中部ジムカーナ第3戦、若手VSベテランのPN3で森嶋昭時選手が久しぶりの優勝!

レポート ジムカーナ JAFWIM

2024年5月29日

滋賀県を代表するスキー場のひとつ、“グランスノー奥伊吹”。雪の無い季節は、その駐車場をJAF公認ジムカーナコースとして活用している。それが「奥伊吹モーターパーク」だ。ここで開催されるジムカーナはJR米原駅からクルマで1時間弱という立地もさることながら、このコースをホームとしているJAF加盟クラブ「プレジャーモータースポーツクラブ(Pleasure)」による主催の素晴らしさに、近畿地区からも多くのドライバーが集まる。既に2戦を消化した2024年JAF中部ジムカーナ選手権は、そんな奥伊吹で第3戦が催された。

2024年JAF中部ジムカーナ選手権 第3戦
JMRC中部ジムカーナ選手権 第3戦
JMRC全国オールスター選抜 第3戦
プレジャーテクニカルジムカーナ in OKUIBUKI

開催日:2024年4月28日
開催地:奥伊吹モーターパーク(滋賀県米原市)
主催:Pleasure

 今回の一戦はJAF地方選手権ということで、上段と下段の2つのパレットをフルに使ったコース設定。「走りごたえのあるコースにしました」とは岐阜県大垣市のショップ、プレジャーレーシングサービスを営むPleasureの大橋渡代表。このコースの特徴を「奥伊吹は目の細かい路面でひっかかりが少ないんで、さらっとしています。逆にいうとタイヤの減りが少なく、グリップバランスが良い路面だと思います」と語ってくれた。

 一方、レイアウトのベースを作った緒方和良コース委員長は「奥伊吹の特徴である2種類のコースを楽しめる設定としました。上のパレットではテクニカルを、下のパレットでは豪快なハイスピードジムカーナを楽しんでもらえるコースにしました」と今回の一戦のレイアウトを解説した。

雲一つない快晴の下で開催された2024年JAF中部ジムカーナ選手権の第3戦。舞台となった奥伊吹モーターパークは写真左側の上段と右側の下段で構成されることから、バラエティ豊かなコースレイアウトを組めることも魅力のひとつだ。
今回の一戦を主催するJAF加盟クラブ、プレジャーモータースポーツクラブ(Pleasure)の大橋渡代表が、奥伊吹の特長を教えてくれた。大橋代表は2014~2016シーズンにJAF全日本ジムカーナ選手権のSCクラスを三連覇し、現在も全日本B・SC3クラスで活躍するバリバリのトップスラローマーだ。
コース上段にコテコテのテクニカルセクションを詰め込んだ緒方和良コース委員長が、今回の一戦で競うコースレイアウトを解説してくれた。
スタート直後に上段のテクニカルセクションをクリアして下段におりると、一転してハイスピードセクションが待ち受けるレイアウト。気持ちの切り替えが勝負を決める!

 正式なルールに則って、審査委員会の承認を得たコース図を慣熟歩行前に配布。選手たちにとっては事前にコースを覚えることができずに、今回のロングコースをしっかりと理解し慣熟歩行をしなくてはならない。これはJAF全日本ジムカーナ選手権に挑むこれからの選手にとっては、非常に良い訓練となっているようだ。

 中部ジムカーナ第3戦は、こうして幕を開けた。

慣熟歩行開始のタイミングでコース図を配布、45分間でコースを覚えてベストのライン取りを導き出さなくてはいけない。今回の一戦は難レイアウトだったか、ミスコースやパイロンタッチが続出した。

ATクラス

 JAF全日本ジムカーナ選手権でもにぎわいを見せてきた、ATやCVTなどを搭載する車両により競い、次世代を担うATクラス。しかし、中部地区戦では開幕戦こそ成立したものの第2戦は不成立となっていた。

 だが、第3戦を迎え三重県のJAF準加盟クラブ、チーム妖怪(yohkai)から4選手が参戦。まさに“妖怪大合戦”のクラブ内闘争が開幕。ホンダ・フィットを駆る妖怪J清本選手が、アルピーヌA110を操る2選手にいかに食らいつくかに注目が集まった。しかし近畿からの刺客、A110S勢の段上泰之選手が1st tryから頭ひとつ飛び抜けるタイムをマーク。

