ラリー競技役員のスキル向上を目的とした、JAF主催「ラリー競技役員講習会」を愛知県蒲郡市で開催。一般社団法人日本ラリー振興協会(JGR)が運営する初めての講習会に

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2024年8月9日

JAFはこれまで国内モータースポーツ運営に携わる競技役員を対象とした安全講習会などを定期的に開催してきているが、この度ラリーに関わる競技役員を対象に、一般社団法人日本ラリー振興協会(JGR)運営による「ラリー競技役員講習会」を愛知県で開催した。

「ラリー三河湾」ではラリーHQが置かれた、愛知県蒲郡市にあるラグナマリーナで開催。

 この「ラリー競技役員講習会」は、全日本ラリー選手権およびラリー競技を開催・運営するオーガナイザーにおけるオフィシャル全般のスキル向上を始め、競技役員の中でもチーフオフィシャルとして活躍できる人材の養成や、競技会における安全管理の徹底、大会運営全般に関する知識の向上を目的として開催された。

 講習会は8月3日(土)、愛知県蒲郡市のラグナマリーナにおいて対面方式で行われ、主に中部地区の競技役員やオフィシャルを対象として、約60名の受講者が集まった。

 講習会の冒頭では、一般社団法人日本ラリー振興協会(JGR)の監事を務める、地元愛知のJAF加盟クラブ「モンテカルロオートスポーツクラブ(MASC)」の勝田照夫会長を始め、主催であるJAFモータースポーツ部の村田浩一部長、JGRから講習会の運営を委託された北海道のJAF加盟クラブ「AG.メンバーズスポーツクラブ北海道(AG.MSC北海道)」会長にして、JGRの代表理事を務める田畑邦博氏らが挨拶した。

 さらに、全日本ラリー開幕戦の場で、本講習会の開催場所でもある蒲郡市からは大原義文副市長が来場。「蒲郡市では今年の3月にJAFさん、勝田さん、トヨタ自動車さんに大変な協力を得まして、目指せ日本のモンテカルロと銘打ってやらせていただいています。蒲郡市は市政70周年を迎えています。市民だけではなく市外、県外、国外の方々にも愛されるよう、モータースポーツの面でも一生懸命取り組みます」との挨拶があった。

 開会にあたりJGRおよびMASCを代表して勝田会長から以下の趣旨説明がなされた。

「今年、日本のラリーの振興のために、ラリーのプロモーターとして進めようという形から、JGR、一般社団法人日本ラリー振興協会を設立しました。そして、JAFさんの協力の元に、日本の全体的なラリー人材のレベルアップを目的とした教育およびセミナーなどを、JGRによってJAFさんと共に全国的に進めて参ります。今回はその第1回目として、この蒲郡市で、中部エリアの方々を対象としたセミナーを開催することになりました」

 また主催者を代表してJAFモータースポーツ部の村田浩一部長から以下の挨拶があった。

「国内モータースポーツは、本日ご出席いただいているような、公認審判員ならびにボランティアオフィシャルの方々が携わっていただくことで、初めて成立いたします。公認審判員の皆様は”ジャッジ・オブ・ファクト(Judge of Fact)”で競技運営に携わっていただきますが、参加者の方々が安全に安心して、最終的に楽しめるような場は、公認審判員ならびにボランティアオフィシャルの皆様の協力があって初めて成り立つものです」

「今回は、MASCの勝田会長からこの講習会のご提案をいただき、先般、設立されました一般社団法人日本ラリー振興協会代表理事の田畑様に本件をご相談致しまして、JAFとしても選手や公認審判員、ボランティアオフィシャルの皆様の何かお役に立てることがあればということで、講習会を開催させていただきました。皆様にとって有益な講習会となりますことを願っております。引き続き、皆様の日頃の鍛錬をよろしくお願い致します」

 受講者はMASCを始め、三重県のJAF加盟クラブ「トライアルスタッフオン!(ON!)」や愛知県のJAF加盟クラブ「アールエスタケダ(RST)」のメンバーが多勢を占めた。

