香港のCraft-Bamboo RacingメルセデスがS耐初優勝。トップチェッカーのDAISHIN GT-Rはペナルティで4位に

レポート レース JAFWIM

2024年8月2日

スーパー耐久シリーズの第3戦「スーパー耐久レース in オートポリス」は、7月26~28日に大分県日田市のオートポリスで真夏の5時間耐久レースとして開催され、7クラス全37台の車両が出走。ST-Xクラスでは、香港のCraft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3 (リー・ジェフリー/太田格之進/チェン・ディーン/リアン・ジャトン組)が初優勝を果たした。トップチェッカーを受けたDAISHIN GT-R GT3(今田信宏/藤波清斗/坂口夏月/渡会太一組)は、ピットスタート時の押し掛けのために1周減算のペナルティを受け4位となった。

ENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE 第3戦「スーパー耐久レース in オートポリス」
開催日:2024年7月26~28日
開催地:オートポリス(大分県日田市)
主催:APC、株式会社オートポリス

 全7戦中3戦目となる今回はST-3、ST-5クラスの設定がなく、ST-X、ST-Z、ST-TCR、ST-Q、ST-1、ST-2、ST-4の7つのクラスでの開催だ。オートポリスは阿蘇外輪山の中腹にあり、天候が不安定で特別スポーツ走行や専有走行が行われた25日と26日は午後に降雨に見舞われたが、その週末は雲があるものの真夏の太陽が容赦なくコースを照りつけた。

予選日、決勝日共にピットウォークが行われ、多くの観客が訪れていた。
レース前のホームストレート上では和太鼓の演奏が行われていた。

ST-Xクラス

 27日に行われた公式予選はA、Bドライバーのベストタイム合算で争われ、ST-X (全4台)のDAISHIN GT-R GT3がポールポジションを獲得。2020年に「ダイシンカラー」が復活して初のポールポジションとなった。フロントローにはBドライバー予選でトップタイムを獲得したCraft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3。TKRI松永建設AMG GT3(DAISUKE/元嶋佑弥/中山友貴組)、DENSO LEXUS RC F GT3(永井宏明/小高一斗/小山美姫/嵯峨宏紀組)が続く。

 決勝レースは28日11時3分にスタート。ポールから飛び出したDAISHIN GT-R GT3の藤波選手が2周目に1分50秒574というこのレースのファステストラップを叩き出し、後続を引き離して独走態勢をつくった。序盤にTKRI松永建設AMG GT3の元嶋選手が2番手に順位を上げ、フロントロースタートのCraft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3は他クラス車両との接触でドライブスルーのペナルティを受け4番手まで順位を落とす。

 スタートから1時間が経ったころ、1コーナー手前のホームストレートでST-Zクラスの2番手を争っていた埼玉 GB GR Supra GT4(山﨑学/吉田広樹/服部尚貴/野中誠太組)とNANIWA DENSO TEAM IMPUL Z(田中優暉/平峰一貴/大木一輝組)が接触し、NANIWA DENSO TEAM IMPUL Zは左側のガードレールに激しく接触し2回転して1コーナーのグラベルでストップ。ドライブしていた平峰選手にケガはなかったが、このアクシデントでセーフティカー(SC)が導入されることとなった。

 SC先導は21分続き、この間に多くのチームが最初のピット作業を済ませた。ST-Xクラスの車両も、2番手だったTKRI松永建設AMG GT3が中山選手へ、トップのDAISHIN GT-R GT3が今田選手へ、4番手のCraft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3がリー選手からチェン選手へ、3番手のDENSO LEXUS RC F GT3も小高選手から嵯峨選手へと最初のドライバー交代を済ませた。特にCraft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3は、ジェントルマン(A)ドライバーのリー選手がスタートを担当し、Aドライバーの最低走行時間の1時間15分をクリアできたことが大きい。

