シリーズ折り返し! FIA MOTORSPORT GAMESの代表選出も兼ねた重要なラウンド

レポート カート

2024年7月26日

全日本カート選手権 OK部門の第5戦/第6戦が7月13~14日、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキット南コースで開催。第5戦ではウェットコンディションの中で酒井仁選手が初優勝。第6戦では雨上がりのタイヤギャンブルに成功した土橋皇太選手が初勝利を獲得した。

2024年JAF全日本カート選手権 OK部門 第5戦/第6戦
2024年JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門 第5戦/第6戦(ラウンドシリーズ1)
2024 AUTOBACS GPR KARTING SERIES

開催日:2024年7月13~14日
開催地:鈴鹿サーキット南コース(三重県鈴鹿市)
主催:SMSC、GPR

 国内カートレースの最高峰に位置する全日本カート選手権 OK部門は、7月13~14日の鈴鹿大会で2024シリーズ全10戦の折り返し点を迎えた。決勝日、早朝のサーキットは前夜からの雨で全面ウェット。その雨は朝方に一旦止み、路面はほぼ乾いたのだが、天気予報は午後からの降雨を告げており、コンディションは先行きの読めない状況だった。

 全日本OK部門及びGPR KARTING SERIESでは、イエローフラッグ区間の解除の印としてグリーンフラッグが提示される。この旗信号の有効区間を明確にするため、今回の大会ではコース脇の9地点にジャッジラインとなる白線がマーキングされ、ドライバーズブリーフィングでも改めてそのことがていねいに説明されていた。

雨が降ったり止んだりと天候が不安定となった鈴鹿大会。スリックかレインかタイヤ選択が難しいレースとなった。
南コースのコースサイド9か所に導入されたジャッジライン。対象ポストでの旗信号の有効区間が明確化された。

全日本カート選手権OK部門 第5戦/第6戦

 OK部門には初参加の2名を含む30台が参加した。抽選によりふたつのグループに分けて行われたタイムトライアルでは、Aグループで伊藤聖七選手が、Bグループで土橋選手がトップに。続く各グループの上位4名ずつが1周のタイムアタックに挑むスーパーポールでは、土橋選手が48秒145のトップタイムを叩き出して第5戦決勝のポールポジションを手に入れた。2番手は菊池貴博選手、3番手は中井陽斗選手だ。

タイムトライアル(予選)上位8台で争われるスーパーポールを制したのは土橋皇太選手(ラムレーシング)。

 12時30分の第5戦決勝スタート時間が近づき、全車がメインストレート上のスターティンググリッドに整列したところで、路面にポツポツと雨粒が落ち始め、その雨はたちまち本降りへと変わった。これでレースはディレイに。全車は整備可能エリアに引き上げ、急いでタイヤをスリックからウェットに交換する。スタート進行の再開までに雨はほぼ止んだのだが、コースはすでにびしょ濡れ。多くの予想を裏切る早い時間帯の降雨によって、第5戦は思わぬウェットレースになった。

 18周のレースがスタートすると、菊池選手はポジションを下げ、代わって中井選手が2番手に浮上。さらに、その後ろでは7番グリッドから発進した酒井仁選手が3番手に上がってきた。中井選手と酒井仁選手は3周で土橋選手のテールを捕らえ、次々にパスしていく。さらに4周目を迎えるメインストレートで、酒井仁選手が中井選手に並びかけ、1コーナーでその前へ。そして中井選手の強烈な抵抗を跳ね除けて、酒井仁選手が6台抜きでトップに立った。

 酒井仁選手のペースは他を圧倒、中井選手以下をぐいぐいと引き離していく。この時、先頭争いのはるか後方で、もう1台のマシンが目覚ましい追い上げを敢行していた。20番グリッドからスタートした酒井仁選手の弟、第4戦ウィナーの酒井涼選手だ。5周で7番手までポジションアップした酒井涼選手は、大きく離れていた土橋選手との間隔をたちまち削り取り、11周目に3番手へ浮上。さらに14周目には中井選手をもパスして2番手に躍り出た。

 このとき、トップを行く酒井仁選手と酒井涼選手のギャップは約3.5秒。酒井涼選手はその差を周回ごとに縮めていくが、さすがにゴールまでに追いつくことは無理だった。独走で走り切った酒井仁選手は、ピットサインレーンの仲間たちに向かってガッツポーズを披露しながらチェッカーを通過した。全日本では2021年のFS-125部門・西地域第4戦以来の優勝、OK部門では初勝利だ。

