雨のSUGOでのFIA-F4は第9戦で熱戦も、翌日の第10戦はレースができず

レポート レース

2024年10月10日

スーパーGTシリーズのサポートレースとして全戦が開催されるFIA-F4地方選手権は、鈴鹿サーキットで行われるはずだった第7・8戦が台風10号の接近によって、12月6~8日に開催延期となった。そのため、約1カ月半ぶりとなる2連戦が、9月20~22日にスポーツランドSUGOで行われた。

2024年FIA-F4地方選手権 第9・10戦
(2024 SUPER GT Round 6内)

開催日:2024年9月20~22日
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県村田町)
主催:株式会社菅生、SRSC、株式会社GTアソシエイション

 SUGOでのトピックスはFIA-F4が初の試みとして、第10戦でチャンピオンクラスとインディペンデントクラスを分けて決勝を行うことだ。まずはその経緯と今後について、株式会社GTアソシエイション(GTA)の服部尚貴レースダイレクターにうかがった。

「おかげさまでFIA-F4は台数も多くて盛況にやらせてもらっていますが、今年からインディペンデント“カップ”が、“クラス”に昇格して別々のクラスになったので、分けて開催できないかと検討してきました」とのことだそうだ。

 SUGOで決行したのは、「後方のグリッドが坂道発進になってしまいますから。それとサポートレースが他に入っていないということで、一回トライさせてくれませんかとお願いして、快諾していただけました」との理由があったようだ。

「本当は、土曜日(第9戦)もそうしたかったんですが、イベントも含めて時間的にちょっと難しいということで、初のトライとして1戦だけ分けました。それによって、ジェントルマンたちも前の方からスタートできるから、モチベーションにもなるでしょう」とも語ってくれた。

 実際、レース前のジェントルマンドライバーに話を聞くと歓迎の声は多く、これからももっとやってほしいという声もあったほどだが、服部ダイレクターによると「これがずっと続くというわけではないですが、一回トライしてみようというのが実際のところです」とのことだ。

 その理由について「GTのサポートレースでもあるので、その中でどう割り振るかという問題もあります。全部のレースを分けてというのはなかなか難しいですが、またチャンスがあったら。こういうのが年に一回でもあることで、それはそれでひとつの楽しみになってくれれば、とも思っています」と、服部ダイレクターはまとめてくれた。

予選

 専有走行初日の19日は暑く、ドライコンディションが保たれたものの、20日の専有走行は終日ウェットコンディションとなった。しかも、雨足は強まったり弱まったりを繰り返し、特に全車が走る3回目の走行では赤旗が6回も出て、連続周回が許されたのは最後の15分だけだった。

 21日の予選も同様で、チャンピオンクラス、インディペンデントクラスともに赤旗が振られた。そんな困難な状況において、先に行われたチャンピオンクラスでベストタイムの1分42秒135と、セカンドベストタイムの1分42秒433を早い段階からマークした佐野雄城選手が、第9・10戦ともにポールポジション(PP)を獲得した。

 佐野選手は「予選自体、感触はすごく良かったです。昨日の専有走行で苦戦した部分、気になっていたことを予選では改善できたのがポジティブですね。やっぱり雨はコンディションが変わるので難しかったですが、早めにいったことも正解でした」と予選を振り返った。さらに「2戦連続PP獲得で決勝は2レースとも一番前からスタートできるので、それをうまく活かして2連勝できるように頑張ります」と、決勝への意気込みも語った。

“早い段階”と強調したのは、金曜日よりもかなり温度が低く、じっくりタイヤを温めていたドライバーも少なくなかったことに起因する。しかし、それは裏目に出てしまう。計測を5分残した段階で赤旗が出され、そのまま予選が終了となってしまったからだ。

 赤旗が出なかったり再開されたりしていたら、また違った展開になっていたかもしれない。なお、フロントロウは2戦とも大宮賢人選手が獲得し、3番グリッドは第9戦を佐藤凛太郎選手が、第10戦を卜部和久選手が分け合うことになった。