 38周完了でレースはリスタート。51周目のさよりんブリッジ手前で、TKRI松永建設AMG GT3の中山選手がDAISHIN GT-R GT3のジェントルマンドライバーである今田選手を抜きトップに立つ。レースの折り返し点近くなった2時間20分を経過すると、2回目のピットインの時間帯を迎えることになった。まず2番手のDAISHIN GT-R GT3が坂口選手、4番手のDENSO LEXUS RC F GT3が小山選手、3番手のCraft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3がリアン選手、トップのTKRI松永建設AMG GT3が元嶋選手へ交代。TKRI松永建設AMG GT3とDAISHIN GT-R GT3のトップ2台の差は15秒程度を保ったままで、最も暑い時間帯での走行を続けていく。

 3回目となる最後のドライバー交代は、残り1時間半となったころから始まった。105周で3番手のCraft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3が太田選手、108周で4番手のDENSO LEXUS RC F GT3が小高選手、109周で2番手のDAISHIN GT-R GT3が藤波選手へと交代してエースドライバー対決に。そして111周でトップのTKRI松永建設AMG GT3はジェントルマンドライバーのDAISUKE選手に交代した。

 しかし、この最後のピットワークでDAISHIN GT-R GT3のエンジンがかからず、チームはペナルティ覚悟で押し掛けを行い藤浪選手はコースへ戻ることができた。そしてトップTKRI松永建設AMG GT3との差を30秒ほどに縮めた矢先に、DAISHIN GT-R GT3に対し「1周減算」という大きなペナルティが宣告された。

 DAISHIN GT-R GT3の藤波選手は、TKRI松永建設AMG GT3のDAISUKE選手を追い、129周目の1コーナーで逆転。その後も差を広げ、Craft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3に54秒の差を付けたが、ライバル勢をラップ遅れにできるような時間は残っていなかった。

 3番手のCraft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3をドライブする太田選手は終盤の135周目1コーナーでTKRI松永建設AMG GT3を捕らえ2番手、これで実質的なトップに躍り出た。レースは5時間が経過し150周でチェッカー。Craft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3がS耐参戦2戦目でうれしい初優勝を果たした。2位はTKRI松永建設AMG GT3、3位はDENSO LEXUS RC F GT3。DAISHIN GT-R GT3は1周減算で、3位とは約3.5秒差の4位となり表彰台にわずかに届かなかった。

ST-Xクラス優勝は#33 Craft-Bamboo RacingのCraft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3(リー・ジェフリー/太田格之進/チェン・ディーン/リアン・ジャトン組)。
2位は#23 TKRIのTKRI松永建設AMG GT3、3位は#31 aprのDENSO LEXUS RC F GT3。
ST-Xクラス表彰の各選手。

ST-Zクラス

 ST-Zクラス(全11台)は、26号車 Raffinee日産メカニックチャレンジZ NISMO GT4(大塚隆一郎/富田竜一郎/篠原拓朗/荒聖治組)がポールポジションを獲得し、昨年のチャンピオンである埼玉 GB GR Supra GT4、25号車 Raffinee日産メカニックチャレンジZ NISMO GT4(植松忠雄/松田次生/佐藤公哉/名取鉄平組)、NANIWA DENSO TEAM IMPUL Z、シェイドレーシング GR SUPRA GT4 EVO(HIRO HAYASHI/平中克幸/清水英志郎組)が続いた。

 26号車 raffinee日産メカニックチャレンジZ NISMO GT4の富田選手が序盤からレースをリードし、スタートから1時間が経過したころに埼玉 GB GR Supra GT4とNANIWA DENSO TEAM IMPUL Zのアクシデントが発生したが、埼玉 GB GR Supra GT4には影響はなく2番手をキープ。3番手はシェイドレーシング GR SUPRA GT4 EVOとなった。

 レースは最後のピット作業でタイヤ無交換作戦を採った埼玉 GB GR Supra GT4が、26号車 raffinee日産メカニックチャレンジZ NISMO GT4を逆転、開幕戦以来の2勝目を挙げた。そして地元Team Noahのマッハ車検GR Supra GT4 EVO(塚田利郎/金丸ユウ/森田真心/冨田自然組)が予選8番手から3位でゴールし、このクラス初の表彰台を獲得した。