 酒井涼選手はトップから1.5秒後れてコントロールラインを通過し、兄弟でのワンツーフィニッシュを達成。中井選手は3位でゴールして初表彰台に。それに続いてゴールした土橋選手はスタートの違反によるペナルティで5位に降格となり、菊池選手が4位となった。

OK部門 第5戦優勝は酒井仁選手(Vitec Racing)。
勝てる確信はなかったものの、雨の中でも苦手意識なく自信を持ってレースに臨めたという酒井仁選手。「いつも自分が弟の足を引っ張っていたので……、後ろから弟が来ていたのに気づいてうれしかったです」と、チームこそ違えど弟の酒井涼選手と1-2フィニッシュを達成できたことをとても喜んでいた。
2位は酒井涼選手(TEAM EMATY)、3位は中井陽斗選手(TEAM WOLF)。
OK部門 第5戦の表彰式。左から2位の酒井涼選手、1位の酒井仁選手とVitec Racingのチーム代表、3位の中井選手。
第5戦決勝でファステストラップをマークした選手に贈られるチャンネル700賞は、56秒618を記録した酒井仁選手が獲得。

 ランチブレイクの間に路面は一旦乾いたのだが、再び雨が降り始めてコースは完全なウェットコンディションに。その雨は間もなく止み、第6戦決勝はコース全面がしっとり濡れた状態でスタートの時を迎えた。スターティングリッド上のマシンは大半がウェットタイヤを装着しているのだが、数台がスリックタイヤをチョイス。この選択がレースの行方を決定的に左右した。

 第5戦のベストタイム順で決まった第6戦のスターティンググリッドは、フロントローに酒井仁選手と酒井涼選手が、2列目に中井選手と鈴木悠太選手が、3列目に土橋選手と菊池選手が並んでいる。22周のレースは、酒井涼選手のトップ浮上で戦いの幕を開けた。グリッド上位陣の中で唯一スリックをチョイスした土橋選手は、8番手まで順位を下げている。

 2周目、2番手を行く酒井仁選手が最終コーナー立ち上がりで突然勢いを失い、1コーナー脇のエスケープゾーンにマシンを止めた。レースの潮目が変わったのはこの辺りだ。急速に乾いていくコースの上で、土橋選手がいよいよ追い上げを開始。前を行くウェットタイヤ勢とは別次元のスピードで、3周目には4番手に、4周目には2番手に上がってきた。そして6周目、土橋選手は酒井涼選手を難なくかわしてトップに立つと、1周半で約3.5秒ものリードを築いてみせた。

 スリック装着車の勢いは土橋選手に留まらず、13番手スタートの岡澤圭吾選手も9周で2番手に躍進。さらに中団以降でも、28番手スタートの春日龍之介選手と19番手スタートの金子修選手が猛挽回を続けている。そんなスリック勢をひやりとさせたのが、10周目にみたび落ち始めた雨粒だ。だが、それは小雨以上に強まることなく3周ほどで止み、スリックギャンブルに勝ったドライバーたちの快進撃を阻むものはなくなった。

 そして迎えたゴールの瞬間、土橋選手は右手で拳を握りしめ、何度もガッツポーズを繰り返した。得意とする鈴鹿南コースでは、スーパーポールトップを2度獲って速さは実証済み。その速さをようやくレースの結果につなげた土橋選手が、ついに初優勝を達成した。岡澤選手はファステストラップを記録して、土橋選手から2秒ほど遅れてフィニッシュ、自己最上位の2位を獲得した。それに続いて春日選手と金子選手がゴールし、上位4位をスリック勢が占拠。ルーキーの春日選手はこれが初表彰台だ。ウェットタイヤ装着組では、5位の鈴木選手が最上位だった。

 第4戦終了時点のポイントランキング上位陣が軒並み調子を崩したことで、ポイントレースは混迷。酒井涼選手が87点で暫定トップに立ち、酒井仁選手が83点で2番手に。76点の皆木駿輔選手と68点の吉田馨選手がそれに続いている。

