瑶子女王杯を賜る記念すべき第1回大会は、坪井翔選手が4年ぶりの勝利を飾る

レポート レース

2024年7月25日

全日本スーパーフォーミュラ選手権 第4戦が静岡県小山町の富士スピードウェイで開催。今大会は三笠宮家の瑶子女王殿下の賜杯を頂戴する「第1回瑶子女王杯」として開催され、レースウィークには瑶子女王殿下もお成りになった。台覧試合となった今大会を制したのは坪井翔選手(VANTELIN TEAM TOM'S)。予選4位からスタートすると豪快なオーバーテイクを次々と披露し、自身4年ぶりの勝利を飾った。

2024年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 第4戦
開催日:2024年7月19~21日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ株式会社、FISCO-C

 今大会は「第1回瑶子女王杯」として開催されることに加え、「スーパーフォーミュラ夏祭り2024」と題してサーキット内でさまざまなイベントを実施。夏休みに入ったばかりの時期ということで子供たちに向けた露店などもあり、観客動員数は20日と21日の2日間で49,200名を数えた。

 スタンドにもコースサイドにも多くのモータースポーツファンが並ぶ中、まずは公式予選に向けたフリー走行が開始。ここでは第2戦オートポリスで優勝を飾り、この富士大会前に行われた公式テストでも好調だった牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がトップタイムを奪取した。2番手には大湯都史樹選手(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)、3番手には福住仁嶺選手(Kids com Team KCMG)、4番手に坪井選手と、前戦SUGO大会からテストにかけて速さを見せていた面々が並ぶ。

 そんな中、ここまで2勝を挙げてランキングトップにつけている野尻智紀選手(TEAM MUGEN)は14番手。やや精彩を欠いた走り出しとなった。また、今大会はTGM Grand Prixの55号車がドライバー交代。昨年もこのチームから富士でのレースに参戦した大津弘樹選手が再びステアリングを握ることになり、その走り出しとなるフリー走行では19番手タイムを記録した。

スタートセレモニーでの瑶子女王殿下。決勝日にお成りになった。
レースの合間に実施されたピットウォークや、大会会場内の露店に多くの観客が詰めかけた。
イベントのステージでは、鈴木亜久里氏やピエール北川氏、JAF四宮慶太郎副会長が登壇して、「ドライバー・オブ・ザ・イヤー 2024」トークショーが近藤みやび氏の進行で行われ、“推し”ドライバーへの投票が呼びかけられた。

予選

 迎えた公式予選、まずはQ1のA組予選で野尻選手のチームメイトである岩佐歩夢選手(TEAM MUGEN)がトップタイムでQ2進出を決める。これに牧野選手、山本尚貴選手(PONOS NAKAJIMA RACING)、阪口晴南選手(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)、笹原右京選手(VANTELIN TEAM TOM'S)、小高一斗選手(KONDO RACING)と続いた。B組では、福住選手、大湯選手がトップと2番手に並び、公式テスト総合トップタイムを奪った山下健太選手(KONDO RACING)が3番手に。そして、坪井選手が4番手、野尻選手、太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)までがQ1を突破した。

 この12名が進出したQ2は、いつも以上に僅差の争いとなった。まずは坪井選手が1分22秒573でトップに立ち、これがベンチマークとなる。続く笹原は1分23秒台にとどまり、そのあとでコントロールラインをくぐった岩佐選手が1分22秒560と、坪井選手を1000分の13秒上回って逆転した。そして、福住選手が1分22秒543で岩佐選手のタイムを1000分の17秒削り、タイミングモニターの最上部に躍り出る。

 その後、大湯選手が1分22秒571で坪井選手のタイムは更新するも3番手。これで福住選手の自身2度目、3年ぶりとなるポールポジションが確定。今季から福住選手が加入したKids com Team KCMGにとっても、歓喜の初ポールポジションとなった。岩佐選手は悔しい2番手、3番手に大湯選手が続き、4番手に坪井選手、5番手に太田選手、6番手に牧野選手という予選トップ6になった。

ポールポジションを獲得したのは福住仁嶺選手(Kids com Team KCMG)。

決勝

 一夜明けた決勝日。ダミーグリッドには21台全車がついたものの、スタート直前に5番グリッドの太田選手のマシンがスタッフの手でガレージに戻されてしまう。オルタネーターのトラブルが出ていたようで、上位グリッドからのスタートで表彰台争いも期待されていた太田選手は決勝を走ることなくリタイアとなってしまった。

 20台のマシンがフォーメーションラップに向かい、正規のグリッドについたところで41周の決勝レースがスタート。ポールシッターの福住選手は順当にトップでTGRコーナーを通過したが、フロントローに並んだ岩佐選手は大きく出遅れ、代わって大湯選手が2番手に。7番グリッドながら太田選手の離脱で目の前が開けていた野尻選手と、6番グリッドの牧野選手がそれぞれ好スタートを切って3番手、4番手にポジションアップした。