ST-Zクラス優勝は#52 埼玉Green Braveの埼玉 GB GR Supra GT4(山﨑学/吉田広樹/服部尚貴/野中誠太組)。
2位は#26 TEAM ZEROONEのraffinee日産メカニックチャレンジZ NISMO GT4、3位は#5 Team Noahのマッハ車検 GR Supra GT4 EVO。
ST-Zクラス表彰の各選手。

ST-TCRクラス

 今季初めて成立したST-TCRクラス(全3台)は、97号車 Racer ホンダカーズ桶川 CIVIC(遠藤光博/中野信治/辻本始温/桝本隆介組)、98号車 Racer ホンダカーズ桶川 CIVIC (KIZUNA/リ・ジョンウ/山本聖渚組)のシビックが1-2フィニッシュを遂げた。

ST-TCRクラス優勝は#97 M&K RacingのRacer ホンダカーズ桶川 CIVIC(遠藤光博/中野信治/辻本始温/桝本隆介組)。
ST-TCRクラスの表彰式。左から2位の#98 M&K Racing、1位の#97 M&K Racing。

ST-1クラス

 ST-1クラス(全1台)はシンティアム アップル KTM(井田太陽/加藤寛規/高橋一穂/吉本大樹組)が143周をトラブルなく完走し優勝した。

ST-1クラス優勝は#2 Ksフロンティア KTMカーズのシンティアム アップル KTM(井田太陽/加藤寛規/高橋一穂/吉本大樹組)。

ST-2クラス

 三菱・ランサー2台、トヨタ・GRヤリス2台、ホンダ・シビック3台によるST-2クラス(全7台)は、予選2番手のKTMS GR YARIS(一條拳吾/奥本隼士/小林利徠斗/中村仁組)が、第2戦富士24時間を制したENDLESS GR ヤリス(花里祐弥/石坂瑞基/伊東黎明/岡田整組)の追撃を許さず開幕戦以来の2勝目を挙げた。

ST-2クラス優勝は#225 KTMSのKTMS GR YARIS(一條拳吾/奥本隼士/小林利徠斗/中村仁組)。
2位は#13 ENDLESS SPORTSのENDLESS GRヤリス、3位は#72 日本自動車大学校のOHLINS CIVIC NATS。
ST-2クラス表彰の各選手。

ST-4クラス

 ST-4クラス(全6台)は、ディフェンディングチャンピオンのエアバスターWINMAX GR86 EXEDY(石井宏尚/冨林勇佑/尾崎俊介組)が今季初優勝を遂げた。ENDLESS GR86(坂裕之/菅波冬悟/小河諒組)が2位。ポイントリーダーのシェイドレーシング GR86(影山正彦/山田真之亮/国本雄資/鶴田哲平組)は3位フィニッシュでランキングトップを守った。

ST-4クラス優勝は#41 TRACY SPORTS with DELTAのエアバスターWINMAX GR86 EXEDY(石井宏尚/冨林勇佑/尾崎俊介組)。
2位は#3 ENDLESS SPORTSのENDLESS GR86、3位は#884 SHADE RACINGのシェイドレーシング GR86。
ST-4クラス表彰の各選手。

ST-Qクラス

 3メーカーの開発車両によるST-Qクラス(全5台)は、GR Supra Racing Concept(加藤恵三/松井孝允/河野駿佑/山下健太組)の1台のみが完走。レースデビューで注目されたSUBARU HighPerformanceX Future Concept(伊藤和広/山内英輝/井口卓人/花沢雅史組)を含む他の4台は、トラブルが起きて残念ながら完走扱いとはならなかった。

ST-Qクラス完走は#92 GR team SPIRITのGR Supra Racing Concept(加藤恵三/松井孝允/河野駿佑/山下健太組)。
ST-Qクラスのセレモニー。左から#28 ORC ROOKIE Racing、#55 MAZDA SPIRIT RACING、#32 ORC ROOKIE Racing、#61 Team SDA Engineering、# 92 GR team SPIRIT。

フォト/遠藤樹弥、吉見幸夫 レポート/皆越和也、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