悪天候の中での予選となったが、チャンピオンクラスは佐野雄城選手(TGR-DC RS F4)が第9・10戦ともにポールポジションを獲得した。

 続いてインディペンデントクラスの予選が行われ、こちらはまだ1周の計測を済ませた段階での赤旗だったため、再開が許された。しっかりタイヤに熱を入れられた今田信宏選手が1分47秒797、1分48秒533をマークし、やはり佐野選手と同じく2戦連続でPPを獲得した。

 今田選手によると「ほぼクリアがとれて、キッチリと走ることができました。ただ、若手(チャンピオンクラス)が昨日と同じぐらいのタイムを出していたので、コンディションが同じぐらいの感覚で行けるのかなと思っていたら、全然滑っていましたね。昨日よりはるかにプッシュしているんですが、感覚的には違っていて、タイム出すのは難しかったです」と、苦しい路面の中でのアタックだった様子。

 そして、「今シーズンはしっかりポイントを獲っていきたいので、あまり無理して飛び出したりしないように、まとめていきたいと思います」と、今田選手は決勝の展望も語った。2番手は第9戦をKEN ALEX選手、第10戦をDRAGON選手と分け合った。

インディペンデントクラスも2戦とも今田信宏選手(JMS RACING with B-MAX)がトップタイムもセカンドベストタイムもマーク。第9戦のクラストップグリッドと、初の単独開催となる第10戦のPPを獲得した。

第9戦決勝

 昼までにはなんとか雨は弱くなってくれないものか…… という願いは少しは天に伝わったのか、第9戦は定刻どおりに全車両がグリッドに並べられた。ただし、セーフティカー(SC)スタートでの開始という条件つきではあった。

 SCの先導は4周目まで続き、5周目に入ったところでバトルに突入。佐野選手、大宮選手、佐藤選手と予選順で1コーナーに連なって飛び込み、これに続いたのが予選4番手の白崎稜選手だったが、4コーナーでスピンを喫して大きく順位を落としてしまう。これで卜部選手が4番手に浮上するも、前の3台とは間隔が空く。

 SCが解除されたとはいえ、厳しい路面状況に変化はなく、続いて罠にかかってしまったのが大宮選手だった。最終コーナーで「水に乗ってしまって」と、コースを飛び出してしまったものの辛うじて姿勢を乱さずに済むが、その脇を佐藤選手がすり抜けていく。この間に佐野選手が一気にリードを広げるも、更に試練は続く。

 なんと佐野選手が4コーナーで失速し、続くS字で佐藤選手と大宮選手が襲いかかる。しかし、その後の佐野選手は冷静で、しっかりガードを固めていく。逆に後続のふたりはスライドが大きく、逆転は叶わなかった。

 その直後、インディペンデントクラスの車両がSPコーナーでスピンして止まり、8周目から再びSCが出動し、スタートから30分という決勝終了の時間が近づいてくる。SCに先導されたままフィニッシュでもおかしくなかったが、12周目にSCが解除となり、残るは1周か2周かというタイミング。

 先のリスタートではSPコーナーのアウトから加速した佐野選手だったが、今度のリスタートは同じSPコーナーでもインの入口から。この改善で、コントロールラインを通過した時には佐藤選手に対して1秒近い差をつけていた。

 その後方で4番手を争っていたのが卜部選手、野村勇斗選手、鈴木斗輝哉選手、梅垣清選手の4選手。SCが再度入る前は単独走行していた卜部選手だったが、3選手の接近を許してしまった。もちろん4番手の座を狙っていた野村選手ながら、仕留めきれずに鈴木選手に抜かれたばかりか、ハイポイントコーナーでも梅垣選手の先行を許すという痛恨の展開に。

 結局、最後に許されたバトルの機会は、あと数秒というタイミングで1周のみに。逃げ切った佐野選手が第1戦以来となる2024シーズン2勝目を挙げ、2位の佐藤選手がシリーズ初の表彰台へ。そして大宮選手は3位で2戦連続の表彰台獲得となった。