 同じA110S勢で2番手のMOTOHIRO選手に3秒以上のマージンをつけて2nd tryに挑んだ段上選手。1stに比べて下段では大きなラインを描き、コーナーリングスピードを上げてくるが、ところどこではやる気持ちが抑えられずアンダーステアを出してしまう。

 それでも1stのタイムを更新し、トップのまま清本選手の出番を待つことに。しかし、その清本選手がまさかのパイロンタッチ。この結果、段上選手が第1戦に続く二連勝と王座争いでもグッと優位に立つ勝利を挙げた。「(2ndは)ラインを考えたことでタイムアップできたんだと思います。今年は全勝優勝を目指して頑張ります。とにかく体調とメンタルを整えることが重要だと思っています。頑張ります!」と、今季の目標もコメントしてくれた。

ATクラスはJAF全日本ジムカーナ選手権のP・AE1クラスなどでも活躍する段上泰之選手(DLプロμCgEG!A110S)が制した。「1本目の方がまだマシだったかもしれません。フロントタイヤも随分使っていて減っているので、フロントのグリップが怪しい感じでした」と語るものの、2nd tryでしっかりタイムアップを果たしたのは流石だ。
ATはトップ3選手が表彰された。左から2位のMOTOHIRO選手(DLプロμ☆アルピーヌ西宮)、優勝した段上選手、3位の妖怪J杉本選手(DL妖怪フィット4号機)。

PN1クラス

 PN1クラスは、5選手が競った。各地でトヨタ・ヤリスのワンメイクとなりつつあるこのクラスだが、徐々に参戦するドライバーが増えつつある。ここまで2戦2勝の長畑年光選手を誰が止めるのかに期待がかかったが、なんと! 長畑選手は1stでダブルパイロンタッチを喫して撃沈。間隙を縫って飛び出したのは加田充選手だった。クラスでただひとり、1分14秒台という圧倒的なタイムで2番手以下に差をつける。

 しかし、2ndが始まると早々にトップタイムは更新されていった。まず加田選手が自身のタイムを約0.4秒塗り替えると、すぐに渋谷達也選手が更新。さらに菅沼選手が1分13秒台にターゲットタイムを塗り替える。そしてクラスのラストゼッケン、長畑選手がスタート。「最初の右ターンのブレーキングで、リアがブレイクしてしまいました」とのことだが、その後も全体的に勢いがない走り。1stをペナルティで失っていることから慎重になりすぎてしまったのか、それでも長畑選手は2位に飛び込んだ。

 一方、優勝した菅沼選手は「1本目はサイドブレーキが効かなくて、ちょっとタイムを落としてしまいました。2本目は最初のサイドターンは失敗してしまったんですが、他はなんとか回せたのが良かったですね」とのこと。さらに「奥伊吹のグリップの低い路面で、いかにクルマの姿勢を作るかを大切にしました。長畑さんの勢いを止められて良かったです」と、勝利を振り返った。

PN1クラスは第1戦で2位、第2戦は4位だった菅沼隆一選手(菅沼自工・ヤリスDL)が、1st tryの3番手から逆転で今季初優勝を果たした。
PN1もトップ3選手が表彰を受けた。左から、2位の長畑年光選手(DL熊王☆身延AZURヤリス)、優勝した菅沼選手、3位の渋谷達也選手(DL菅沼自工SUS+K1ヤリス)。

PN2クラス

 16台のマツダ・ロードスターにひとり、岡直輝選手がZC32S型スズキ・スイフトスポーツで挑むPN2クラス。1stでトップタイムをマークしたのは、深川敬也選手。島倉正利選手をわずか0.065秒差で折り返した。

 もちろん、勝負は2nd。ダスティだった午前とはうって変わって路面温度も上がり、砂塵がライン上から飛ばされた分、タイムアップも期待できる。その中でまずタイムをいきなり上げてきたのは、前半ゼッケンの大須賀義外選手。1分10秒台のトップ2に迫るタイムで順位を上げてくるも1分11秒台は破れず3番手。

 シードゼッケンの島倉選手にひとり食らいついたのは、やはり深川選手だった。ベストタイムを0.4秒以上押し上げてターゲットタイムを更新する。後半のハイスピードセクションでやや踏み込みすぎた感はあるが、決して悪いタイムではない。

