XCRスプリントカップのXC-2クラスはCUSCO番場彬/梅本まどか組が優勝
2024年7月17日
XCRスプリントカップ北海道の第3戦が、7月5~7日に開催された全日本ラリー選手権 第6戦「2024 ARKラリー・カムイ」と併催で行われた。全6戦が予定されている今年のXCRスプリントカップは、序盤2戦はJAF北海道ラリー選手権との併催で、いずれもスノーラリーとして行われた。約4か月半のインターバルを経ての開催となった今回の第3戦は今年初のグラベルラリーとなったが、シリーズ後半の3戦もすべてグラベルラリーとなる予定だ。
2024年XCRスプリントカップ北海道 第3戦
(2024年JAF全日本ラリー選手権 第6戦 内)
開催日:2024年7月5〜7日
開催地:北海道ニセコ町周辺
主催:TEAM ARK
今大会次戦のXCRスプリントカップの第4戦は、9月6~8日に開催される全日本ラリー選手権の第7戦RALLY HOKKAIDOと併催で、その2週間後に第5戦がJAF北海道ラリー選手権RALLY EAST-IBURIと併催でそれぞれ開催される。そして、10月12~13日のJAF北海道ラリー選手権とかち2024が最終戦の舞台となる予定だ。
XCRスプリントカップは、併催の各全日本戦や地区戦と同じ距離を走る。今大会では2日間で計12本、90.90kmのSSで勝敗を競うのも同様だ。コンディションは2日間ともウェットとなったが、全日本戦のクルー達の走行後にスタートすることになるXCRスプリントカップのクルーは、1ループ目の走行からマッディでスリッピーな路面にアタックする形となった。
本格的なグラベルシーズンの到来を待ち受けていたエントラントが参戦を開始したこともあって、今回の一戦には前戦からほぼ倍増となる11台がエントリー。注目のNEWマシンも姿を見せて、大会前から大きな話題を集めた。
三菱・トライトンで参戦するのは、昨年このシリーズにトヨタ・FJクルーザーでスポット参戦した竹岡圭選手で、自ら主宰する圭rallyprojectからのエントリー。一方、トライトンとともにこのシリーズ初参戦となるマツダ・CX-5は、マツダ車でのドリフト競技で知られるTCP-MAGICからエントリー。マツダの社員ドライバーである寺川和紘/石川美代子組の夫婦クルーがドライブする。寺川選手は2015年のARKラリー・カムイでマツダ・デミオを駆ってクラス優勝を飾った元全日本ラリードライバーだ。
XC-2クラス
注目の2台がエントリーしたXC-2クラスは6台によるバトルとなったが、序盤からラリーをリードしたのは2年連続チャンピオンの番場彬選手が駆るトヨタ・ハイラックスだった。今季初参戦となった番場選手は梅本まどか選手をコ・ドライバーに招き、所属するCUSCO Racing×K.Z.F Serviceが仕立てたハイラックスの新車を初ドライブとなったが、SS1、SS2と連取。SS3では寺川/石川組がベストを奪って反撃の狼煙を上げたが、午後のセクションでは番場/梅本組が3本のSSすべてを制して、寺川/石川組に約1分20秒のマージンをつけて戻ってきた。
「新車でしたが、テストでイチからデータを取り直すことができたので、不安なくラリーに臨めました」という番場/梅本組は、レグ2でもベストタイムを連発。レグ1で築いたリードをさらに広げて優勝を飾り、ディフェンディングチャンピオンの速さを見せつけた。
足回りや駆動系等で新たな仕様となったハイラックスを、リスキーなコンディションの中、無事ゴールまで運んだ番場選手は、「路面の見極めはどちらかというと得意な方なので(笑)、何とか最後まで生き残れました。ここのラリーはワダチのでき方も特殊なので、走り方もそれなりの修正を求められましたが、リカバリーも楽な車両になったので、皆さんが思っているほどは神経を使わなかったです」とハイラックスの進化を実感した様子。
次戦RALLY HOKKAIDOでは昨年、優勝をさらわれた川畑真人選手が、FLEX SHOW AIKAWA Racing with TOYO TIRESチームから、シリーズ2台目となるトライトンでエントリーすることがリリースされているが、「今年はもちろんリベンジを狙います」と2か月後に控える決戦に向けて宣戦布告した。
レグ1で1本SSベストを奪取し、レグ2もSS10では番場/梅本組に0.3秒差まで迫るタイムを叩き出した寺川選手は、「(ベストが獲れた)SS3は、“結構、イケたな”という実感がありました。多分、舗装の区間があってグラベルの区間もそれほど掘れていなかったので、道がいい所でのトラクションの良さがタイムにつながったと思います。高速安定性も、安定しすぎるくらいでしたけど、RALLY HOKKAIDOを考えれば、これくらいがいいのかもしれません。道が荒れてくると厳しい部分はありましたが、ほぼフルノーマルだったことを考えれば、それなりのパフォーマンスは出せたと思います」とラリーを振り返った。
