毎戦勝者が入れ替わる近畿ジムカーナ激戦クラスのPN2。4人目の勝者はスイフトの本山正悟選手

レポート ジムカーナ JAFWIM

2024年7月3日

2024年は全8戦で争われる近畿ジムカーナ選手権。そのうち6戦が名阪スポーツランドCコースで開催されることもあり、名阪を制する者が近畿地区を制するといっても過言ではない。多くのドライバーが育ち、全日本へとステップアップしたコースで中盤戦となる第4戦が行われた。

2024年JAF近畿ジムカーナ選手権 第4戦
2024年JMRC近畿ジムカーナチャンピオンシリーズ 第4戦
2024年JMRC全国オールスター選抜 第4戦
2024年JMRC近畿ジムカーナミドルシリーズ 第4戦
ORCCジムカーナ

開催日:2024年6月16日
開催地:名阪スポーツランドCコース(奈良県山添村)
主催:ORCC

 名阪スポーツランドCコースは高い縁石とゆるいバンクが特徴的なサーキットだ。近年はドリフトでもその名を馳せていることから、ハイパワーマシンが一気にトラクションをかけるポイントは路面も粗くなっている。

 そんな名阪で開催される近畿ジムカーナ選手権の第4戦は大阪レーシングカークラブの主催だ。会長自らが全日本ジムカーナ選手権へ参戦する選手ということもあり、ハイスピードとテクニカルセクションを組み合わせながら、エントラントがお腹一杯になるくらい長いコースを設定。ミドルシリーズとの併催にも関わらず、もちろん今大会も1分20秒を超える大作を用意してくれた。

 今大会のコースを製作したコース委員長を務める中根康仁氏は「今日のコースは最初の左ターンをいかにしっかり回せるかがポイント。また3本巻きでタイムを落とさずに走るのもキモですね。ミドルの選手にはちょっと難しいと思いましたが、地区戦のレベルに合わせてみました」と語る。

 続けて「前半にテクニカルを持ってきたことで、後半がハイスピードになり、走り応えが存分にあるのではないでしょうか。ラップ量もしっかり取れていたので、スムーズな進行もできるコースだと思います」と、中根氏が本大会のコース設定を解説。

 ここから後半戦へとシリーズが折り返す中、いくつかのクラスで飛び抜けた選手はいるものの、多くのクラスではまだまだ戦況は混沌としている状況だ。シリーズ終盤の第6戦から続く3戦は全て名阪で開催されることを考えると、ここでの勝利はシリーズチャンピオンをぐっと引き寄せるきっかけになるかもしれない。タイトルを狙う選手には絶対に落としたくない大会と言える。

路面には早朝こそ前日の雨が残っていたが、決勝はドライコンディションで実施された今大会。
テクニカルとハイスピードを兼ね備えた絶妙なコース設定で第4戦が争われることとなった。
今回のコースを制作したのは全日本ジムカーナ選手権にも参戦中の、コース委員長を務める中根康仁氏。

PN2クラス

 毎戦勝者が入れ替わっている激戦区のPN2クラス。第1ヒートは1分22秒台の混戦が続く中、最初に21秒台に飛び込んだのはスバル・BRZの田北一賀選手だった。それまでトップタイムをマークしていたマツダ・ロードスターの福永隆一選手のタイムを大きく塗り替えることに成功する。

 これで今季4人目の勝者が絞られてきたかと思われたが、続くスズキ・スイフトスポーツの本山正悟選手が田北選手のタイムを約0.05秒上回ってトップタイムを更新。トップが本山選手に変わり、2番手に田北選手の順で折り返すこととなる。

 第2ヒートはタイムダウンする選手が多く、このクラスもタイムは伸び悩んでいた。田北選手は自身の第1ヒートのタイムにわずかに届かず2番手のまま。本山選手はコンマ5秒以上のタイムダウン。「後半のタイヤコントロールがダメでした。前半区間はトップタイムだったと思うんで、最後のターンで全部吐き出してしまいました」と田北選手。

 最終ゼッケンのスズキ・スイフトスポーツの鎌尾邦彦選手に注目が集まった。鎌尾選手は21秒台へタイムを伸ばしてはくるものの、2番手の田北選手にも届かず3番手のタイム。この結果、今季4人目の勝者となったのは本山選手だった。「序盤、まだセッティングが出ていなかった中、ここにきてやっとクルマが煮詰まってきました」と勝因を語る。

