グラベルの全日本カムイで新井大輝/松尾俊亮組が全SSベストタイムで優勝

レポート ラリー

2024年7月12日

2024年全日本ラリー選手権の第6戦「ARKラリー・カムイ」が、7月5〜7日に北海道ニセコ町のスキーリゾート「ニセコアンヌプリ国際スキー場」駐車場を拠点に開催された。開幕戦のRally三河湾から5戦連続でターマックイベントが開催された今シーズンの全日本ラリーは、シリーズ終盤へ突入する今回の第6戦と次戦の第7戦にグラベルイベントが組まれている。

2024年JAF全日本ラリー選手権 第6戦「2024 ARK ラリー・カムイ」
開催日:2024年7月5~7日
開催地:北海道ニセコ町周辺
主催:TEAM ARK

 2024シーズン初のグラベルラリーは、北海道のリゾート施設、ニセコアンヌプリ国際スキー場の駐車場にサービスパークを設け、ニセコ町、倶知安町、真狩村、蘭越町周辺のグラベル林道を走破する。

 7月5日にレッキと公式車検が行われ、ラリー初日となる6日には3本の林道SSを2ループする6SS(40.78km)を設定。ラリー最終日となる7日も3本の林道SSを2ループする6SS(50.12km)、2日間合計で12SS(SS総距離90.90km)が設定された。

 高低差が比較的少なく、土が踏み固まった路面のステージが多いラリー・カムイは、多くの選手からも「走りやすい」と評判だが、砂利が少ない分、ウェット路面になると滑りやすく車両コントロールが難しい路面に豹変する。今季のラリー・カムイは、レッキ日を含め3日間とも小雨が降ったり止んだりのウェットコンディションとなった。

 全日本選手権クラス、オープンクラス、併催されたXCRスプリントカップ北海道の第3戦を含め合計78台がエントリーしたが、この路面コンディションにより、レグ1で15台がレグ離脱またはリタイア、レグ2で12台がリタイアと、延べ27台が戦列を離れるサバイバルラリーとなった。

80台近くのエントリーを集めた一方、降雨による路面状況の悪化によってサバイバルラリーの様相を呈していった。
ウェット時に想定以上に滑りやすくなった路面が多くのリタイアの一因ともなった。

JN1クラス

 シーズンイン直前に開胸手術を受け欠場していたヘイキ・コバライネン選手が復帰したJN1クラスは、第4戦ラリー丹後と第5戦モントレーでの連勝を含め、今季3勝を挙げている新井大輝/松尾俊亮組(シュコダ・ファビアR5)が、初日の6SSすべてでベストタイムをマーク。2番手の勝田範彦/木村裕介組(トヨタ・GRヤリスラリー2)に26.3秒差をつけ、初日をトップで折り返した。

 2番手の勝田/木村組に7.8秒差で新井敏弘/井上草汰組(スバル・WRX S4)が3番手、新井敏弘/井上組から5.8秒差の4番手に奴田原文雄/東駿吾組(トヨタ・GRヤリスラリー2)、さらに0.9秒差で福永修/齊田美早子組(シュコダ・ファビアラリー2 Evo)が5番手となり、2番手以降は僅差の勝負が展開された。

 初日と同じく小雨が降ったり止んだりというコンディションのラリー2日目は、雨で滑りやすい路面を「もっと速く走らせるためにはどうすればいいのか、具体的に分かったのは大きな収穫です」と果敢に攻めた新井大輝選手が、この日もすべてのSSでベストタイムをマーク。2位の勝田/木村組に約1分の差をつけ、今季4勝目を獲得した。

 また、初日に3番手を走行していた新井敏弘/井上組が、2日目のオープニングステージとなるSS7でコースオフ。コースには復帰するものの、脱出までに約30秒をロスして5位に沈んだ。3位には、2日目のSSを2位の勝田/木村組よりも速いペースで走行した奴田原/東組が入賞した。

JN1クラス優勝は新井大輝/松尾俊亮組(Ahead Skoda Fabia R5)。
2位は勝田範彦/木村裕介組(GR YARIS Rally2)、3位は奴田原文雄/東駿吾組(ADVAN KTMS GRヤリスラリー2)。
JN1クラスのフィニッシュセレモニー。左から2位の勝田/木村組、1位の新井大輝/松尾組、3位の奴田原/東組。