OK部門 第6戦優勝は土橋選手(ラムレーシング)。
「まさかスリックで走り切れるとは思ってなくて……」と途中で雨が降る状況となった第6戦。土橋選手は「ヤバいと思いました」と振り返る。だがスリックにしたメカニックの選択が功を奏し、「なんとかゴールできてホッとしています。今日のレースは自信になりました」と締めた。
2位は岡澤圭吾選手(Vitec Racing)、3位は春日龍之介選手(YAMAHA MOTOR Formula Blue)。
OK部門 第6戦の表彰式。左から2位の岡澤選手、1位の土橋選手とラムレーシングのチーム代表、3位の春日選手。
第6戦決勝でファステストラップをマークした選手に贈られるチャンネル700賞は、48秒795を記録した岡澤選手が獲得。

ジュニアカート選手権ジュニア部門 第5戦/第6戦(ラウンドシリーズ1)

 同時開催のジュニアカート選手権ラウンドシリーズ1の第5戦/第6戦。今季最多の16台が参加したジュニア部門は、2レースともドライコンディションで行われた。その第5戦では、澤田龍征選手が14周のフルラップに及ぶバトルを制して今季初優勝を飾った。残り3周まで先頭を走った坂野太絃選手が澤田選手と0.4秒弱の差で2位に入賞。それに続いてゴールした関口瞬選手はバイザー違反により失格となり、中西凜音選手が3位となった。

ジュニア部門 第5戦優勝は澤田龍征選手(PONOS HIROTEX RACING)。
「練習でも調子が良かったので、1位を獲れると思っていました」と好調ぶりを発揮した澤田選手。坂野太絃選手とのバトルについて「焦らず走ったことで勝てました」と語る。「次はダントツで優勝します」と抱負を述べた。
2位は坂野太絃選手(KP BUZZ)、3位は中西凛音選手(Energy Japan)。
ジュニア部門 第5戦の表彰式。左から2位の坂野選手、1位のPONOS HIROTEX RACINGのチーム代表と澤田選手、3位の中西選手。

 第6戦ではポールスタートの横山輝翔選手が、元田心絆選手の執拗な追走から逃げ切って初優勝。ラウンドシリーズ1初参戦の元田選手が2位に。この先頭集団からやや遅れて、坂野選手が3位でフィニッシュ。澤田選手は坂野選手と約0.2秒差の4位でこのレースを終え、暫定ポイントランキングの首位に立っている。

ジュニア部門 第6戦優勝は横山輝翔選手(PONOS HIROTEX RACING)。
「めっちゃ最高です」と喜びをあらわにした横山選手。「ずっと前を走っているとレースが長く感じましたが、楽しかったです。最初の方はプレッシャーがあったけれど、一回ミスってからはラクになりました」
2位は元田心絆選手(AP SPEED with SOVLA)、3位は坂野選手(KP BUZZ)。
ジュニア部門 第6戦の表彰式。左から2位の元田選手、1位の横山選手とPONOS HIROTEX RACINGのチーム代表、3位の坂野選手。

ジュニアカート選手権ジュニアカデット部門 第5戦/第6戦(ラウンドシリーズ1)

 ジュニアカデット部門には23台が参加した。ドライコンディションで行われた第5戦では、7番グリッドからスタートした新橋武選手が飯田一仁選手と島津舞央選手の先頭争いに割って入り、トップを奪って初優勝。ポールの飯田選手が2位に、島津選手が3位に入賞した。

ジュニアカデット部門 第5戦優勝は新橋武選手(Sigma Racing)。
新橋選手は「ここで優勝することが夢だったんです」とジュニア選手権の舞台で念願の初勝利を挙げた。「トップに立ったときにイケると思いました」と語り、イタリアでの経験も役に立ったとコメントを残した。
2位は飯田一仁選手(TAKAGI PLANNING)、3位は島津舞央選手(ERS with SACCESS)。
ジュニアカデット部門 第5戦の表彰式。左から2位の飯田選手、1位のSigma Racingのチーム代表と新橋選手、3位の島津選手。

 ウェットレースに変わった第6戦では、2番グリッドからスタートした新橋選手が、先頭を行く飯田選手のスピンでトップに立つと、以降のラップを独走して2連勝を果たした。一方、2位争いは残り2周で2台の戦いから4台一丸の激闘へと発展。今村昴星選手が熱戦を制して2位を獲得し、飯田選手が3位となった。ポイントレースでは、ここまで2勝の藤原迪永選手が125点で首位をキープしている。

ジュニアカデット部門 第6戦優勝は新橋選手(Sigma Racing)。
「ミスしないように気をつけて走りました」と、ドライの第5戦の経験を活かした新橋選手。今回の鈴鹿で2連勝を遂げ、「今夜は夢の中でも鈴鹿で1位を獲ると思います」と興奮さめやらぬ様子だった。
2位は今村昴星選手(HIGUCHI RACING TEAM)、3位は飯田選手(TAKAGI PLANNING)。
ジュニアカデット部門 第6戦の表彰式。左から2位の今村昴星選手、1位のSigma Racingのチーム代表と新橋選手、3位の飯田選手。

