今シーズン初優勝の選手も現れ、全日本ダートトライアル選手権のシリーズ上位争いがさらに混沌化!

レポート ダートトライアル

2024年7月19日

全日本ダートトライアル選手権 第5戦「2024年東北ダートトライアル IN KIRIYANAI」が、7月13~14日の日程で、青森県五戸町のサーキットパーク切谷内で開催された。

2024年JAF全日本ダートトライアル選手権 第5戦「2024年東北ダートトライアル IN KIRIYANAI」
開催日:2024年7月13~14日
開催地:サーキットパーク切谷内(青森県五戸町)
主催:MSCはちのへ、AKITA

 6月15~16日に石川県輪島市の輪島市門前モータースポーツ公園で開催を予定していた全日本ダートトライアル選手権 第4戦「ダートスプリント in 門前」は、1月1日に発生した令和6年能登半島地震の影響により中止となったため、当初8戦が予定されていたカレンダーは全7戦となり、有効戦数は5戦(PNE1クラスは第3戦が不成立となったため有効4戦)となる。

 シリーズはすでに中盤戦から終盤戦へと差しかかり、各クラスのチャンピオン争いは依然、混沌とした状況が続いている。今回の第5戦も例に漏れず、誰が勝つか分からない展開となり、各クラスのシリーズランキング上位の順位に大きく影響する結果となった。

 路面にタイヤのブラックマークがつくほどの超硬質ダート路面で知られているサーキットパーク切谷内。路面が硬いためにコーナリングスピードが高く、毎年0.1秒を競うスリリングな勝負が展開されている。今年は天候にも恵まれ、前半のクラスでは埃が飛散するのを防止するために撒かれた水と、路面を軽く覆う砂利の影響があり、コースの一部が滑りやすかったようだ。

 一方で、後半のクラスでは第1ヒートから超硬質ダート路面用のタイヤを装着する選手がいたほど、砂利がはけてグリップの高い路面も現れた。そして今回は全日本ダートトライアル選手権では珍しいパイロンスラロームを設定。パイロン移動はプラス5秒のペナルティが科せられ、このパイロンセクションも優勝争いに大きく影響することとなった。

昨年のコースレイアウトを踏襲しつつ、途中にペナルティパイロンが設けられている。

PNE1クラス

 PNE1クラスは開幕2連勝の小山健一選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、第1ヒートでクラス唯一となる1分40秒台のタイムを刻み、トップに躍り出た。だが、第2ヒートになるとタイヤを硬質ダート路面用に替えた葛西キャサリン伸彦選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、ベストタイムを1分37秒台に引き上げてくる。

 第1ヒートトップの小山選手は、第1ヒートと同じく軟質ダート路面用のタイヤでアタック。「予想より路面が硬く、コーナーとコーナーの間のストレート区間でうまくトラクションをかけられなかった」と、第1ヒートのタイムは更新してくるものの、葛西選手が塗り替えたタイムには約1.4秒届かず。葛西選手が第2ヒートの逆転劇で、今季初優勝を飾った。2位に小山選手、そして3位には小山選手に0.039秒差まで迫った鈴木正人選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞した。

PNE1クラス優勝は葛西キャサリン伸彦選手(YHGC ATSスイフトRSK)。
PNE1クラスの表彰式。左から2位の小山健一選手、1位の葛西選手、3位の鈴木正人選手、4位の山部恭裕選手、5位のジャスミンふみ選手、6位の宇野祐哉選手。

PN1クラス

 第1戦から第3戦まで上位入賞者の顔ぶれが大きく変わり、シリーズランキングもトップから10番手以降まで混戦模様となっているPN1クラス。第2ヒートで超硬質ダート路面用のタイヤを装着する選手もいる中、第1ヒート3番手で第2ヒートは硬質ダート路面用のタイヤで挑んだ本道治成選手(マツダ・デミオ15MB)がクラス唯一となる1分37秒台のタイムをマークしてトップに立った。

 今シーズンは開幕戦からAT仕様のホンダ・フィットで挑み、この大会でMT仕様に切り替えた工藤清美選手が、第2ヒートは超硬質ダート路面用のタイヤで挑むものの、本道選手には0.507秒届かず。シリーズランキングトップの飯島千尋選手(スズキ・スイフトスポーツ)、第1ヒートトップの奈良勇希選手(スズキ・スイフトスポーツ)も工藤選手と同じく超硬質ダート路面用のタイヤで第2ヒートを走行するが、飯島選手が0.662秒、奈良選手が0.665秒トップに届かず。タイヤ選択の明暗が勝負に影響したPN1クラスは本道選手が逃げ切り、今シーズン初優勝を飾った。

