3年目を迎えた全日本カート選手権 EV部門が装い新たに開幕!

レポート カート

2024年6月21日

全日本カート選手権 EV部門の2024シリーズが6月15~16日、宮城県村田町のスポーツランドSUGO西コースでいよいよ開幕。第1戦ではポールの三村壮太郎選手が優勝し、第2戦では代役参戦の松下信治選手が好スタートを決めて勝利を飾った。

2024年JAF全日本カート選手権 EV部門 第1戦/第2戦
開催日:2024年6月15~16日
開催地:スポーツランドSUGO西コース(宮城県村田町)
主催:SSC

 誕生から3年目を迎えた全日本カート選手権 EV部門の2024シリーズは、既報のとおり四輪レースのトップカテゴリーで活躍するレーシングチームや企業がオーナーとなった6つのチームによる“チーム制”を採用して行われることとなった。

 スポーツランドSUGO西コースには真新しいチームカラーに美しく飾られた12台のマシンと、オーディションおよびドラフト会議を経て選出された12名のドライバーが集結し、パドックに華やかな雰囲気を振り撒いていた。ただし、CVSTOS×AGURI EV Kart Racing Teamの佐藤蓮選手はこの大会を欠場、代役として松下信治選手が出場する。

2024年のEV部門はチーム制が導入され、さまざまなチームが参戦するとともにドライバー枠も12名に増加。

2024年全日本カート選手権 EV部門 チーム&ドライバーラインアップ

REALIZE KONDO EV Kart Racing Team(#3 小高一斗選手、#4 中井陽斗選手)
CVSTOS × AGURI EV Kart Racing Team(#16 酒井龍太郎選手、#8 松下信治選手)※松下選手は佐藤蓮選手の代役
KNC EV Kart Racing Team(#11 鈴木悠太選手、#14 鈴木恵武選手)
ANEST IWATA EV Kart Racing Team(#50 イゴール・フラガ選手、#26 三村壮太郎選手)
TOM'S EV Kart Racing Team(#36 金本きれい選手、#37 松井沙麗選手)
HIGHSPEED Étoile Racing EV Kart Team(#73 奥田もも選手、#74 白石樹望選手)
それぞれ専属のメカニックがつき、シリーズを通してドライバーをサポートする。

 2024シリーズのもうひとつの大きな変更点は、昨年まで禁止されていたシャシーの調整が一部解禁されたこと。フロントホイールアライメント、トレッド(JAF規則に準ずる)、タイヤのエア圧(最低1.00barを推奨)、ブレーキバランス、シートサブステー脱着のセッティングとタイヤローテーションが個々にできるようになり、テスト走行ではドライバーとメカニックが話し合ってマシンを調整する目新しい光景が見られるように。

 全日本EV部門の2024シリーズは全4大会5戦。唯一2レース制で行われる今大会は、タイムトライアル→第1戦決勝→第2戦決勝という進行になっている。このレースフォーマットは第2戦以降が開催されるシティサーキット東京ベイで変更される見通しだ。

これまで不可能だったセッティングに調整可能部分ができたことで、マシンにドライバーの個性が反映されるようになった。
ドライバーたちにとってEVカートは未知数だけあって、チームメイト同士の情報交換はもちろん、チームの垣根を越えてのコミュニケーションも積極的に図られていた。

 決勝日の朝は快晴。公式練習が始まる前には全車両を収めたテントにレスキュー担当コースマーシャルが集まり、同部門ワンメイクマシンのTOM'S EVK22をつくり上げた技術スタッフから、コースにストップしたマシンを移動する際の感電防止対策など、EVならではの注意点のレクチャーを受けてから担当ポストへと向かっていった。

 ふたつの決勝のスターティンググリッドを競い合うタイムトライアルは、各車単独走行の2周アタックという全日本EV部門独特の形で行われる。最速タイムの順で第1戦決勝の、セカンドタイムの順で第2戦決勝のグリッドが決まる方式だ。ここでは三村選手が39秒542の総合トップタイムをマークして第1戦決勝のポールを獲得、0.227秒差で中井陽斗選手がセカンドグリッドとなった。3、4番手は鈴木悠太選手と小高一斗選手だ。

EVカート特有の感電防止対策など、レース中のアクシデントに対応できるようにコースマーシャルが事前にマシンの扱い方を学ぶ。
バッテリー充電エリアには、リチウムイオンバッテリーを使用するEVならではの特殊消火剤散布器も設置。

第1戦決勝

 決勝の周回数は両レースとも15周。11時20分、メインストレート上に並んだ12台のマシンが1周のウォームアップランを経て再びグリッドに整列し、カートレースとしては珍しいスタンディングスタートで第1戦の戦いが幕を開けた。

 ポールの三村選手は好スタートを決めて先頭のまま発進。小高選手がオープニングラップで2台をパスして2番手に上がり、ふたりは0.5~0.6秒の間隔を保ったままラップを重ねていく。レースが中盤戦に入ると、そのギャップがわずかに縮まり、あと一歩で小高選手が三村選手の背中に届く状況になった。だが、三村選手は小高選手にそれ以上の接近を許さない。両車全力走行のチェイスが続く緊迫の展開だ。

