もてぎジムカーナ第2戦、ロータス3-イレブンの小倉武司選手がMS-2二連勝!

レポート ジムカーナ

2024年6月18日

国内Bライセンスを取得するためや、「JMRC栃木茨城ジムカーナシリーズ」など、所謂“県戦”などへの初級シリーズに挑む登竜門としてウデを磨けるシリーズが、「もてぎジムカーナシリーズ」だ。ジムカーナ初心者でも安心、4本走行できるシリーズの第2戦が5月12日に開催された。

2024もてぎジムカーナシリーズ第2戦
開催日:2024年5月12日
開催地:モビリティリゾートもてぎ マルチコース(栃木県茂木町)
主催:SHAKE DOWN

 関東地区のジムカーナヒエラルキーは、JAF全日本ジムカーナ選手権に挑むドライバーも多く参戦するJAF関東ジムカーナ選手権、通称“地区戦”を筆頭に、JMRC関東チャンピオンシリーズ、そして各都県戦という階層構造を持っている。

 各都県戦はジムカーナ初心者の入門シリーズとして、またベテラン勢がジムカーナを楽しむ場としてもドライバーを集めている。そんな都県戦に踏み出す前の一歩として位置づけられているのが、モビリティリゾートもてぎで独自開催されている「もてぎジムカーナシリーズ」だ。

 2024シーズンは、もてぎのマルチコースを主戦場に4戦が開催。「ライセンスはまだ持ってないけど、自分のテクニックを試してみたい!」、「クルマが好きだから、思いっきりアクセルを踏んでみたい!」などと思っているドライバーたちからも支持されて毎シーズン、シリーズが繰り広げられている。

2024もてぎジムカーナシリーズ全4戦の舞台は、モビリティリゾートもてぎのマルチコース。メインコースのストレートや第3コーナーも見渡せる位置に建つ。2024シーズンを締めくくるフェスティバルは、JAF全日本カート選手権などの舞台にもなる北ショートコースで開催される。

 開幕戦では約30名のドライバーを集めて開催され、第2戦にはそれを上回る38選手のエントリーが集まった。コースレイアウトは事前に主催者であるJAF加盟クラブ、チームシェイクダウン(SHAKE DOWN)のホームページで公開される。初心者でもしっかりコースを覚えられる時間をつくるための工夫だという。

 第2戦のコースを設定した、大会事務局も務める福岡孝恭氏は「初心者の方でもAT車でも、安心して楽しく走れるコース設定にしました。それと、もてぎジムカーナシリーズは慣熟走行付きでの開催です。1本目の前に慣熟走行は当然ですが、2本目のアタックの前にも慣熟走行を行います。そのため、4本走れる、というのもおトクだと思います」と、コース設定の意図とシリーズの特長を話す。

 マルチコースは中央が盛り上がり、全体的に緩やかな傾斜があることがポイント。また、設定によってはガードレールが近く、圧迫感があるレイアウトになることもある。コースの敷地が真四角ではなく、変形していることも攻略ポイントとなっており、同じ外周でも手前と奥では大きくスピードレンジも違い、路面のカントも異なる。メリハリも重要だが、誘われるままパイロンに進入してしまうとオーバースピードになることが多く、ボトムスピードの管理で大きくタイム差が開いてしまうのだ。

マルチコースは舗装された広場で、必然的にフルパイロンのジムカーナになる。今回の一戦のコースレイアウトはマルチコースの隅々まで使いつつ、ミスコースをしないようにも配慮されて設定された。

 そして、もてぎジムカーナのもうひとつのポイントは、入賞者に贈られるトロフィー。クリア素材でできたトロフィーは、もてぎチャンピオンカップレースなどでの入賞ドライバーに贈られるものと同じ。もてぎのロゴが入った、オリジナルのトロフィーは参戦するドライバーたちからも好評を博しているそうだ。

 そんな素敵なトロフィーの獲得も争う、2024もてぎジムカーナシリーズ第2戦が幕を開けた。

今回の一戦をはじめクローズド格式の競技会では各クラス上位3選手に贈られるJAFメダルはないが、もてぎジムカーナは全戦で上位のドライバーにモビリティリゾートもてぎのオリジナルトロフィーが贈られる。このトロフィーの獲得が、参戦ドライバーたちの大きなモチベーションにもつながっているそうだ。

