デビュー4戦目でホンダ・シビックが初優勝! ウィナーはARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8

レポート レース

2024年8月8日

前戦から約2か月のインターバルを挟んだ8月上旬、富士スピードウェイで初の350kmレースとして開催されたスーパーGTシリーズ第4戦。GT500クラスではARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8(野尻智紀/松下信治組)がホンダ・シビック初の優勝を遂げた。またLEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗/黒澤治樹組)がチーム4年ぶりのGT300クラス優勝を飾った。

2024 SUPER GT Round4 FUJI GT 350km RACE
開催日:2024年8月2~4日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:株式会社GTアソシエイション、富士スピードウェイ株式会社、FISCO-C

 今回は通常の300kmより50km長い350kmレースということで、持ち込めるドライ用タイヤは5セット。またドライバーは3人の登録が可能となっているが、決勝ではドライバー交代を伴うピット作業回数は1回で済む気配だ。夏休みということもあり、2日間で5万2,200人のファンが富士に詰めかけた。

 9時から行われた公式練習でトップタイムをマークしたのは、GT500クラスで唯一ダンロップタイヤを履くModulo CIVIC TYPE R-GT(伊沢拓也/大草りき組)で、STANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐組)、MARELLI IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組)、Astemo CIVIC TYPE R-GT(塚越広大/太田格之進組)、ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8と、トップ5に4台のシビックがつけている。

デビューから4戦目となるGT500クラスのCIVIC TYPE R-GT。富士では公式練習から各チーム好調ぶりを発揮しており、初優勝に期待がかかった。
富士スピードウェイ施設内でテント泊&観戦するなど、夏休みらしい光景が見られた今大会。迫力あるGTカーが間近で見られるグリッドウォークも家族づれなどで大賑わいに。

予選

 14時30分、公式予選は気温33度、路面温度50度という猛暑の中スタートした。A/Bドライバーのタイム合算により、野尻選手の逆転タイムでARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8がポールポジションを獲得。フロントローの2番グリッドにはSTANLEY CIVIC TYPE R-GT、3番グリッドにModulo CIVIC TYPE R-GTと、3台のシビックがトップ3を占める。

 そして4番グリッドにはKeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹組)がつけた。ポイントリーダーであるau TOM'S GR Supra(坪井翔/山下健太組)は、サクセスウェイトと燃料流量リストリクターも効き14番手に沈んだ。

 GT300クラスは、予選前に行われたレースでのオイル漏れにより路面状況変化の影響が大きいということで、ウェット宣言時での予選方式とされた。このため、Q1のA/B各組の上位8台ずつのトップ16によるQ2 Gr.1、上位8台に残れなかった11台がQ2 Gr.2でグリッドを争うことになった。また今回、次の第5戦鈴鹿からGT300クラスの予選方式が変更される(Q1は全車走行、Q2は上位14台と下位13台で別走行のアタック)との発表があった。

 ポールを獲得したのはLEON PYRAMID AMGで、今回EVOマシンを投入したMETALIVE S Lamborghini GT3(松浦孝亮/坂口夏月組)、グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也組)、前回優勝のD'station Vantage GT3 EVO(藤井誠暢/チャーリー・ファグ組)、JLOC Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥組)、リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(佐々木大樹/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)と続き、ポイントリーダーのmuta Racing GR86 GT(堤優威/平良響組)はQ1を突破できず18番手となった。

GT500クラスはARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8(野尻智紀/松下信治組)、GT300クラスはLEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗/黒澤治樹組)がポールポジションを獲得。

決勝

GT500クラス

 4日の決勝日も猛暑となり、レースの始まる14時30分には気温35度、路面温度56度にまで達している。14時37分に77周の決勝レースがスタート。予選5番手のAstemo CIVIC TYPE R-GT、同12番手のNiterra MOTUL Z(高星明誠/三宅淳詞組)が出遅れ、順位を落とした。

 序盤に順位を上げたのはENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺組)の福住選手で、8番グリッドからスタートで6番手にポジションアップ、13周目にはMARELLI IMPUL Z、20周目にはKeePer CERUMO GR Supra、さらに26周目にはModulo CIVIC TYPE R-GTをかわし、3番手まで順位を上げている。

 25周の時点ではトップを走るARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8の野尻選手が、2番手のSTANLEY CIVIC TYPE R-GTの牧野選手に5秒の差をつけて独走状態。さらに2番手と3番手の間は10秒以上離れていた。28周目に1台の車両がコース脇で停止したことにより、フルコースイエロー(FCY)となったが、ここで早めのピットインをする車両はなかった。

 3分後にレースはバトル再開となり、31周で5番手のKeePer CERUMO GR Supra、32周で2番手のSTANLEY CIVIC TYPE R-GT、33周でModulo CIVIC TYPE R-GTがピットイン。さらに34周でトップのARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8、2番手のENEOS X PRIME GR Supraがピットイン。35周でMARELLI IMPUL Zもピットへ入ると、ピット作業を遅らせたau TOM'S GR Supraが暫定トップに立ち、40周でピットへ。給油作業時間も短く、ピット作業前の12番手から10番手へ順位を上げた。

 全車両がピット作業を終えた時点でトップのARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8の松下選手と、2番手のSTANLEY CIVIC TYPE R-GTの山本選手の差はわずかに1.2秒。この2台は1秒を切る距離まで接近したが、松下選手がペースを上げて山本選手はなかなかトップを奪うことができない。

 1秒程度の僅差のレースは続いたが、終盤の70周を過ぎたあたりでは距離も3秒以上に広がり、ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8は3.277秒差をつけてポール・トゥ・ウィン。2位にSTANLEY CIVIC TYPE R-GTがゴールし、シビックのGT初優勝を1-2フィニッシュで飾った。