 レースが残り5周を切ると、トップ2台の間隔がわずかに開いた。それでも小高選手には諦める様子など微塵もなく、執拗に三村選手に追いすがってくる。この一瞬も気を緩めることのできない厳しい戦いを、三村選手は最後まで逃げ切った。2024シリーズ開幕戦のウィナーは、最年長33歳の三村選手だ。

 小高選手はバトルに持ち込むことこそできなかったものの、最後まで三村選手を追い詰めて0.666秒差の2位でフィニッシュ。公式練習で最速だった中井選手が単独走行の3位でチェッカーを受けた。その後ろでは、スタートで順位を上げた松下選手を、鈴木悠太選手が抜き返して4位でゴールしている。

第1戦優勝は三村壮太郎選手(ANEST IWATA EV Kart Racing Team)。
「トムスの方々がこうやってカート業界を盛り上げてくださっているレースでちゃんと勝てたことがうれしいです」とEV参戦へ感謝の言葉を出した三村選手。「本当は初めにプッシュしてもうちょっと逃げてから(タイヤの)クールダウンを入れたいと思っていたんですけれど、小高選手がずっとくっついてくるんで、ぜんぜん力を抜く余裕がなくて、思ったよりタイヤを使っちゃいました」と苦しいレース展開だったと明かした。
2位は小高一斗選手(REALIZE KONDO EV Kart Racing Team)、3位は中井陽斗選手(REALIZE KONDO EV Kart Racing Team)。
第1戦表彰の各選手。

第2戦決勝

 第2戦決勝のグリッドは、フロントローが中井選手と三村選手、セカンドローが松下選手と松井沙麗選手だ。そのレースは、スタートがハイライトとなった。レッドシグナルが消えると同時に、松下選手のマシンがまさにジャストのタイミングで動き出し、抜群の蹴り出しでフロントロー2台の間を抜けてトップに躍り出たのだ。

 真っ先に1コーナーを抜けた松下選手は、0.8秒強のリードでオープニングラップを終えた。2番手は中井選手をパスした三村選手。小高選手も三村選手に続いて中井選手をかわし、5番グリッドから1周で3番手へ。さらに酒井龍太郎選手が6番グリッドから4番手に、鈴木悠太選手が9番グリッドから6番手に浮上してきた。ただし、鈴木悠太選手は5周目にエスケープゾーンに飛び出して8番手に下がってしまう。

 三村選手はトップを行く松下選手を着々と追い詰め、5周目にはその真後ろにまで接近してくる。それを上回る速さを見せたのが小高選手で、6周目に三村選手をパスして2番手に上がってきた。三村選手は中井選手と酒井選手にも逆転を許して5番手に後退。この活発な2番手争いを利して、松下選手は再びリードを約0.7秒に広げた。

 レースが10周を過ぎると、快調そのものに思えた松下選手のペースにやや翳りが見え、小高選手が0.3秒差にまで接近してくる。さらに中井選手、三村選手、再浮上の鈴木悠太選手もそこに近づき、残り3周になるとトップから5台が僅差の一列に連なった。

 それでも松下選手はこの窮地を耐え抜き、小高選手にアタックのチャンスを与えることなく15周を走り切った。松下選手の全日本カート選手権での優勝は2010年のSuperKF部門第8戦以来、実に14年ぶりのことだ。

 小高選手は松下選手から約0.4秒後れでチェッカーをくぐり、2戦連続の2位に。中井選手も第1戦と同じ3位表彰台を獲得した。4位は最終ラップに三村選手を仕留めた鈴木悠太選手だ。

第2戦優勝は松下信治選手(CVSTOS × AGURI EV Kart Racing Team)。
「スタートのタイミングはグレーゾーンのギリギリでした(笑)」と絶妙なスタートで先頭に躍り出た松下選手。「僕のペースが速くないことは分かっていたんで、後ろから来たらバトルしてやるつもりだったんですが、来ないんで『あれ?』って思っていました」と逃げ切りの優勝を果たす。次の大会に参戦する佐藤蓮選手にバトンタッチとなるが「蓮君は僕よりぜんぜん速いんで大丈夫ですよ」とチームの勝利を確信していた。
2位は小高選手(REALIZE KONDO EV Kart Racing Team)、3位は中井選手(REALIZE KONDO EV Kart Racing Team)。
第2戦表彰の各選手。

 開幕2戦を終えてポイントリーダーとなったのは44点の小高選手。41点の同点で三村選手と松下選手がそれに続き、中井選手が40点で4番手、鈴木悠太選手が38点で5番手とポイントレースは接戦状態だ。次回の第3戦は7月15日、東京都江東区のシティサーキット東京ベイで開催される。

フォト/JAPANKART、今村壮希、長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