JAFがeモータースポーツ3か年計画/UNIZONE来期ビジョンオンライン発表会を開催

ニュース eスポーツ

2024年9月6日

JAFがeモータースポーツの振興および発展を目指した「eモータースポーツ3か年(2024~2026年)計画」のオンライン発表会を実施。これに併せて一般社団法人日本eモータースポーツ機構が主催するJAF公認eモータースポーツリーグ「UNIZONE」の来期ビジョンも公表された。

 各国がデジタルモータースポーツの推進を加速させていく中、JAFは2020年に国内競技規則を一部改正して「国内の自動車競技ならびにあらゆる形式のあらゆる仮想、電子自動車競技を管理統轄する唯一の権威である」ことを追記補完し、JAFモータースポーツ専門部会に“デジタルモータースポーツ部会”を設立した。

 その後、2022年には専門部会の名称を“eスポーツ部会”に変更し、eモータースポーツの振興や発展を推し進めるため、今日まであらゆる施策や検討の活動を精力的に行ってきている。そしてこの新時代のモータースポーツとなりうるeモータースポーツの認知拡大を図るため、8月29日、報道関係者向けにオンラインで発表会を実施した。

 この発表会は2021~2023年の間にJAFが取り組んできた活動を振り返りつつ、2024~2026年の3年先まで見据えたビジョンを公表する内容となっている。各種モータースポーツ媒体を始め、デジタル系メディアなど多数の報道関係者がオンラインで参加をしていた。

eモータースポーツの振興および発展を目指した「eモータースポーツ3か年(2024~2026年)計画」発表会の模様。事前に取材申請のあった報道関係者を対象としてオンラインで行われた。

eスポーツ部会ミッション

 発表会冒頭で「eスポーツ部会での活動を基調に、リアルモータースポーツ同様もしくはそれ以上にeモータースポーツが注目され、評価される環境を構築し、さらなるモータースポーツの裾野を拡大することで、モータースポーツの興味や関心につなげて参りたいと考えております」と、JAFモータースポーツ部の村田浩一部長から挨拶。

 続いて2024年よりeスポーツ部会に就任した上村昭一部会長から、eモータースポーツ施策検討に係る背景や経緯について説明がなされ、「ひとつはUNIZONEがこれから本格的に開催されていくタイミングであること、もうひとつはJAFとして目指す新しい世界の仕組みの構築を広く皆さんと共有し、さまざまな知見やご意見をいただきながら一緒につくり上げていきたいからです」と公表のタイミングと意図について語られた。

 2024年現在のFIAおよび欧州ASNの動向としては、eモータースポーツイベントの認定や、ライセンス制度制定の活動が始まっている。この流れを受けて、eスポーツ部会のミッションとして“トップを光らせ裾野を広げる”ことによる、eモータースポーツとしてのエコシステム(連携)の確立が挙げられた。これはeモータースポーツをきっかけとした、モータースポーツファン層の拡大を目指すことを意図している。

JAFはモータースポーツ振興において“トップを光らせ裾野を広げる”ことを掲げているが、これからの時代はeモータースポーツまでカテゴリーの幅を広げて実現してしていくことが使命であると謳っている。

2021~2023年の取り組み内容

 まず“トップを光らせる”具体的な施策としては、国内eモータースポーツのトップカテゴリーに位置づける、JAF公認eモータースポーツリーグ“UNIZONE”の設立がある。2023年3月に一般社団法人eモータースポーツ機構(Japan e-Motorsport Organization=略称:JeMO)とライセンス契約を締結、2023年12月に行われたキックオフイベントを皮切りに、数回のエキシビションイベントを経て、2025年からのリーグ開幕に備えている。

 もうひとつの施策は“eモータースポーツイベント認定制度”。これはJAFが制定するガイドラインの要件を満たし、JAFに申請を行ったeモータースポーツイベントに“JAF認定”というお墨つきが付与されることで、認知拡大と業界活性化を促す狙いがあるようだ。JAF認定を受けたeモータースポーツイベントには、JAF会員への告知、JAFイベントカレンダー・リザルトへの掲載といったメリットが与えられることになっている。

