富士24時間は中升 ROOKIE AMG GT3がノントラブル&ノーミスで大会連覇&シリーズ連勝。ST-2クラスではENDLESS GRヤリスが優勝

レポート レース

2024年6月4日

スーパー耐久シリーズの第2戦、現在日本で唯一の24時間レースである「富士SUPER TEC 24時間レース」は、5月23〜26日に富士スピードウェイで58台の車両が出走して開催。天候は曇りで夜間は霧雨が降るなど、難しいコンディションとなった。中升 ROOKIE AMG GT3(鵜飼龍太/ジュリアーノ・アレジ/蒲生尚弥/片岡龍也組)がノントラブルとノーミスで走り大会を連覇、シリーズでの開幕連勝を飾った。

ENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE 第2戦「NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」
開催日:2024年5月23~26日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ株式会社、FISCO-C

 2018年に50年ぶりに復活して今回で7年目となる富士24時間レースは、現在S耐の一戦として開催されている。年に一度のお祭りとして地元住民は入場無料となり、またキャンプサイトを増やしてバーベキューを楽しむスタイルをつくるなど、独特の観戦スタイルも定着してきた感がある。今年は3日間で過去最高の計5万4,700人の観客を集めた。

多様な車種が混走しつつ耐久レースが行われることもスーパー耐久シリーズの魅力になっている。
24時間で最多周回を重ねたチームに贈られる総合優勝のトロフィー。台座には2018年以降に総合優勝したチームやドライバーの名前が刻まれている。
色とりどりの大輪の花が富士スピードウェイの夜空を飾る。打ち上げ花火はこの大会の風物詩となっている。
今回のレースでは24時間のうちに目まぐるしく天候が変わった。このためタイヤの選択も周回数に大きく影響した。

ST-Xクラス

 24日に行われた公式予選は雲の多い晴れとなり、気温も上昇する中で行われた。今回はA、Bドライバーのベストタイム合算でグリッドが争われ、ST-Xクラス(全5台)にスポット参戦のCraft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3(リー・ジェフリー/太田格之進/チェン・ディーン/リアン・ジャトン/オジェイダ・ジェイデン組)がポールポジションを獲得。これに中升 ROOKIE AMG GT3、TKRI松永建設AMG GT3(DAISUKE/元嶋佑弥/中山友貴/松浦孝亮組)、DAISHIN GT-R GT3(大八木信行/藤波清斗/青木孝行/坂口夏月/大八木龍一郎組)、DENSO LEXUS RC F GT3(永井宏明/小高一斗/小山美姫/嵯峨宏紀/永井秀貴/中山雄一組)が続いた。

 24時間という長丁場の決勝レースは25日、曇りで気温20度というコンディションの15時ちょうどにスタートした。ここで素晴らしい走りを見せたのはDAISHIN GT-R GT3の藤波選手で、ダンロップコーナー入口までに3台をかわしてトップに浮上した。2番手争いは中升 ROOKIE AMG GT3とTKRI松永建設AMG GT3のメルセデスで、その2台のバトル間に藤波選手は20秒以上のリードを築いた。

 明るい時間帯に各チームはジェントルマンドライバーのスティントに突入し、順位に変動が出始めた。しかし、すっかり暗くなり恒例の花火が打ち上がる20 時ごろには、中升 ROOKIE AMG GT3、DENSO LEXUS RC F GT3、DAISHIN GT-R GT3、TKRI松永建設AMG GT3が同一ラップで走行していた。

 その少し前の19時ごろから弱い霧雨が降り始めたが、コースを濡らすまでには至らず。だが、23時頃からワイパーを使う車両が出始め、路面もうっすらと濡れて来た。トップを快走していた中升 ROOKIE AMG GT3にDAISHIN GT-R GT3が迫り一時はトップを奪うが、ピットインなどのタイミングもあり中升 ROOKIE AMG GT3がトップを奪い返した。

 夜中になると全車がレインタイヤに交換。深夜1時ごろから2番手のDAISHIN GT-R GT3が徐々に遅れ始めた。DAISHIN GT-R GT3の坂口選手は、ピットインして車両をチェックしても症状の原因が分からず。全車に義務付けられたメンテナンスタイムを利用して点検をするが、新品で臨んだ電装系のトラブルのためにピット滞在の時間が増え、トップ争いから脱落することになった。

 その後は中升 ROOKIE AMG GT3がトラブルもなく順調に周回を重ねた。霧雨は6時ごろまでには止み、コースのラインも乾き始めて各車がスリックタイヤに交換。昨年このレースをスキップしたことでタイトルを逃したTKRI松永建設AMG GT3がピットインのタイミングでトップを奪うが、中升 ROOKIE AMG GT3を上回ることはできず。中升 ROOKIE AMG GT3はノーミスで走り、15時01分にトップチェッカー。大会連覇、そしてシリーズ開幕から連勝を飾り大量ポイントを加算。シリーズのタイトル争いを有利に進めることになった。