 一方で「地域の公道を使わせていただくのがラリーです。ラリーを通じて地域の皆様と共に楽しいものを作っていくことが大切だと思います。社内的にも、そういう活動に協力いただけるメンバーに声がけして、最近はオフィシャルの取り組みなどもやらせていただいております。こういう場を作っていただいてありがとうございます。この場で勉強させていただいて、地域で楽しいラリーが開催できるように頑張っていきたいと思います」と挨拶した南山要一氏を始め、TOYOTA GAZOO Racing関係者らの受講もあった。

 講習会の運営はAG.MSC北海道が担当し、田畑氏のほか河野功氏と小池治郎氏が講師と事務局を務めた。JGRの理事としてJAFラリー部会長を務める特定非営利法人M.O.S.C.O.の高桑春雄代表も参加し、部分的に講師側として関わる場面もあった。

 気になる講義内容は全18項目にも及ぶもので、組織の構成、事前準備・資料作成、セーフティプラン、日程の管理、必要な人数とスキル、各種機材の知識、コースセットアップの知識、ラリーコントロールとの連携、安全とメディカルへの知識、「セーフティカー」の知識、ロード管制・トラッキング・トラブル対応、事故発生時の現場対応、ステージ終了後の対応、ロードクローズの基本知識、観客対応の知識、メディアに関する知識、情報共有方法とその範囲、個人情報の取り扱い、といった、ラリー競技会の運営に携わったことがある人ならピンと来る、競技運営の実態に即した項目が並んでいた。

 講習はすべて座学で、講義はAG.MSC北海道が制作したテキストを元に行われた。AG.MSC北海道では、国際格式および全日本選手権ラリーで適用される規則の解釈や実際の運用方法などを独自にまとめた講習ツールを作成しており、北海道開催のWRCラリージャパン以前から全国規模でラリー講習会を運営してきたノウハウが凝縮されている。

 そして本講習会の大きな特徴は、内容を一方的に伝達する形式ではなく、講義内容に疑問が発生すれば、その都度、受講者が講師に質問できる、双方向な形式で行われたことだ。

 参加した受講者は、全日本選手権大会のエントラントであったり、競技運営に携わったことのある競技役員も多かったため、10時から17時というかなり長丁場な拘束時間だったにも関わらず、メモをとったり、質問したり、時にはエントラントとして現場での経験談を披露したりというアクティブな時間を共有することになった。

 奇しくも今回の講習会は、現在のWRCラリージャパン開催エリアで行われたということもあり、現在のWRCに関わったことがる競技役員や関係者にとっては、これまで現場で起きた事象への対応方法などについて、国際ルールと全日本ルールの違いなどの講義に触れたことで、規則的な根拠や影響に対する疑問が解消する機会となっていたようだ。

 8月8日にはJAF主催、JGR運営による「2024年JAFモータースポーツセーフティ講習会」が福岡県宗像市「宗像ユリックス」で開催される予定で、JAF加盟クラブ「グラベルモータースポーツクラブ」を中心とした全日本ラリー唐津組織委員会も運営を担当する。

MASCの勝田照夫会長とAG.MSC北海道の田畑邦博会長。共にJGRの役員を務める。
講習会を主催するJAFモータースポーツ部から村田浩一部長と田川員誉課長らが出席。
運営はJGRから委託されたAG.MSC北海道。講師は田畑会長と河野功氏、小池治郎氏。
講義内容はAG.MSC北海道がこれまでWRCを始めとした国際格式、全日本選手権競技会のオーガナイズで蓄積したノウハウを元にしており、現実的かつ活きる情報が提供された。
講師から一方的に内容を伝える形式ではなく、受講者が途中で自由に質問できる形式だったことが出色で、受講した全日本選手が競技会での経験談を披露する一幕もあった。
トヨタ自動車の南山要一氏も社員と共に受講した。JGRの高桑春雄理事も会場を訪れ、WRCオーガナイザー、そしてJAFラリー部会長として受講者の質疑に応対するシーンも。
世界そして国内ラリーの最先端を知る役員で構成されたJGRでは、今後もJAFモータースポーツ部と協力して、ラリーの振興や人材育成に寄与する取り組みが続けられていく。

PHOTO/中島正義[Tadayoshi NAKAJIMA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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