「1本目はレブを当ててしまったり、アンダーを出したりと失敗もあったんですが、タイムはしっかり残せました。2本目、走った感じでは路面はそんなに悪くなかったんですが、3本巻きのパイロンで大きく失敗してしまいタイムが落ちてしまいました。後半戦も精度良く走っていきたいと思います」と本山選手。最終戦まで混沌としたタイトル争いは続きそうだ。

PN2クラス優勝は本山正悟選手(DLプロμ雨乞い挑戦者スイフト)。
2位は田北一賀選手(来夢AZUR☆DL★S+BRZ)、3位は鎌尾邦彦選手(ATIK スイフト)。
PN2クラスの表彰式。左から4位の白尾泰選手、2位の田北選手、1位の本山選手、3位の鎌尾選手。

2PDクラス

 全日本ジムカーナ選手権のTAMADAでは2位に食い込んでポイントランキング3番手につける段上泰之選手。ポルシェ・ケイマンからアルピーヌ・A110Sに乗り換えて俄然勢いに乗っているドライバーだ。近畿ではここまで3戦を消化して全戦優勝を果たし、シリーズタイトルまであと一歩のところまできている。

 その段上選手をなんとかして止めたいのは、同じクラブに所属するアルピーヌ・A110SのMOTOHIRO選手。そして今大会には関東からアルピーヌ・A110Sを駆る大川裕選手が参戦している。

 そんな2PDクラスで先手を取ったのは段上選手だった。突っ込みすぎと思われる速度でコーナーに飛び込んでいった段上選手は、暴れるマシンを抑え込みながら姿勢を立て直す。大川選手、MOTOHIRO選手が1分23秒台で留まる中、ひとり22秒台前半のタイムを記録。ここまでの好調ぶりをいかんなく発揮してきた。

 勝負の第2ヒート、ファーストゼッケンの大川選手が2番手タイムをマークする。タイムアップ合戦に期待がかかったが、MOTOHIRO選手も22秒台までタイムを上げてはくるものの、段上選手の第1ヒートには届かない。段上選手の第2ヒートはタイムダウンしたものの、これで4連勝となり、シリーズタイトルにリーチをかけた。

 走行後、段上選手は「正直満足のいく走りではなかったです。小さく回るところで速度を落としきれず、ブレーキからなかなか足を離せなかったところなど、改善の必要がある走りでした。ですが昨年と比べるとマシンを乗り換えたことが良い方向に進みましたね。300㎏ほど軽くなったことで自分のスピードレンジも上がって、段々乗れるようになってきました。このまま全勝優勝目指して頑張りたいと思います」とコメント。

2PDクラス優勝は段上泰之選手(DLプロμCgEG!A110S)。
2位は大川裕選手(T新潟SFサカモトCS110S)、3位はMOTOHIRO選手(DLプロμ☆アルピーヌA110)。
2PDクラス表彰の各選手。

BR1クラス

 BR1クラスはスズキ・カプチーノのよこ山弘之選手が、未勝利ながらもランキングトップに君臨。マツダ・ロードスターの土手啓二朗選手は開幕戦を欠場しながらも、第2戦、第3戦と連勝でランキング2番手につける。迎えた第4戦、やはり勝負はこのふたりの対決となった。

 直線を長く取って加速勝負に持ち込みたいよこ山選手と、スムーズなコーナリングでボトムスピードを上げる土手選手。大きく違うふたりの走りだったが、第1ヒートにトップタイムをマークしたのは土手選手。2番手にはここまで第2戦、第3戦と3位に入っているトヨタ・ヤリスの福尾成泰選手が飛び込んだ。

 続く第2ヒート、まずは福尾選手がアタックするもタイムダウン。ラスト前の土手選手は、第1ヒートとは異なるアグレッシブなコース攻略を敢行。縁石を積極的に使って距離を稼ぐ走りを見せた結果、自身のターゲットタイムをコンマ4秒押し上げ、ラストゼッケンのよこ山選手にプレッシャーをかける。

