今季初登場の長江修平ランサー、タフなグラベルと苦闘の末に勝利獲得!

レポート ラリー JAFWIM

2024年8月9日

JAF中四国ラリー選手権は、開幕戦から約2か月のインターバルを経た7月27日に、シリーズ第2戦となる「四国のてっぺんラリー2024 in嶺北」が高知県で開催された。

2024年JAF中四国ラリー選手権 第2戦
2024年JMRC中国・四国ラリーシリーズ 第2戦
西日本グラベルラリーツアー2024 第2戦
四国のてっぺんラリー2024in嶺北

開催日:2024年7月27日
開催場所:高知県いの町、大川村周辺
主催:MSCS

 中四国戦の名物ラリーとして定着しているてっぺんラリーは、今年も高知県の大川村、いの町の愛媛県境に位置する山岳地帯をフィールドとするラリーとして行われた。かつては舗装とグラベルのミックスラリーの形式を採ったこともあったこのラリーだが、最近はフルグラベルのラリーとしての開催が続いている。

ラリーのヘッドクォーターは今回も高知県土佐郡大川村にある自然王国「白滝の里」に置かれ、同施設に程近い場所にある白滝の里山村広場がサービスパークとなった。

 昨年は同じ山系のほぼ稜線沿いに走る林道を、リエゾン区間を挟んでふたつに分けてSSを設定したが、今年はその片方の区間が豪雨の影響で一部が崩落したため、もう一方の林道のみをSSとして設定。6.0kmのそのSSをサービスを挟み、往復で2回走る形を採用した。

 天候は青空が覗くタイミングもあったが、曇天中心の一日となった。前日に降雨があったため、路面は湿り気を含んだ中、ラリーはスタート。計4回、同じ林道を走るとあって、一部のコーナーではラリーが進むにつれてワダチも掘れるタフなコンディションとなった。

高知県吾川郡いの町にある道の駅木の香でのセレモニアルスタートを経て、各クルーは林道SSへ。今回はギャラリーステージも設定された。

FG-1クラス

 FG-1クラスの開幕戦で速さを見せた堀川竜二選手が主催に回って欠場。同じくドライバーでは、優勝したマクリン大地選手を追い詰めた渡部洋三選手も、その開幕戦でマシンを傷めた影響か姿を見せず、やや寂しい顔ぶれとなったが、代わって開幕戦を主催のために欠場した昨年のチャンピオン、長江修平選手が復活。マクリン選手との一騎打ちが注目された。

 SS1はまず長江/原野雅子組がマクリン/大橋正典組を3.4秒差で下すベストタイムを奪取。「昨年の最終戦以来の実戦だったのでSS1の走り出しは怖さがあったけど、何とかベストが獲れたので今日のペースがある程度掴めた」という長江/原野組は、SS2でもマクリン/大橋組を3.8秒差で下して首位でサービスに戻ってきた。

 しかしSS1の再走となるSS3で長江/原野組は、ゴール手前約1kmの所で左リアタイヤがバースト。何とかゴールは果たせたものの、このSSではマクリン/大橋組に2.4秒の遅れを取ってしまう。だが最終のSS4では、逆転のチャンス到来でフルアタックをかけたマクリン/大橋組に今度はトラブルが襲い掛かり、エンジンがストール。10秒ほどのタイムロスを喫してしまい、2番手に甘んじる結果となった。

「最後のSS4は、“絶対ベストを獲る”というよりは、(マクリン選手と)同秒くらいでゴールできればいいな、くらいのつもりで頑張りました。それくらいやっぱり路面が掘れて難しかった。路面が良かった前半でリードを作れたのが大きかったけど、(SS3の)バーストがスタートに近い所で起きていたら、どうなっていたか分からない。今日は運もありましたね」と長江選手。

 一方のマクリン選手は、「開幕戦のセットのままで行ったら、動きが今ひとつだった。サービスで変えたら良くなったので、しっかり最後まで走り切りたかった。ちょっと不完全燃焼でした」と悔しさを滲ませた。

 九州勢同士によるバトルとなった3位争いは、最終SSで神田和徳/後藤義則組がパンクを喫して後退したため、阪本寧/吉田賢吾組に軍配が上がった。福永修選手を指南役としてコ・ドライバーシートに招いた全日本ラリー選手権JN2クラスに参戦中の塙将司選手は、人生初のグラベルラリーを5位で終えている。

FG-1クラスでは、3本のSSを制して優勝候補の名に恥じない走りを見せた長江修平/原野雅子組(インディゴパワーDL・BRIG・ランサー)が優勝。
2位は開幕戦優勝のマクリン大地/大橋正典組(大阪冷研TOFインディゴPマクリンGRB)。3位は九州から参加の阪本寧/吉田賢吾組(SRエナペタルBRIGみかんランサー)。
FG-1クラスの表彰式。左から2位のマクリン/大橋組、1位の長江/原野組、3位の阪本/吉田組。

FG-2クラス

 FG-2クラスは開幕戦を制した山口貴利/山田真記子組が今回もその勢いを持ち込んでSS1でベストタイムを奪取し、幸先の良いスタートを切る。だがSS2のスタートで山口/山田組のダイハツ・ブーンX4はエンジンがストール。再始動は果たすも約5秒をロス。このSSは高田修/箕作裕子組の三菱・ミラージュが2.2秒差で山口/山田組を下してトップでゴールし、その差を2.9秒に縮めてサービスに戻ってきた。

