秋田の地で群馬の若手が躍動。田部井翔大BRZが東日本地区戦初優勝!
2024年9月17日

JAF東日本ラリー選手権は、8月24~25日に第6戦「羽州ラリー」が、秋田県秋田市をホストタウンとして開催された。
2024年JAF東日本ラリー選手権 第6戦
2024年JMRC東北ラリーシリーズ 第3戦
羽州ラリー2024
開催日: 2024年8月24~25日
開催場所: 秋田県秋田市
主催: AKITA
今年の東日本地区戦は6月末に予定されていた第5戦が諸事情により開催取り下げとなったため、10月26日に長野で開催される第7戦八子ケ峰ラリーで終了する全6戦のシリーズとなる予定だ。今回の羽州ラリーは実質的にはシリーズ第5戦としての開催となる。
今回のラリーの主催クラブ、モータースポーツクラブあきたは、近年は横手市をホストタウンとして全日本戦、地区戦を開催してきたが、今年は秋田市周辺にエリアを変更。名称も新たに「羽州ラリー」と名付けた。秋田市郊外の山間部にある約7kmのターマックロードをSSとして設定。サービスパークは秋田市内西部に位置し、日本海に面した広大な旧秋田空港跡地に置かれるという、まったく新しいラリーとして生まれ変わった。
SSは基本的には峠越えの林道で中盤は尾根伝いの稜線を走る。まだグラベルだった20数年前に一度、ラリーで使われたことはあるが、舗装になってからは初めてラリーでSSとして設定された。通常、稜線に沿って走る道は勾配もなくなり、コーナーのRも緩めになるものだが、今回の林道はこの中盤に入るとアップダウンが続き、クレストも出てくるという特徴的なレイアウトを持つ。
ステージの前半は陽当たりも良く、道幅はそれほど広くはないものの、乾いたターマックが待ち受ける。しかし鬱蒼とした森の中を走る後半区間に入ると道幅が狭くなり、路面も湿って前半とは趣が異なってくる。ラリーはセクション1でまず順走で2回走った後、サービスを挟んでのセクション2では逆走で2回走ってゴールという設定だったが、前半でハードな区間を通り抜ける逆走のSS3で、開始早々競技車がコースオフ。道を塞いだため、このSSは事実上のキャンセルに。結果、3本のSSのタイムで勝敗が競われる形となった。

BC-1クラス
今大会最多となる11台がエントリーしたBC-1クラス。注目は東日本のトップラリーストとして知られる関東の上原利宏選手が参戦してきたことで、上原選手は昨年、全日本ラリー選手権最終戦でクラッシュした三菱・ランサーを復活させて今季初のラリーに臨んだ。その上原/佐瀬拓野組は、「本来の足回りはまだオーバーホールに出しているので、今日は借り物の足回りを暫定で付けてきました」と言いつつもSS1では、ベストタイムの渡辺謙太郎/箕作裕子組に0.3秒差で食らいつくセカンドベストをマークする。
SS2では渡辺/箕作組がSS1から5.1秒もタイムを上げて連続ベストを奪取するが、上原/佐瀬組は逆に1.2秒のタイムダウンに終わり、両者の差は6.9秒に広がることに。上原/佐瀬組は最終のSS4では再び渡辺/箕作組に0.5秒差に迫る走りを見せるが、SS2での大差が響いて2位に留まり、渡辺/箕作組が今シーズン初優勝を達成した。
「上原さんにはいつもSS1でぶっちぎられるんですけど、今日は勝負できましたね(笑)。でも秋田の、初めて使う道で競うラリーは3連勝中なんですよ。初見のSSをどう走るか、という今までの経験を生かせたので勝てたんじゃないかと思います」と渡辺選手。
「SS2もいつも通り淡々と走っただけなので、なぜタイムが上がったか、分からない。ただドライバーが狙った所を攻められるクルマになっているし、最近は箕作さんはじめ、全日本のコ・ドライバーの方々に色々とアドバイスを受けながらペースノートの精度を高めているので、今日も色々と難しい道だったけど、ノートで対応できた感じはありましたね」と振り返った。
一方、復活初戦を2位で終えた上原選手は、「自分にとっては得意な道だったけど、どんどん乾いて道がきれいになってしまったので、ダメでしたね(笑)。暫定仕様の足回りもヨレすぎて攻めきれなかった。もう一度、出直して全日本の最終戦では去年のリベンジを果たしたいですね」とひとこと。前戦からの連勝を狙った東北の雄、橋本奨/吉田知宏組は3位。「タイムの詰め所を掴めないまま、終わってしまった感じですね。クレストも難しかった」と橋本選手は苦戦を強いられたラリーを振り返っていた。