開幕2連勝を飾った三菱・エクリプスクロスの浅井明幸/笠井開生組は、3番手走行中にSS9でコースオフを喫してリタイアとなり、連勝記録はストップすることに。代わって3番手に上がった竹岡/山田組がその順位を守ってゴールし、初戦で表彰台の一角を射止めた。
「トライトンにとっては、ライン取りもできないくらいの道幅でしたけど(笑)、楽しく走れました」とシェイクダウンを兼ねての参戦となったラリーを振り返った竹岡選手は、「動きがゆっくりだから、乗りやすくて自分の運転にも合っている車両です。車重がある上に、まだLSDが入っていないこともあって、上りはきつい所もありました。下りは止まらないんじゃないかと思ったけれど、ちゃんと止まってくれました(笑)。ホイールベースがある分、高速安定性は分があると思うので、RALLY HOKKAIDOでは、その良さを活かしたいですね」と次戦を見据えていた。
竹岡/山田組に続く4位には、CUSCO Racing×K.Z.F Serviceからエントリーした羽根田琴/加勢直毅組が入賞。昨年まで番場選手がドライブしていたハイラックスを駆った羽根田選手は現役の大学生。今回がラリー競技初参戦だったが、「ワダチも初めて経験する路面なので、走り方が分かりませんでしたが、加勢さんがアドバイスしてくれたので少しだけつかめました(笑)。クルマにも慣れたので、今日は踏める所は踏めたと思います。2日間ともすごく滑る路面で大変でしたが、目標の完走が果たせて良かったです」と胸をなで下ろしていた。
XC-3クラス、XC-1クラス
XC-3クラスは4台による戦いとなった。第2戦で優勝を決めて今年もタイトル防衛に盤石の構えを見せる、塙郁夫/佐竹尚子組のトヨタ・ライズが序盤からSSベストを連発して、ラリーをリードする。このクラスも今回はスズキ・ジムニーが3台参戦し、台数増となった。
塙郁夫/佐竹組はレグ2も全SSベストで走り切って3連勝を飾ったが、2度目のラリー・カムイは、「雨ということもあって昨年とはまた違った難しさがありました。特に舗装の区間は、皆、インカットしたために泥や草が出て、一度滑ったら立て直せない状況だったので何とか道の上にいられて良かった。でも息子とのバトルもあったし、楽しいラリーでした」とラリー後は安堵の表情を見せた。
ジムニー勢で唯一生き残った小玉絵里加/槻島もも組は、2位に入賞。日本を代表するレディース・トライアルライダーとして知られる小玉選手は、4輪の競技には今回が初参加。「リタイアということがまずないトライアルに対して、一瞬のミスでリタイアに追い込まれるラリーの怖さを思い知らされた一戦でした。トライアルをやっているので、道が荒れるのは気になりませんが、ともかくジムニーはワダチが合わないので、かなり注意して走りました」と小玉選手。「ミスした時のリカバリーを始め、ラリーを走る際のテクニックの未熟さも痛感したので、次のRALLY HOKKAIDOでは、もう少しアベレージスピードを上げられるように、シミュレーターなどで練習を積んでいきたいと思います」と次戦に意欲を見せていた。
この他、塙郁夫選手の子息で、普段は郁夫選手のコ・ドライバーで世界各地のラリーレイドに参戦してきた塙雄大選手と笹田真弓選手のジムニーは、SS2走行後にエンジントラブルでリタイア。塙雄大選手は、ドライバーとしてはラリー初参戦で、「レーシング仕様のジムニーはいつも乗っていますが、公道を走れるジムニーを競技で乗るのは初めて。踏み過ぎると壊れるんだな、というのが良くわかりました(笑)。走れた距離は短かったけど、楽しかった。ヌタヌタの路面は気になったけど、怖いもの知らずで走りました(笑)」と語った。
また、塙雄大選手と同じく今回がXCRスプリントカップ初参戦だった高橋兼史/岩井菜々子組はジムニーのオフロードレースで磨いてきたテクニックを発揮して2番手につけていたが、同じくエンジントラブルでリタイアとなり、レグ2の出走は叶わなかった。高橋選手は、「オフロードレースは20年近くやっていますが、ハイスピードなコースが狭い林道に舞台が変わっただけだと思いながら走りました。ただ、ワダチが合わないので転ばないように走るだけでも大変でしたよ。やっぱりラリーに出るならラリー用に仕立てたマシンじゃないとダメでしょうね。今回はだいぶいい勉強になりました」と初ラリーの感想を残した。
なおXC-1クラスは、惣田政樹/猿川仁組のランドクルーザーがエントリーしたが、レッキ中にマシントラブルが発生したため、スタートできずにラリーを終えた。次戦での復活を期待したいところだ。
フォト/大野洋介、山口貴利、JAFスポーツ編集部 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部
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