 しかし勝負のSSとなったSS3では山口/山田組が高田/箕作組を11.1秒差で下して、この日2度目のベストタイムを奪取。SS4では高田/箕作組が山口/山田組に1.9秒差をつけるベストで上がるが、逆転はならず、逃げ切った山口/山田組が開幕2連勝をもぎ取った。

「ステージの終盤が上り区間となるSS1、SS3でしっかり4WDのメリットが出せたのが勝因でしょうね。開幕戦のままのセットだったけど、クルマの動きも悪くなかった」と山口選手。「ただエンジンのトラブルは去年から時たま出ている症状なので、最終戦までにはしっかり解決して臨みたい」と気を引き締め直していた。

 開幕戦に続いての2位に終わった高田選手は、「デフがちょっと不調だったんですが、2度もベストが獲れたので、そんなには影響していないと思う。上りの走りが相変わらず苦手なので(笑)、FFだから負けたとは思っていない。次は絶対勝ちます」と最終戦でのリベンジに意欲を見せた。このクラスも九州勢が健闘し、かつて宮崎で開催された全日本のひえつきラリーでスズキ・アルトワークスで活躍した、大ベテランの福本浩人選手と内藤通孝選手のクルーが3位に食い込んだ。

FG-2クラスでは、車両トラブルがありながらも開幕戦からの連勝を決めた山口貴利/山田真記子組(WinmaXインディゴpNUTECブーン)。
2位は2本のSSでベストを奪った高田修/箕作裕子組(RスポーツKYBミラージュ)。3位は九州からの遠征組、福本浩人/内藤通孝組(エナペタル・ブリッグ・ブリッドYHブーン)。
FG-2クラスの表彰式。左から2位の高田/箕作組、1位の山口/山田組、3位の福本/内藤組。

FG-3クラス

 新旧のマツダ・デミオが競り合って今季注目となっているFG-3クラスは、開幕戦の雪辱を期す藤田幸弘/藤田彩子組が、“絶対王者” の松原久/和田善明組をSS1で8.5秒も突き離すベストタイムをマーク。するとSS2では、「ギアの使い方を変えてみたら動きが良くなった」という松原/和田組が藤田/藤田組を6.8秒差で下してベストを奪取。2台のバトルは前半からヒートアップする。

 しかし、セクション2に入るとSS3で藤田/藤田組が前走のSS1から5.3秒のダウンとなったのに対して、松原/和田組は逆に4.5秒タイムアップして一気に逆転に成功。SS4でも藤田/藤田組を5.3秒差で振り切って3連続ベストで締めくくり、開幕2連勝を飾った。

 3週間前に開催された全日本ARKラリーカムイ参戦を前にデミオのボディを補強したという松原選手は、「全日本では、動きが変わってしまったクルマに対応できないまま終わってしまったけど、今回は掴めてきたので、凄く走りやすかった」と勝因を振り返った。

 逆転を許した藤田選手は、「厳しいラリーでした。自分がラリーを始めた頃の地元の群馬戦がちょうど今日のような路面だったので、走らせ方を思い出しながら走ったんですが、分かってきた所でラリーが終わってしまった」と、荒れた路面に翻弄された一戦となった。

 なお最終のSS4でトップ2台を凌ぐベストタイムをマークした中国地区の片山浩三/阿部孝子組のデミオが3位に入賞。トータルでも藤田/藤田組の10秒後方に迫るタイムでゴールしただけに、最終戦でトップ2台のバトルにどこまで絡めるかも注目の的となりそうだ。

今年は激戦区の様相を呈しているFG-3クラスは、松原久/和田善明組(インディゴパワー☆BRIG☆DL☆デミオ)が開幕2連勝。
2位は首位で発進したものの逆転を許した藤田幸弘/藤田彩子組(Mスポーツ BRIG YH デミオ)。3位は藤田組に10秒差となった片山浩三/阿部孝子組(Rスポーツ・デミオ)。
FG-3クラスの表彰式。左から2位の藤田/藤田組、1位の松原/和田組、3位の片山/阿部組。

FG-4クラス

 FG-4クラスは開幕戦を制した松岡竜也/縄田幸裕組が今回も絶好調。SS1から3連続ベストをマークして快勝かと思われたが、SS4のスタート直前にスローパンクチャーが発覚。そのまま慎重にゴールまでトヨタ・ヴィッツを運んで走り切ったものの、トップから13秒遅れの最下位でゴールとなる。

 しかしSS3までに築いた大量のマージンが効いて首位をキープ。「最後はどうなるかと思ったけど何とか走り切れて良かった(笑)。上り区間で少しでもタイムを稼げるように変えてきたセッティングが、好タイムに繋がったと思います」と、松岡選手は最後は安堵の表情を見せていた。

 白熱した2位争いは、最終SSでセカンドベストをマークした萩原豪/石井將行組に1.9秒差まで詰め寄られるも、最後まで2位をキープした山田忠司/宮部弘陽組が、今季初となる表彰台を射止めている。

終盤、パンクに見舞われながらも完走を果たしたFG-4クラスの松岡竜也/縄田幸裕組(BarWRC☆ヴィッツ)が逃げ切って開幕2連勝。
2位は僅差での争いを制した山田忠司/宮部弘陽組(サンライズ ヴィッツ)。3位はダートラドライバーの萩原豪/石井將行組(菓舗ふくおかインディゴPレンタルフィット)。
FG-4クラスの表彰式。左から2位の山田/宮部組、1位の松岡/縄田組、3位の萩原/石井組。

フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部

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