FIA-F4第5戦富士で洞地遼大選手がポール・トゥ・ウィン達成。第6戦では2位獲得でポイント争いが激化!

レポート レース

2024年8月9日

10年目のFIA-F4選手権は、「第2世代(Gen 2)車両」を導入したことで、それまでのノウハウやデータが活かしにくくなり、戦力図にも変化が出ると予想されていた。実際、富士スピードウェイの第1大会では、佐野雄城選手と森山冬星選手が初優勝を飾り、鈴鹿サーキットの第2大会でも野村勇斗選手が初優勝、そして連勝となっていた。彼ら3人に共通するのは、参戦2年目だということ。マシンで差がつかなくなっても、ドライバーの経験が活かされているということなのか。第3大会の舞台は、再び富士スピードウェイ。今年一度戦っているコースで、やはり経験が活かされるのか注目された。

2024年FIA-F4選手権 第5戦/第6戦
(2024 SUPER GT Round.4内)

開催日:2024年8月2~4日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ株式会社、FISCO-C、株式会社GTアソシエイション

 FIA-F4の公式練習は木曜日から開始され、初日の2セッションはいずれも洞地遼大選手がトップ。2日目は清水啓伸選手が2セッションともトップで、これに続いていたのが洞地選手とあって、ふたりがレースウィークの核を成すのは容易に想像できた。

予選

 予選は土曜日の7時45分から開始された。連日のように猛暑日が続き、上空には青空が広がっていたが、さすがにこの時間では路面も完全には熱を帯びていないようで、先に行われたチャンピオンクラス予選の前には、入念にウォームアップが行われていた。予選終盤になって、ひとり1分46秒を切る1分45秒988を記録したのは洞地選手。セカンドベストタイムもトップの1分46秒133で、第5戦と第6戦ともにポールポジション(PP)を獲得した。

「練習からずっと調子が良くて、途中2番手になって焦りましたが、なんとか2戦ともPPが獲れて良かったです。前回の富士は予選では調子が良かったのに、トラブルでなかなかベストな状態で走れなかったんですが、やっと噛み合ってきました。決勝では一回も抜かれることなく、ポール・トゥ・ウィンを目指していきます」と洞地選手は力強く宣言。

 その洞地選手から一時的にとはいえ、トップを奪った森山選手もまた2戦ともに2番手になり、「マシンのフィーリングは最後の方になればなるほど、良くなってきました。2番手だったのは悔しいですけど。最近ずっと2位なので、決勝はしっかりやり返したいと思います」と逆襲を誓っていた。やはり2戦とも、3番手は野村選手、4番手は清水選手となった。

 続いて行われたインディペンデントカップの予選では、序盤のトップに鳥羽豊選手がつけるも、後半の伸びを欠いてしまう。終盤の更新ラッシュで1分47秒990をベストタイムとし、2戦ともにPPを奪ったのは、第2戦ウィナーのKENTARO選手。「走っている時は、自分がどのぐらいの順位なのか見ないようにしていましたが、なんとか練習どおりの走りができたので、結果的に良いタイムにつながったんだと思います。あえて見なかったのは、気になって力が入って失敗しそうだったので、自分との戦いに切り替えていました。今回はポール・トゥ・ウィンを初体験したいです」と、PP獲得の達成感を存分に感じながら語っていた。

 第5戦はDRAGON選手、齋藤真紀雄選手、鳥羽選手の順で続き、第6戦は齋藤選手、DRAGON選手、鳥羽選手の順となり、この4人で2列のグリッドを独占することになった。

チャンピオンクラス第5戦と第6戦のPPは洞地遼大選手(HFDP with B-Max Racing)。
インディペンデントクラス第5戦と第6戦のPPは KENTARO選手(Baum Field F4)。

第5戦 決勝

 第5戦決勝レースのフォーメーションラップ開始は12時15分。太陽が真上に上がって、路面温度が著しく高まり、しかもレースウィーク始まって以来となるスーパーGTの走行直後である。タイヤのラバーが乗っていることは誰しも予想できたが、あれほど蹴り出しを鈍らせるとは想定外だったようだ。PPの洞地選手がやや出遅れ、森山選手がすぐ背後まで迫るも逆転には至らず。TGRコーナーでは清水選手が3番手に浮上したが、コカ・コーラコーナーで野村選手が抜き返す。5番手は鈴木斗輝哉選手だ。

 1周目を終えた段階で、6番手争いが激しく、トップ5が早くも逃げる格好に。しばらくはほぼ等間隔で続いていたものの、4周目にようやく洞地選手が1秒の差をつけ、ひとり逃げ始める。やがて森山選手も単独走行となり、両者はこのまま逃げ切った。後続の野村選手と清水選手のバトルは最後まで続いた。TGRコーナーで何度も並びかけた清水選手ではあったが、そのつどガードを固め続けた野村選手が、最後は約0.3秒差で逃げ切り、表彰台の一角を得た。