MS-1クラス

 排気量無制限、前輪駆動の車両で争われるMS-1クラス。もてぎジムカーナはMS-SC/Dクラス以外のクラスはB車両が対象だ。

 開幕戦を制したZC32S型スズキ・スイフトスポーツを駆る印南誠選手が優勢かと思われたが、今回の一戦から参戦してきた立原誠也選手が第1ヒートで好タイムを叩き出す。友人から預かっているホンダ・フィットが競技車として仕上がっていたことから、急遽参戦を決めたという立原選手は、2番手の印南選手を1秒近く引き離すトップタイムをマーク。

 逆転に期待がかかった印南選手だったが、第2ヒートはまさかのミスコース。この結果、立原選手が難なく逃げ切りを果たしていきなり優勝をさらった。

「路面が変わったわけではなかったんですが、リアタイヤの空気圧を思いっきりチャレンジングに上げたら外周の動きが不安定になってしまい、2本目タイムダウンしてしまったのが悔しいですね。知人のマシンで白星を挙げられたのが嬉しいです。第3戦、第4戦も参戦できたらしたい、と思っています」と、立原選手は笑顔で答えてくれた。

MS-1クラスは第1ヒート、クラスのトップバッターでスタートした立原誠也選手(コムドライブ☆フィット)が叩き出したタイムを誰も破ることができず、優勝を果たした。
トップ2が表彰されたMS-1は、左から2位の印波誠選手(22年ぶりジムカーナ!スイフト)と、優勝した立原選手が表彰台に登壇した。

MS-2クラス

 今回の一戦では最多、10選手が競った MS-2クラス。排気量無制限で後輪駆動の車両で争われるクラスだが、第1ヒートのトップタイムを叩き出したのは手塚慎介選手。軽量化されたパワフルなマツダRX-7を豪快に振り回してマークした。

 しかし、手塚選手は第2ヒートでまさかのミスコース。第1ヒートのタイムで逃げ切りたいが、それを許さなかったのはモータースポーツの競技会でもなかなか見かけない、ロータス3-イレブンを駆る小倉武司選手だった。運動性が高い3-イレブンを見事に手懐けた走りで手塚選手のターゲットタイムを更新。開幕二連勝を達成した。

 そんな小倉選手は「山野哲也選手に運転を習っていて、山野選手に相談した結果このクルマに乗り換えて、今年はこのシリーズに参戦することを決めました」と、クルマ選びについて明かした。さらに「ジムカーナは初めてで今年からなんです。レースも検討したんですが、人と絡むのがあまり好きではないので、今年は準備段階としてジムカーナに挑戦しています」このシリーズへの参戦の経緯も語ってくれた。

第1ヒートはミスコースでタイムを残せなかったMS-2クラスの小倉武司選手(ロータス311)だったが、第2ヒートで挽回。2位以下を3秒近く離す見事な走りを見せて、二連勝を飾った。
第1戦はMS-2で3位だった手塚慎介選手(みやせいみつ☆ZM/TRX-7)は第1ヒートでトップを奪い優勝が見えたが、第2ヒートでミスコースを喫して2位となった(左)。藤井諒太郎選手(フジミガレージS2000)は第1ヒートで2番手、第2ヒートで0.3秒以上タイムを上げたが3位となり、表彰台に登壇した(右)。
MS-2は左から4位の井坂貴俊選手(余計な事までS660)、2位の手塚選手、優勝した小倉選手、3位の藤井選手、5位の福田具史選手(チームミィス86)が表彰された。

MS-3クラス

 排気量無制限の4WDが競うMS-3クラスで実力を発揮しているのは、スバルWRX STIをドライブする吉沢正章選手。開幕戦優勝の勢いそのままに第2戦でも第1ヒートからその速さを見せつけた。第2ヒートでは0.02秒落ちたものの、第1ヒートとほぼ同タイムを記録。スムーズさに磨きがかかれば上位イベントでも通用する走りは圧巻だ。