ST-Xクラス優勝は#1 中升 ROOKIE Racingの中升 ROOKIE AMG GT3(鵜飼龍太/ジュリアーノ・アレジ/蒲生尚弥/片岡龍也組)。
最多ラップを周回して総合優勝した#1中升 ROOKIE Racing。左から鵜飼選手、アレジ選手、蒲生選手、片岡選手。
2位は#23 TKRIのTKRI松永建設AMG GT3、3位は#31 aprのDENSO LEXUS RC F GT3。
ST-Xクラス表彰の各選手。

ST-Zクラス

 11台が出走したST-Zクラスは、26号車 raffinee日産メカニックチャレンジZ NISMO GT4(大塚隆一郎/富田竜一郎/篠原拓朗/荒聖治/柳田真孝組)が予選で組トップとなり、昨年のチャンピオンである埼玉GB GR Supra GT4(山﨑学/吉田広樹/服部尚貴/野中誠太/荒川麟組)、25号車 raffinee 日産メカニックチャレンジZ NISMO GT4(植松忠雄/松田次生/佐藤公哉/名取鉄平組)、シェイドレーシング GR SUPRA GT4 EVO(HIRO HAYASHI/平中克幸/清水英志郎/新田守男組)が続いた。

 スタート直後に25号車 raffinee 日産メカニックチャレンジZ NISMO GT4の松田選手が、2番手に順位を上げてZの1-2態勢としたが、松田選手は9周目のダンロップコーナー入口でバックマーカーに追突されてリアを大きく壊してピットイン、優勝争いから脱落した。26号車 raffinee日産メカニックチャレンジZ NISMO GT4の富田選手が独走を続け、篠原選手、大塚選手、荒選手とつないでいたが、21時ごろにミッションケースが割れるというトラブルでストップ。リペアエリアへ運ばれてこちらも大きく遅れることになった。

 埼玉GB GR Supra GT4はペナルティを2度受けたこともありタイムロス。一時は、EBI GROUP Cayman GT4 RS CS(北園将太/久保凛太郎/山野直也/岩澤優吾/近藤翼組)がトップを奪うも、ブレーキトラブルもあり脱落。BRP★FUNDINNO PORSCHE 718 GT4 RS(藤井優紀/末廣武士/猪爪杏奈/大島和也/鈴木建自/奥村浩一組)も一時トップに立ったが、最後にトップを奪ったのはシェイドレーシング GR SUPRA GT4 EVOで、トラブルなく走り切り今季初優勝を飾った。2位は埼玉GB GR Supra GT4、3位はBRP★FUNDINNO PORSCHE 718 GT4 RSだった。

ST-Zクラス優勝は#885 SHADE RACINGのシェイドレーシング GR SUPRA GT4 EVO(HIRO HAYASHI/平中克幸/清水英志郎/新田守男組)。
2位は#52 埼玉Green Braveの埼玉 GB GR Supra GT4、3位は#19 Birth Racing Project【BRP】のBRP★FUNDINNO PORSCHE 718 GT4 RS。
ST-Zクラス表彰の各選手。

ST-1クラス

 ST-1クラスは1台のみの参戦で、シンティアム アップル KTM(IDA TAIYO/加藤寛規/吉本大樹/小林崇志/高橋一穂組)が序盤はST-Xクラスに続く走りを見せたが、トラブルに見舞われた。その後も幾度となくトラブルを抱えたが、総合50位で完走し優勝した。

ST-1クラス1位は#2 Ksフロンティア KTMカーズのシンティアム アップル KTM(IDA TAIYO/加藤寛規/吉本大樹/小林崇志/高橋一穂組)。
ST-1クラス表彰の各選手。

ST-2クラス

 ST-2クラス(全8台)は予選6番手のENDLESS GRヤリス(花里祐弥/石坂瑞基/伊東黎明/岡田整組)が、序盤のうちに2番手へ順位を上げると、日付が変わる前にはトップに浮上してそのまま優勝した。

ST-2クラス優勝は#13 ENDLESS SPORTSのENDLESS GRヤリス(花里祐弥/石坂瑞基/伊東黎明/岡田整組)。
2位は#6 シンリョウレーシングチームの新菱オートDXL夢住まい館EVO10、3位は#743 Honda R&D ChallengeのHonda R&D Challenge FL5。
ST-2クラス表彰の各選手。

ST-3クラス

 ST-3クラス(全4台)は、エアバスター WINMAX RC350 TWS(藤田真哉/伊藤鷹志/水野大/眞田拓海/大滝拓也組)が夜中のウェット路面でも安定した走りを見せてクラス優勝。総合でも12位でゴールした。

