勝田貴元選手、地中海に浮かぶサルディニア島でのWRC第6戦はトラブルに泣く

レポート ラリー JAFWIM

2024年6月7日

2024年FIA世界ラリー選手権(WRC)は5月31日~6月2日に第6戦を迎え、イタリア・サルディニア島の北西部に位置するアルゲーロを拠点に「ラリー・イタリア・サルディニア」が開催された。今回のラリーは31日の午前中にシェイクダウンが行われたほか、午後から行われたデイ1を含めて全日ミッドデイサービスを省略するなどコンパクトなフォーマットとなった。このラフグラベルラリーに、日本人ドライバーの勝田貴元選手もコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手と組んでTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のマニュファクチャラー登録ドライバーとして、GR YARIS Rally1 HYBRIDを駆って参戦した。

2024年FIA世界ラリー選手権 第6戦
ラリー・イタリア・サルディニア

開催日:2024年5月31~6月2日
開催地:イタリア・サルディニア島

5月31日・シェイクダウン、デイ1 / 6月1日・デイ2

 31日の午前中に行われたシェイクダウンを5番手タイムで終えた勝田貴元選手は、「前回のポルトガルと同様に今回のサルディニアもルーズグラベルのラリーだったんですけど、個人的には課題の多く残るラリーだったので、難しいラリーになるんじゃないかな…… と思っていました」とのことだ。事実、同日の午後に行われたデイ1でも「クルマをアジャストしながらやっていたんですけど、ドライビングもクルマも合わせこむことができずに苦戦していました」と、語っている。

 それでも勝田貴元選手はデイ1の4本のSSのうち2本で4番手タイムをマークし、トップから34.5秒遅れの総合4番手でこの日を終えた。さらに翌日、1日のデイ2でもコンスタントな走りを披露。ファーストループ最後のステージとなるSS8で3番手タイムをマークし、i20 N Rally1 HYBRIDを武器に総合3番手につけていたHYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM(ヒョンデ)のティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ組が脱落したことで、総合3番手に上がった。

 そのため勝田貴元選手は「苦戦していたけれど、ヌービル選手の離脱で3番手に浮上したので、自分としてはポジションをうまくマネジメントしながら、キープしていければ…… と思っていまいた」と、語っていた。だが、このSS8で「ギアボックスから異音がしていました」と、予想外のハプニングが発生した。

 今季のサルディニアはミッドデイサービスが設定されていないことから、勝田貴元選手は15分間のタイヤフィッティングゾーンで「ギアボックスに亀裂が入っていて、そこからオイルが漏れて、オーバーヒートしていました」という箇所に応急処置を実施。「タイヤフィッティングゾーンではギアボックスを交換できないので、ラジエターが壊れた時に使用するケミカルメタルで亀裂を塞いでオイルを足しました」とのことだった。

 こうして応急処置を施してセカンドループに挑んだ勝田貴元選手だったがSS9で、「走っているうちにクラックが大きくなってまたオイルが漏れてしまったようで、次のステージのスタートから2kmぐらいの地点で止まって走れなくなりました」とのことにより、車両がストップ。

「今回のアプローチとしてはクルマに無理をさせないように心がけていましたし、特別なインパクトもなかったんですけどね」とのことだったが、「SS8はもちろん、それまでのステージもラフだったので、そこから負荷がかかっていた可能性が高いと思いますが、サファリ・ラリーでも経験したことのない初めてトラブルでした」と、残念ながら勝田貴元選手はデイリタイアすることになったのである。

デイ1から常にトップ5に入るタイムをコンスタントにマークして総合3番手に浮上した、ドライバーの勝田貴元選手とコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team)。第3戦「サファリ・ラリー・ケニア」以来の表彰台登壇が期待されたが、直後にミッショントラブルに見舞われて2戦連続で完走は果たせなかった。

6月2日・デイ3

 まさに勝田貴元選手にとっては悔しい展開となったが、それでも翌2日のデイ3に再出走。「最初からプッシュして、“スーパーサンデー”で多くのポイントを取ることを目標にしていました」と意気込んでいた。

 しかし、「ダストが多くて、思うようにプッシュができませんでした。ダストというのは走れば走るほど減っていくんですけど、僕は2番目の出走でかなりダストが多かった。2度ほどコースオフするぐらいプッシュしていたんですけど、思うようにアタックできませんでした」と、勝田貴元選手は苦戦した。なんとかSS14で3番手タイムをマークしたが、スーパーサンデーは5位にとどまり、サンデーポイントの2ポイントと5番手タイムだった最終SSパワーステージでの1ポイントを獲得して、サルディニアを終えることになったのである。