PN1クラス優勝は本道治成選手(DL川口北陸マツダ222デミオ)。
PN1クラスの表彰式。左から2位の工藤清美選手、1位の本道選手、3位の飯島千尋選手、4位の奈良勇希選手、5位の原靖彦選手、6位の太田智喜選手。

PN2クラス

 PN2クラスは、第1ヒートで約0.1秒差に迫った北海道の山田将崇選手(スズキ・スイフトスポーツ)と星野幹男選手(スズキ・スイフトスポーツ)に対し、第2ヒートで大きく引き離した地元・青森県の佐藤卓也選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、今季初優勝を飾る。2位に山田選手、3位にはディフェンディングチャンピオンの中島孝恭選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞した。

 この結果、佐藤選手がシリーズランキング3番手から2番手に浮上。そして今回、ランキングトップの濱口雅昭選手(スズキ・スイフトスポーツ)が4位に終わったため、両者のポイント差が2点差まで縮むこととなった。

PN2クラス優勝は佐藤卓也選手(DLΩKYBオクヤマ・スイフト)。
PN2クラスの表彰式。左から2位の山田将崇選手、1位の佐藤選手、3位の中島孝恭選手、4位の濱口雅昭選手(代理)、5位の増田拓己選手、6位の星野幹男選手。

PN3クラス

 PN3クラスは、今シーズン2勝を挙げている竹本幸広選手(トヨタ・GR86)が第1ヒートでクラス唯一となる1分39秒台のタイムでフィニッシュするものの、パイロンペナルティの判定で下位に転落。第2ヒートは、第1ヒートトップのパッション崎山選手(トヨタ・GR86)がベストタイムを1分37秒069に引き上げてくる中、竹本選手は第2ヒートもパイロンペナルティに終わり、ポイント獲得ならず。

 崎山選手が第3戦スナガワに続き連勝するとともに、シリーズランキングでも竹本選手を抜いてトップに立った。2位には「こういう路面は、もう少し賢く走らんといかんですね」と言う浦上真選手(トヨタ・GR86)が入賞。3位は「コーナリング中にグリップ感が変わる路面が難しかった」と振り返る小関高幸選手(スバル・BRZ)が、今シーズン初表彰台を獲得した。

PN3クラス優勝はパッション崎山選手(DL☆ラブカ☆ライズGR86)。
PN3クラスの表彰式。左から2位の浦上真選手、1位の崎山選手、3位の小関高幸選手、4位の徳山優斗選手、5位の寺田伸選手、6位の上野倫広選手。

Nクラス

 第1ヒートでスピンを喫したNクラスの宝田ケンシロー選手(トヨタ・GRヤリス)は「切谷内はもともと苦手だったんですけど、調子はずっと良く、スナガワ直後のテストでもしっかりと手応えを感じました」と、第2ヒートで逆転。第4戦スナガワに続き2連勝を挙げた。

 2位には、中間地点ではベストタイムを刻んでいたものの、後半区間でわずかに遅れた矢本浩之選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が入賞。第2戦を制した若手の三浦陸選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が3位を獲得した。

 第1ヒートのトップを奪った岸山信之選手(トヨタ・GRヤリス)が8位に終わったため、シリーズランキングは今回4位に入賞した細木智矢選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)がトップに浮上。4点差の2番手に宝田選手と三浦選手が並び、さらに1点差で岸山選手が4番手という結果となった。

Nクラス優勝は宝田ケンシロー選手(YHオクヤマFT小松GRヤリス)。
Nクラスの表彰式。左から2位の矢本裕之選手、1位の宝田選手、3位の三浦陸選手、4位の細木智矢選手、5位の大橋邦彦選手、6位の三枝光博選手。

SA1クラス

 SA1クラスは、今シーズン2勝を挙げている河石潤選手が両ヒートを制する走りで3勝目をマーク。シリーズポイントでも2番手以下を大きく引き離す結果となった。

 2位は「細かいミスがあったけど、やりきった感があります。河石選手が強い」と脱帽する古沢和夫選手(三菱・ミラージュ)が獲得。3位には、2019年にホンダ・シビックで切谷内を制した花見誠選手(スズキ・スイフトスポーツ)が「やっとターボ車のトルクを活かした走らせ方ができるようになりました」と、今シーズン初表彰台をつかんだ。

SA1クラス優勝は河石潤選手(モンスタースポーツDLスイフト)。
SA1クラスの表彰式。左から2位の古沢和夫選手、1位の河石選手、3位の花見誠選手、4位の竹村由彦選手、5位の志村雅紀選手、6位の北淳選手。

SA2クラス

 第1ヒートではクラス唯一となる超硬質ダート路面用のタイヤで挑んだ黒木陽介選手(トヨタ・GRヤリス)がトップタイムをマークしたSA2クラス。ほとんどのドライバーが超硬質ダート路面用のタイヤを選択した第2ヒートは、若手の岡本泰成選手(三菱・ランサーエボリューションIX)がベストタイムを1分29秒台に引き上げてくる。