 またJAFはこれまでのFIAとの連携として、FIA eSports Commissionに参加して国際的な情報交換を行い、eモータースポーツに係る施策を検討してきたほか、FIA国際大会への日本代表選手の派遣も実施したと発表。例として2022年にフランスで行われたFIA Motorsport Games 2022 eSportsCupへの日本代表選考大会を開催し、武藤壮汰選手を派遣したことを挙げている。

現在、ファンやドライバーを始めとする関係者が“Unite(一体)”となり、クルマ・ゲーム・社会の新たな“Zone(領域)”に挑戦していくビジョンを掲げた、JAF公認eモータースポーツリーグのUNIZONEが設立されている。

2024~2026年のビジョン

 今後JAFが目指したい理想像は、トップカテゴリーリーグとしてUNIZONEを頂点に据えたeモータースポーツの競技ピラミッドを構築することだ。まずはその土台としてFIAと連携を図りつつ、2026年までに競技開催規定や格式を定めて中間層を構築していき、体験会の実施などで“裾野の拡大”もカバーしていくことを目指している。

 そして“トップを光らせ裾野を拡大”させるためにこれから取り組むべきは、トップリーグUNIZONEをさらなる発展に導くこと、eモータースポーツの裾野拡大施策、リアルとの接点創出、FIAとの連携・整合が必要だと説いている。これら施策の実行に向けて、2024~2026年に行うべき具体的なアクションプランを用意していると明かした。

 中でもJAFならではの取り組みと言えるリアル(実車競技)との接点創出に注目してみたい。すでにいくつかの自動車メーカーの取り組みで実証もされている、eモータースポーツプレイヤーへのリアルモータースポーツ体験機会の提供がある。また、ドライバーの領域以外でのeモータースポーツプレイヤーの参入が実現するとすれば、非常に興味深いところだ。

JAFは2024~2026年にかけてのeモータースポーツにおける3か年のアクションプランを公開。今後はここに挙げられた各施策の実行に向けての動きが加速していくことが予想される。

UNIZONEの取り組み

 eスポーツ部会が3か年計画について発表を行った後、次はJeMOの井出宏明代表理事よりUNIZONEの来期計画等の発表が行われた。最初はUNIZONEのコンセプトや成り立ちといった概要が説明され、現在掲げているビジョンやミッションを提示。先に発表されたeスポーツ部会が目指しているビジョンとリンクしていることが強調された。

 これまでの取り組みについて、まずはリアルとバーチャルの融合をテーマに行われた日本レースプロモーション(JRP)とのパートナーシップをピックアップ。JRPは国内最高峰のフォーミュラレースカテゴリーであるスーパーフォーミュラを運営主催する団体で、UNIZONEが今日までに行った渋谷・高崎・有明の3イベントのエキシビションマッチにはこのJRPの協力があり、国内トップレーサーの参戦が実現した。

 それに対をなす形でeモータースポーツレーサーもエントリーしており、とくに2024年3月に開催された「UNIZONE EX MATCH at E-Tokyo Festival 2024(東京ビッグサイト)」では、本来運転免許を取得できない14歳の石野弘貴選手が活躍したことを紹介し、実車レース以上に幅広い人に輝けるチャンスがあることを示した。

 またUNIZONEの次回のイベント告知もあり、9月26~29日に千葉県千葉市の幕張メッセで開催される「東京ゲームショウ 2024」にUNIZONEがブース出展することも発表された。出展の目的としては、クルマやレースへの関心がある層だけでなく、多彩なゲームジャンルに興味を持つゲームファンにもUNIZONEを通じてモビリティやレースの楽しさ、魅力を知ってもらうことを主眼としている。

 これまでのエキシビションで行ってきたレーシングシミュレーターでのデモ走行や体験会、レース対戦ステージだけでなく、実車のスーパーフォーミュラ車両の展示や乗車体験も行うとのこと。加えてリアルのレーシングドライバーと、eモータースポーツで活躍するeレーシングドライバーを交えたトークセッションも予定しているという。

