元王者の貫禄! スポット参戦の佐藤蓮選手がOK部門の第3戦でパーフェクトウィン

レポート カート

2024年6月17日

全日本カート選手権OK部門の第3戦/第4戦が6月8~9日、岐阜県瑞浪市のフェスティカサーキット瑞浪で開催。第3戦ではスポット参戦の佐藤蓮選手がポール・トゥ・ウィンを飾り、第4戦では酒井涼選手が24番グリッドからの大逆転で初優勝を果たした。

2024年JAF全日本カート選手権 OK部門 第3戦/第4戦
2024年JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門 第3戦/第4戦(ラウンドシリーズ1)
2024 AUTOBACS GPR KARTING SERIES
2024 Rok CUP JAPAN RokSHIFTER 第3戦/第4戦

開催日:2024年6月8~9日
開催地:フェスティカサーキット瑞浪(岐阜県瑞浪市)
主催:フェスティカサーキット

 フェスティカサーキット瑞浪で全日本カート選手権が行われるのは2018年以来、全日本OK部門のレースは2017年以来のことだ。全長1177mのコースは、145mの最大直線長を有する高速タイプのレイアウト。オーバーテイクポイントとなるコーナーが多く、コース全域でスリップストリームが効くため、レースでは接近戦やポジションチェンジが多発する。どのコーナーでどのタイミングで前に出るのかといった頭脳的な戦い方も勝利の鍵になるサーキットだ。

 このサーキットでは今回からデジタルフラッグを導入している。レース中の信号旗は、主に各ポストに設置されたLEDによるサインで示されることとなった。これはオフィシャルの一括操作でコース全域の表示をコントロールでき、明るい表示で視認性も優れたものだ。

 決勝前日の17時から行われたエントラントブリーフィングでは、大会運営側と各エントラントが、主にトラックリミット違反のペナルティについて活発に意見を交換し、双方がより良い大会の実現に向けて熱心な討議を重ねていた。ここで見つかった課題はその日の夜に大会運営側が再検討を行い、決勝日の朝のミーティングで改めてその判定基準が示されることとなった。

16のコーナーで構成された国内屈指のハイスピードコースであるフェスティカサーキット瑞浪で、久々の全日本選手権が開催された。
複数のマーシャルポストにおいて、オフィシャルフラッグをデジタルフラッグに置き換えて表示・運用がなされた。
コース脇に引かれたホワイトラインから四輪をはみ出して走行する走路外走行のペナルティ判定基準について、ブリーフィングで討論が交わされた。この課題を運営側が一旦保留にし、決勝日朝にその改善策が発表された。

全日本カート選手権OK部門 第3戦/第4戦

 国内カートレースの最高峰に位置するOK部門は、これが今季2度目の大会。エントリーは29台と、今回も盛況だ。しかも佐藤蓮選手、平良響というカート出身のプロドライバーのスポット参戦もあり、レースの注目度はさらに高まった。

 決勝日は夜半から小雨が降り続き、朝一番のサーキットはウェットコンディション。その雨は公式練習が始まるころには止み、タイムトライアルには全車がスリックタイヤで出走した。

 そのタイムトライアルはA/Bの2グループに分けて行われた。Aグループではベテランの三村壮太郎選手が44秒548のトップタイムをマーク、2~4番手に佐藤選手、吉田馨選手、金子修選手が続いた。Bグループではルーキーの岡澤圭吾選手が44秒454の総合トップタイムを叩き出し、2~4番手に菊池貴博選手、中井悠斗選手、酒井龍太郎選手がつけた。第3戦グリッドの上位8席を競い合うスーパーポールに進出したのは、この8名だ。

 単独走行の1周タイムアタックで行われるスーパーポールでは、佐藤選手が44秒698の最速タイムを記録してポールを獲得。わずか0.007秒の差で2番手の吉田選手がセカンドグリッドになった。3、4番手のタイムでセカンドローにつけたのは三村選手と酒井龍太郎選手だ。

タイムトライアル(予選)上位8台で争われるスーパーポールを制したのは佐藤蓮選手(DragoCORSE)。

 第3戦の決勝は20周。空には厚い黒雲が広がり、スタート間際には細かい雨粒がわずかに落ちてきたが、それも走行に影響を及ぼすほどには至らず、レースはほぼドライコンディションで行われた。

 スタートでは三村選手がポジションを下げ、代わって酒井龍太郎選手が3番手に浮上。酒井龍太郎選手は2周目に吉田選手もかわして2番手に上がった。だが5周目、吉田選手が酒井選手を抜き返す。この間にトップの佐藤選手はリードを0.8秒ほどに広げた。