 第1ヒートトップの黒木選手がパイロンペナルティ、ベテランのマイケルティー選手(三菱・ランサーエボリューションIX)は岡本選手のタイムに0.213秒届かず。岡本選手の全日本初優勝が目前となる中、クラスラストゼッケンの浜孝佳選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が岡本選手のタイムを0.134秒更新してフィニッシュ。最後の最後に、浜選手がディフェンディングチャンピオンの底力を見せた。

 この結果、浜選手はポイントランキング4番手から44点でトップに浮上。浜選手と同点で4番手だった岡本選手も39点で2番手に浮上し、第3戦を終えてランキングトップだった黒木選手が35点の3番手という結果となった。

SA2クラス優勝は浜孝佳選手(XPL・ADVANランサー)。
SA2クラスの表彰式。左から2位の岡本泰成選手、1位の浜選手、3位のマイケルティー選手、4位の林軍市選手、5位の北村和浩選手、6位の鈴木信地郎選手。

SC1クラス

 第1ヒートは1分37秒台の攻防戦となったSC1クラスは、山崎迅人選手(三菱・ミラージュ)が両ヒートを制し、今シーズン2勝目とともに切谷内初優勝を果たした。

 第1ヒート2番手の坂井秀年選手(ホンダ・シビック)が第2ヒートで大きくタイムを落として5位、第1ヒート3番手の鶴岡義広選手(スズキ・スイフトスポーツ)が第2ヒートはゴール直前で転倒リタイアという荒れた展開となる中、2位は開幕戦以来2回目の表彰台獲得となる深田賢一選手(ホンダ・シビック)が獲得。東北地方選手権にも出場し、「切谷内は準ホームコース」という佐藤史彦選手(スバル・インプレッサ)が3位に入賞した。

SC1クラス優勝は山崎迅人選手(YHマックスゲンシンミラージュ)。
SC1クラスの表彰式。左から2位の深田賢一選手、1位の山崎選手、3位の佐藤史彦選手、4位のアキマただゆき選手、5位の坂井秀年選手、6位の鶴岡義広選手。

SC2クラス

 第1ヒートは、地元・青森のベテランドライバー大西康弘選手(三菱・ランサーエボリューションX)がトップタイムを奪ったSC2クラスは、第1ヒートで大西選手と同じ1分30秒台のタイムを刻んでいた亀田幸弘選手(スバル・インプレッサ)が、第2ヒートで逆転優勝。

「超硬質ダート路面用のタイヤで勝つのは久々です(笑)」と表彰台で笑顔を見せた亀田選手は、第3戦に続く2勝目とともに、シリーズランキングでもトップに浮上した。2位は九州の岩下幸広選手(三菱・ランサーエボリューションX)が超硬質路面で巧みにランサーを操り、今シーズン初表彰台を獲得。3位には、第1ヒートトップの大西選手が入賞した。

SC2クラス優勝は亀田幸弘選手(YH栗原オート企画インプレッサ)。
SC2クラスの表彰式。左から2位の岩下幸広選手、1位の亀田選手、3位の大西康弘選手、4位の上村智也選手、5位の坂田一也選手、6位の奥村直樹選手。

Dクラス

 Dクラスは、第2ヒートで鎌田卓麻選手(スバル・BRZ)がベストタイムを1分27秒878に更新。すると第1ヒート2番手の谷田川敏幸選手(スバル・BRZ)が鎌田選手のタイムを0.218秒上回り、さらに続く炭山裕矢選手(三菱・ミラージュ)が谷田川選手のタイムを0.046秒塗り替えるという1分27秒台の攻防戦が続く中、第1ヒートを制したクラスラストゼッケンの田口勝彦選手(三菱・ランサーエボリューションX)が、1分26秒台のタイムでフィニッシュ。

「最近はGRヤリス・ラリー2とかアジアクロスカントリー用のトライトンとか、いろいろなクルマに乗っていて、ハイパワーのD車のドライビングをすっかり忘れていました。決勝の第2ヒートでやっと合わせることができた感じです」という田口選手が、今シーズン3勝目を挙げてシリーズを大きくリードした。2位に炭山選手、3位に谷田川選手と、シードゼッケン組が最後まで息詰まる攻防戦を展開した。

Dクラス優勝は田口勝彦選手(HKSランサーエボリューション)。
Dクラスの表彰式。左から2位の炭山裕矢選手、1位の田口選手、3位の谷田川敏幸選手、4位の鎌田卓麻選手、5位の田辺剛選手、6位の亀山晃選手。

フォト/CINQ レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