ぶっちぎりの速さで武藤壮汰選手がFIA Motorsport Games 2024のEスポーツGT日本代表に選出!

レポート eスポーツ

2024年8月27日

10月下旬にスペインで開催されるFIA Motorsport Games 2024のEスポーツGT日本代表を決める選考レースが、8月10日に群馬県高崎市のGUNMA eSPORTSで行われた。出場希望者は事前にAssetto Corsa Competizione内スペシャルイベントのタイムアタック結果をもって選考され、当日は選り抜きの選手15名が会場に集い、世界大会の出場権利をかけて争った。

2024 FIA Motorsport Games -ESPORTS GT- 日本代表選考レース powered by UNIZONE
開催日:2024年8月10日
開催地:GUNMA eSPORTS(群馬県高崎市)
主催:JeMO

 国内唯一のJAF公認eモータースポーツブランド「UNIZONE」を運営する一般社団法人日本eモータースポーツ機構(Japan e-Motorsport Organization=略称:JeMO)が、国際的なモータースポーツの祭典であるFIA Motorsport Games 2024内で行われるeスポーツGTカテゴリーの日本代表選手を選出することとなり、その出場枠を競い合う選考レースが行われた。

 出場希望者は事前にPC版のAssetto Corsa Competizione内に設けられたスペシャルイベント「GruppeM Racing Mercedes-AMG GT3 2020 Circuit Ricardo Tormo Valencia(FIA Motorsport Games)」に参加し、タイムアタックイベントのオンラインリーダーボードをスクリーンショットで撮影して応募、集計されたタイムを基に一次選考通過者がオフラインの準決勝へコマを進めることができるというものだ。

 8月10日、15名の精鋭選手たちが群馬県高崎市にあるeスポーツ施設のGUNMA eSPORTSに集結、学生から社会人までさまざまな出場候補者が揃った。会場は8台のシミュレーターを円状に配置したレイアウトで、ステージに約160インチの大型LEDビジョンが完備されているなど、日本代表選手を選考する環境としては申し分ない。なお、レーシングコックピットはSTRASSE RACING RCZ01、ステアリングシステムはThrustmasterT300RSを採用している。

選考レースの舞台となったのは群馬県高崎市にある常設eスポーツ施設のGUNMA eSPORTS バトルアリーナだ。
世界大会への出場権をかけて全国から応募が集まり、一時選考を通過した選手が勢ぞろい。ブリーフィングが始まると一気に緊張感が高まった。
STRASSEのベースフレームとバケットシートに、Thrustmasterのステアリングホイールとペダルを組み合わせた筐体が使用される。
実況&解説は地元・高崎出身の佐山裕亮氏が務める。抑揚のある声を会場内に響かせてレースを盛り上げてくれた。

レースフォーマット

 準決勝レースは予選奇数順位8名と、予選偶数順位8名にてそれぞれ1レース。そして各レース上位4名の計8名で30分の決勝レースが行われる。

  • ゲームタイトル
    Assetto Corsa Competizione(PC版)
  • サーキット
    Valencia - Circuit Ricardo Tormo - Grand Prix Circuit
  • 使用車種
    Porsche 992 GT3R(ワンメイク)
  • アシスト設定
    【許可】
    トラクションコントロール、ABS、エンジンスタート、ワイパー、ライト、ピットリミッター
    【禁止】
    スタビリティコントロール、ドライビングライン、オートマチックギアボックス
  • その他設定
    マシンセッティング:有効
    フォーメーション:ショートフォーメーション
  • レギュレーション
    義務ピットイン:1回
    ピットイン時の給油:許可
    タイヤ交換義務:あり
    ピットウィンドウ:15分(900秒)

 2024年のFIA Motorsport Gamesはスペイン・バレンシアで行われることもあり、この選考レースの舞台はリカルド・トルモ・サーキットで、ポルシェ992GT3Rのワンメイクレースとなっている。A/Bグループ入れ替えての公式練習が行われた後、準決勝レースのグリッドを決めるための10分間の予備予選という流れだ。