 多くのマシンがサイドブレーキを引く中、グリップに徹して立ち上がりの姿勢づくりにこだわるよこ山選手。一気に加速態勢に持ち込み、土手選手を追いかける。しかし、最後の最後で集中力が途切れてしまったのか、最終の270度ターンでパイロンに寄せることができず、オープンなラインを余儀なくされる。

 これで勝負アリ。よこ山選手は土手選手の第1ヒートのタイムをかわすことはできたが、コンマ4秒届かず2位。土手選手が見事3連勝を飾った。「2本目はもうちょっとタイムを上げたかったんですが上手くいきませんでした。速いカプチーノに負けないように最後まで戦いたいですね」と土手選手。

 一方、2位に入ったよこ山選手は「今日は頑張りました。やれることはやったつもりだったんですが、最後のターンで届かなかった感じですね。今回のコースはストレートがあってタイムをしっかり詰められたんで、このコースは勝ちたかったです」と悔しさを滲ませていた。

BR1クラス優勝は土手啓二朗選手(DLプロμロードスター陶マS+)。
2位はよこ山弘之選手(YH木村自商TLBカプチーノ)、3位は大倉拓真選手(DL道星モティーズロードスター)。
BR1クラス表彰の各選手。

BR2クラス

 開幕戦と第3戦を勝利で飾ったホンダ・シビックの寺谷正樹選手を筆頭に、ベテラン勢が鎬を削るBR2クラス。車種も多彩で日産・マーチからホンダ・インテグラ、三菱・ミラージュといった懐かしいマシンが勢ぞろいしている。そんなクラスで初手を制したのはやはり寺谷選手だった。2番手のスズキ・スイフトスポーツの道下貴広選手に1秒近い差をつける圧倒的なタイムを刻みトップで折り返す。

 道下選手はなんとか一矢報いたいところだが第2ヒートはタイムダウンに終わる。トップの寺谷選手は自身が記録した第1ヒートのタイムをさらに1秒近く更新する強烈なタイムを叩き出し、他の追従を許さない。ラストゼッケンで三菱・ミラージュの稲上佳彦選手も、1秒以上その差を詰めることはできず、寺谷選手の3勝目が決まった。

 寺谷選手は走行後「ミスは何か所かあったんですが、それでも思った通り走れたので良かったです。ただ、ターンを2か所ミスしてしまったので、あれがなければもう1秒上げることができたと思います。今年はもちろんチャンピオンを目指して残りの大会も頑張ります」と次戦以降の目標を掲げてくれた。

BR2クラス優勝は寺谷正樹選手(ADVAN速心μWZDシビック)。
2位は道下貴広選手(FAスイフトスポーツS+)、3位は土井祥司選手(技芸上達インテグラ)。
BR2クラス表彰の各選手。

BR3クラス

 JMRC近畿が定める指定タイヤを装着した、後輪駆動のB車両で争われるBR3クラス。ここまでホンダ・S2000を駆る間瀬戸勇樹選手が開幕ダッシュで2連勝を決めたものの、第3戦はマツダ・ロードスターの朝原崇選手が優勝を奪取している。両選手とも名阪では1勝ずつ挙げていることから、この第4戦が後半戦に向けてのターニングポイントとなりそうな予感だ。まず先手を取ったのは朝原選手。1分20秒台というひとりズバ抜けたタイムをマークすると、2番手タイムの間瀬戸選手に1秒以上の差をつけて折り返す。

 朝原選手は続く第2ヒートで縁石をガンガン跨いでいくアグレッシブな走りを披露。パイロンへの進入速度も鬼気迫るものがあった。だがリアがブレイクしてしまいパイロンペナルティを喫し、大きくタイムを落としてしまう。ここでなんとか挽回したい間瀬戸選手だったが、自身のタイムをコンマ5秒上げるのが精一杯で、朝原選手には届かなかった。

「1本目ですべて出し切れなかったことが敗因ですね……。プレッシャーに負けてしまいました。マシンのセットアップももう少し追い込めたと思うので、次の鈴鹿で挽回したいと思います」と間瀬戸選手。がっぷり四つの戦いで後半戦も目が離せなくなりそうだ。

 一方、今季2勝目を挙げた朝原選手は「1本目もミスはあったんですが、路面に合わせた走りでタイムを残せたのが良かったです。2本目はみんなタイムダウンしているんで勝負をかけたんですが、やりすぎてしまいました。でも次の鈴鹿は厳しいと思っていたので、今回勝てて良かったです。もちろん目標はチャンピオンです」と後半戦に向けて意気込んでいた。