ST-3クラス優勝は#39 TRACY SPORTS with DELTAのエアバスター WINMAX RC350 TWS(藤田真哉/伊藤鷹志/水野大/眞田拓海/大滝拓也組)。
2位は#15 OKABEJIDOSHA motorsportの岡部自動車Z34、3位は#38 TRACY SPORTS with DELTAのTRACYSPORTS with DELTA RC350 TWS。
ST-3クラス表彰の各選手。

ST-4クラス

 ST-4クラス(全7台)はシェイドレーシング GR86(影山正彦/国本雄資/山田真之亮/鶴田哲平組)が序盤からトップを奪い2番手に4周差をつけて優勝。SHADE RACINGはST-Zと2クラス制覇を成し遂げた。

ST-4クラス優勝は#884 SHADE RACINGのシェイドレーシング GR86(影山正彦/国本雄資/山田真之亮/鶴田哲平組)。
2位は#41 TRACY SPORTS with DELTAのエアバスターWINMAX GR86 EXEDY、3位は#3 ENDLESS SPORTSのENDLESS GR86。
ST-4クラス表彰の各選手。

ST-5クラス

 出走14台と大激戦区のST-5クラスは、DXLアラゴスタNOPRO☆MAZDA2(西澤嗣哲/大谷飛雄/小西岬/野上敏彦/山本浩朗/上松淳一組)が、odula TONE 制動屋 ROADSTER(太田達也/外園秋一郎/黒沼聖那/池田拓馬/丹羽英司/野村充組)とレースの半分以上バトルを展開したが、約3.3秒差で振り切り優勝した。

ST-5クラス優勝は#17 TEAM NOPROのDXLアラゴスタNOPRO☆MAZDA2(西澤嗣哲/大谷飛雄/小西岬/野上敏彦/山本浩朗/上松淳一組)。
2位は#65 OVER DRIVEのodula TONE 制動屋 ROADSTER、3位は#88 村上モータースの村上モータースMAZDAロードスター。
ST-5クラス表彰の各選手。

ST-Qクラス

 5メーカーの開発車両によるST-Qクラスは豪華メンバーがそろった。トヨタ、スバル、マツダ、日産、ホンダから8台が出走して全車が完走。1番目にゴールしたGR Supra Racing Concept(加藤恵三/松井孝允/河野駿佑/山下健太/中嶋一貴組)、2番目にゴールしたNissan Z NISMO Racing Concept(平手晃平/佐々木大樹/千代勝正/高星明誠/ロニー・クインタレッリ/本山哲組)、Team SDA Engineering BRZ CNF Concept(伊藤和広/山内英輝/井口卓人/花沢雅史/廣田光一組)は3番目にゴールとなった。

ST-Qクラスで1番目にゴールした#92 GR team SPIRITのGR Supra Racing Concept(加藤恵三/松井孝允/河野駿佑/山下健太/中嶋一貴組)。
2番目にゴールした#230 NISMOのNissan Z Racing Concept(平手晃平/佐々木大樹/千代勝正/高星明誠/ロニー・クインタレッリ/本山哲組)、3番目にゴールし今回が最後のレースとなった(次戦からはWRXをベースとしたAWD車両に変更予定)#61 Team SDA EngineeringのTeam SDA Engineering BRZ CNF Concept(伊藤和広/山内英輝/井口卓人/花沢雅史/廣田光一組)。
注目された#32 ORC ROOKIE RacingのORC ROOKIE GR Corolla H2 concept(MORIZO/佐々木雅弘/石浦宏明/小倉康宏/近藤真彦/ヤリ=マティ・ラトバラ組)はトラブルも多かったが、目標としていた一回の給水素での航続周回数30周(昨年大会は最多16周)をクリアした。
#12 MAZDA SPIRIT RACINGのMAZDA SPIRIT RACING ROADSTER CNF concept(川田浩史/堤優威/阪口良平/箕輪卓也組)と#28 ORC ROOKIE RacingのORC ROOKIE GR86 CNF concept(佐々木栄輔/坪井翔/大嶋和也/大政和彦/福住仁嶺/豊田大輔組)は両車ともカーボンニュートラル燃料を使用するのが特徴。
ジャーナリストドライバー3名を加えエントリーした#271 Team HRCのHonda CIVIC TYPE R CNF-R(大津弘樹/武藤英紀/辻本始温/桂伸一/橋本洋平/石井正道組)と、バイオディーゼル燃料を使用する#55 MAZDA SPIRIT RACINGのMAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept(寺川和紘/井尻薫/関豊/前田育男/佐藤考洋組)。
ST-Qクラスのセレモニー。

フォト/遠藤樹弥、吉見幸夫 レポート/皆越和也、JAFスポーツ編集部

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