 そしていよいよラストゼッケンの島倉選手がスタート。「深川君が1本目ぶっちぎりだったので、パイロン当たってもいいかな… と思って走りました」という言葉どおり、最初のターンからビタビタにパイロンに寄せてみせる。その上旋回速度も上々、まさに速いターンの典型だ! その後も一切守りなしの攻める姿勢を見せたギリギリのドライブで、見事逆転!「深川君の連勝を止められて嬉しいです。なんとか頑張ってシリーズチャンピオンを獲りたいと思っています」と喜びをあらわに語ってくれた。

PN2クラスを制したのは2023シーズンのランキング3位の島倉正利選手(DL菅沼VTμS+ロードスター)。1stは2番手だったものの、シードゼッケンの意地を見せて逆転優勝を果たした。
第2戦を制して二連勝を狙ったPN2の深川敬也選手(DLエナぺPFRロードスター)は1stでトップタイムをマークし、2ndでもタイムアップを果たすが、2位で連勝は果たせず(左)。1stでは9番手とクラス中団に沈んだ大須賀義外選手(BPSロードスター陶Marts)は、2ndで2秒以上タイムアップして挽回、3位で地区戦初表彰台に立った(右)。
PN2は4人のマツダ・ロードスター使いが表彰を受けた。左から4位の井森龍一選手(いもさんのロードスターDL)、2位の深川選手、優勝した島倉選手、3位の大須賀選手。

PN3クラス

 PN3クラスも開幕から混沌とした闘いが続いている。開幕戦はベテランの仲川雅樹選手が、第2戦は若手の大多和健人選手が制しており、ランキング上位陣は僅差で並んでいる状況だ。

 そして第3戦の1stは、“眠れる獅子”森嶋昭時選手がトップタイムをマークする。昨季はPN2でグリップ不足に悩まされ、地区戦で1勝も挙げることができなかったベテランの森嶋選手。今季は車両をロードスターからGR86に変更してクラス転向、タイヤメーカーも替えての参戦だ。しかし、開幕2戦は歯車が嚙み合わず、表彰台こそ手にするものの優勝の2文字は遠かった。しかしそんな森嶋選手が0.035秒差ながらも、ここまでの鬱憤を晴らすかのような走りを見せた。

 2ndに入り、開幕戦を制した仲川選手が森嶋選手のタイムを約0.1秒上回ると、ここからタイムアップ合戦が開始される。続く若手勢の田村直選手が一気にタイムを挙げて1分9秒台をマークし、トップタイムを塗り替えた。しかし、「自分のメンタルをもっと高められればいい勝負ができたと思うんですが、自分の感度が足りませんでした。下のパレットでアンダーを感知する感覚とか… そういったところですかね」と、田村選手は勝負が決した後に反省していた。

 続く森嶋選手はその田村選手タイムを0.071秒差でかわして再逆転! 後続のシードゼッケン勢による走りに注目が集まるが、安仲慶祐選手も「後半抑え過ぎてしまったのがダメでしたね…。大きなミスはなかったんですが」と言うとおり、森嶋選手の記録した1分9秒520には届かず。この結果、森嶋選手が2022シーズンの第7戦以来となる地区戦優勝! PN3転向3戦目にしてクラス初優勝を飾った。

「ありがとうございます! 地区戦2年ぶりの優勝です! ランキングはトップだったんですがどうしても勝つことができず、さらには自分の納得いく走りもできないままきてたんで、今日なんとかギリギリ勝てたんで嬉しいです」と歓喜の森嶋選手。さらに「とにかく後半セクションが良かったですね。2本目は砂がなくなってくれて、ガンガンいけて良かったです。今年は関東から大多和選手もやってきて混沌としているのでそれも楽しいんですが、これから全日本もスポットで出場しながらチャンピオンを目指して頑張ります」と勝因と今季の目標も語ってくれた。