BR3クラス優勝は朝原崇選手(DL DXLe'Tロードスター)。
2位は間瀬戸勇樹選手(DLシューS+★S2000)、3位は松川周平選手(DL RX-EIGHT)。
BR3クラス表彰の各選手。

BR4クラス

 BR4クラスは三菱・ランサーエボリューションを駆るディフェンディングチャンピオンの大田健太郎選手がシリーズ争いを一歩リードしている。これを追いかけるのは、今季未勝利ながらも昨年ランキング2位につけた三菱・ランサーエボリューションの日野良一選手と、前戦で勝利したスバル・インプレッサの出口森雄選手。このクラスも混沌さを増しており、勝負の行方に注目が集まった

 第1ヒートでトップタイムをマークしたのは、今季も好調ぶりを見せつけている大田選手。ここに食らいついたのは、本来はPN4クラスに出場予定だったにも関わらず、急遽マシンを三菱・ランサーエボリューションにスイッチして参戦した北村健選手。リアデフがノーマルにも関わらず、大田選手にあとコンマ3秒まで迫るタイムをマークする。

 一方、日野選手はタイムを上げるが大田選手には届かず3番手。出口選手はパイロンペナルティに泣き、下位に沈んでしまう。結果、誰も大田選手の第1ヒートのタイムを上回ることができず、大田選手の今季3勝目が決まった。シリーズタイトルをグッと近づけた勝利だ。

「1本目はトップタイムだったんですが、スタートについてからACD(アクティブ・センター・デフ)のコンピュータを交換し忘れてしまい、実は焦っていました。いけるだけいってみたのが良かったのかもしれません。でもゴール前のターンでミスはあったので、2本目はタイムを上げれるかと思ったんですが、アンダーを出してしまったりしてロスが大きくてタイムダウンしてしまいました」と大田選手。次戦以降の活躍にも期待だ。

BR4クラス優勝は大田健太郎選手(DLチャレンジャーランサー)。
2位は北村健選手(ウェストリバーSyuランサー)、3位は日野良一選手(FA猫ランサー8YH SSM)。
BR4クラス表彰の各選手。

Lクラス

 Lクラスは三菱・ランサーエボリューションをドライブする辰巳知佳選手と、トヨタ・86の限界に挑み続けるかつこ選手の一騎打ちとなっている。ここまで開幕3連勝を決めているかつこ選手に対し、今季は精細さに欠ける走りが見られた辰巳選手だったが、第1ヒートこそ出遅れたものの、この第4戦では今までの鬱憤を晴らすような豪快なアクセルワークと小さなつなぎの区間を丁寧にクリアする走りで、他を圧倒するタイムをマークする。

「もう捨てるものがなかったので最後のターンも精一杯ステアリングを回して回し切りました。アクセルを踏んだ分、ちゃんとクルマが前に出てくれましたね。前半区間で少しタイムを落としてしまいましたが、後半戦も頑張りたいと思います」と辰巳選手。

 一方、かつこ選手は「ブレーキングが甘すぎました。今日は帰ってから反省することが多いですね。でも、ここで負けたことは良かったと思います。改めて気合いが入りました。次は挑戦者の気持ちでいきたいと思います」とコメント。関西を代表する2人のレディスドライバーの戦いはまだまだ続く。

Lクラス優勝は辰巳知佳選手(BS YOUオートS ランサー)。
2位はかつこ選手(DLコサリックフォーチュン86)、3位は武田ともこ選手(DL・チャレ・ITO・GR86)。
Lクラス表彰の各選手。

PN1クラス

 今大会最多の17台のエントリーを集めたPN1クラスは、開幕戦&第3戦をマツダ・ロードスターの古田公保選手が制し、シリーズをリードしている。そんな古田選手に唯一土をつけているのは、FINEART所属のマツダ・ロードスターを駆る川西努選手。第2戦から参戦を開始するといきなり優勝をさらっていった。ゆえに波乱の予感がするこのクラスと言える。

 そんな古田選手が第1ヒート最終ターンでまさかのパイロンペナルティ。生タイムこそズバ抜けたタイムをマークしているものの、下位に沈んでしまう。そして午後に入り、路面温度の上昇とともにタイムダウンする選手が多い状況で、逆転は厳しいのではないかと思われた中、シリーズタイトルに最も近い古田選手が真価を発揮する。