BC-2クラス
10台がエントリーしたBC-2クラスも関東からの“刺客”達がバトルの主導権を握った。SS1のベストをさらったのは約1か月前のJMRC群馬ラリーシリーズで初優勝を飾った田部井翔大/小坂典嵩組のスバル・BRZ。「ブレーキングで頑張り過ぎて、行き過ぎた所が何か所かあった」という走りながらも、初の遠征となったラリーでいきなり総合ベストの快走を見せる。2番手にも同じ群馬戦を戦う岡戸俊樹/松本優一組のトヨタ・86が7.4秒差で続き、ともに20代前半の若手が速さを見せつけた。
田部井/小坂組はSS2も連取し、今度は同じ群馬で全日本ダートトライアルドライバーの佐藤史彦/伊東美紀組のトヨタ・セリカが4.2秒差で2番手につけるが、岡戸/松本組は2位をキープしたままセクション2へ。田部井/小坂組は最終のSS4もベストで締めくくってゴール。3本のSSを完全制覇し、総合でも3位に入る堂々の走りを見せて、東日本地区戦初優勝を飾った。
「今回のような細かいショートコーナーが続くような道は、地元の群馬のラリーにはないので難しかったですが、SS2で何となくコツが掴めたので、その後はリズムよく走れました」と田部井選手。最終のSS4では田部井/小坂組にキロ1秒を切る所まで迫って2位でゴールの岡戸選手は、「ボディを見直してきて、実質シェイクダウンの一戦だったんですが、こんな成績が残せて自分でもビックリです。パキパキと曲がってくれるクルマになったので、次の群馬戦では田部井選手との差をもっと詰められるよう頑張りたいですね」と振り返っていた。



BC-3クラス
BC-3クラスも、このクラスの常勝男である細谷裕一選手に加え、ホンダのシティ使いとして知られた栗原智子選手がトヨタ・ヤリスに乗り換えて、関東から遠征してきた。しかしラリーが始まってみると圧倒的な速さを見せたのはやはり細谷/蔭山恵組で、SS1から大差をつけてのベストタイムをマーク。終わってみればトヨタ・ヴィッツながらも総合5番手のタイムで上がって優勝。第3戦からの連勝を3に伸ばした。
「他の選手のタイムは見てなかったので最後まで全開で走りました」という細谷選手は、「うねっている所もあって、着地のブレーキングを間違えると危なかった。何か所かインカットもしましたけど、それがタイムアップに繋がったどうかは分からない。最後まで見切れない難しい道でしたね」とひとこと。最終SSで岩手の石倉英昭/石倉あすか組を振り切った栗原/平井孝文組が2位に入り、このクラスも関東勢がワンツーフィニッシュを飾った。



BC-4クラス
BC-4クラスも久々のニューカマーの参戦で賑わった。“ゼロクラウン”を駆るラリーストとして知られた津田宗一郎選手が、新たに後継のS21型3.5L+ハイブリッドのトヨタ・クラウンに車両をチェンジし、AE車両+AT車両対象のこのクラスにエントリーしてきたのだ。
「ラリータイヤではどうかなという感じだけど、普通の林道でスポーツラジアルを履かせたら、結構面白いんじゃないかと思っていた」という、その津田/堀秀和組のクラウンは、SS1でいきなりベストタイムをマーク。このクラスの絶対王者、室田仁/鎌田雅樹組の度肝を抜いた。
しかし室田/鎌田組はSS2から反撃を開始。ここで11.8秒、津田/堀組をぶっちぎって首位を取り返す。最終のSS4も、13.1秒差で津田/堀組を下してゴール。トータルで22.6秒の差をつけて逃げ切り、シーズン3勝目をマークした。
「元々、スロースターターなんですが、今回は新しく履くタイヤということもあって、様子見した部分もあったんです。でも、いきなり負けて、正直焦りました」とは室田選手。「SS2は後半区間が危ないんですが、踏み切ったし、SS4も全開でした。今年から変えた別タンの足回りが、ダート用なんですけど舗装でも良くて、アタマがスッと入ってくれるので今回も助けられましたね」と最後は胸をなでおろしていた。
「室田さんを本気にさせてしまいましたね」と苦笑の津田選手は、「重くはなってますけど、今度のモデルはバッテリーが効いている間はパワーウエイトレシオでは上回るので、可能性は感じています。セッティングはまだ試行錯誤中で、下り区間での車重のコントロールもまだ見極めできていないんですが、あとキロ1秒は速くなるんじゃないかと思っています」と今後に期待を寄せた。2か月後に控える最終戦での走りも注目を集めそうだ。


フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部