げている。この背後のバトルにも助けられて、高島選手はリードを約3秒まで拡大。

 高島選手は独走のままレースを走り終え、高々とナンバー1サインを掲げてチェッカーをくぐった。2022年には2戦、2023年には6戦に参加して、これまでの最上位は6位。9戦目にして初優勝をつかんだ高島選手は、車検場でヘルメットを脱ぐと爽快な笑顔を浮かべた。

 一方、4台が一丸となったセカンドグループの戦いは最終ラップまで続けられた。残り2周でこの集団の先頭に出たのは伊東士龍選手。だが、最終ラップに入ったストレートエンドで吉井選手と寺島選手が伊藤選手の前へ。さらに寺島選手が吉井選手をかわし、全日本3戦目の寺島選手が熱闘を制して2位を獲得、全日本デビュー戦の吉井選手が3位となった。

FP-3部門 第1戦優勝は高島恒太選手(チーム エッフェガーラ)。
「スタートが決まってこんなに後ろが離れるとは思わず……、自分的にはだいぶラクでした。こういうレースができる自信はぜんぜんなかったです」と全日本3年目となる高島選手。「1年目はケガで(2戦しか)出られませんでした。初優勝できて、めちゃめちゃうれしいです」とエッフェガーラの加藤真代表と一緒に勝利を喜んだ。
2位は寺島知毅選手(Formula Blue GOLD MOTORSPORTS)、3位は吉井亮仁選手(PROJECT Y with TL)。
FP-3部門 第1戦表彰の各選手。

 高島選手の好調ぶりは午後に入っても衰えを見せず、第2戦の予選を独走して、またも決勝のポールを手に入れた。2番グリッドは寺島選手。角陽向選手と山代諭和選手が3番・4番グリッドだ。

 第2戦の決勝は22周。そのスタートでレースが大きく動いた。高島選手のワンサイドゲームの流れを阻止すべく、ライバルたちが逆襲のノロシを上げたのだ。その先鋒は角選手。スタートで2番手に上がると、3コーナーで高島選手もかわしてトップに躍り出る。これに続いて寺島選手も高島選手をパス。高島選手はさらに後続の猛攻を受け、4周目には7番手まで下がってしまった。

 トップは角選手から山代選手、そして再び角選手へ。その後ろには10台近いマシンがずらりと連なっている。高島選手は折り返し点で2番手までポジションを戻してきたが、激しいバトルの際にラインを失ってエスケープゾーンに飛び出し、またも大きく順位を落としてしまった。

 14周目、寺島選手がトップに躍り出て、目まぐるしくポジションが入れ替わる先頭集団の戦いをリードしていく。残り2周、吉井選手が角選手と寺島選手を一気にかわして先頭へ。しかし、寺島選手はその周のうちにトップを取り返し、最後までこの位置を守り抜いた。寺島選手は全車の約半数がトップグループに加わる激闘を制し、ポイントリーダーに立って2024シリーズ最初の大会を締めくくった。

 その寺島選手、実はFS-125部門とのダブルエントリー。車検場で重量チェックを終えると、喜びに浸る間もなく、すでに整列を始めているFS-125部門第2戦決勝のダミーグリッドへと駆けて行った。

 寺島選手に続いてゴールした角選手はフロントフェアリングのペナルティで13位に降格となり、2位は吉井選手のものに。終盤にグイグイと順位を上げた菅原ここあ選手が3位表彰台をゲット。再度の挽回劇を続けた高島選手は、4位入賞の片岡選手に続く5位でこのレースを終えた。

FP-3部門 第2戦優勝は寺島選手(Formula Blue GOLD MOTORSPORTS)。
地元勢が有利と思われた中、寺島選手が勝利。「絶対に勝つっていう気持ちが強くて、負ける気がしなかったです」と語る。「午前中はビレルの高島選手が速くて独走されて負けていたんで、絶対にスタートでつかまえてやろうって気持ちでレースに臨みました。落ち着いて冷静に対処して勝つことができました」とバトルを制した。
2位は吉井選手(PROJECT Y with TL)、3位は菅原ここあ選手(Racing Square GEN)。
FP-3部門 第2戦表彰の各選手。

全日本カート選手権FS-125部門 第1戦/第2戦

 2023年のFS-125CIK部門とFS-125JAF部門はFS-125部門となり、この大会最多の25台がエントリー。ふたつの組に分けて実施されたタイムトライアルでトップタイムをマークしたのは、昨年のFP-3部門チャンピオンの酒井龍太郎選手だ。そのタイム41秒273は、同じグループで2番手の高田陽大選手を0.3秒以上、総合でも2番手の土屋拓心選手を0.2秒以上も上回る圧倒的な速さだった。