「いいレース展開でした。でも、なんか路面がベタベタしていて、うまくタイヤが転がらなくて。そのせいでストール気味になっちゃって、今日は難しいスタートでした。ずっと待ち望んでいた初優勝ですから、すごくうれしいです。明日もこんな感じで逃げる予定です」という洞地選手の言葉は、素直な印象なのだろう。

 2戦連続の2位となったのは森山選手で、「序盤と終盤は良かったんですが、中盤についていけなくて。なんかフィーリングが悪かったので、チームと話し合って明日に向けて改善ですね」と、納得の展開ではなかったのは明らか。3位の野村選手も「マシンの調子は悪くないのに練習中からペースが上がらなかったので、予想していた展開でした」と語っていた。一方、中盤まで続いていた6番手争いから抜け出してきたのは白崎稜選手で、最終ラップには鈴木選手を抜いて5番手でゴールした。しかし、序盤のオーバーテイク時に走路外走行あり、5秒加算のペナルティで8位に降格となった。

 インディペンデントクラスは、スタート直後のTGRコーナーで、DRAGON選手が接触で押し出されて最後尾になるという波乱から始まった。これでPPのKENTARO選手が楽になったかと思われたものの、そこに迫ってきたのが鳥羽選手だった。6周目に2番手に上がると、その勢いでKENTARO選手にも急接近。すぐ仕留めるかと思われたが、「KENTARO選手はストレートが速いので1コーナーでは無理。ただ、うまいこと合わせてダンロップコーナーでと。何回か様子をうかがっていて、これ行けるなって。彼のインを差して、クリーンに抜くことができました。向こうもクリーンでした」というのが11周目。まさに技あり1本で、鳥羽選手が今季初勝利を挙げた。3位は植田正幸選手が獲得。

第5戦チャンピオンクラス優勝は洞地選手。
ポール・トゥ・ウィンで初優勝を決めて喜びを爆発させる洞地選手。
2位は森山冬星選手(HELM MOTORSPORTS F4)、3位は 野村勇斗選手(HFDP with B-Max Racing)。
第5戦チャンピオンクラス表彰の各選手。
第5戦インディペンデントクラス優勝は鳥羽豊選手(HELM MOTORSPORTS F4)。
2位はKENTARO選手、3位は植田正幸選手(Rn-sports MCS4)。
第5戦インディペンデントクラス表彰の各選手。

第6戦 決勝

 決勝レース第6戦は、日曜日の8時40分にフォーメーションラップが開始された。第5戦ほど時間的に高温に晒されてはいないものの、それでも引き続き暑さとの戦いになったのは間違いない。今回のスタートではPPの洞地選手は順当にスタートを決めるが、続く森山選手と野村選手も悪くない。1コーナーにはイン側から森山選手が差しに行くも、ここはしっかりと牽制。しかし、この牽制はアウト側からアプローチしていた野村選手にとって、思いがけぬ突破口になる。

 立ち上がりで洞地選手に並んだ野村選手は、コカ・コーラコーナーでトップに立つ。「ノーズ入れられちゃって、ぶつけられるのが嫌だったので、避けようと思ったらオーバースピードすぎて四脱まで行ってしまいました」と、その時の状況を5番手まで後退した洞地選手は振り返る。続く100Rでは森山選手も、清水選手の先行を許した。さらに最終コーナーでも鈴木選手にインを差されていた。ただ、立ち上がりの加速が鈍っていたため、森山選手は本来ならすぐにでも抜き返せていたはず。

 しかし、すぐ抜き返せなかったのは、その直後にセーフティカー(SC)が導入されたからだ。彼らが通過した直後のダンロップコーナーで接触があり、止まった車両を回収するためだった。SCの先導は5周目まで続いた。リスタート直後は上位陣に動きはなかったものの、8周目にはそれぞれ覚悟を決めたよう。まず1コーナーでは清水選手が野村選手に迫り、横に並ぶも右フロントのタイヤがロックアップ。ここでは野村選手がトップを守り抜く。そしてコカ・コーラコーナーでは洞地選手が、森山選手を抜いて4番手に。

 しかし、バトルはこれに留まらず、次周のTGRコーナーで清水選手が再びチャレンジ。やはり右のタイヤをロックさせるも、同じ轍は踏まなかった。ここで待望のトップに浮上。野村選手は直後の100R、そしてヘアピンで、鈴木選手と洞地選手に並ばれるも、ここではしっかり踏ん張っていたのだが……。ダンロップコーナーで、なんと野村選手がスピン。鈴木選手との接触があったようだ。