 2番手に戻った吉田選手は背後の競り合いを利してセカンドグループを抜け出し、ひとり佐藤選手を追った。すると、折り返し点を過ぎた辺りからトップと2番手の間隔が詰まり始める。14周目、追撃モードの吉田選手は佐藤選手の背中にあと少しで手が届くところまで接近してきた。

 にわかに緊張感が高まる中、トップ争いの2台はタンデム状態でラップを重ねていく。そして最終ラップ、タコツボコーナーで勝負に出た吉田選手は佐藤選手と横並びになる。しかし、佐藤選手は巧みなライン取りでこのピンチをしのぐと、ピットレーンの仲間たちに右拳を差し出しながら真っ先にチェッカーをくぐった。

 日本カート選手権で6度のチャンピオンに輝き、四輪レースにステップアップした後もたびたびOK部門の大会に出場しては変わらぬ実力を披露してきた佐藤選手。スポット参戦での優勝は、2021年第9戦に続く2回目のことだ。

 一方、セカンドグループの戦いは終盤に入ってヒートアップ。金子選手と菊池選手の競り合いに酒井龍太郎選手が追い付いて攻防が激化すると、その戦いに後続も次々と参入してきた。最終ラップは大集団がコース幅いっぱいに広がりながら目まぐるしくポジションチェンジを繰り広げ、最後は0.5秒強の間に7台がひとかたまりになってゴールになだれ込んだ。

 この混迷状態をするすると潜り抜けて3位入賞を果たしたのは酒井仁選手。タイムトライアルで全ラップタイム抹消のペナルティを受けて27番グリッドに埋没したところから、驚異の追い上げで24台を抜いて表彰台をつかみ取ってみせた。4位の一宮總太朗選手も12番グリッドからの躍進だった。

OK部門 第3戦優勝は佐藤選手(DragoCORSE)。
「前半はクルマ的には良かったんですけど、後半で苦しくなってしまって。そこで差を詰められて苦しいレースになったんですが、最後はなんとか抜き返すことができて、まずは1レース目で優勝することができました」と佐藤選手。第2レースでもう1回勝ちたいと願望をあらわにした。
2位は吉田馨選手(K.SPEED WIN)、3位は酒井仁選手(Vitec Racing)。
OK部門 第3戦の表彰式。左から2位の吉田選手、1位のDragoCORSEのチーム代表と佐藤選手、3位の酒井仁選手。
第3戦決勝でファステストラップをマークした選手に贈られるチャンネル700賞は、44秒551を記録した吉田選手が獲得。

 第3戦のベストタイム順で決まる第4戦のグリッドは、ポールが吉田選手、セカンドグリッドが菊池選手。グリッド2列目には酒井龍太郎選手と金子選手が並び、第3戦のウィナー佐藤選手は酒井仁選手に続く6番グリッドだ。

 24周の第4戦は吉田選手のリードで始まった。2番手の顔ぶれは酒井龍太郎選手、菊池選手、金子選手と次々に入れ替わっていく。そんな中、ポジションキープでレースを開始した佐藤選手が着実に順位を上げ、6周目には3番手に浮上。そして7周目には目の前で競り合う金子選手と吉田選手を次々にパスして、今回も佐藤選手がトップに立った。

 すると佐藤選手は背後のギャップを一気に広げ、やがて1秒以上のリードを作り上げた。2番手は吉田選手から酒井仁選手へ。そこにハイスピードで接近してきたのが、24番グリッドからレースを開始した酒井涼選手だった。

 第3戦で3周リタイアを喫した酒井涼選手は、たっぷり残ったタイヤの力も借りて15周目に2番手へ上がり、1秒以上先を行く佐藤選手をぐいぐいと追い詰めていった。そして19周目、ついに2台は一体に。だが酒井涼選手は間髪入れずトップを獲りにかかった。右ヘアピンの5コーナーでインを突いてくる酒井涼選手に抗う力は、もう佐藤選手には残っていなかった。

 酒井涼選手はそのままゴールまで走り切り、「見たか!」と言わんばかりに拳で胸を叩きながら勝利のチェッカーをくぐった。酒井涼選手の全日本参戦は今季から。4戦目での初優勝だった。