今季からGR86を駆ってPN3クラスに転向してきた森嶋昭時選手(K1ルブロスDLレイズGR86)。PN1でチャンピオンを獲得した2022シーズン以来となる地区戦での優勝を、2本ともトップタイムで獲得した。
PN3で真っ先に1分9秒台に突入し、一時はトップに立ったZC33S型スズキ・スイフトスポーツをドライブする田村直選手(YH M-Iスイフト)だったが森嶋選手が僅差で上回り、悔しい2位となった(左)。ロードスターRFを操り、1stは2番手で折り返した安仲慶祐選手(モティーズDLプロードスターμ)。2ndではタイムアップを果たすも1分10秒代の壁は越えられず、3位に終わった(右)。
PN3は上位6選手が表彰を受けた。左から4位の仲川雅樹選手(ワコーズK-one S+DL86)、2位の田村選手、優勝した森嶋選手、3位の安仲選手、5位の鈴木勇一郎選手(AZUR熊王マキタDL GR86)、6位の大多和健人選手(カモネギGR86 S+)。

PN4クラス

 ZN6型トヨタ86とZC6型スバルBRZが中心のPN4クラス。1stは多くの選手がミスコースとパイロンタッチで沈む中、トップにたったのはクラスでただひとり、1分13秒台を記録した季羽英史選手。しかし、このタイムは午後の2ndに入って早々に塗り替えられる。

 いきなり1分12秒台にターゲットタイムを押し上げたのは、「奥伊吹は関西から近いんで、毎年参加させてもらっているんです」という、クラスで2番目にスタートしたかつこ選手だった。絶妙なアクセルワークを見せて、特に下段の外周ではリアをブレイクさせないギリギリの姿勢変化で周囲を魅了する走りを披露した。

 このタイムに刺激されてか、続々とタイムを伸ばしてくるドライバーが現れるが、誰も1分12秒台には届かない。そしてクラス最終ゼッケンの川田優選手がスタート。川田選手も1stでパイロンタッチに沈んでいたからか、2ndはどうしてもパイロンに寄せきれない。残したタイムはなんとか1分12秒台には入ったものの、かつこ選手には遠く及ばず2位に。

 圧倒的なタイム差で見事、PN4を制したかつこ選手は「1本目ミスコースで、自分のジムカーナ人生を見直すくらい反省しました。昨日からタイムが出ているので、関東でやってきた“しっかり止めて、しっかり走らせる”走りに集中しました」と、メンタル面での勝因を明かした。さらに「このクルマになってからは、クルマに無理をさせずに走ってきたんですが、やっと“86でジムカーナやっています”と人に言えるような走りができたと思います」と、勝利を喜んだ。

PN4クラスを制したのは、女性ドライバーのかつこ選手(DL犬猫86)。1stでは経験豊富なかつこ選手らしからぬミスコースを喫するも、一発勝負となった2ndでトップタイムをマークして挽回してみせた。
昨季のPN4ランキング2位、川田優選手(DL☆モティーズ☆BPS☆86)は1stでパイロンタッチに沈むが、2ndで盛り返して1分12秒台に入れたがかつこ選手には及ばず、2位を獲得(左)。昨季のJMRC中部ジムカーナ東海シリーズRPN3クラスチャンピオンの則包壮大選手(comeback*86)は1stでは4番手だったが、2ndで順位をひとつ上げて3位、地区戦で初の表彰台に上がった(右)。
PN4は左から、2位の川田選手、優勝したかつこ選手、3位の則包選手が表彰を受けた。

PN5クラス

 第2戦を全日本ドライバーの松本敏選手が優勝をさらい、王座争いが混沌としているPN5クラス。開幕戦を制し、第2戦は3位に入った高木健司選手をいかに止めるかが注目のポイント。1stでトップタイムをマークしたのは大前尚史選手だが、ここまでのクラスを見る限りこのタイムは決して安全なマージンを持っているものでないことは明白だ。

 その予想どおり、2ndになるとすぐにトップタイムは更新されていく。その中でも群を抜いて速かったのは、主催するPleasure所属の杉本季優選手だった。「1本目でパイロンを2本蹴ってしまって、タイムを残せなかったのでそれを修正しました。とにかくアンダーを少なく、しっかり抑えて走ったのが良かったですね。自分でも納得のいく走りでした」とのことだ。

 クラスの最後に走った高木選手がまさかの2本ともミスコースとなり、杉本選手が見事、今季初勝利を手にした。

PN5クラスは昨季ランキング2位の杉本季優選手(ダンロップRSKヤリス)がクラスでただひとり、1分10秒台の壁を突破して1分8秒877をマーク。昨季の第6戦以来の勝利を挙げた。
1stでPN5のトップタイムをマークした大前尚史選手(エナペタルモンテGRヤリスDL)は2ndで2秒近くタイムアップを果たすが、杉本選手のタイムには届かず2位を獲得した(左)。畠山純綱選手(TOYBOXLMS+GRヤリス)は1stでミスコースに泣いたが、2ndでタイムを残して3位に入った(右)。
PN5の表彰台は左から、2位の大前選手と優勝した杉本選手、3位の畠山選手が登壇した。