MotoGPで活躍したバレンティーノ・ロッシ選手の壁画が描かれていることで知られる、バーチャルのリカルド・トルモ・サーキットで選考レースが行われた。

準決勝レースAグループ

武藤壮汰選手

タイムアタック1番手

白川有輝選手

タイムアタック3番手

森村拓矢選手

タイムアタック5番手

宮本稜馬選手

タイムアタック7番手

能條裕貴選手

タイムアタック9番手

岡本貴明選手

タイムアタック11番手

黒田洋和選手

タイムアタック13番手

山口大和選手

タイムアタック15番手

 セッション開始とともに勢いよくピットロードから飛び出したのは武藤壮汰選手。アタックラップ早々に1分31秒040を叩き出し、次の周では1分30秒592まで縮め、さらに1分30秒522まで詰めていき、タイムアタック約2分を残してピットイン。能條裕貴選手と白川有輝選手と森村拓矢選手が武藤選手に追いすがるが、1分30秒台の壁は厚かったようだ。

 準決勝レースは武藤選手がポールポジションを獲得し、2番手は能條選手、3番手は白川選手、4番手は森村選手、5番手は岡本貴明選手、6番手は宮本稜馬選手、7番手は黒田洋和選手、8番手は山口大和選手というスターティンググリッドとなった。

 2分のインターバルを挟み、15分間の準決勝レースがスタート。ポールの武藤選手は順当に先頭を奪って快走し、コーナーごとにジリジリと後続を突き放していく展開に持ち込んだ。2番手以降は等間隔を保ったままスターティンググリッド順で1周目を終えるかに見えたが、2番手走行中の白川選手がまさかのコースアウトで順位を落とし、一気に最下位に沈んでしまう。

 レース折り返し点で武藤選手は2番手に約3秒以上の差をつけて独走状態に。一方、後方で白熱したのが4番手争いだ。この後に控えている決勝レースに進出するためには、グループ4番手以内でフィニッシュしなければならず、宮本選手と岡本選手がサイド・バイ・サイドの激しいバトルを繰り広げていた。だが7周目に岡本選手のリアと宮本選手のフロントが接触し、岡本選手がコースアウト。

 宮本選手が4番手を奪ったのも束の間、最下位から着実に追い上げてきた白川選手がいつの間にか5番手に浮上していたのだ。テール・トゥ・ノーズで追いかける白川選手が宮本選手の背後でプレッシャーをかけ続けたが、チェッカーまで宮本選手がポジションを守り切る。だが審議の結果、白川選手が4番手に繰り上がり決勝レースに進むこととなった。

盤石の走りで準決勝レースAグループをトップ通過した武藤選手。貫禄の速さを見せつけて他選手を圧倒した。

準決勝レースBグループ

守屋遼太選手

タイムアタック2番手

藤井駿選手

タイムアタック4番手

石水優夢選手

タイムアタック6番手

黒沢和真選手

タイムアタック8番手

小此木裕貴選手

タイムアタック10番手

渡辺大祐選手

タイムアタック12番手

太目勇斗選手

タイムアタック14番手

 アタックラップ開始後、最初にコントロールラインを通過したのは黒沢和真選手で、まず1分31秒222というタイムを刻み、続いて1分31秒005秒、そして1分30秒962と順調にペースを上げていった。タイムアタックイベント2番手タイムでグループ本命と目された守屋遼太選手は、その背後から様子をうかがいながら周回を重ねていくも、先に石水優夢選手に2番手タイムを奪われてしまう。

 結果、ポールポジションは黒沢選手で、2番手は石水選手、3番手は守屋選手、4番手は藤井駿選手、5番手は小此木裕貴選手、6番手は渡辺大祐選手、7番手は太目勇斗選手となった。一時選考の際のタイムアタック結果でグループ4番手の黒沢選手とグループ3番手の石水選手が、上位2選手の前から準決勝レースをスタートする形だ。

 Aグループと同じく準決勝レースは15分間。各車牽制し合いながらローリングスタートとなり、黒沢選手と石水選手のフロントローの2台が並びながらターン1に進入。そしてターン5まで続いたホイール・トゥ・ホイールのバトルは黒沢選手が先に抜け出し、トップを奪取。2台の争いを後方で見ていた守屋選手が、ターン8で一瞬のスキをついて2番手に浮上。オープニングラップから目まぐるしい展開となった。