 勝利を収めた佐野選手の第9戦は、「開幕戦を勝って、そこからなかなか勝てなくて、表彰台にも上がれずで……。久々の優勝なので、すごくうれしいです。けっこう滑りやすかったですね、僕もヘアピンでやってしまいましたし」と、喜びとともに反省もあるレースだったようだ。

 さらに、「明日(第10戦)も狙っていきます。ドライとウェット、どっちがいいか? う〜ん、ドライでレースしたい気持ちもありますけど、ウェットで課題を残しちゃったので、そこを改善していきたいという気持ちもあります。どちらのコンディションでもいいように、準備していきます」と、成長過程のドライバーらしいコメントを発していた。

 一方、佐藤選手は「ポディウムに上がれたのは良かったですね。3番手から順位を落とさず、上がれたのは良かったと思います。でも追いついてはいたんですけど、抜けるほどのスピードがなかったのが悔しいですね」とシリーズ自己最上位にも満足していない様子だった。

第9戦のチャンピオンクラスは最終盤でセーフティカー解除後の後続による攻勢をしのぎきった佐野選手が、ポール・トゥ・ウィンで第1戦以来の勝利を挙げた。
チャンピオンクラスの佐藤凜太郎選手(PONOS RACING MCS4、下)は佐野選手(上)に並びかけることもあったが、猛攻は実らず。2位でシリーズ最上位を更新(左)。佐藤選手のチームメイト、大宮賢人選手(PONOS RACING MCS4)が3位を獲得した(右)。
第9戦チャンピオンクラス表彰の各選手。

 インディペンデントクラスは、今田選手のひとり舞台。一度もトップを譲ることなく、今季2勝目をマークした。「予選がすべてのレースでした。やっぱり朝と同じで、気温が低いからですかね。グリップ感が練習走行の時ほどなくて、コースに留まっているのが難しかったです。私はトップを走っていたので、あまり無理せず、後ろを見ながら」と予選に続き、厳しい路面だったようだ。

 2位はチャンピオンクラスの佐藤選手と同じくシリーズ初表彰台となるKEN ALEX選手で、3位もDRAGON選手と、トップ3はスターティンググリッドそのままの結果となった。

第6戦までと同じく、チャンピオンクラスとの混走となったインディペンデントクラスの第9戦決勝は、今田選手が2番手以下を寄せつけず、優勝を果たした。
予選から好調で、インディペンデントクラスの2番手からスタートしたKEN ALEX選手(BUZZ RACING)が2位を守り抜いた(左)。クラス3番手スタートだったDRAGON選手(B-MAX TEAM DRAGON)もスタートの順位から変わらず、3位でフィニッシュした(右)。
第9戦インディペンデントクラス表彰の各選手。

第10戦決勝

 インディペンデントクラスとチャンピオンクラスが分けられて、初めて決勝が行われた第10戦だったが、結論から言えば完全な肩透かしとなってしまった。22日になっても雨はやまないどころか、より強く降っていたからだ。先に行われたインディペンデントクラスはSCスタートとなり、4周の先導の後、天候の回復が見込めないことから赤旗が出され、短いピットでの待機から間もなく終了のアナウンスとなった。

 ハーフポイントながら、決勝は成立。「レースウィーク通じてですけど、紳士協定で予選をポイント順に出られた(出走できた)のが、僕にとって全てプラスになったと思います。ポールが2戦とも獲れて、最終的にバトルせずに終わりましたけどね」と、今田選手は優勝を果たすも複雑そうに語った。

 天候について、今田選手は「この状況でレースになったら、逆に難しさは感じていました。特に最終コーナーが湖のようになっていたので、始まるとは思っていませんでしたが、勝負になったらどうなるかシミュレーションはしていました」とのことだった。ちなみに「明後日が誕生日で、もう還暦です」と、メモリアルな一戦でもあったようだ。

