WRC第10戦アクロポリス、勝田貴元選手は無念の2戦連続デイリタイアを喫す
2024年9月17日
第10戦を迎えた2024年FIA世界ラリー選手権(WRC)は9月5~8日、ギリシャの首都アテネから北西へ約200kmの距離に位置する都市、ラミアを拠点に「アクロポリス・ラリー・ギリシャ」を開催した。WRC屈指とも言われているラフグラベル・ラリーに、日本人ドライバーの勝田貴元選手もTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のマニュファクチャラーポイント対象ドライバーとして、コ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手とGR YARIS Rally1 HYBRIDを駆り、参戦した。
2024年FIA世界ラリー選手権 第10戦
アクロポリス・ラリー・ギリシャ
開催日:2024年9月5~8日
開催地:ギリシャ・ラミア周辺
9月5日・シェイクダウン / 6日・デイ1 / 7日・デイ2
2021シーズンにWRC復帰したアクロポリス・ラリーは勝田貴元選手にとって相性の良いラリーで、これまでに2シーズン連続で6位入賞を果たすなど、安定したリザルトを残してきた。
「今回のギリシャは週末の気温が高くなることが予想されていたので、非常にタフなラリーになると思っていました。そのため、しっかり準備をしてきたおかげで、シェイクダウンからクルマのフィーリングはいい状態でした」と語るように、勝田貴元選手は5日に行われたシェイクダウンで好タイムを連発。最初の走行で2番手タイムをマークすると、2回目の走行ではベストタイムを叩き出し、最終的には総合2番手で終えた。それだけに「うまくマネジメントしていければ、いい結果を出せるんじゃないか…… というふうに思っていました」と、振り返ったように好感触を得ていた。
事実、勝田貴元選手は6日のデイ1でも、素晴らしい立ち上がりを見せた。「ダストの影響もあって、かなり抑え気味になってしまいました」とのことで、オープニングステージのSS1こそトップから2.7秒遅れの4番手だったが、「いいフィーリングを継続して走ることができたのでタイムも良かったし、総合順位でも2番手に上がることができました」と、語ったSS2ではベストタイムをマークした。
勝田貴元選手は躍進が期待される立ち上がりを見せたが、続くSS3で予想外のハプニングが発生した。「スタートから約7kmの森の中にツイスティなセクションがあるんですけど、ペースノートの聞き間違いというか、イメージを勘違いしました。タイトなコーナーにオーバースピードで入ってしまって、外側の木に右リアをぶつけてしまいました」と、痛恨のミスからデイリタイアを決断することになったのである。
まさに勝田貴元選手にとっては波乱の幕開けとなったが、チームの懸命なサービスワークにより、7日のデイ2に再出走を果たした。しかし、「出走順的にはトップ出走となったので、苦しい戦いが続いていました」とのことでSS7で7番手タイム、SS8で8番手タイム、SS9で6番手タイムと“路面の掃除役”に苦戦。SS11とSS12で続けて4番手タイムをマークしたものの、総合40番手でデイ2を終えた。
9月8日・デイ3
出走順による苦しいラリーは8日のデイ3でも続いた。スーパーサンデーとパワーステージでポイント獲得を狙っていた勝田貴元選手だったが、この日も先頭スタートにより路面の掃除役となり、ペースを上げることができず。
デイ3のオープニングステージ、SS13は6番手タイムどまり。次のSS14で4番手タイムをマークした勝田貴元選手だったが、パワーステージとして設定されていたSS15は「プッシュしていたんですけど、かなり荒れたコンディションでパンクをしてしまいました」とのことで、5番手タイムで最低限のポイントは獲得。スーパーサンデーとパワーステージを合わせて4ポイントの獲得にとどまり、アクロポリス・ラリーを終えることになったのである。
まさに勝田貴元選手にとっては悔しいラリーで、「もともとギリシャは得意意識のあるラリーではなかったんですけど、シェイクダウンからクルマのフィーリングが良くて、SS1からSS3までいい感じで走れていました」とのこと。続けて「クラッシュしたSS3に関しても限界までプッシュしたわけではなかったし、コントロール下で走れていましたからね。ペースノートを間違えてリタイアしたので、フラストレーションが溜まる悔しいリタイアとなりました」と、デイリタイアした場面を振り返った。
その一方で、「唯一、ポジティブな点があったとすれば、苦手意識のあるラリーでスピードを発揮できたと思いますし、足りない部分を少しづつ見つけてくることができたんじゃないかな… というふうに思っています」とも勝田貴元選手は語った。
さらに「いままではリアのトラクション不足に悩んでいたんですけど、テストでいろんなセットアップを試したことで自分の欲しいところにクルマがきているように思います」と、車両のセットアップでの変化を語った。「あとはフィンランドのような高速ラリーと違って、ギリシャのようなラリーは遅すぎるように思えるようなペースで走っているんですけど、実際はそのペースが一番速くて、感覚と実際のタイムのギャップを埋められてきたように思います」とのことで、残念な結果に終わった中でも勝田貴元選手は手応えを掴むことができたようだ。
ちなみにアクロポリス・ラリーでのTGR-WRT勢は、セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組がターボのトラブルによってデイ1で出遅れ、さらにSS15でタイヤトラブルに見舞われて、総合16位と低迷。エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組も同じくデイ1でターボトラブルに見舞われ、デイ2でのデイリタイアも影響して総合18位に終わった。
そのため、勝田貴元選手は「今大会はサバイバルラリーで、チーム全体で苦しいラリーになってしまいました。今シーズンの終盤に向けて僕自身もそうですが、チームもみんなで集中して、いい結果を求めていきたいと思います」と、帯を締め直していた。
「シーズン終盤に向けてはラリー・ジャパンが一番のターゲットで、日本で自分のパフォーマンスを最大限に発揮できるようにしたいです」と、語る勝田貴元選手だが、第11戦「ラリー・チリ・ビオビオ」は欠場。気持ちを切り替えて、10月17~20にドイツとオーストリア、チェコにまたがって開催される第12戦「セントラル・ヨーロッパ・ラリー」での奮起に期待したい。
今季のアクロポリス・ラリーはHYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM(ヒョンデ)でi20N Rally1 HYBRIDを操る、ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ組が今季2勝目を獲得。チームメイトのダニ・ソルド/カンディド・カレーラ組が2位、オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組が3位に続いてヒョンデ勢が表彰台を独占、各ランキングでのTGR-WRT勢との差を拡大させた。
フォト/TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Media House レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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