 坪井選手はいったん5番手にドロップしたものの、まずは4周目のTGRコーナーで野尻選手を捕らえて予選順位までポジションを戻すと、8周目には牧野選手をかわして3番手に浮上した。坪井選手は2番手の大湯選手にも迫り、13周目のTGRコーナーやコカ・コーラコーナーでは並びかけるシーンもあったが、大湯選手も必死のブロックでポジションを譲らず。手に汗握る緊迫したバトルはほぼ1周続いたが、13周目を終えるところで大湯選手が先にピットロードへ向かい、これで坪井選手は見た目上2番手に上がることになった。

 スタートからここまでトップを守り続けていた福住選手は、14周目を終えるところでピットイン。ところが、左フロントタイヤの交換に時間がかかってしまい、ピット作業時間で10秒以上のロスを喫してしまう。これにより福住選手は大きく順位を落としてコースに復帰。歓喜の予選日から一転、優勝争いからは外れることとなった。

 福住選手がピットに向かったことで、見た目上のトップについたのは坪井選手。タイヤ交換を済ませたグループの中では大湯選手がトップに立っており、この2台のギャップに注目が集まった。ピットロード通過時間とタイヤ交換の作業時間を合わせて、坪井選手は35~40秒ほどのマージンを持っておきたいところ。ただタイヤ交換後の大湯選手のペースは良く、17周目の時点では37秒あった両者の差は、19周目には35秒まで縮まっていた。

 坪井選手も懸命の走りでペースを落とさず、ここからは一進一退の状況となるが、24周目には34.5秒差に接近。33.3秒まで縮まった28周目、ようやく坪井選手がピットロードへと向かう。6.6秒の作業時間でタイヤ交換を済ませたが、大湯選手、野尻選手、さらに牧野選手と3台の後方でコース復帰となった。大湯選手と野尻選手の差は3.6秒ほどあり、大湯選手はこれで事実上のトップへ。坪井選手は表彰台圏外へと下がってしまった。

 しかし、フレッシュタイヤを装着した坪井選手の逆転劇がここからスタートする。29周目から第2スティントを開始した坪井選手は、タイヤが温まってきた30周目の13コーナーで牧野選手をオーバーテイク。さらに野尻選手に一気に迫ると、31周目に入ったホームストレートで野尻選手をかわし、これで実質の2番手に躍り出る。この時点で大湯選手との差は3.8秒ほどあったが、32周目には2.1秒、33周目に入るところでは1.8秒に縮めていった。

 そして、34周目のホームストレートで大湯選手の横に並びかけると、サイド・バイ・サイドでTGRコーナーへ。ここは大湯選手がブロックラインを守ってポジションを死守したが、坪井選手は攻め手を緩めず2コーナーへと入っていく。クロスラインでイン側から2コーナーを抜けると、続くコカ・コーラコーナーの侵入でアウト側から一気に大湯選手を抜き去っていった。

 これで事実上のトップに立った坪井選手。最後までピットインを引っ張っていた岩佐選手が見た目上では首位に立っていたが、39周を終えたところでピットへ向かい、坪井選手が名実ともにトップへ浮上。タイヤのマージンを活かしてハイペースで残り周回を走破し、大湯選手との差を7秒以上に拡げてトップチェッカーを受けた。

 坪井選手は2020年の最終戦以来、実に4年ぶりとなる勝利。これで通算3勝目となり、ランキングも2番手に浮上した。2位は大湯選手、3位は野尻選手。レースウィークの走り出しこそ下位に沈んだ野尻選手だったが、予選で7番手につけると決勝で見事にリカバー。シリーズポイントを11ポイント加算し、ランキングトップを守っている。

優勝した前戦に続き表彰台の一角を獲得した野尻智紀選手(TEAM MUGEN)が3位。
一時はトップを走っていた大湯都史樹選手(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)は2位となった。
4年ぶりの優勝を果たした坪井翔選手(VANTELIN TEAM TOM'S)。
併催のKYOJO CUPで2連勝を飾った斎藤愛未夫人や舘信秀チーム監督とともに優勝を喜ぶ坪井選手。
スーパーフォーミュラ 第4戦の表彰式。左から2位の大湯選手、1位の坪井選手とVANTELIN TEAM TOM'S舘チーム監督、3位の野尻選手。
決勝レース終了後には、ホームストレートで「After Race GRID PARTY」が行われた。ここではドライバーによるトークショーやライブなどが実施され、訪れた観客がレースの余韻を楽しんでいた。
予選日には、実車を使用したレスキュー訓練がオフィシャルの方々により実施された。

フォト/石原康、遠藤樹弥、大野洋介、日本レースプロモーション、JAFスポーツ編集部 レポート/浅見理美、JAFスポーツ編集部

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