 ポイントリーダーだったKENTARO選手は第9戦でリタイア、第10戦を9位で終えたため、ランキング3番手に後退。連続で2位を獲得したDRAGON選手が、今田選手と0.5ポイント差のトップに立ち、KENTARO選手はそれでもDORAGON選手から4ポイント差に留め、三つ巴の王座争いとなっている。

前日に開催された第9戦に続き、雨の中での開催となった第10戦。SC先導で4周し、成立となったインディペンデントクラスはスターティンググリッドと変わらず、左から3位のALEX選手、2連勝の今田選手、2位のDRAGON選手のトップ3となった。
第10戦インディペンデントクラス表彰の各選手。

 続くチャンピオンクラスの決勝は、10分のディレイを繰り返し、結局20分遅れでのSCスタートとなった。しかも先導は1周のみ。2周目を終える前に赤旗が出され、やがて終了が発表されて不成立となってしまった。

 PPからスタートを切った佐野選手は、「コンディションがすごく悪かったので、この判断は正しいと思います。この中でレースしても難しかったと思う反面、やっぱり自分としてはレースしたかったという気持ちもありました。課題を昨日は残したので、そのあたりを改善して、今日は引き離して勝ちたかったですね」と、素直な心境を述べていた。

 そして「次のオートポリスでは、どんなコンディションでも自分の走りをして、2連勝できるように頑張ります」と、九州の地での第11・12戦を睨んだ。

 2番グリッドを得ていた大宮選手は、「チャンスでしたが、どうしようもないですね。次のオートポリスはテストに行ったんですけど、いい感触でした。自分の修正できるところを改善して臨めたら優勝も狙えると思うので、今後こそ優勝目指して頑張ります」と、より意識が貪欲になった様子だ。

 3番手スタートで、シリーズ最上位更新の可能性もあった卜部選手は、「やっぱりレースをしたかったです、雨には自信があったので。今年、ドライのパフォーマンスが全然出せていない中で、雨に助けられたなというイメージの週末でした。次のオートポリスも、内心では『雨、お願いしたいな』と思っています。得意なコースですし、走っていてすごく楽しいコースなので」と、すでに視線を次戦に移していた。

雨は止む気配を全く見せない中、チャンピオンクラスの第10戦がSC先導でスタート。しかし、2周目のコントロールラインを過ぎることなく赤旗が振られ、不成立となってしまった。
チャンピオンクラスの第10戦決勝は赤旗により終わってしまったものの、暫定表彰式が行われた。左から大宮選手と佐野選手、卜部和久選手(TGR-DC RS F4)が表彰台に登壇した。なお、不成立のためポイントは付与されない。

 SC先導のまま終わってしまったが、インディペンデントクラス初の単独開催となった第10戦。どういう印象だったか、ドライバーたちに聞いてみた。まずは今田選手で、「今日はラップリーダーで走って、トップでチェッカーを受けられたらすごく気持ち良かったでしょうね。またこういう機会があれば、独立したレースをぜひやってほしいと思います」と歓迎の様子だった。

 DRAGON選手も「せっかくGTAさんがこうやって演出してくれたので、レースをやりたかったですけど、こういう条件じゃ仕方ないですね。ただ、台数がこれだけ多いじゃないですか? 小さいサーキット、特にSUGOとか、若者も場所取りを思いっきりやりたいでしょうし、僕たちも気兼ねなくというか、迷惑かけることなくやりたいので」と今田選手と同じく、初の試みに賛同のようだ。

 さらに「極論を言うなら、今後もし可能なら、インディペンデントクラスは金曜日に1レースやって、土曜日にもう1レースして、僕らは日曜日にレースできなくてもいい。そういうシチュエーションにしてもらったら、たぶんチャンピオンクラスのドライバーもうれしいと思います」と、貴重な意見も語ってくれた。

フォト/石原康、遠藤樹弥 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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