JN2クラス

 JN2クラスは、2023シーズンにトヨタ・GRカローラを全日本ラリーに投入して今季2度目の登場となる松岡孝典/北田稔組が、SS1からSS3まで順調にベストタイムを刻んでいく。だが、SS4からランキングトップの三枝聖弥/船木一祥組(スバル・WRX STI)が応酬。SS4からSS6まで3連続ベストを奪い、一時は13.2秒あった松岡/北田組との差を10.6秒に縮めてくる。

 ラリー2日目は、朝のサービスアウトで松岡/北田組がTCに1分遅着し、10秒のペナルティを計上。実質的な両者の差は0.6秒となる。だが、2日目のオープニングステージとなるSS7で松岡/北田組がベストタイムをマークし、三枝/船木組との差を2.2秒差に拡大。すると今度はSS8で三枝/船木組がベストタイムを奪い、ペナルティを含んだ合計タイムでは松岡/北田組を逆転して、遂にトップに躍り出る。だが、続くSS9で三枝/船木組が右リアのアッパーアームを破損。このSSをクラス3番手のタイムでフィニッシュするものの、サービスに戻るリエゾン区間でラリー続行を断念した。

 このSS9を制し、ふたたびトップの座を取り戻した松岡/北田組は、残り3SSもベストを重ねてトップでフィニッシュ。松岡選手自身にとっての全日本初優勝とともに、GRカローラにとっても全日本ラリー初優勝を勝ち獲る結果となった。

 2位には、「上位になかなか追いつけなかったのが悔しいですが、チームに結果を持ち帰りたかったので、しっかりペースを抑えて大人の走りに徹しました」という石川昌平/大倉瞳組(トヨタ・GRヤリス)が入賞。3位には、TGR WRCチャレンジプログラムの2期生候補として最終選考まで残った経歴を持ち、今回が全日本デビュー戦となる北海道の長尾綱也/尼子祥一組(スバル・WRX STI)が入賞し、実力の片鱗を見せた。

JN2クラス優勝は松岡孝典/北田稔組(ラックDLモビリティ東名古屋GRカローラ)。
2位は石川昌平/大倉瞳組(ARTAオートバックスGRヤリス)、3位は長尾綱也/尼子祥一組(DL CUSCO WM WPMS WRX)。
JN2クラスのフィニッシュセレモニー。左から2位の石川/大倉組、1位の松岡/北田組、3位の長尾/尼子組。

JN3クラス

 JN3クラスは、昨季のカムイとラリー北海道で連続2位に入賞した加納武彦/横手聡志組(スバル・BRZ)が、SS1とSS2を制してトップに立つ。だが、SS3のスタートから約4.4km地点の左コーナーで「ペースノートを聞き違えてしまいました……」とアウト側にコースオフ。無念のレグ離脱となった。

 加納/横手組の離脱により、2.1秒差で加納選手を追っていた山本悠太/立久井和子組(トヨタ・GR86)がトップに立ち、SS4とSS5でベストを重ねて後続とのタイム差を拡大していく。

 一方、シリーズランキングトップの長﨑雅志/大矢啓太組(トヨタ・GR86)は、ベストタイムはないもののコンスタントに好タイムを並べ、SS4を終えて15.7秒差の2番手で山本/立久井組を追いかける。ところが、SS5の下り左コーナーでブレーキがロックして路肩にコースオフ。個々で戦列を離れることとなった。長﨑/大矢組のレグ離脱により、2番手に浮上した曽根崇仁/竹原静香組(トヨタ・GR86)は、初日最終ステージとなるSS6でこのラリー初めてのベストタイムをマーク。一時は20秒以上あった山本/立久井組とのタイム差を16.0秒に縮めて、初日を折り返した。

 ラリー最終日となる2日目は、山本/立久井組がSS7からSS11までベストを重ね、2番手の曽根/竹原組との差を50.3秒にまで拡大していく。そして迎えた最終SS、フィニッシュまであと約2kmの地点で駆動系にトラブルが発生した山本/立久井組は、あえなく右コーナーのアウト側にコースアウト。勝利目前で無念のリタイアとなった。

 最後の最後に今季初優勝をつかんだ曽根/竹原組は、「2日目最初のループで山本/立久井組を逆転しようと頑張ったのですが、今回は無理だと思って2ループ目はペースを抑えました。ラリーは最後まで何が起こるか分かりませんね」と、4年ぶりの優勝に笑顔を見せた。この優勝により、ランキングでも山本/立久井組を0.2点上まわり2番手を奪取した。2位には、第3戦久万高原ラリーを制した山口清司/島津雅彦組(トヨタ・GR86)が入賞。JN3クラスは7台中5台がレグ離脱またはリタイアというサバイバル戦となった。