 佐藤選手は2連勝こそ逃したものの堂々の2位フィニッシュで、カートドライバーとしてもいまだに一線級であることを実証してみせた。それに続いてゴールした酒井仁選手はプッシングのペナルティを受けて6位に降格。代わって菊池選手が3位表彰台に立つことになった。4位は12番グリッドから挽回の三村選手、5位は酒井龍太郎選手だ。

 ポイントレースでは、このレースを7位で終えた吉田選手が68点で暫定ランキングの首位に浮上。開幕2連勝の皆木駿輔選手が65点で2番手に着け、酒井龍太郎選手が64点で3番手と接戦状態になっている。

OK部門 第4戦優勝は酒井涼選手(TEAM EMATY)。
「スタートしてから少し状況が落ち着いたとき、周りより0.4~0.5秒もタイムが速くて、これはもしかしたら……って思っていました」と振り返る酒井涼選手。優勝を喜びつつも「僕の方がぜんぜんタイヤが余っている状況での優勝だったことが少し悔しいです」とやや苦笑した。
2位は佐藤選手(DragoCORSE)、3位は菊池貴博選手(K.SPEED WIN)。
OK部門 第4戦の表彰式。左から2位の佐藤選手、1位のTEAM EMATYのチーム代表と酒井涼選手、3位の菊池選手。
第4戦決勝でファステストラップをマークした選手に贈られるチャンネル700賞は、44秒579を記録した酒井涼選手が獲得。

ジュニアカート選手権ジュニア部門 第3戦/第4戦(ラウンドシリーズ1)

 同時開催されたジュニア選手権ラウンドシリーズ1の第3戦/第4戦。そのジュニア部門には海外勢を含む14台が参加した。坂野太絃選手をポールに据えて始まった16周の第3戦では、トップが目まぐるしく入れ替わる展開を経て、6周目からは澤田龍征選手の独走状態へ。だが、澤田選手は逃げ切りを許されず、10周目過ぎには後続が追い付いて再び大集団の激闘へと発展。

 このトップ争いを巧みに縫って先頭に立った前田蒼介選手は、過熱する2番手争いに乗じて一気にリードを広げ、2秒以上のリードを築いてフィニッシュ、2022年から参戦をスタートしたジュニア選手権で初めての優勝を飾った。2番手でゴールした澤田選手にはプッシングのペナルティが下り、2位は坂野選手のものに。3位には横山輝翔選手が入賞した。

ジュニア部門 第3戦優勝は前田蒼介選手(Team REGOLITH)。
「練習の成果が出ました!」と初優勝にはにかむ前田選手。単独で走ったり、抜く練習をしたりと、レースを意識した練習を積み重ねてきたと言う。喜びも束の間、「次も絶対に勝ちます」と自信に満ち溢れた表情を見せてくれた。
2位は坂野太紘選手(KP BUZZ)、3位は横山輝翔選手(PONOS HIROTEX RACING)。
ジュニア部門 第3戦の表彰式。左から2位の坂野選手、1位のTeam REGOLITHのチーム代表と前田選手、3位の横山選手。

 20周の第4戦は、前田選手と坂野選手のフロントローふたりによるマッチレースとなった。ポールの前田選手を5周目にパスして先頭に立った坂野選手は、前田選手を真後ろに引き連れたままレースをリードしていく。

 すると残り2周、勝負のタイミングを待っていた前田選手が逆襲を開始。一旦は前田選手が坂野選手の前に出るが、すぐに坂野選手が先頭に返り咲く。最終ラップにも前田選手はトップを奪うが、これも坂野選手が間を置かずに抜き返した。

 結局、真っ先にチェッカーをくぐったのは坂野選手。ところが坂野選手にはフロントフェアリングのペナルティが下り、前田選手が繰り上がりで2連勝を飾ることとなった。これで前田選手はポイントランキングでもトップに浮上だ。坂野選手はペナルティの5秒を加算されながらも2位に入賞、澤田選手が4台一丸のバトルを制して3位となった。

ジュニア部門 第4戦優勝は前田蒼介選手(Team REGOLITH)。
前田選手は2番手ゴールからの優勝の報に「うーん」と複雑な顔。少し考えてから気持ちを切り替えたのか「うれしいです」とコメント。この2連勝を機にタイトルが近づいた気持ちを尋ねると「すごく緊張感があります」と語った。
2位は坂野選手(KP BUZZ)、3位は澤田龍征選手(PONOS HIROTEX RACING)。
ジュニア部門 第4戦の表彰式。左から2位の坂野選手、1位のTeam REGOLITHのチーム代表と前田選手、3位の澤田選手。

