全日本ラリー選手権 第5戦モントレーで新井大輝/松尾俊亮組が今季3勝目

レポート ラリー

2024年6月14日

全日本ラリー選手権の第5戦「加勢裕二杯 MONTRE 2024」が、6月7〜9日に群馬県安中市の安中しんくみスポーツセンターを拠点に開催された。1977年に安中市でラリーショップ「キャロッセ」を創業し、日本のラリー界の発展に尽力した故・加勢裕二氏の名前が冠されたモントレーは、2022年以来2年ぶりの全日本開催となり、前大会と同じくFIAアジア・パシフィックラリー選手権(APRC)が併催されている。

2024年JAF全日本ラリー選手権 第5戦
2024 FIA Asia Pacific Rally Championship
2024 FIA APRC Asia Cup
「加勢裕二杯 MONTRE 2024」

開催日:2024年6月7~9日
開催地:群馬県安中市周辺
主催:TMSC、J.A.C.、M.O.S.C.O.

 群馬県西部エリアを舞台とした今年のモントレーは、2日間で10SS(SS総距離106.72km)を設定。中でも、地元自治体の協力もあり碓氷峠の旧道に設定されたSS3/SS4「Old Usui Touge(9.10km)」は、アニメでも有名になった舞台。国道を占用してSSが設定されたのは、全日本ラリーの歴史の中でも初めてのこととなる。観戦エリアも設定され、多くのギャラリーが集まった。

今大会では、国道18号線の碓氷峠旧道を占用したSSが設定された。国道をSSとして占用するのは日本初となる。「頭文字D」で名所となった「C121」もSS区間に含まれる。
ラリーではエポックメイキングな碓氷峠旧道SSが初めて実現。ギャラリーステージが設定された「めがね橋」には多くの観客が訪れていた。
今大会の名称には、キャロッセの創業者で日本ラリー界の発展に尽力した、故・加勢裕二氏の名前が冠された。サービスパークでは、同社のクスコレーシングのテント内に、加勢氏が現役だったころの写真や動画が特設展示されていた。
キャロッセのテント前には、同社の長瀬努社長や現役社員はもとより、全日本ラリー界で活躍するキャロッセ卒業生も集合した。
6月9日には、群馬県甘楽町にある甘楽町文化会館前に、通過確認を行うパッセージコントロールが設定され、多くの町民やラリーファンを集めていた。
ラリーフィニッシュ&ポディウムセレモニーが行われる安中しんくみスポーツセンター駐車場にもファンが詰めかけ、当地でのラリー人気の高さがうかがえた。
ポディウムフィニッシュには、左からAPRC審査委員兼FIAオブザーバーのマノージュ・ダラル氏やJAFラリー部会・部会長でM.O.S.C.O.代表理事の高桑春雄大会組織委員長、APRC審査委員長のウィラード・マーティン氏の姿もあった。

JN1クラス

 JN1クラスは、第4戦までに2勝ずつを挙げている勝田範彦/木村裕介組(トヨタ・GRヤリスラリー2)と新井大輝/松尾俊亮組(シュコダ・ファビアR5)が、SS1とSS2で0.1秒を競う接戦を展開する。だが、SS3後のサービスで「セッティングがウェットセッティングのままだったので、ドライに変更しました」という新井大輝選手が、サービス後のSS4から一気にスパート。勝田/木村組に対してSS4で6.6秒、SS5で7.2秒、SS6で1秒差のベストタイムをたたき出した。SS3を終えた時点で勝田/木村組に4.4秒差だったマージンを19.2秒差にまで広げ、初日を折り返した。

 4SS/41.12kmが設定されたラリー2日目も、新井大輝/松尾組が4SSすべてでベストタイムをマーク。勝田/木村組に30秒差をつけて今季3勝目を飾った。2位には勝田/木村組が入賞し、ランキングトップの座を死守。3位は「テストでセッティングを変えたことで、すごく乗りやすくなった」という田口勝彦/北川紗衣組(トヨタ・GRヤリスラリー2)が、奴田原文雄/東駿吾組(トヨタ・GRヤリスラリー2)に28.2秒差をつけて獲得した。