 数珠つなぎ状態で3周目を終えたあたりで上位3台の逃げの体勢が顕著に現れて、4~5番手との間にわずかなギャップが発生。藤井選手と小此木選手のどちらが4番手を獲れるかに注目が集まった。小此木選手はつかず離れずで藤井選手の真後ろで我慢の走りをしていたが、ターン12でミスによるハンドリングの乱れでコースオフ、6番手の渡辺選手にかわされてしまった。

 黒沢選手が堅実な走りでトップを走り続けている中、4周目には2番手争いにも動きが出た。ターン11のわずかなイン側のアキに石水選手がフロントノーズを突っ込み、守屋選手を一気にオーバーテイク。石水選手はここまでベストタイムを連発しており、少しずつ守屋選手との差を広げながらトップを追いかけていった。だが無念にも9周目でチェッカーフラッグ。黒沢選手がポジションを守り切った。

15名の選手の中で最年少となる16歳の黒沢選手がポール・トゥ・ウィンで準決勝レースBグループを制した。

群馬エキシビションマッチ

 UNIZONEがグラスルーツ活動として実施している“群馬エキシビションマッチ”が決勝レース前に行われた。eスポーツやUNIZONEがどんなものか知る場を提供するもので、eモータースポーツの体験を通してその魅力や楽しさを感じてもらうという取り組みだ。一般の方々が8名エントリーし、中には今回初めてeスポーツに触れる人も含まれていた。

 体験を目的としているため5分間のレースとなったが、これまで熱戦を繰り広げていた選考レースと同条件でスタートが切られた。思ったようにマシンを操作できずコースアウトやアクシデントが各所で頻発していたが、参加者は興奮冷めやらぬ表情でeスポーツを存分に堪能していた。

レースを終えて「良いレースがしたいので、もっと練習を積んで大会に出てみたいです」という前向きな感想も聞こえた。

決勝レース

 決勝レースはA/Bグループ上位4名によって争われる。まずは決勝グリッドを決める予選の前にマシンセッティングの時間が設けられ、タイヤ、エレクトロニクス、燃料&戦略、メカニカルグリップ、ダンパー、空力に至るまで、各選手ともスマートフォンに記録している自らのデータを参照しながらAssetto Corsa Competizioneに反映させていた。

 各車一斉にコースインした10分間の予選では武藤選手がいきなり1分30秒850で先陣を切ったものの、他選手は1分31秒台という序盤から苦しい展開に。ベストなグリッドを得るために、ピットインして別のセッティングを試行するシーンも見られた。最初に均衡を破ったのは守屋選手で、武藤選手に0.09秒差届かなかったが1分30秒台に突入する。

 しかし武藤選手も黙ってはおらず、1分30秒630と2番手以降との差を広げた。さらに残り1分を切ったところで1分30秒402というダメ押しのタイムを叩き出し、武藤選手のポールポジションが不動のものとなった。2番手は守屋選手、3番手は石水選手、4番手は黒沢選手、5番手は藤井選手、6番手は能條選手、7番手は森村選手、8番手は白川選手だ。

 2分のインターバルを経て30分の決勝レースが始まったが、マシントラブルが発生して公平性が保てなくなったためリスタートとなる。キレイな隊列でスタートした瞬間、藤井選手のマシンが押し出されてイン側ガードレールにクラッシュする波乱の幕開け。武藤選手が逃げていく体勢となったが、後方ではターン2立ち上がりで4番手の黒沢選手がスピンを喫していた。

 武藤選手、守屋選手、石水選手の上位3台を除き、順位が目まぐるしく変動したオープニングラップを終え、レースはしばらく膠着状態となる。動きがあったのは5周目に入ったところで、2番手争いをしていた守屋選手と石水選手がターン2からサイド・バイ・サイドで競り合いを見せた。その間に4番手争いのグループが接近するとともに、武藤選手がより後続を引き離して5秒以上のアドバンテージを得る。

 6周目に入ったところでピットウィンドウが開き、そのタイミングで最初にピットインをしたのは4番手までポジションアップしていた白川選手だった。続いて7周目に石水選手が、8周目に守屋選手と能條選手がピットイン義務をクリア。そしてピットアウトは石水選手、守屋選手、白川選手、少し離れて能條選手の順となった。

