WRC初開催の第8戦ラトビア、勝田貴元選手はハイスピードグラベルで総合6位

レポート ラリー

2024年7月26日

2024年FIA世界ラリー選手権(WRC)に挑む、日本人ドライバーの勝田貴元選手はラトビア西部の港湾都市、リエパーヤを拠点に7月18~21日にWRC初開催となった第8戦「ラリー・ラトビア」に参戦。マニュファクチャラー登録の対象外ながら、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のドライバーとして、コ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手とGR YARIS Rally1 HYBRIDを駆った。

2024年FIA世界ラリー選手権 第8戦
ラリー・ラトビア

開催日:2024年7月18~21日
開催地:ラトビア・リエパーヤ周辺

7月18日・シェイクダウン、デイ1 / 7月19日・デイ2

 北部をエストニア、南部をリトアニアと接するラトビアでは、これまでFIAヨーロッパラリー選手権(ERC)の一戦として「ラリー・リエパーヤ」が開催されてきたが、「ラリー・エストニア」と入れ替わるかたちで初めてWRCの一戦に昇格した。

 ステージは高速かつ流れるようなコーナーが多く、2015シーズンにラリー・リエパーヤの参戦経験を持つ勝田貴元選手は、「ステージのタイプとしてはフィンランドやポーランドに似ていて、ハイスピードになっています」と語る。それゆえに「前回のポーランドは入りのセッティングで大きく外して、それが最後まで尾を引いていたので、同じミスを繰り返さないようにポーランド終了後にミーティングを重ねていました」と対策を練っていたようだ。

 具体的には、「事前のテストはなかったんですけど、ポーランドのデータ解析を行なうことで、ドライビングとクルマのセッティングを合わせこむことができました。それにカッレ・ロバンペラ選手が事前のテストを行なっていたので、そのデータを共有してアジャストしました」とのことだ。さらに車両のアップデートも行われたようで、「トヨタ勢としてはエキゾースト周りのアップデートを行いまして、パワー自体も上がっていたと思います」と、勝田貴元選手は語った。

 ラトビアはリピートステージの設定が少なく、各ステージを1回のみ走行することが主体の構成となっていたことから、勝田貴元選手は「レッキがいつもより多くて、ストレスフルでした。チェックにも時間がかかって、ラリーウィーク中はあまり睡眠を取れませんでした」と苦労した様子だったが、その一方で「得意意識のあるハイスピードのステージだったのでナーバスな感覚はなかったし、シェイクダウンからフィーリングも良かったので自信を持って入ることができました」とのことで、準備を整えてラリーをスタートできたようだ。

 事実、勝田貴元選手はシェイクダウンから好調で、TGR-WRT勢としては最上位となる3番手タイムをマークする、順調な仕上がりを見せていた。

 18日、デイ1の夜に行われたSS1こそ6番手にとどまったが、翌日デイ2のオープニングステージとなるSS2で勝田貴元選手はトップと1.7秒差の3番手タイムをマークした。「ハイスピードラリーは差がつかないので、最初からプッシュしていました。それでも、セッティングを試しながら走っていたんですけど、27kmのロングステージでセッティングを外したことが痛かったです」と語るように、勝田貴元選手はSS3でトップから8.9秒差の5番手タイムにとどまった。しかし、その後はSS5で僅差の2番手タイム、SS8で再び2番手タイムをマークするなど、素晴らしい走りを披露した。

 デイ2では、「ポーランド以上にクルマのフィーリングが良かったのでストレスなく走ることができました。最後のステージでポジションを上げることができたし、表彰台の見えるところで終えることができたので、いい位置にいるなと思っていました」と手応えを掴んだ勝田貴元選手は、トップから約33秒差の総合4番手で終えた。

FIA世界ラリー選手権では初開催となった2024年WRC第8戦「ラリー・ラトビア」。初挑戦のクルーもいる中、2015シーズンにFIAヨーロッパラリー選手権で開催されたこのラリーへの参戦経験を持つ勝田貴元選手(TOYOTA GAZOO RACING World Rally Team)は、序盤の2日で総合4番手と、コ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手とともに表彰台登壇を狙える好位置につけた。

7月20日・デイ3 / 7月21日・デイ4

 翌20日のデイ3でも勝田貴元選手は好調で「5番手からオィット・タナック選手がきていたので、プッシュしていました」と語るようにSS10で4番手タイム、SS11で2番手タイムをマーク。SS11でベストタイムを奪ったHYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM(ヒョンデ)のタナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組に抜かれて総合5番手に後退したものの、勝田貴元選手は安定した走りを見せていた。