Rok CUP JAPAN RokSHIFTER 第5戦/第6戦

 全日本/ジュニアカート選手権との併催で行われたGPRのShifter第5戦/第6戦には、松田次生選手がスポット参戦して注目を浴びた。プロドライバー、元全日本ドライバー、シフターカートの強豪と、充実した顔ぶれの12台による戦いは、両レースともドライコンディションだった。

 第5戦では、元全日本OKドライバーで今季はスーパー耐久に参戦中の大木一輝選手がポールを獲得。Shifter初参戦の大木選手は不慣れなスタンディングスタートも無難に決めると、トップを守り切ったまま14周を走り切り、堂々のデビューウィンを遂げた。スタートでは東拓志選手が6番グリッドから2番手にジャンプアップを果たしたが、それを逆転した富田星羅選手2位に入賞。松下信治選手が富田選手のテールを捕えたまま3位でフィニッシュした。

Shifter 第5戦優勝は大木一輝選手(MOMOX KART RACING)。
カート現役時代に鈴鹿で勝ったことがないという大木選手。「鈴鹿で優勝しないままカートを卒業したことにはすごく心残りがあったんだけれど、機会をいただいて、心残りを晴らすことができて、すごくうれしいです」
2位は富田星羅選手(KP BUZZ)、3位は松下信治選手(Tony Kart R.T.J.)。
Shifter 第5戦の表彰式。左から2位の富田選手、1位のMOMOX KART RACINGのチーム代表と大木選手、3位の松下選手。

 第6戦では、2番グリッドの松下選手がポールの富田選手を序盤で逆転すると、じわじわとリードを広げて今季3勝目を飾った。富田選手は鈴木悠太選手のチャージを退けて2位でフィニッシュ、鈴木選手が1ポジションアップの3位となった。松田選手は第5戦を7位で完走すると、3番グリッドからスタートした第6戦では、全体で3番手のベストラップをマークしながら果敢にバトルを繰り広げ、5位でチェッカーを受けた。

Shifter 第6戦優勝は松下選手(Tony Kart R.T.J.)。
「次生さんにだけは絶対に負けちゃいけないと思って走りました」とスポット参戦の松田選手を意識していた松下選手。「次生さんも言っていたとおり、本当に疲れました。いいトレーニングになりました」とコメント。
2位は富田選手(KP BUZZ)、3位は鈴木悠太選手(bliory racing)。
Shifter 第6戦の表彰式。左から2位の富田選手、1位の松下選手とTony Kart R.T.J.のチーム代表、3位の鈴木選手。

FIA MOTORSPORT GAMES 日本代表選考レース

 大会の締めくくりに行われた表彰式では、10月23~27日にスペイン・バレンシアで開催される第3回FIA MOTORSPORT GAMESのふたつのカート部門に、JAFの推薦で派遣されるふたりのドライバー(OK部門から1名、ジュニア部門から1名)が発表された。この選考には、JAFからの指名でGlobal Promotion of Race(GPR)が担い、今回の各部門2レースの合計ポイントによって派遣ドライバーが決まる。

 日本代表としてバレンシアに派遣されるドライバーに選出されたのは、土橋皇太選手と澤田龍征選手。土橋選手はFIA Motorsport Gamesのカートスプリントシニアに、澤田選手は同カートスプリントジュニアに出場する。この参加にあたり、両ドライバーにはエントリーフィー、マテリアルパッケージ、航空券・宿泊費などのサポートが与えられることになっている。

FIA MOTORSPORT GAMES 日本代表として、カートスプリントジュニアは澤田選手、カートスプリントシニアは土橋選手が選ばれた。
「日本代表だと思って走ると緊張しちゃうんで、いつもどおりリラックスしてレースができたらいいなと思います。こうして選考していただいたので、レースに出るからにはもちろん優勝を狙って頑張ります」(土橋選手)
「優勝して選ばれたかったですね。あまりペースがなくて(第6戦)4位というのはうれしい結果ではないけれど、スペインに行けることになったのは良かったです。絶対に優勝して日本に帰ってきます」(澤田選手)

フォト/JAPANKART、今村壮希、遠藤樹弥、長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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