 3位はKeePer CERUMO GR Supraで、ENEOS X PRIME GR Supra、MARELLI IMPUL Z、Modulo CIVIC TYPE R-GTの順でチェッカー。ポイントリーダーのau TOM'S GR Supraは7位ゴールで、貴重なポイント4点を追加してランキングトップの座を守った。

GT500クラス優勝はARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8(野尻/松下組)。ポール・トゥ・ウィンを飾るとともに、今シーズンから投入されたシビックに初勝利をもたらした。
「松下選手の初めてのポール&優勝と、こんなに素晴らしい週末はないのかな」と野尻選手。「鈴鹿に対しては少し得意な意識があります。優勝しましたけど1回だけで終わりたくないし、次回に向けてがんばりたいと思います」と松下選手。共にこの優勝を喜んでいた。
2位はSTANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐組)、3位はKeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹組)。
GT500クラス表彰の各選手。

GT300クラス

 GT300クラスは順調なスタートを切ったかに見えたが、2周目に予選9番手のSUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)の井口選手が緊急ピットイン。後続から追突を受けてディフューザーの左側が壊れており、修復して大きく順位を落とすことになった。ポールからスタートしたLEON PYRAMID AMGの篠原選手はスタートから快調に飛ばし、8周の時点で2番手との差を4秒以上も引き離して独走態勢。

 25周目のダンロップコーナーのエスケープロードで1台の車両がストップするとFCYが導入されたが、ストレートを走っていたトップの篠原選手はタイミング良くFCY宣言より早くピットイン。ルーティンピット作業を済ませると蒲生選手がコースへ戻った。他にこのタイミングでピットインしていた車両はなく、LEON PYRAMID AMGは隊列の中に戻ることができ、大きなマージンを稼ぐことになった。

 レース中盤となった31周で2番手のMETALIVE Lamborghini GT3、35周でグッドスマイル 初音ミク AMGとD'station Vantage GT3 EVOがピットインすると、ピットインを遅らせていた昨年チャンピオンで19番手スタートのGreen Brave GR Supra GT(吉田広樹/野中誠太組)の野中選手が暫定トップ、2番手はmuta Racing GR86 GTの平良選手、そして3番手はLEON PYRAMID AMGの蒲生選手に変わる。

 43周でmuta Racing GR86 GTはピットインしてタイヤ4本を交換し、ポイント圏外の14番手でコースへ復帰。翌周Green Brave GR Supra GTがピットインして、こちらはタイヤ無交換でポイント圏内の8番手でコースへ戻ることができた。FCY中のピット作業で2番手グッドスマイル 初音ミク AMGと53秒もの大差をつけたLEON PYRAMID AMGの蒲生選手は、タイヤを労わり燃料をセーブしながら完全な独走態勢を築き始める。

 そして3番手には予選6番手からスタートしたリアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rのオリベイラ選手が、グッドスマイル 初音ミク AMGの谷口選手に迫って来た。しかし同じヨコハマタイヤを履く谷口選手もこれを抑えて2番手を守る走りを展開する。62周目にはJLOC Lamborghini GT3をかわしたD'station Vantage GT3 EVOのファグ選手が4番手へ順位を上げた。

 60周目、muta Racing GR86 GTの堤選手はタイヤ無交換のGreen Brave GR Supra GTをかわしてポイント圏内の10番手へ。さらにUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI(片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン組)のムンタン選手とのバトルを展開。コーナーで堤選手が前に出るも、ストレートでムンタン選手が逆転するというバトルが続いてスタンドが沸いたが、69周目の100Rで堤選手が前に出て勝負アリ。64周目にGreen Brave GR Supra GTはミッショントラブルのためにピットインし、レースを終えてノーポイントとなった。

 LEON PYRAMID AMGは大量リードもあり余裕の走りでトップチェッカー。チームと蒲生選手にとっては2020年第4戦もてぎ以来4年ぶりの優勝だ。篠原選手は2021年第7戦もてぎ以来の2勝目で、これでポールポジションの3点を加えた23点を獲得し、ランキング2番手へ浮上することになった。

 2位はオリベイラ選手を抑えたグッドスマイル 初音ミク AMGで、メルセデスが1-2フィニッシュ。3位はリアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rで、今季2回目の表彰台を獲得している。また上位7位までをFIA GT3車両が独占。JAF GT車両のmuta Racing GR86 GTは、18番手スタートからJAF GT最高位となる8位ゴールでポイントリーダーを守った。

GT300クラス優勝はLEON PYRAMID AMG(蒲生/篠原/黒澤組)。FCY導入前のタイミングでピットインを成功させ、アドバンテージを得ると独走状態に持ち込み、実に4年ぶりの表彰台となった。
「まずはうれしいです。やっと勝てたので本当にホッとしたというのが本音です。タイヤと燃料をセーブして走りました」と蒲生選手。「本当にうれしいです。ピットインは『入れるなら入りましょう』という無線だったので、FCYのモニターとピット入口の信号と“にらめっこをしながら本当にギリギリで入れたので、そこは運が良かった」と篠原選手は久しぶりの優勝に笑顔だった。
2位はグッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也組)、3位は リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(佐々木大樹/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)。
GT300クラス表彰の各選手。
ブルテンで公示された、第5戦から適用される公式予選方式の改定について、その理由や補足説明をGTアソシエイションの坂東正明代表と沢目拓レース事業部長が定例記者会見前に実施。

フォト/石原康、遠藤樹弥、吉見幸夫 レポート/皆越和也、JAFスポーツ編集部

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