 しかし、次のSS12で勝田貴元選手は痛恨のオーバーシュート。「その際に木だと思うんですけど、フロントバンパーをぶつけました。そのぶつけた場所にパワーステアリングの冷却用ラジエターがあって、パワステがない状態で走ることになり、50秒ぐらい遅れました」と語るようにこのSSを28番手タイムで終え、総合7番手まで後退してしまったのである。

「オーバーシュートだけであれば5秒ぐらいのロスで済んだんですけど運が悪く、パワステを失うことになったので大きなタイムロスになりました。残念でしたが僕のミスだったので、なんとか取り戻したいという思いで走りました」と、ミッドデイサービスで車両を修復した勝田貴元選手はその後、コンスタントな走りで駆け抜けた。

 SS15で3番手タイム、デイ3最後のSS16で僅差の2番手タイムをマークするなど好タイムを連発したものの、失った順位を取り戻すことはできずに、デイ3は総合7番手のまま終えることになった。

 このように、オーバーシュートで表彰台争いから脱落することになった勝田貴元選手だが、気持ちを切り替えて21日のデイ4にチャレンジ。「スーパーサンデーも残っていましたが、出走順やタイヤマネジメントを考えると難しい部分もあったので、パワーステージに焦点を絞っていました」と語るように、パワーステージに設定された最終SS20をターゲットに戦っていた。

 しかし、勝負を賭けたSS20では、トップから0.8秒差の4番手タイムと不発ながらも2ポイントを獲得。なんとかひとつ順位を上げ、6位で4ポイントを獲った勝田貴元選手はスーパーサンデーでも1ポイントを重ねてラトビアを終えることになった。

「クルマのフィーリングは良かったんですけど、自分のミスでポジションを落としてしまったので悔しい気持ちはありますが、苦戦したポーランドからいいステップを踏めていると思います」と、勝田貴元選手はラトビアを振り返った。さらに「ベストタイムこそ奪えませんでしたが、僅差の2番手タイム、3番手タイムを出せました。クルマとしてのパフォーマンスは高かったし、自分も戦えるという感触を掴むことができました」とのことで、勝田貴元選手はリザルト以上に多くのことを吸収したようだ。

 次戦、8月1~4日に開催される第9戦「ラリー・フィンランド」に向けては、「ラトビアとフィンランドでは路面が違うのでアジャストは必要ですが、しっかり合わせ込んでいきたいと思います。フィンランドはチームの地元ラウンドですのでトヨタ勢としては上位を占められるようにしたいし、自分自身も得意意識のあるイベントなので表彰台争い、トップ争いに絡んでいけるように序盤からプッシュしていきたいです」と意気込む勝田貴元選手の、フィンランドでの活躍に期待したい。

 なお、ラトビアを制したのは勝田貴元選手のチームメイト、ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組で、スポット参戦ながら二連勝で今季最多の3勝目を獲得。さらに同チームのセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組が2位に続いたことで、TGR-WRTが2戦連続、今季4度目の1-2フィニッシュを達成した。

 TGR-WRT勢の王座争いでは、ラトビアで総合5位に入ったエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組がドライバーとコ・ドライバーランキングの3番手に下がったものの、トップに立つヒョンデのティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ組との差を、13ポイント差に詰めた。マニュファクチャラーランキング2番手のTGR-WRTはラトビアでの1-2フィニッシュで大量にポイントを獲得。トップのヒョンデに1ポイント差まで肉薄している。

表彰台圏内を狙ったデイ3だったが、勝田貴元選手(TGR-WRT)はSS12でミスからパワーステアリングにトラブルが発生し、表彰台争いから脱落。デイ4では狙っていたパワーステージの最終SS12で4番手タイムに終わるも、総合6位でフィニッシュ。6ポイントを積み上げ、ドライバーランキング7番手につけている。
今季はTGR-WRTからスポット参戦を続けている2クルーが1-2フィニッシュを果たし、多くのポイントをチームにもたらした。左から総合2位、セバスチャン・オジエ選手のコ・ドライバー、ヴァンサン・ランデ選手と優勝したカッレ・ロバンペラ選手のコ・ドライバーのヨンネ・ハルットゥネン選手、そしてロバンペラ選手とオジエ選手。右端はTGR-WRTのヤリ-マティ・ラトバラ代表だ。

フォト/TOYOTA GAZOO Racing レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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