JN1クラス優勝は新井大輝/松尾俊亮組(Ahead Japan Racing Team)。
2位は勝田範彦/木村裕介組(Luck with ROOKIE Racing RALLY Team)、3位は田口勝彦/北川紗衣組(RALLY TEAM AICELLO)。
JN1クラスのポディウムセレモニー。左から2位の勝田/木村組、1位の新井大輝/松尾組、3位の田口/北川組。併催されたFIA APRC総合の1位から3位も同一クルーだったため同表彰も一緒に行われた。
JN1クラス6位の鎌田卓麻/松本優一組(WinmaX RALLY TEAM)は、APRCパシフィックカップ部門でのウィナーとなった。

JN2クラス

 前戦の第4戦丹後では、3人の若手ドライバーたちが最終SSまでコンマ秒差の接戦を展開したJN2クラス。今回は、初日6本のSSを終えた時点で小泉敏志/村山朋香組(トヨタ・GRヤリス)が、第4戦優勝の三枝聖弥/船木一祥組(スバル・WRX STI)に3.6秒差をつけてトップ。2番手の三枝/船木組から1秒差でTOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cupにもエントリーしている山田啓介/藤井俊樹組(トヨタ・GRヤリス)が3番手。さらに0.4秒差で大竹直生/竹藪英樹組(トヨタ・GRヤリス)と、クラス上位陣は僅差の勝負を展開する。

 ラリー2日目に入っても僅差の勝負は続き、SS7で山田/藤井組、SS8では小泉/村山組がトップに立つ。そんな中、チームから「最後のSS2本は全開で攻めてこい!」と、背中を押された大竹/竹藪組が一気にスパート。SS9でトップタイムをマークすると、SS10でも2番手タイムを獲得。2位の三枝/船木組に0.7秒差をつけて待望の今季初優勝を飾った。2位にシリーズランキングトップの三枝/船木組、11.1秒差の3位に初日トップの小泉/村山組、さらに15.8秒差で山田/藤井組が4位に入賞した。

JN2クラス優勝は大竹直生/竹藪英樹組(TOYOTA GAZOO Racing WRJ)。
2位は三枝聖弥/船木一祥組(LUCK Jr RALLY TEAM)、3位は小泉敏志/村山朋香組(Team DreamDrive)。
JN2クラスのポディウムセレモニー。1位の大竹/竹藪組。

TOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup

大竹/竹藪組はTGR MCCでも1位となった。
開幕から4連勝を挙げた山田啓介/藤井俊樹組(FIT-EASY Racing)が、TGR MCC暫定チャンピオンに輝いた。

JN3クラス

 JN3クラスは、SS3を終えて最初のサービスでセットアップを変更した山本悠太/立久井和子組(トヨタ・GR86)が、SS5から一気にペースアップ。初日の最終ステージとなるSS6でトップの長﨑雅志/大矢啓太組(トヨタ・GR86)を捉え、2.9秒差のトップで初日を折り返した。

 4本のSSが設定されたラリー2日目は、山本/立久井組と長﨑/大矢組がそれぞれ2本のSSでベストタイムをマークしたものの、2日間トータルで3.8秒差をつけた山本/立久井組が今季2勝目を挙げ、優勝獲得数では長﨑/大矢組とイーブンに戻した。3位には、初日から第3戦優勝の山口清司/澤田耕一組(トヨタ・GR86)と僅差の勝負を制した上原淳/漆戸あゆみ組(スバル・BRZ)が入賞した。

JN3クラス優勝は山本悠太/立久井和子組(K-one Racing Team)。
2位は長﨑雅志/大矢啓太組(NTP名古屋トヨペットNAVUL)、3位は上原淳/漆戸あゆみ組(シャフト)。
JN3クラスのポディウムセレモニー。1位の山本/立久井組。