 今季はOK部門にも参加して、4月21日の開幕大会で勝利まであと一歩に迫った酒井選手の勢いは、ヒートに入っても衰えを見せない。まず第1戦の予選を独走のままトップで終えると、続く第1戦の決勝でも1周目から後続を引き離し、約2秒のリードを得た終盤にはタイヤマネジメントのためペースを抑える余裕を見せ、文句なしのデビューウィンを飾った。

 3番グリッドの土屋選手はローリング中にストップして無念のノースタートに。2位は単独走行で酒井選手を追った小野大地選手。3番手でゴールした塩田惣一朗選手がフロントフェアリングのペナルティで6位に降格となり、3位は木原太一選手との接近戦に競り勝った千田琉貢選手のものになった。

FS-125部門 第1戦優勝は酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)。
「タイムトライアルはまさか2周目でベストタイムが出るとは思ってなかったんですけど、いいタイムが出て、いい流れをつくれたので、決勝もいい感じでペースを上げられて後ろを引き離すことができました。最後は予定どおりに少し流しながら走って、(第2戦に)タイヤを残すこともできました」と酒井選手が完勝を果たした。
2位は小野大地選手(RT WORLD)、3位は千田琉貢選手(Racing Team YRHKS)。
FS-125部門 第1戦表彰の各選手。

 午後の第2戦でも酒井選手の速さは変わらず、またも予選を独走して決勝のポールについた。ところが、決勝のスタートで酒井選手の加速が鈍く、代わって2番グリッドの塩田選手が先頭に躍り出る。それでも自らのスピードに自信を持つ酒井選手は、2周の間で落ち着いて塩田選手の後ろを走ると、3周目にトップを奪い返し、そこから2周で後続を1.5秒も後ろに追いやった。

 あとは自らの走りに集中するだけ。22周のレースで酒井選手が築いたリードは、実に12秒弱にも達した。圧巻の2連勝だ。酒井選手は今季、全日本EV部門への参戦も目指している。狙うは前人未到の全日本選手権全部門制覇だ。

 前半戦の2番手を走った塩田選手は、11周目にリタイア。ゴール間際まで7台が集団を形成したセカンドグループでは、残り4周で集団の頭に出た千田選手が2位を獲得。9番グリッドから這い上がってきた石部壮太郎選手が3位表彰台を手に入れた。

FS-125部門 第2戦優勝は酒井選手(ミツサダ PWG RACING)。
2連勝を達成した酒井選手。「予選までタイヤマネジメントをしていたのにベストタイムが出ちゃったり、全開で走っていいってところでOK部門のためにいろいろ試したりもして、やりたいことが全部できて優勝もできたレースでした。次の目標は(第3戦/第4戦が行われる)SUGOでチャンピオンを決めてしまうことです」
2位は千田選手(Racing Team YRHKS)、3位は石部壮太郎選手(ERS with SACCESS)。
FS-125部門 第2戦表彰の各選手。

ジュニアカート選手権ジュニア部門 第1戦/第2戦(ラウンドシリーズ2)

 同時開催のジュニア選手権ラウンドシリーズ2・第1戦/第2戦。10台が参加したジュニア部門の第1戦決勝では、ポールスタートから2周で0.6秒ほどのリードを奪った元田心絆選手を、2番グリッドから発進した山崎永路選手が追いかけ、中盤に捕捉。ここに中野貴介選手も加わり3台一丸となったトップ争いは、残り2周で2度目のトップ浮上を果たした山崎選手のデビューウィンで決着した。

 昨年のジュニアカデット部門王者の元田選手は、中野選手の猛チャージを跳ね返して2位でフィニッシュ。中野選手はこのバトルで後れを取ったが、3位表彰台をしっかりつかみ取った。

ジュニア部門 第1戦優勝は山崎永路選手(brioly racing)。
「ペース的には優勝できる速さがあったけれど、こういう大会でまだ優勝したことがないので、優勝の実感が湧きません。クルマは公式練習やタイムトライアルでストレートがあまり伸びていない感じだったけれど、この決勝は自分の得意なコンディションだったし、マシンもよく走ってくれて、いいレースでした」とまとめる山崎選手。
2位は元田心絆選手(AP SPEED with SOVLA)、3位は中野貴介選手(LUCE MOTORSPORTS)。
ジュニア部門 第1戦表彰の各選手。