 そんな吉沢選手は「1本目はマフラーを変えてすぐだったので、動きが良くわからないまま踏みすぎちゃった感じです。2本目はそこを修正したんですが、トラクションコントロールを切るのを忘れてしまっていてタイムを上げられませんでした」と、走りへの反省も忘れない。さらに「富士のTMSCのジムカーナにも参戦しているんですが、開幕戦勝っていたのでもてぎシリーズをメインに今年は頑張ろうと思います」と、今後の抱負もコメントしてくれた。

MS-3クラスは2023シーズンのランキング4位、吉沢正章選手(ディクセルWRXSti)が第1ヒートのタイムで逃げ切り、開幕二連勝を果たした。

MS-ATクラス

 排気量無制限でATやCVTなどのミッションを搭載する車両が対象のMS-ATクラスは、トヨタ86を駆る福田旨幸選手とレクサスRC Fを操る高木涼平選手の一騎討ち。受付終了ギリギリでコースにやってきた福田選手が、0.8秒差で制した。

「運が良かったですね! 受付に間に合ったのが勝因です(笑)。相手の方がまだタイヤが揃ってないこともあって、本当に運です」と、殊勝なコメントを残してくれた。

トヨタ86とレクサスRC F、トヨタ系のFR決戦となったMS-ATクラスは第1戦で2位だった、86を駆る福田旨幸選手(ミィス86)が第1ヒートのタイムで逃げ切って優勝、リベンジを果たした。

MS-Kクラス

 軽自動車で争われるMS-Kクラス。開幕戦を制したスバル・ヴィヴィオを駆る五味渕昌子選手を下したのは、ホンダS660をドライブする伊藤充夫選手だった。第1ヒートは五味淵選手に後れをとるも、第2ヒートで逆転優勝。開幕戦で2位だったリベンジを遂げた。

 伊藤選手は「2本目はどうにかタイムアップができたのが良かったですね。外周のボトムスピードを上げながら、徐々にアクセルを踏む量を増やしていったのが良かったのかもしれません」と、優勝を決めた走りを振り返った。

MS-KクラスはMRのホンダS660と4WDのスバル・ヴィヴィオによる一騎討ちとなった。勝負はS660を操る伊藤充夫選手(青い巨星S660)がわずか0.04秒差で逆転。ディフェンディングチャンピオンの意地を見せた。

MS-SC/Dクラス

 このシリーズでナンバープレートがないSC/D車両でも参戦できる、唯一のクラスがMS-SC/D。このクラスを制したのは、第1ヒートからひとり54秒台をマークし、他の追随を許さなかった花澤実選手だった。かつ第2ヒートでは自身がつくったターゲットタイムをさらに約0.3秒押し上げての完全勝利。

 軽量なFRのNA型マツダ・ロードスターらしい走りで優勝した花澤選手は、「最後の一本は皆に押してもらってなんとか走れました。ターンはイマイチでしたが、コーナー速度を上げていったのが良かったと思います」と自身の走りを振り返った。

MS-SC/Dクラスを完全制圧したのは、花澤実選手(ナリタ塾ロードスター)。車両の不調に見舞われてスタートライン到着までは苦労したが、スタートを切れば第1ヒートは54秒台、第2ヒートでは53秒台のタイムをマークして、開幕二連勝を果たした。

EX-FFクラス

 MS-1と同じく排気量無制限、前輪駆動の車両で争われるEX-FFクラス。このシリーズでエキスパートを略した“EX”がつくクラスは、上位のジムカーナシリーズに参戦経験のあるドライバーや、このシリーズの“MS”がつくクラスでチャンピオン経験があるドライバーが対象だ。

 第1ヒートのトップタイムは、地区戦にも参戦する堀井紳一郎選手がマーク。2番手の神谷幸男選手に約0.2秒差で折り返す。第2ヒートに入って、鈴木大吾選手が一気にタイムを伸ばしたが、堀井選手には僅か0.03秒届かない。期待された神谷選手はまさかのタイムダウンに終わり、堀井選手はリアタイヤの空気圧を上げて第2ヒートに臨んだが、ターンのタイミングでリアがロックせずタイムダウンしたが、堀井選手に軍配が上がった。