 伊東工業コーナー前でミスを犯してしまい、大きくタイムを吐き出してしまうものの、ギャラリー前の三本巻き、そして島と島のつなぎの区間は第1ヒートを上回る気迫の走り。最終ターンは慎重にクリア。もちろんトップタイムを更新し、古田選手は見事今季3勝目をマークした。

「リザルトはいいものだったんですが、走りの内容としては正直負けたと思っていました。次の鈴鹿で勝てればチャンピオンがグッと近づくので、気を抜かず頑張りたいと思います」と古田選手はコメントした。

PN1クラス優勝は古田公保選手(DL505XPLロードスター)。
2位は神野洋吏選手(DLロードスター和歌山みかん号)、3位は山村一真選手(DLプロμS+FAロードスター)。
PN1クラスの表彰式。左から4位の上地秀樹選手、2位の神野選手、1位の古田選手、3位の山村選手、5位の前田忍選手、6位の山本祐己選手。

PN3クラス

 エントリーが4台と、PN3クラスは少し寂しい参加台数となってしまった。第1ヒートからトップタイムをマークしたのは胸元貴大選手。第2ヒートでもさらにタイムを更新し、文句なしの2連勝を飾った。一方、開幕から2連勝を飾っていた江島英哉選手は3位となり、ランキング争いも熾烈を極める状況となった。

 優勝した胸元選手は「1本目から良い感じに攻められたこともあり、2本目もいい走りでタイムをまとめられたと思います。1本目はとりあえず突っ込むだけ突っ込んでみようと思ったんですが、それが良かったのかもしれません。今日の走りは80点ですね。これで2勝ずつになったんで、次の鈴鹿のハイスピードをしっかり勝って後半戦に臨みたいです」と意気込みを語った。

PN3クラス優勝は胸元貴大選手(DL来夢S+BRZ)。
2位は菱田真也選手(DL来夢S+86)、3位は江島英哉選手(YHFIGURE86)。
PN3クラス表彰の各選手。

PN4クラス

 三菱・ランサーエボリューションの小玉知司選手と、中部地区からエントリーしているトヨタ・ヤリスの高木健司選手がそれぞれ1勝ずつ挙げて迎えた第4戦。第1ヒートでトップタイムをマークしたのは、前戦2位に入った杉本季優選手だった。高木選手は3番手、小玉選手は2番手で第1ヒートを折り返す。

 だが杉本選手の第2ヒートはパイロンに泣きトップタイム更新はならず、後続の走りを見守ることに。そんな中、高木選手がここまでのターゲットタイムを1秒近く塗り替える驚きのタイムをマークする。路面温度はまだまだ高い状態であるにも関わらず、このタイムは驚異。最終ゼッケンの小玉選手も自身のタイムこそ更新するものの、高木選手のタイムには及ばず3位。高木選手が今季2勝目を手にした。

「1本目はぬるかったですね……。ブレーキングも甘かったですし、前走者がミスコースしたのが視界に入ってしまい、ちょっとアクセルを抜いてしまいました。なので2本目はとにかく踏み抜いてやろうと気合いを入れていったのが良かったですね。本来、僕は中部の人間なんですが近畿の方が成績は出ているんで困っています。中部をどうにかしないといけないんですけどね。もちろん、両方タイトルを狙えるんなら狙いたいです」と高木選手。地区を跨いだW地区王者は誕生するのかにも期待がかかる。

PN4クラス優勝は高木健司選手(DL速心PRSコーワヤリス)。
2位は杉本季優選手(ダンロップRSKヤリス)、3位は小玉知司選手(アルファラックランサーDL)。
PN4クラス表彰の各選手。

SBKクラス

 関西の名物クラスSBKは軽自動車で争われるクラスで、スズキ・アルトワークスとスズキ・カプチーノの一騎打ちとなっている。開幕戦から2連勝を挙げているカプチーノの大原秀樹選手は第3戦と今大会を欠場。そのため、アルトワークスに乗る藤林伸吉選手が第3戦を制している。