SA1クラス

 近藤瑛貴選手が開幕二連勝を飾っているSA1クラスでは、驚くことにランキングトップ4選手が全てEF8型ホンダCR-Xを駆っている。もちろん、第3戦も近藤選手が中心となることが予想されたが、その近藤選手の1stはまさかのパイロンタッチで5秒加算のペナルティ。トップに立ったのは早坂怜選手だった。

 開幕戦こそ2位だったものの、第2戦を欠場した早坂選手。このまま逃げ切りたいが、当然のごとく2nd勝負の今回の一戦。しかし、トップタイムを誰も抜けないまま、早坂選手の出番となり、当然のごとく自身のタイムを約0.6秒押し上げて後続の走りを見守る。

 だが、この早坂選手を容易に逃がすわけにいかないのは、二連勝中の近藤選手。1stでは前日の路面状況とのギャップに翻弄されたが、2ndに向けてタイヤの応答性を上げるために空気圧を上げて挑んだことが功を奏した。上段からビタビタにパイロンを攻める走りを見せて、中間タイムから大きく伸ばす。2位の早坂選手以下を2秒以上離す、圧倒的な速さで制した。

「2本目はターンもしっかり決まって、凄く良く動いてくれました。特に後半セクションで差をつけられたのかなぁ、と思っています」と2ndの走りを語った近藤選手の隙を見せない走りを、ライバルたちがどう攻略するかに注目したい。

SA1クラスは「今日は守りに入らずしっかり攻めることができましたね」と振り返った近藤瑛貴選(YH/DXL/CRX/TKs)が開幕三連勝。「今年は満点チャンピオンをもう1回獲りたいと思っています」と、2022シーズン以来の目標と、ランキング2位だった昨季のリベンジを語ってくれた。
1stでトップタイムをマークした早坂怜選手(小西タイヤADVANμCRX)は2ndでもタイムを伸ばすも、近藤選手にはかなわず。それでも昨季の第2戦以来となる2位を獲得した(左)。1stで2番手タイムを記録した渡辺信吾選手(MRSワコーズCR-X)は逆転優勝を狙った2ndでパイロンタッチを喫してタイムアップならずも、3位に入った(右)。
SA1の表彰台に上がった3選手は、全員EF8型ホンダCR-X使いだった。左から、2位の早坂選手、優勝した近藤選手、3位の渡辺選手。

SA3クラス

 開幕2戦は安部洋一選手と前島孝光選手が勝利を分けあっているSA3クラス。今季はタイヤメーカーを替えて戦う姿勢が整った安部選手を、周囲がどう包囲網をつくって独走を許さないようにするのかがポイントだ。

 しかし、1stの安部選手はパイロンペナルティで下位へ沈んでしまう。ここでトップタイムを記録したのは第2戦を制した前島選手。だが、2ndに入ると早々にこのターゲットタイムは塗り替えられてしまう。

 前半ゼッケンで前島選手のチームメイト、寺田大祐選手が約0.3秒上回って更新。中田博信選手はさらにトップタイムを塗り替える。前島選手にも期待がかかったが、気負い過ぎてしまったのかまさかのタイムダウン。

 トップタイムをさらに更新したのは、やはり安部選手だった。2位の中田選手に約1秒差をつける今季2勝目でリードを広げた。「1本目は(パイロンを)避けたつもりだったんですが、ペナルティだったみたいですね。2本目は少し緩めて抑えながら走った感じです。ターンで稼いで外周で少し吐き出す感じでしたね」と、走りを語った安部選手。

 タイヤについては「今年から履き替えて、2年間やってきたタイヤでは勝てそうで勝てなくて替えた感じです。長持ちするタイヤでやりたくて、これが長持ちしてくれるなら使おうと思います」とのことだ。今季は安部選手がこのクラスの中心人物となりそうだ。