JN4クラス

 JN4クラスは、第3戦優勝の内藤学武/大高徹也組(スズキ・スイフトスポーツ)と第4戦優勝の西川真太郎/本橋貴司組(スズキ・スイフトスポーツ)が僅差の勝負を展開する。しかし、SS4で内藤/大高組がリタイア車を避けようと走行ラインを変更したところ、リアタイヤがダストに乗ってアウト側のコンクリートウォールにヒットしてサスペンションを破損。ここで戦列を離れる結果となった。このリタイアにより、今季2勝を挙げている高橋悟志/箕作裕子組(スズキ・スイフトスポーツ)が2番手に浮上するが、トップとの差は1分以上。

 ラリー2日目は、「東日本の地区戦時代にも得意なステージが多かったです」という西川選手が、4SSすべてでベストタイムをマークして独走態勢のまま今季2勝目を獲得した。2位には、「前戦でクラッシュしましたが、仲間たちみんなに直してもらって、最後まで走り切ることができて良かった」という高橋/箕作組が入賞。3位には、初日を2番手から9秒差で折り返した筒井克彦/石田裕一組(スズキ・スイフトスポーツ)が、2日目もポジションを守り切り、表彰台の一角をつかんだ。

JN4クラス優勝は西川真太郎/本橋貴司組(スマッシュラリーチーム)。
2位は高橋悟志/箕作裕子組(ミツバ自動車)、3位は筒井克彦/石田裕一組(Team221)。
JN4クラスのポディウムセレモニー。1位の西川/本橋組。

JN5クラス

 JN5クラスは、安中市出身の嶋村徳之/小藤桂一組(トヨタ・ヤリス)が、初日のステージを快走。「地元開催なので、SS1から全力で攻めました」と、SS1でベストタイムをマークした嶋村選手が、碓氷峠の旧道に設定されたダウンヒルのSS3で2WD勢トップとなる総合13番手相当のベストタイムをマーク。SS3のリピートステージとなるSS4でもベストタイムを重ねた嶋村/小藤組は、SS5以降ベストタイムはなかったものの、それまで築いた20秒以上のマージンをしっかりと活かして2日目も走り切り優勝した。なお嶋村選手は全日本初優勝。2位には松倉拓郎/山田真記子組(トヨタ・ヤリス)との接戦を制した大倉聡/豊田耕司組(トヨタ・GRヤリスRS)が獲得。3位にはJN5クラスでは最多となる4本のSSでベストタイムをマークした松倉/山田組が入賞した。

JN5クラス優勝は嶋村徳之/小藤桂一組(MATEX-AQTEC RALLY TEAM)。
2位は大倉聡/豊田耕司組(AISIN RALLY TEAM with LUCK)、3位は松倉拓郎/山田真記子組(M29R Rallying Project)。
JN5クラスのポディウムセレモニー。1位の嶋村/小藤組。

JN6クラス

 JN6クラスでは、前戦の第4戦で2位となり連勝記録が途切れた天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・アクアGRスポーツ)が、リタイア車を避けるためにペースを落としたSS4や、続くSS5とSS6以外7本のSSでベストタイムをマーク。2位に3分近い大差をつけて今季4勝目を獲得した。

 2位には、「昼間の国道でSSを走れる時代が来るとは思わなかったし、そのSSを走ることができて良かった」と感慨深い表情を見せた清水和夫/山本磨美組(トヨタ・ヤリス)が入賞。ベテラン対決となった3位争いは、初日3番手のポジションを守り切った鷲尾俊一/菅野総一郎組(ホンダ・CR-Z)が入賞した。

JN6クラス優勝は天野智之/井上裕紀子組(TRT)。
2位は清水和夫/山本磨美組(TEAM SYE YARIS HEV)、3位は鷲尾俊一/菅野総一郎組(アストラル)。
JN6クラスのポディウムセレモニー。1位の天野/井上組。

フォト/CINQ、大野洋介、中島正義、山口貴利、JAFスポーツ編集部 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

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