 第4戦ではやはり藤林選手がリード。第1ヒートは全車ミスが目立つ走りながらも、藤林選手がトップタイムを記録。第2ヒートでは汚名返上とばかりに2秒近くタイムを押し上げ、完全勝利を飾った。

「1本目は全体的にぬるくてグダグダでした。2本目はフロントのエアだけちょっと上げてロスを抑えて走ったのが良かったです。今シーズンはチャンピオンが目標ですが、まだまだ分かりませんね」と藤林選手は自身の走りを振り返った。

SBKクラス優勝は藤林伸吉選手(TLBいのがにアルト@朋茶工房)。
2位は中島圭吾選手(WZD/CAD紅色カプチーノ)、3位は三木田良行選手(千早赤坂大楠公DXLYHアルト)。
SBKクラス表彰の各選手。

BC1クラス

 熟成しきったDC2型のホンダ・インテグラに、ZC33型のスズキ・スイフトスポーツが猛攻をしかけているこのクラス。第1ヒートトップタイムを記録したのは名手・喜多治人選手だ。久しぶりの勝利に手がかかったように見えたが、このクラスの本当の勝負は第2ヒートだった。

 第3戦からエントリーを開始した山本貴嗣選手が一気にターゲットタイムを押し上げると、後続の選手も続々とタイムアップを果たす。前半のテクニカルセクションでタイムを詰めた野田太一選手も喜多選手の第1ヒートのタイムを更新して2番手に入り、開幕戦を制した中嶋敏博選手や、第2戦&第3戦で2連勝しているホンダ・CR-Xの中山務選手もタイムを上げてくる。

 しかし、山本選手が記録したタイムには及ばない。結果、山本選手がうれしい今季初優勝を遂げる。「1本目、3本巻きを大失敗してしまい、コース内に留まるのが限界でした。2本目はそこをしっかり修正しただけです。路面温度も50度を超えたので、エア圧を調整していったのも良かったですね。シリーズ優勝は難しいと思いますが、ひとつでも上位で終われるように頑張ります」とは山本選手。スイフトVSインテグラの熾烈な戦いはまだまだ続く。

BC1クラス優勝は山本貴嗣選手(YH-S+ITO-FAスイフト)。
2位は野田太一選手(DL・FA・SKRインテグラ)、3位は喜多治人選手(ATIKスイフト)。
BC1クラスの表彰式。左から2位の野田選手、1位の山本選手、3位の喜多選手、4位の中嶋敏博選手。

BC2クラス

 全日本ジムカーナ選手権でも活躍する、トヨタ・MR2を駆る岩崎玲生選手の独壇場となっているBC2クラス。第3戦こそホンダ・S2000の仲健太郎選手に勝利を奪われるものの、盤石の展開が続いている。そんな中、第1ヒートでトップタイムをマークしたのは仲選手だった。ミスを犯してしまった岩崎選手は第2ヒートにかける展開に。

 きっちりタイムを上げてくるのはベテランの真骨頂で、自身のターゲットタイムを更新した仲選手のトップタイムをさらにコンマ6秒上回る圧倒的なタイムをマークし、岩崎選手が今季3勝目を手にした。

「僅差ながら勝てました。テクニカルは得意なのでしっかりタイムを詰めることができました。仲選手のタイムがすごかったので焦りましたが、しっかりアプローチの仕方を考えながら無駄のない動きをしたのが良かったです。油圧サイドがついているメリットを活かしながら走りを組み立てました。2本目は全日本で使った255幅のタイヤをおろしたのもいい結果につながったと思います」と岩崎選手。ベテランの貫禄漂う勝利となった。

BC2クラス優勝は岩崎玲生選手(ADVANラブカDXL☆MR2)。
2位は仲健太郎選手(DL★ITO★S+S2000)、3位は抱博高選手(DL★SP+ESA匠S2千CH)。
BC2クラス表彰の各選手。

BC3クラス

 昨年は1勝も手にすることなくランキング2位となったスバル・インプレッサの岡本尚史選手が吠えた。ここまで勝者が毎戦変わる激戦のBC3クラスではスバル・インプレッサの石田忠義選手一強が揺らいでいる。開幕戦こそ石田選手が勝利したものの、第2戦は吉川寛志選手の緊急参戦で石田選手の連勝記録がストップ。さらに第3戦では全日本ドライバー鳥居孝成選手の参戦もあり、このクラスに久しぶりの混迷をもたらした。