ジュニアカート選手権ジュニアカデット部門 第3戦/第4戦(ラウンドシリーズ1)

 24台が参加したジュニアカデット部門の第3戦は、終盤になっても8台がトップグループに連なる熱戦となった。この戦いを制したのは林樹生選手。残り4周でトップに浮上して、第1戦に続く2勝目を果たした。2位は2周目から9周目までをリードした藤原迪永選手、3位はタイムトライアルでトップタイムをマークした島津舞央選手だった。

ジュニアカデット部門 第3戦優勝は林樹生選手(AP SPEED with SOVLA)。
レース終盤は後続をブロックして逃げていた林選手ながら「クロスラインを取られるかと思ったけれど、押さえることができました」と自身の勝利を喜んでいた。「第4戦でも勝ちたいです」と午後のレースに向けた意気込みを語った。
2位は藤原迪永選手(SD-STYLE)、3位は島津舞央選手(ERS with SACCESS)。
ジュニアカデット部門 第3戦の表彰式。左から2位の藤原選手、1位のAP SPEED with SOVLAのチーム代表と林選手、3位の島津選手。

 続く第4戦では、大集団の先頭グループから残り3周で藤原選手と林選手が抜け出し、藤原選手が林選手を振り切って第2戦以来の2勝目を遂げた。藤原選手は今季全戦で表彰台に上り、ポイントランキングでも首位に立っている。2位は林選手。3位の飯田一仁選手は14番グリッドからの浮上で初表彰台をゲットした。

ジュニアカデット部門 第4戦優勝は藤原選手(SD-STYLE)。
「とってもうれしいです」と満面の笑顔で答える藤原選手は「スタートで失敗して……ちょっと焦っていました」とレース中の胸の内を明かした。「これからのシリーズのレースを全部勝ちたいです」と大きな目標を掲げていた。
2位は林選手(AP SPEED with SOVLA)、3位は飯田一仁選手(TAKAGI PLANNING)。
ジュニアカデット部門 第4戦の表彰式。左から2位の林選手、1位のSD-STYLEのチーム代表と藤原選手、3位の飯田選手。

Rok CUP JAPAN RokSHIFTER 第3戦/第4戦

 併催レースのAUTOBACS GRP KARTING SERIESのRok CUP JAPAN RokSHIFTER 第3戦/第4戦には、前大会から倍増の12台が参加した。第3戦ではポールの鈴木悠太選手が1周目に姿を消す中、2番グリッドから抜群のスタートを決めてトップに立った井出七星翔選手が、松下信治選手の追撃から逃げ切って優勝を遂げた。松下選手は2位のままフィニッシュ。3位には、こちらも見事なスタートダッシュでポジションを上げた佐藤奨二選手が入賞した。

Shifter 第3戦優勝は井出七星翔選手(RSイディアぴぃたぁぱん、大阪ヂラン)。
「土曜日は学校があって……前日の練習ができなかったんです」と井出選手は不安要素を抱えていたそうだ。それでも勝利を手繰り寄せ「GT500クラスのドライバーに追われるなんて、夢のような経験でした」とレースを楽しんでいた。
2位は松下信治選手(Tony Kart R.T.J.)、3位は佐藤奨二選手(TOKAIDENSO-DSM)。
Shifter 第3戦の表彰式。左から2位の松下選手、1位のRSイディアぴぃたぁぱん、大阪ヂランのチーム代表と井出選手、3位の佐藤選手。

 第4戦のスタートでも、井出選手は素晴らしい蹴り出しで2番グリッドからトップに立った。しかし、今度はポールの松下選手が逆転に成功。そこからリードを広げた松下選手が今季2勝目を飾った。2位は新品に近いタイヤで11番グリッドから猛挽回を続けた鈴木選手。井出選手は3位フィニッシュで2戦連続の表彰台登壇を果たした。

Shifter 第4戦優勝は松下選手(Tony Kart R.T.J.)。
「第3戦ではトラブルが出ちゃって、それを修正して第4戦に臨んだらうまくいきました」と勝因を語る松下選手。この先もシリーズに参戦するのか気になるところだが、「資金が続く限り頑張ります(笑)」と答えてくれた。
2位は鈴木悠太選手(brioly racing)、3位は井出選手(RSイディアぴぃたぁぱん、大阪ヂラン)。
Shifter 第4戦の表彰式。左から2位の鈴木選手、1位のTony Kart R.T.J.のチーム代表と松下選手、3位の井出選手。

フォト/JAPANKART、今村壮希、長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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