 逃げ切った堀井選手は、「2本目、セッティングを変えたのが裏目に出てしまいました。半年ぶりのスポーツ走行だったのでしょうがないですね。久しぶりのもてぎは結構走ってきたコースだったので、『ジムカーナやってるんだぁ~!』って感慨深いものがありました」と、ベストタイム更新はならなかったものの、充実した様子だった。今季はリハビリも兼ねてこのクラスへの参戦を検討している、とのことだ。

EX-FFクラスは2023年JAF関東ジムカーナ選手権のBSC1クラスで激戦を繰り広げ、チャンピオンにわずか3ポイント届かなかった堀井紳一郎選手(インテグラ)が優勝。久しぶりの競技だったそうだが、第1ヒートでその実力を発揮した。
EX-FFは、2位の鈴木大吾選手(インテグラ)と堀井選手が表彰を受けた。

EX-FRクラス

 ベテラン勢が揃うEXクラスの中でも、後輪駆動の車両によって争われるこのEX-FRクラスは、新旧86の対決が毎戦注目を集めている。今回の一戦は“栃木の主”とも呼ばれる、舟山克也選手がGR86を駆って参戦。“もてぎジムカーナシリーズの顔”、ともいうべきAE86型トヨタ・カローラレビンをドライブする岡本和弘選手との勝負となった。

 第1ヒートで着実にタイムを残したのは岡本選手。AE86型レビンの軽量さを武器に、テクニカルセクションで一気に舟山選手を突き放す。一方、舟山選手はGR86のパワーを活かし、ストレートでどうにかタイムを取り返しにかかるが、立ち上がりでの加速が一歩及ばず2番手に留まってしまう。

 第2ヒートでの岡本選手は全く同じタイムを刻む驚きの走り。舟山選手はタイムアップを果たしたがトップタイムには及ばず、岡本選手が開幕二連勝を果たした。「1本目は大体やれることはやったと思うんですが、上げ代はまだあると思っていました。特にサイドターンからアクセルを踏むまでに時間をつくってしまっていました。それを2本目でやろうと思ったんですが、上手くできませんでした」と、岡本選手は優勝しても、タイムアップできなかったことに反省しきりだった。

優勝争いが、AE86型トヨタ・カローラレビンとZN8型GR86による“世紀を超えた86対決”となったEX-FFクラス。AE86型レビンを駆るディフェンディングチャンピオン、岡本和弘選手(ピットインPBRカナツμレビン)に軍配が上がった。
EX-FRも上位2選手が表彰を受けた。左から2位の舟山克也選手(GR86)と優勝した岡本選手。

EX-4WDクラス、オープンクラス

 EX-4WDクラスでは、2024年JAF近畿ジムカーナ選手権のBR1クラスでも戦う大倉拓真選手が躍動。現役地区戦ドライバーの走りは鮮烈で、関東地区戦ドライバーも顔負け、パイロンギリギリのターンを披露し、2位の手塚悠人選手に大きな差をつけての優勝となった。

「昨日、(FRの)ロードスターで走り込んでしまったので、四駆に合わせるのはちょっと大変でした。(クルマは)ECUと車高調とLSDだけのライトチューンなんです。近畿地区戦ともてぎジムカーナシリーズを戦いたいと思います」と、大倉選手は東西ふたつのシリーズに挑むことも明かした。

EX-4WDクラスには、2024年JAF近畿ジムカーナ選手権ではホンダ・シティを駆っている大倉拓真選手(オークランサーシティ)が、三菱・ランサーエボリューションXに乗り換えて参戦。2ヒートともトップタイムをマークする完勝を果たした。
オープンクラスはドリフトを中心にまだ現役で活躍しているトヨタ・チェイサーを駆った、桑子頼夢選手(らむパパチェイサー)が第2ヒートでトップタイムを更新して逆転した。

 今回の一戦の終了後には、茨城トヨタによる「いばとよENJOYジムカーナ」も開催された。モータースポーツを全く体験したことがないようなドライバーたちにジムカーナを体験してもらうイベントで、同社のサービスメカニックで、全日本に参戦する奥井優介選手と島田直樹選手が講師を務めることもある。今回はもてぎジムカーナ第2戦のアナウンサーを務めた、元全日本ドライバーの大原史行選手が登場。ジムカーナをより多くの人に楽しんでもらえるように活動を続けている。

いばとよENJOYジムカーナに参戦したドライバーのみなさんで、集合写真を撮影!

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