 そんな中で開催された第4戦は岡本選手が第1ヒートから他の追随を許さない完璧な走りで、2年ぶりの勝利を手にした。走行後、「昨年はミスターパーフェクトに全敗しているので、2022年以来の勝利です。ここまでずっと応援してくれた仲間のおかげだと思っています。残りの大会も全勝してシリーズチャンピオンを決めたいと思います」と喜びをあらわにした。

BC3クラス優勝は岡本尚史選手(DLアクアSTAR5WRX)。
2位は辰巳浩之選手(BS YOU オートSランサー)、3位は石田忠義選手(DLアクアWM東発インプレッサ)。
BC3クラス表彰の各選手。

2PDMクラス

 地区戦が終了すると併催のミドルシリーズ第4戦が開催された。JMRC近畿ジムカーナミドルシリーズは全6クラスが用意され、クラス名に「M」がつくのが特徴だ。そんなミドルシリーズの口火を切ったのは、AT車両で争われる2PDMクラスだ。

 スズキ・スイフトスポーツ3台を中心とした7台がエントリーした。第1ヒートでトップタイムをマークしたのはスズキ・スイフトスポーツの谷英幸選手。第2ヒートに入ってもこの谷選手のタイムを更新できる選手はなく、谷選手が逃げ切り優勝。

 谷選手は「開幕戦は欠場してしまったんですが、これで3連勝できたんでホッとしています。師匠の喜多さんに仕様を変えてもらったこともあって走りやすくしてもらいました。喜多さんにいい知らせを届けられるよう後半も頑張ります」と喜びの言葉を発した。

2PDMクラス優勝は谷英幸選手(ATIKS+イモータルスイフト)。
2位は松永隆一選手(アバルト595ツーリズモ)、3位は谷久仁恵選手(ATIKスイフトS+)。
2PDMクラス表彰の各選手。

BR1Mクラス

 BR1Mクラスは学生も混じって8台がエントリー。第1ヒートでトップタイムをマークしたのはスズキ・カプチーノを駆る大高直郁選手だった。しかし、このクラスの第1ヒートは大きくタイムを失う選手が多く、第2ヒート勝負の様相に。

 昼の慣熟歩行を終え、前のクラスでは軒並みタイムダウンが目立つ中、多くの選手が自身のタイムを更新してくる。しかし、大高選手の持つターゲットタイムを更新してできる選手はいない。そしてクラス最終ゼッケンでマツダ・ロードスターの平野泰秀選手に注目が集まった。

 平野選手はボトムスピードを稼ぐ走りに徹する。小さなミスは散見されるも、しっかりとロードスターを手の内に抑え込んでトップタイムを更新。今期4勝目を手にした。

「1本目にぬるい走りをしてしまったんですが、2本目にしっかり修正できたのが良かったです。後半セクションでしっかりタイムを稼げたのが勝因だと思います。シリーズチャンピオンを目指します。来年は違うクラスも含めて考えています」と平野選手。次戦以降にも注目だ。

BR1Mクラス優勝は平野泰秀選手(DL阪神AMロードスター)。
2位は大高直郁選手(YHプロμポリバケツカプチーノ)、3位は船引比呂志選手(FA・DL・S+・LYUヤリス)。
BR1Mクラス表彰の各選手。

BR2Mクラス

 ここまで毎戦勝者が入れ替わっているBR2Mクラス。まずトップタイムをマークしたのは、今回が今年初参戦のホンダ・インテグラを駆る西野尾吉治選手だった。突然現れた伏兵に驚きの声が上がる。しかし、本当の驚きは2本目に待っていた。

 西野尾選手のターゲットタイムを更新したのは現役京都大学自動車部の学生・川合朝陽選手だった。昨年、ミドルシリーズチャンピオンの張靖遠選手のホンダ・インテグラをレンタルしての初参戦。にも関わらず、一気にトップへ躍り出る。続く西野尾選手はこのタイムを知ってか、大きくタイムを落としてしまった。

 後半ゼッケンになってもこの川合選手のタイムを抜く選手は現れず、現役学生の初出場&初優勝に。川合選手は「今日初めて出場して勝つことができて本当にうれしいです。インテグラを貸してくれた張さんに感謝です。1本目は突っ込み過ぎちゃったんで、2本目はそこをしっかり修正できたのが良かったです。最後のサイドターンで回しきって、直線的にゴールできたので、そこで『決まった』と思いました」と自身の走りを振り返った。