 第2戦の決勝は、再び元田選手と山崎選手のトップ争いになった。2台のバトルが終盤に過熱すると、ここに中野選手と伊東諒真選手が追いつき、先頭集団は4台に拡大。この迫真のバトルに競り勝った元田選手が、真っ先にチェッカーを受けた。

 ところが、元田選手は2回のプッシングがあったと判定され、ヒート失格に。2番手でゴールした山崎選手も誘導白線の脱輪で5秒加算のペナルティを受け、優勝は3番手でフィニッシュラインを通過した伊東選手のものとなった。第1戦では後方グループに終始して7位に終わっていた伊東選手。第2戦では生まれ変わったかのような走りで2~3番手を走り続け、繰り上がりながら見事勝利を手に入れた。

 伊東選手の真後ろでゴールした中野選手もプッシングでペナルティを受け、2位には6番グリッド発進の都出夏希選手が、3位にはグリッド最後尾から追い上げた織田大和選手が入賞することとなった。

ジュニア部門 第2戦優勝は伊東諒真選手(RF AOYAMA)。
伊東選手は優勝できた要因について「運だと思うんですけど……、自分が持っている実力は全部出し切れたんで、いいレースができたなって印象です」と語った。続けて「今回は絶対に抜かれないぞって気持ちで走ったからかもしれません。ジュニア選手権初参戦での優勝は、結構うれしいです」と満面の笑顔を見せた。
2位は都出夏希選手(SPS川口)、3位は織田大和選手(RF AOYAMA)。
ジュニア部門 第2戦表彰の各選手。

ジュニアカート選手権ジュニアカデット部門 第1戦/第2戦(ラウンドシリーズ2)

 5台が参加したジュニアカデット部門では、木村思音選手が圧倒的な速さを披露。予選を独走で制すると、第1戦の決勝でも4周で5秒以上のリードを築き、独り旅のままフィニッシュした。昨年の同部門・新東京大会に参加実績のある木村選手は、ジュニア選手権3戦目での初優勝だ。

 木村選手の後方では、グリッド最後尾から2番手に躍り出た田中翔大選手に、2番グリッドからのスタートで出遅れた植月宣成選手が猛攻を仕掛けるが、再逆転に手間取るうちに植月選手はスピンを喫し、田中選手が2位でフィニッシュ。鈴木瞬選手が3位となった。

ジュニアカデット部門 第1戦優勝は木村思音選手(Power Works)。
「もっとバトルになるかと思っていたけれど、聞いたら(後続にアクシデントがあって)モナコで離れちゃったそうで、勝てて良かったです」とコメントする木村選手。「路面がちょっと悪かったこともあってベストタイムが出なかったけれど、勝てたことは素直にうれしいです」と喜んだ。
2位は田中翔大選手(brioly racing)、3位は鈴木舜選手(brioly racing)。
ジュニアカデット部門 第1戦表彰の各選手。

 第2戦の決勝でも木村選手の速さはライバルたちを圧倒しており、オープニングラップで2番手以下を1秒以上後方に追いやると、またも独走でフィニッシュ、無敵の2連勝を遂げた。木村選手はダブルエントリーでジュニア部門にも出場しており、こちらではふたつの決勝をともに4位でまとめ、ポイントランキングの2番手につけている。

 第2戦の2位は、3番グリッドからのスタートで2番手に浮上した村上天晴選手。植月選手が2番グリッドからのスタートでの後退を挽回して3位に入賞した。

ジュニアカデット部門 第2戦優勝は木村選手(Power Works)。
木村選手も2連勝を挙げた。「後ろの人たちが第1戦で(自分に)追いつくコツを見つけてきて、今回はバトルができるんじゃないかと思っていたのに……」と第1戦とは違った展開を予想していたそうだ。「でもそれができなかったのはちょっと残念。優勝はうれしいです。この次も頑張ります」
2位は村上天晴選手(GOLD MOTORSPORTS)、3位は植月宣成選手(brioly racing)。
ジュニアカデット部門 第2戦表彰の各選手。
新東京サーキットの計らいで、優勝したドライバーは直筆サインとともに写真パネルがカフェ&レストラン飾られることに。
2023年5月20~21日に開催された全日本カート選手権およびジュニアカート選手権の優勝者のパネルなどが展示されていた。

フォト/JAPANKART、今村壮希、長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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