 このように悔しいリザルトとなったが、それでも勝田貴元選手はSS8とSS14で3番手タイムをマークするなど、まずまずのスピードを披露した。「SS8は4番手につけていたダニ・ソルド選手(ヒョンデ)との差を広げたかったのでプッシュしていたんですけど、すでにギアボックスから異音がしていて、アクセルを踏み込んでもうまく駆動に伝わらない状態でした。そのトラブルで後半タイムをロスしたことがタイム差につながりました」とのこと。SS14については、「結構ミスもあったんですけど、それでもタイムは3番手だったのでパワーステージに向けていい準備ができたと思っていたんですけどね」と、手ごたえをつかんでいたようだ。

 しかし、「最終ステージは合わせこめませんでした。結果を持ち帰れなかったので残念なラリーでしたが、それでも苦戦しながらもギアボックスにトラブルが発生する前は、安定して走れていたし、表彰台を狙えるポジションをキープしていたので、サルディニアとしては今まで一番よかったです」と、勝田貴元選手は今回のラリーでの走りを振り返った。

 その一方で、「ポルトガルと同じくアンダーステアが強い傾向だったんですけど、サルディニアは道幅が狭いのでドライビングでアジャストできませんでした」と、反省も語った。チームでも特性に差があるようで、「HYUNDAIチームはクルマをパッキパキに曲がるようにしている傾向にあって、トヨタチームがアンダーステアに苦労している時に速さを発揮しています」とのことだそうだ。さらに「逆にスタビリティやトラクションが必要なラリーではトヨタ勢がいいペースなので、トータルのパッケージの違いがコンディションやラリーに出てきますが、そのあたりのバランスを見つけるのが難しいので、今後の課題として残っています」と勝田貴元選手は付け加えた。

 6月27~30日に開催される第7戦「ラリー・ポーランド」について、勝田貴元選手は「スピードという面ではポルトガルよりサルディニアのほうが厳しい面が出ていましたが、次戦のポーランドから第9戦のフィンランドまではかなり高速のグラベルラリーになるので、頭もマインドも切り替えて準備を行なっていきたいです」とラリーの違いを語った。

 さらに「ポーランドに関しては初めてのラリーなので、経験のある他のドライバーにアドバンテージがあると思いますが、(その次の)ラトビアでいいラリーができるようなアプローチで戦いたい」と語っているだけに、勝田貴元選手の挑戦に注目したい。

 なお、サルディニアの総合優勝争いは、今季2勝を挙げているTGR-WRTのセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組がリードしていたが、なんと! 最終SS16でタイヤトラブルに見舞われてしまい、無念の総合2位に後退。ヒョンデのオィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組がわずか0.2秒差で逆転し、劇的な今季初優勝を果たした。総合3位はタナック/ヤルヴェオヤ組のチームメイト、ダニ・ソルド/カンディド・カレーラ組が獲得し、表彰台に上がった。

 TGR-WRT勢はドライバー/コ・ドライバーランキングで、今回のラリーは総合4位だったエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組が4番手、マニュファクチャラーランキングではヒョンデを13ポイント差で追う2番手につけている。

2024シーズンもスポット参戦ながら、第4戦「クロアチア・ラリー」と第5戦「ポルトガル・ラリー」で勝利を挙げているセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組。三連勝を狙った第6戦「ラリー・イタリア・サルディニア」では最終SS16でのタイヤトラブルで、つかみかけていた勝利が手からこぼれ落ち、総合2位に終わった。
2023シーズンは2勝を挙げながら、今季はポルトガルでの総合2位が最上位だったオィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組(HYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM)。サルディニアではSS1からオジエ/ランデ組と総合トップを争い続け、総合2番手で迎えた最終SS16では2番手タイムをマークして大逆転。昨季の第13戦「ラリー・チリ・ビオビオ」以来の総合優勝を果たした。
TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラム2期生で、コ・ドライバーのトピ・ルフティネン選手と組む小暮ひかる選手(左)と、コ・ドライバーのマルコ・サルミネン選手と組む山本雄紀選手(右)もサルディニアにGR Yaris Rally2を操って、WRC2クラスに参戦した。デイ1は2組とも順調にラリーを進めたが、ともにデイ2始めのSS5で車両をヒットさせて戦線離脱。デイ3で再出走した山本/サルミネン組は4本のSS全てを走破し、貴重な経験を積み上げた。
小暮選手と山本選手も参戦したWRC2では、フィンランド出身の22歳のドライバー、サミ・パヤリ選手が女性コ・ドライバーのエンリ・マルコネン選手とともにクラス優勝し、GR Yaris Rally2にWRC2勝目をプレゼント。パヤリ選手はこれまでの戦績が評価され、第8戦「ラリー・ラトビア」でTGR-WRTからRally1デビューも決まった。
今回のラリーでは、2025シーズンから10シーズン、サウジアラビアでWRCの一戦が開催されることが発表された。中東でのWRC開催は、2011シーズンのヨルダン・ラリー以来となる。左はWRCプロモーターのヨナ・シーベルマネージングディレクター、右はサウジアラビアのハリド・ビン・スルタン・アル・アブドゥラ・アル-ファサル皇太子。

フォト/TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Media House レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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