BR2Mクラス優勝は川合朝陽選手(京大☆借り物インテグラ)。
2位は西野尾吉治選手(ファインアート インテグラ)、3位は中崎良哉選手(FACATSインテグラ)。
BR2Mクラスの表彰式。左から2位の西野尾選手、1位の川合選手、3位の中崎選手、4位の赤松正之選手。

BR3Mクラス

 BR3Mクラスは新旧マツダ・ロードスター対決となった。このクラスも学生ドライバーが躍進。NA型の軽量ボディを活かした走りで大阪大学の矢野圭佑選手が第1ヒートからトップに立つ。第2ヒートにはNB型の池野谷響選手が矢野選手のタイムを更新するも、矢野選手は落ち着いた走りで再逆転。2年ぶりの参戦で念願の初勝利を手にした。

「クルマを見直してきたことが良い方向にいってくれたのでとても良かったです。減衰の見直しやキャリパーとローターの大口径化などいろいろやってきました。今年はシリーズチャンピオンを目指して頑張ります」と初々しいコメントを残した矢野選手。今後の走りにも期待がかかる。

BR3Mクラス優勝は矢野圭佑選手(OUAC220ロードスター)。
2位は池野谷響選手(YH-DXLしら建ロードスター)、3位は前田光彦選手(DLcsdロードスター)。
BR3Mクラス表彰の各選手。

BR4Mクラス

 7台のエントリーで争われたBR4Mクラスで優勝したのはスバル・インプレッサの冬野紘彰選手。第1ヒートのパイロンペナルティから見事な逆転劇で勝利だ。「1本目はパイロンタッチで後がない状態だったんですが、2本目に修正する場所を修正できたのでなんとか勝てた感じですね。それでも80点くらいの走りはできたと思います」

「前半のタイムで見ると4位の高嶋選手が速かったんで、そこら辺を見直さないといけないですね。3連勝でシリーズチャンピオンが少し見えてきたところはあるんですが、周りの選手も速いので油断せずこれからも戦っていきたいと思います」とは冬野選手。

BR4Mクラス優勝は冬野紘彰選手(DLDXLHAPインプレッサ)。
2位は村田寛選手(DLチャレンジャーランサー)、3位は宮原俊人選手(北村塾弥生DLインプレッサ)。
BR4Mクラス表彰の各選手。

PN2Mクラス

 次世代の地区戦ドライバーを輩出するのがPN2Mクラスだ。地区戦レディスクラスにもエントリーしているみさき選手が第1ヒートから他を圧倒するタイムをマークする。ここまで歯車が噛み合わない大会が続いていたが、ここに来て鬱憤を晴らすような気持ちの良い走り。2番手以下を完全に置き去りにしてしまう。

 第2ヒートに入っても、このタイムに迫る選手はいたが抜ける者はおらず、みさき選手が逃げ切り優勝。父と2人でダブルウィンを達成した。そんなみさき選手は「とにかくアクセル踏めるだけ踏んだのが良かったです。公式戦初優勝なんでとてもうれしいです。今年はミドルをしっかり追っていきたいと思います」と笑顔を見せた。

PN2Mクラス優勝はみさき選手(ブリッド陶プロμ♡ロードスター)。
2位は仲真一選手(DL☆ITO☆とっとこスイフト)、3位は三崎康選手(DL来夢S+GR86)。
PN2Mクラス表彰の各選手。

 今大会の組織委員長であり、大阪レーシングカークラブの会長も務める亀山伸一氏は大会を終え、「今日は152台も集まってもらい本当にありがたかったです。コースももう少し長くしたかったんですが、それでもスピードも乗って走りがいのあるコースで楽しんでもらえたと思います」とコメント。

 さらに「他地区からの参戦もあってうれしかったですね。オフィシャルの皆さんも暑い中頑張ってくれて良いイベントができたと思います。うちのクラブはとにかく団結力があるので、技術的な能力の高いので安心して運営ができました」と大会を総括した。

主催の大阪スポーツカークラブの皆さん。全員で大会を盛り上げようとする気持ちがあふれていた。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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