1stでパイロンタッチを喫した安部洋一選手(山本タイヤ久與RX-7)は、2ndでは「ベストではありませんが、滑りやすい路面でしっかりタイムを出す走りに徹しました」と語った走りも好奏したか、今季2勝目を手にした。
SA3で昨季の第5戦以来の2位を獲得した中田博信選手(小西ADVANコサ犬エリーゼ)の1stはミスコース。2ndで挽回した(左)。1stで3番手だった寺田大祐選手(M-I★RX-7★だい)の2ndは2秒以上タイムアップを果たしたが、順位は変わらず3位となった(右)。
SA3は左から2位の中田選手と優勝した安部選手、3位の寺田選手が表彰を受けた。

B・SC1クラス

 B・SC1クラスはこの一戦で最多、24選手が競った。まさに異種格闘戦、といったバラエティ溢れる車種が魅力だが、上位を占めるのはDC2型ホンダ・インテグラ勢。開幕戦と第2戦で勝利を収めた最上佳樹選手は第3戦を欠場、鬼の居ぬ間に勝利を勝ち取りたいのは誰もが一緒だ。そんな中、1stをトップで折り返したのはシードゼッケンをつける榎本利弘選手だった。

 2ndに入っても榎本選手が1stでマークした1分9秒391は誰にも破られないかに思われたが、ZC33S型スイフトを駆る小武拓矢選手がターンを失敗しながらも、約0.2秒差でターゲットタイムを更新する。

 このタイムを聞いて気合の入った榎本選手。自らのタイムを大きく押し上げる1分8秒598を記録し、文句なしのトップタイム更新。ラストゼッケンに相応しい走りで見事、今季初優勝を果たした。

 榎本選手はフィニッシュ後、「1本目ミスコースしかかったんですがそれでもトップタイムで…(笑)。2本目はボトムスピードを上げていったのが良かったですね。上のパレットでちょっと回し過ぎたりといろいろミスはあったんですが、それでもしっくりくるような走りになりました」と、走りについて語ってくれた。

昨季のSA2クラスチャンピオンで、B・SC1クラスに転向した榎本利弘選手(AZURプロμDLインテグラ)は「今年からタイヤメーカーを替えて、セットアップもガラッと変えて苦労していたんですが、やっと自分の走りのスタイルが見えてきました。残りの大会も頑張ります」と、奥伊吹での優勝で手ごたえをつかんだようだ。
全日本で2度、チャンピオンを獲得しているB・SC1の小武拓矢選手(シンシアYH和光スイフトS+)は、1stでのパイロンタッチから2ndで巻き返して2位を獲得した(左)。水谷琢志選手(K1☆YH元NUインテグラ紫)の1stは11番手とポイント圏外に沈んだが、2ndで約2秒タイムを上げて3位に飛び込んだ(右)。
B・SC1クラスはトップ6が表彰を受けた。左から4位の隅田敏昭選手(YH三共ITO☆WHインテグラ)、2位の小武選手、優勝した榎本選手、3位の水谷選手、5位の下田尚貴選手(DLスエマツダインテグラプロμ)、6位の下野朔太郎選手(モンテカルロDLインテグラ)。ZC33S型スイフトで奮闘した小武選手以外の5選手はDC2型ホンダ・インテグラ勢だった。

B・SC2クラス

 B・SC2クラスは、ナンバー付きとナンバーなしのAWDによる熾烈な争いが繰り広げられる。1stでは西田哲弘選手が、地元に近い奥伊吹で活躍を見せた。最終ターン直前にサイドブレーキシューが剥離してしまい、全くターンができないままフィニッシュしたにも関わらず、1分7秒454というタイムを記録。しかし、西田選手はブレーキトラブルということもあって2ndは出走をとりやめ、外からライバルたちの走りを見守ることとなった。

 なんとしてでも西田選手のタイムを超えたいランキング上位陣。西田選手と同じく、ナンバー付きのB車両で挑む近畿からの刺客、西川佳廣選手が気を吐き1分8秒台に入るが2番手。後続陣のタイムも1分8秒台にとどまり、西田選手が今回の一戦では唯一となる1stのタイムで逃げ切り優勝を飾った。

 西田選手は「サイドブレーキのシューが剥離してしまい、交換して2本目走ってもあたりが付かないのでやめました。このコースはヤリスの得意な小さいターンをしっかりできたのが勝因ですね」と走りを分析。さらに「課題も多いですが、フルパイロンコースは自分の得意とするコースなんで、ナンバーなしのSC車両にも勝てると証明できました」と、勝利を喜んだ。次戦以降のSC車両勢による巻き返しにも注目だ。