 その脇をすり抜けて、洞地選手が2番手に上がる。10周目の1コーナーでは森山選手も3番手に浮上。一方、先の接触の影響なのか、佐野選手のペースが上がらない。10周目のダンロップコーナーで大宮賢人選手に、さらに11周目のGRスープラコーナーでは佐藤凛太郎選手の先行を許していた。なお佐藤選手は予選14番手。ここまで9台を抜いてきた格好だ。

 そして、このころペースに最も優ったのは森山選手。徐々に2番手の洞地選手にも迫っていく。さらに13周目のストレートエンドでは佐藤選手が、大宮選手をパス。森山選手は最終ラップのコカ・コーラコーナーで2番手浮上を狙ったものの、縁石に乗ってコントロールを失い、スピンを喫してしまう。

 その間に逃げ切った清水選手が初優勝。そして2位の洞地選手は、これでランキングのトップに躍り出る。続いてチェッカーを受けたのは佐藤選手だったが、先のオーバーテイク時にストレートで白線を超えてしまい、これが走路外走行との判定を受けて5秒加算のペナルティとなり6位に降格。繰り上がって大宮選手が初表彰台を得た。野村選手は9位でゴールして貴重なポイントを得たが、森山選手は11位で得点ならず。

「スタートで行くしかないので、スタートにレースの95%持っていったぐらい、ものすごく集中していました。少しエンスト気味ではありましたが、しっかり対応できて。練習の段階からいい感じはあったので、冷静にできたと思います。1周目は強気でとにかく前に出るのを意識していました。トップに立ててからは、『後ろ、もっとバトルしてくれないかな』と思いながら走っていて(笑)。野村選手とのバトルで、けっこうタイヤを痛めちゃったので、最後は厳しかったですけど。もう明日から、次に向けて前を向いて進んでいきたいと思います。鈴鹿で勝ってこそと思っていますし、まだ勝ったことがないので、次は2連勝できるように頑張ります」と清水選手。同様に連勝を誓ったのは洞地選手だ。「ランキング的にもいい順位だったと思うんですけど、やっぱり連勝できなかったのが悔しいです。鈴鹿で連勝目指します」。

 さらに3位の大宮選手は「自分が思ったような展開ではなかったですけど、結果としてはうれしいです。やっと表彰台に上れたので。ここからはさらに上がるだけです」と、素直な気持ちを述べてくれた。

 インディペンデントクラスでは、またしても鳥羽選手がスタートを決め、さらに1コーナーでも1台を抜いて、いきなりKENTARO選手の真後ろに。第5戦の経験から「早めに抜いておかないと厄介だろう」と、1周目のダンロップコーナーで勝負をかけるも、そこには接触で止まった車両が! さらに咄嗟にハンドルを切った先にも停止車両があるという不運。これで鳥羽選手はフロントウィングを傷めたまま、SCの先導に連なっていた。

 これがKENTARO選手にとってはラッキーに運んだ。鳥羽選手がうまくリスタートできなかったことで、一気に差を広げることができたのだ。鳥羽選手は順位を落とした後、ピットでリタイアを余儀なくされた。そのまま逃げ切りを果たしたKENTARO選手は2勝目をマーク。「ようやく目標のひとつだった、ポール・トゥ・ウィンが実現できました。5月に勝ったときはポールからじゃなくて、たまたま1番だったので、ちゃんと実力で1番を獲れたと思えて良かったです。1周目のクラッシュの時は危ないなと思ったんですが、なんとか巻き込まれずにすり抜けられたのが、一番良かったかなと。本当に感無量です! 仕事もサボらなくちゃいけないぐらいたくさん練習してきたので(笑)。やっと努力が報われました」と喜びを爆発させていた。

 2位は齋藤選手が獲得し、予選中のアクシデントによるタイヤ交換のペナルティで、最後尾スタートを強いられていた今田信宏選手が激しい追い上げを実らせ3位となった。

第6戦チャンピオンクラス優勝は清水啓伸選手(Drago CORSE MCS4-24)。
逆転でバトルを制して初優勝を獲得した清水選手。
2位は洞地選手、3位は大宮賢人選手(PONOS RACING MCS4)。
第6戦チャンピオンクラス表彰の各選手。
第6戦インディペンデントクラス優勝はKENTARO選手。
2位は齋藤真紀雄選手(CSマーケティングAKILAND)、3位は今田信宏選手(JMS RACING with B-MAX)。
第6戦インディペンデントクラス表彰の各選手。

フォト/石原康、遠藤樹弥 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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