 もちろんレーシングシミュレーターを使ったコンテンツも充実。会場にゲストとして呼ばれたレーシングドライバーとeレーシングドライバーによるタイムアタックイベントを実施し、そのタイムに来場者がチャレンジできる催しや、プロによるデモレース対戦も企画中とのこと。

 既存のモータースポーツファン、eモータースポーツファンのみならず、ゲームカルチャーを愛する層にも広くUNIZONEを認知してもらうことが大きな狙いだ。これをきっかけに、ゆくゆくは将来のリアルモータースポーツファン拡大につながっていくことが期待できそうなイベント出展と言える。

この発表会後に発信されたプレスリリースによると、UNIZONEブース出展を記念した公式Xフォロー&公式LINEお友達登録プレゼントキャンペーンを実施すると発表があった。厳正なる抽選のうえ、20名に東京ゲームショウ2024の入場券が当たるという内容だ。詳細はUNIZONE公式ホームページを参照してもらいたい。

2024年3月に東京ビッグサイトで開催されたE-Tokyo Festival2024内で、UNIZONEにとって2回目となるエキシビションイベントが開催されている。今回の東京ゲームショーではブース内に実車を用意するなどよりパワーアップした展示となるだろう。

UNIZONE 2025シーズン計画

 今回のオンライン発表会の最後に、UNIZONEの2025シーズン計画が発表された。リーグとして本格始動する初年度の2025年は、1シーズン制で開催されるとのこと。全6戦中、2月に行われる開幕戦のみ会場に選手を集めるオフライン形式で開催され、残りの5戦はオンラインで開催するハイブリッド開催形式を予定しているそうだ。

 また開幕戦のオフライン大会は土日祝、オンライン大会は平日夜の開催予定となっている。このような形態にする理由として、リアルのレースは集客の関係上で土日開催が多いが、オンラインのレース開催によって平日にもモータースポーツを楽しんでもらえる環境づくりになればという願いも込められているという。

 気になる大会については「国際Bライセンス以上を保有し、リアルモータースポーツで活動するドライバー」を1人以上、「eモータースポーツの主要タイトルにおける規定以上のレーティングを満たすドライバー」を1人以上入れた、当初6チームによる競技がUNIZONEの基本大会フォーマットとなる。

 使用されるシミュレーターソフトは「Assetto Corsa Competizione」と「iRacing」の2タイトル。採用ソフトの選定にはリアルのレーシングドライバーの意見が取り入れられ、FIAが国際大会のタイトルで使用するAssetto Corsa Competizioneと、レーシングドライバーから高い評価を得ているiRacingが選ばれることとなった。

 ビジョンとして掲げるピラミッドの土台部分を形成するグラスルーツの活動として「Experience(体験価値)」「Social Action(社会価値)」「Learning(学ぶ・学習価値)」の3本柱を提示。イベント開催の度に行っているレーシングシミュレーター体験のほか、今後はレーシングシミュレーターを活用した交通安全教育などの活動、そしてレーシングシミュレーターで使用するゲーム内の車両やコースを作成するゲームプログラミングを学ぶ体験なども行い、eモータースポーツの認知と社会的地位向上に努めていくことが示された。

2025年から始動するUNIZONEは、Rライセンスとeライセンスという2種類の認定ドライバーで構成されるリーグとなる。初年度は全6戦で構成され、オンラインとオフラインで大会が実施される。

 2026年までの見通しを発表したeスポーツ部会と、2025年より本格的にリーグ開催されるUNIZONEの動向に、リアル・バーチャル問わずモータースポーツファンはぜひ注目してもらいたい。

JAF本部にて、オンライン発表会を終えた直後のJeMO出井代表理事とJAFモータースポーツ部の村田浩一部長。

eモータースポーツ3か年(2024年~2026年)計画発表会資料

フォト/宇留野潤、遠藤樹弥 レポート/岡田衛、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