トラブルによる2nd不出走は無念だったものの、逃げ切って今季初優勝のB・SC2クラス西田哲弘選手(DL☆GいちPRS☆Ωヤリス)。「次のイオックス(アローザスポーツランド)は自分の地元なんで、勝てればシリーズチャンピオンも見えてくると思うので頑張ります」と、意気込んだ。
B・SC2の2位は、2023年JAF近畿ジムカーナ選手権PN4クラス王者の西川佳廣選手(DLFTLub犬乱Cgランサー)が、2ndで1stのミスコースを挽回して獲得した(左)。1stで2番手、2ndでの逆転優勝に挑んだ桃井守選手(スオBSジールももクリランサー)はタイムアップを果たすも1分7秒台には入れられず、3位となった(右)。
GRヤリスを駆る西田選手以外は新旧の三菱・ランサーエボリューション勢が占めたB・SC2は左から、2位の西川選手と優勝した西田選手、3位の桃井選手が表彰台に登壇した。

Dクラス

 フォーミュラカーがDクラスで競う、数少ないシリーズの中部地区戦。第3戦は4選手が参戦し、不動の絶対的王者・佐藤宗嗣選手が1stからトップタイムをマークする。佐藤選手の2ndは1秒以上のタイムアップで2位以下のタイム差をさらに広げて、このクラスを制した。

 開幕三連勝を遂げた佐藤選手は、「とりあえず1ケタ秒台に入れたい、と思いました。Sタイヤではマシンのパワーを受け止めきれないので、AWD勢にはなかなか勝つことはできないですね。また、さるくら(モータースポーツランド)にいってマシンのセットアップをして後半戦に臨みたいと思います」と、コメントを残した。

シリーズが開催されなかった2020シーズンを挟んでDクラス4連覇中の佐藤宗嗣選手(丸久クジメモータースTG47)が2本ともトップタイムで開幕三連勝。5連覇に向けて好スタートを切った。
Dの表彰台に上がったトップ3選手。左から2位の五十嵐豊光選手(塩岡SP丸久YHオスカー)、優勝した佐藤選手、フォーミュラカーが集った中、B10型日産・サニーで奮闘した3位の熊崎敏之選手(TKP丸久YSS箱Dサニー)

2024年JMRC中部ジムカーナ選手権
レディースクラス

 JMRC中部ジムカーナ選手権独自のルールで戦われる、レディースクラス。女性ドライバーが参戦する各クラスでのベストタイムと、そのクラスの優勝タイムとの差で順位をつける、というルールだ。

 今回の一戦では、このクラス史上初となる参戦クラスでの優勝を果たしたため、0秒000という大記録を樹立したのはPN5のかつこ選手。女性ドライバーによってトップタイムを競う、2024年JAF近畿ジムカーナ選手権のレディースクラスでもランキング首位を独走中の彼女は、中部地区戦でもその強さと速さをいかんなく発揮した。

レディースクラスは左から、SA1に参戦した2位の大寳ゆかり選手、PN5を制してトップのかつこ選手、PN3に参戦した3位・河合豊美選手が表彰された。

 大橋代表は、「ターンのとき目に入るパイロンやブレーキングのときに目に入るパイロンなど、選手にとっては嫌なコースだったかもしれませんが、走りの邪魔にならないパイロン設定だったと思います」とレイアウトの感想を語った。また、「ここ奥伊吹での主催は20年以上になりますが、ここから多くの全日本選手も巣立っているので良いコースだと思います。中部のレベルの高いイベントであるべきだと思うので、選手に挑戦するようなコースを設定できたのも良かったですね」とも振り返ってくれた。

 さらに「奥伊吹はパドックが遠くて、コースが上下に分かれているのでオフィシャルがたくさん必要なので、主催も大変なんですが皆に支えられて毎年主催ができているので助かっています」とのことで、「オフィシャルも年1回の楽しみとして打ち上げも含めて楽しんでもらっているので、今日も無事に終われて良かったです」と、オフィシャルのみなさんをねぎらい、今回の一戦をまとめてくれた。

季節外れの暑さで日差しも厳しかった奥伊吹で終日頑張ったオフィシャルのみなさん。お疲れさまでした!

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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