JN3クラス優勝は曽根崇仁/竹原静香組(P.MU☆DL☆INGING☆GR86)。
JN3クラスのフィニッシュセレモニー。1位の曽根/竹原組。

JN4クラス

 JN4クラスは、内藤学武/大高徹也組(スズキ・スイフトスポーツ)が、初日すべてのSSでベストタイムをマーク。2日目は高橋悟志/箕作裕子組(スズキ・スイフトスポーツ)がヘビーウエット路面のSS8とSS9でベストを奪うが、「2日目はレグ別得点トップを狙っていたので、最後まで集中を切らさず走ることができました」という内藤/大高組が、2位の高橋/箕作組に51.5秒差をつけ、今季2勝目を獲得した。

 3位にはランキングトップの西川真太郎/本橋貴司組(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞したため、チャンピオン争いはトップの西川/本橋組と2番手の高橋/箕作組との差が4.8点差に縮まる結果となった。

JN4クラス優勝は内藤学武/大高徹也組(YH TEIN アーリット スイフト)。
2位は高橋悟志/箕作裕子組(ミツバWMDLマジカル冷機スイフト)、3位は西川真太郎/本橋貴司組(スマッシュDLモンスターitzzスイフト)。
JN4クラスのフィニッシュセレモニー。1位の内藤/大高組。

JN5クラス

 JN5クラスは、昨季ドライバーズチャンピオンの松倉拓郎選手と、コ・ドライバー山田真記子選手のクルー(マツダ・デミオ)が初日から快走。2日目は2本のSSで若手の吉原將大/藤井俊樹組(トヨタ・ヤリス)がベストを奪ったが、12SS中10本のSSを制する圧巻の走りで、開幕戦以来となる今季2勝目を獲得した。

 第5戦モントレーを終えた時点でランキングトップだった大倉聡/豊田耕司組(トヨタ・GRヤリスRS)が、SS9のスタートから約500mでコースオフを喫してリタイアという結果に終わったため、チャンピオン争いは松倉/山田組が一気にトップに躍り出ることとなった。2位には、「ラリー北海道は打倒・松倉選手で頑張ります!」という吉原/藤井組が、初日4番手から2日目に追い上げて入賞。タイヤトラブルなどのアクシデントがありながらも、ポジションを堅守した河本拓哉/有川大輔組(マツダ・デミオ)が3位に入賞を果たした。

JN5クラス優勝は松倉拓郎/山田真記子組(DL☆Gセキネン鹿ソニックラブカデミオ)。
2位は吉原將大/藤井俊樹組(UPGARAGE TEIN DL ヤリス)、3位は河本拓哉/有川大輔組(DLクスコWMタカタOTS・TWRデミオ)。
JN5クラスのフィニッシュセレモニー。1位の松倉/山田組。

JN6クラス

 JN6クラスは、今季4勝を挙げている天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・アクアGRスポーツ)が、全SSを制する走りで今季5勝目を獲得。第7戦のラリー北海道、第8戦のハイランドマスターズでランキング2位以下のクルーがフルポイントを獲得しても、天野/井上組の有効ポイントを上まわる可能性がなくなったため、この時点で天野選手の11年連続16回目、井上選手の15年連続17回目のシリーズチャンピオンが確定した。

 2位は、2日目に約40秒差を徐々に詰め、最終SSで遂に逆転した清水和夫/山本磨美組(トヨタ・ヤリス)が入賞、「最終SSは気持ちが守りに入ってしまいました」と肩を落とす中西昌人/山村浩三組(ホンダ・CR-Z)が3位に入賞した。

JN6クラス優勝は天野智之/井上裕紀子組(TRT・DLアクアGR SPORT)。
2位は清水和夫/山本磨美組(SYE YARIS HEV)、3位は中西昌人/山村浩三組(WM・オープンロード・マクゼス・CR-Z)。
JN6クラスのフィニッシュセレモニー。1位の天野/井上組。ドライバーチャンピオンを天野選手が、コ・ドライバーチャンピオンを井上選手が確定させた。

フォト/CINQ、大野洋介、中島正義、山口貴利、JAFスポーツ編集部 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

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