 先頭を走る武藤選手が11周目に入ったところでレース時間の半分が経過し、それを見計らったかのごとく武藤選手がピットインを果たす。続けて黒沢選手と藤井選手もピットに入り、森村選手のみがステイアウト。武藤選手はピットアウト組のトップを走る石水選手より前にコースに復帰することができた。前に入ることを許してしまった石水選手は13周目にピットインで順位を落としている。

 ピットウィンドウのオープン時間が1分を切り15周目に入ったところで暫定トップを走っていた森村選手がギリギリのピットイン。これで全員がピットイン義務を果たし、武藤選手がトップに躍り出て、守屋選手、白川選手と続いた。レース経過時間から周回数が残り2周計算となった時点で、武藤選手はすでに13秒のアドバンテージ。守屋選手と白川選手の2番手争いがヒートアップしていた。

 20周目にいよいよファイナルラップを迎え、圧倒的な速さを見せて武藤選手がトップチェッカー。続いて白川選手が真後ろにピッタリと張りつくプレッシャーを跳ねのけ、守屋選手がポジションを堅守して2番手ゴール。だが審議の対象となり、守屋選手はピットホワイトラインカットによる1秒のペナルティを受けて3位降格、2位は白川選手が獲得した。

 結果、FIA Motorsport Games 2024のEスポーツGTの日本代表の座は武藤選手がつかんだ。武藤選手は前回のFIA Motorsport Gamesにも出場しており、そのチャンスを再び得た形となる。2022年にフランスで行われた同大会ではファイナルで8位という成績を残しており、そのときのリベンジを果たしたいと語っていた。武藤選手のバレンシアでのさらなる活躍を期待したい。

武藤選手が1分30秒台を連発して安定した走行を見せる。周回ごとに後続を離しており、終わってみれば大差をつけていた。
決勝レース優勝は武藤選手。チェッカーフラッグを抜けて力強くサムズアップで喜びを表現していた。
2位は白川選手、3位は守屋選手。
ステージで行われた表彰式ではJeMOの出井宏明代表理事から武藤選手へ賞典のボードが贈られた。

2024 FIA Motorsport Games -ESPORTS GT- 日本代表選考レース powerd by UNIZONE
FINAL RACE 暫定結果

順位 ゼッケン 氏名 車種 タイム
1位 1 武藤壮汰選手 ポルシェ911(992)GT3R 31:23.275
2位 4 白川有輝選手 ポルシェ911(992)GT3R 31:38.991
3位 7 守屋遼太選手 ポルシェ911(992)GT3R 31:39.595
4位 3 森村拓矢選手 ポルシェ911(992)GT3R 32:02.448
5位 6 石水優夢選手 ポルシェ911(992)GT3R 32:10.315
6位 8 藤井駿選手 ポルシェ911(992)GT3R 32:13.942
7位 2 能條裕貴選手 ポルシェ911(992)GT3R 32:24.663
8位 5 黒沢和真選手 ポルシェ911(992)GT3R DNF

※ゼッケン7は、競技結果に対して1秒加算(ピットホワイトラインカット(外側))

「貴重な経験ができる機会をいただけて感謝しています」と賞典を受け取ってコメントした武藤選手。「Assetto Corsa Competizioneについてはコースとマシンを自宅で練習し、シミュレーターのハンドルとペダルの感覚は直前に同じ筐体で合わせ込んできました。今日はとくに大きな問題もなく自分のレースができたと思います」とレースを振り返った。「今回はオフラインで行われたことで、会場にいるライバルたちの想いが感じられる選考レースでした。その皆さんの想いをしっかり背負って、バレンシアで良いレースをしてきます」と意気込みを語ってくれた。
選考レースを見守っていたJeMOの出井宏明代表理事は、大会を総括して「日本代表を選考する場に主催として関われたこと、そしてそのプロセスから学びがあり、さまざまな収穫があった1日でした。一方で、世界大会の出場権をかけたガチの戦いを目の当たりにすることができ、すごく良かったなと思います」とまとめた。またJeMOが運営するUNIZONEについて「来シーズンのリーグ戦に向けて最終準備を行っています。エキシビションイベントはオフラインであと1回は年内に実施する予定です」と現段階での構想を語った。

フォト/長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

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